NELL
  1. NELL
  2. WENELL
  3. 【医師監修】理想の睡眠時間はどのくらい?短すぎることによるリスクも解説
2024.02.27 更新

【医師監修】理想の睡眠時間はどのくらい?短すぎることによるリスクも解説

【医師監修】理想の睡眠時間はどのくらい?短すぎることによるリスクも解説

睡眠時間が「短すぎる」「長すぎる」、どちらのケースも心身にとっては良くありません。

自分にとって理想的な睡眠時間を見つけることが大切です。また、快適な睡眠を望むのであれば、睡眠時間の長さだけを気にするのではなく、睡眠の質も大切です。

この記事では、睡眠時間が短いことや長いことのリスクと、自分に合った睡眠時間を見つける方法について紹介します。

「最近寝ても疲れがとれない」「理想的な睡眠時間がわからない」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。

  1. 理想の睡眠時間は人それぞれ
  2. 理想の睡眠時間は年齢によって変化する
  3. 理想の睡眠時間は季節によっても変化する
  4. 朝方・夜型は生まれつきの体質によって決まる
  5. 睡眠時間が短すぎることによる4つのリスク
  6. 生活習慣病に繋がる
  7. 精神面の不調があらわれる
  8. 生活や仕事のパフォーマンスが低下する
  9. 美容面に影響を及ぼす
  10. 睡眠時間が長すぎることによる4つのリスク
  11. 自分に合った睡眠時間を見つける方法
  12. まとめ

理想の睡眠時間は人それぞれ

大前提として、最適な睡眠時間には個人差があります。個人の体質や年齢、季節などによって適した睡眠時間は異なるため、誰にでも当てはまる最適な睡眠時間があるわけではありません。

長すぎる睡眠時間は睡眠の質を低下させる場合もあるため、誰かと比べるのではなく一人ひとりが自分の睡眠に対する関心を持ち、自分に合う睡眠時間や睡眠環境を見つけることが大切です。

柳原万里子

柳原万里子

眠りと咳のクリニック虎ノ門 院長

適切な睡眠時間がとれていることの目安としては、起床時に熟睡感がありすっきりと起きられること、日中の活動を妨げるような症状(例えば、眠気や、倦怠感、集中力の低下など)がないことを目安にすると良いでしょう。

 なお、睡眠時間には以下の要素が関係するとされています。

  • 年齢
  • 季節
  • 朝方・夜型など生まれつきの体質

それぞれ解説するので、自分の理想的な睡眠時間を把握するための参考にしてください。

理想の睡眠時間は年齢によって変化する

最適な睡眠時間が変化する要因として、「年齢」が挙げられます。睡眠時間(臥床(がしょう)時間=ベッドで横になっている時間のことで、実際には眠っていない時間も含む)は加齢とともに変化します。

米国の国立睡眠財団(National Sleep Foundation)によると、各年代に推奨される睡眠時間(臥床時間)は以下のとおりです。

年代睡眠時間
新生児(0~3ヶ月)14〜17時間
乳幼児(4~11ヶ月)12〜15時間
幼児(1~2歳)11〜14時間
未就学児童(3~5歳)10〜13時間
学齢児童(6~13歳)9〜11時間
10代(14~17歳)8〜10時間
若年成人(18~25歳)7〜9時間
成人(26~64歳)7〜9時間
高齢者(65歳以上)7〜8時間

このように、年齢によって睡眠時間は変化するため、年齢や個人差に応じて臥床時間を設定する必要があると考えられます。

しかし、あくまでも特定の睡眠時間にこだわる必要はなく「日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠時間(臥床時間)」をとることが一番重要なことです。

柳原万里子

柳原万里子

眠りと咳のクリニック虎ノ門 院長

乳児は通常は臥床時間も長いですが、実際に眠ることができる時間(睡眠力)も長いため、臥床時間が長くても効率の良い睡眠がとれます。一方で、歳を重ねると臥床時間を長くしても、脳が実際に眠ることができる時間(睡眠力)が限られています。

実際に脳が眠ることができる時間(睡眠力)に比べて臥床時間が長すぎると、睡眠の効率が悪くなります。すなわち眠りが浅くなったり、中途覚醒や早朝覚醒が生じたりするなど、効率が悪く、質の低い睡眠になってしまいます。

理想の睡眠時間は季節によっても変化する

睡眠時間は季節によっても変動することがわかっています。季節による睡眠時間の変化には日照時間が影響していると考えられており、日照時間が最も短い冬は睡眠時間が最も長く、次いで秋、春、夏の順番で睡眠時間が短くなります。

なお、厚生労働省が取りまとめている「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によると、夏は冬に比べて睡眠時間が10分~40分程度短くなることが示されています。

出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023 (案)

朝方・夜型は生まれつきの体質によって決まる

人には体内時計が備わっており、体温やホルモン分泌など体の基本的な機能は体内時計によって管理されています。

例えば、夜にメラトニンが分泌されて眠くなったり、朝になると副腎皮脂質ホルモンが分泌されて目が覚めたりするのも、体内時計の作用によるものです。

体内時計の周期は25時間程度であることがわかっていますが、人によっては25時間より長い場合もあれば短い場合もあります。

この体内時計の周期の違いによって朝方と夜型に分けられ、体内時計の傾向は遺伝によって決まっているといわれています。日本人の成人は約3割が生まれつき夜型ともいわれており、夜型の方は朝が苦手だったり、夜になると集中力が高まったりする傾向があります。

睡眠時間が短すぎることによる4つのリスク

睡眠には心身の疲労を回復する働きがありますが、睡眠が不足すると、健康上の問題や生活への支障に繋がります。

  • 生活習慣病に繋がる
  • 精神面の不調があらわれる
  • 生活や仕事のパフォーマンス力が低下する
  • 美容面に影響を及ぼす

ここからは、睡眠時間が短すぎることによって考えられる4つのリスクについて紹介します。

生活習慣病に繋がる

睡眠不足や不眠は、生活習慣病を発症するリスクを高めることがわかっています。具体的には、以下のような生活習慣病が挙げられます。

  • 肥満
  • 高血圧
  • 耐糖能障害(糖尿病)
  • 循環器疾患
  • メタボリックシンドローム

睡眠時間が短いと、「食事の量や頻度が増える」「疲れによって運動量が減る」など生活習慣に変化が起きます。

そのほか、睡眠不足により自律神経やホルモンなどが変化して、代謝に悪影響が生じることも知られています。これらの変化は、生活習慣病に繋がる要因になります。

精神面の不調があらわれる

睡眠不足は、体だけではなく精神面にも影響を及ぼします。

精神面の健康に強く影響するのは、睡眠による「休養感」です。

日本人の成人を対象にした研究(※)では、睡眠による休養感が低い人ほど抑うつの度合いが強いこともわかっています。

  • 寝ても回復感がない
  • 気持ちが重たい
  • 物事に関心がなくなる
  • 好きなものを楽しめない

これらの症状は、うつ病を始めとした精神疾患に繋がる可能性があるため、休養感のある睡眠をとることは心の健康にとっても非常に重要とされています。

(※)「Kaneita Y, Ohida T, Uchiyama M, Takemura S, Kawahara K, Yokoyama E, Miyake T, Harano S, Suzuki K, Fujita T. The relationship between depression and sleep disturbances: a Japanese nationwide general population survey. J Clin Psychiatry 2006;67:196–203」より

生活や仕事のパフォーマンスが低下する

睡眠不足では、日常生活のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。睡眠時間が不足すると、感情調整や記憶能力、思考能力の低下が生じるため、注意が必要です。

健康な成人を対象にした研究(※)では、睡眠時間が短く制限された人の作業効率は、日が経つにつれて低下していくことがわかっています。

また、慢性的な睡眠不足の状態では、客観的にみて作業効率が低下しているにもかかわらず、自分では眠気による作業効率の低下に気付きにくいというケースもあります。
仕事が忙しい人でも、長期的には適度な睡眠時間を確保したほうが日々の作業効率が上がり、事故やヒューマンエラーなどのリスクを軽減できるといえるでしょう。

(※)「Belenky G, Wesensten NJ, Thorne DR, Thomas ML, Sing HC, Redmond DP, Russo MB, Balkin TJ. Patterns of performance degradation and restoration during sleep restriction and subsequent recovery: a sleep dose-response study. J Sleep Res 2003;12:1-12Van Dongen HP1, Maislin G, Mullington JM, Dinges DF. The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep 2003;26:117-126」より

美容面に影響を及ぼす

睡眠不足は、肌のトラブルに繋がりやすいというリスクもあります。

睡眠中には、肌の健康を保つために重要なホルモンである「成長ホルモン」が分泌されます。成長ホルモンは新陳代謝を促すため、細胞の修復や疲労回復など重要な働きをもっています。

成長ホルモンは、日中にはごくわずかしか分泌されておらず、睡眠中、とりわけ睡眠の中でも深睡眠と呼ばれる最も深い睡眠の時間帯(睡眠前半、就寝後2〜3時間の間に生じやすい)に多く分泌されるホルモンです。

成長ホルモンの分泌が減ると、肌の新陳代謝が悪くなり、ニキビなどの肌荒れの原因に繋がります。

健康的な肌を保つためにも、睡眠は重要な要素の一つです。

睡眠時間が長すぎることによる4つのリスク

とにかく長く眠れば良いというわけではないことも理解しましょう。睡眠時間が長すぎることによって生じるリスクも存在します。

  • 体に不調が生じる
  • 生活リズムが崩れる
  • 睡眠の質が低下する
  • 死亡リスクのある病気の発症率が高くなる

睡眠時間が長すぎる、いわゆる「寝過ぎ」は、体に不調を生じさせる原因になります。寝過ぎた時に頭痛が生じた経験のある方もいると思いますが、これは必要以上の睡眠をとると脳血管が拡張し、周囲の神経を刺激することで起こります。

また、寝過ぎによって末梢にある臓器の働きにも変化が生じ、気分が悪くなることもあります。

そのほか、寝過ぎは生活リズムが乱れる原因にもなります。生活リズムが乱れると体内時計も乱れてしまうため、夜に眠れないなど睡眠の質の低下にも繋がるでしょう。

さらに、慢性的に9時間以上の睡眠をとっている方は、高血圧や脳梗塞などによる死亡リスクも高くなることが知られています。

ただし、寝付くまで時間がかかってしまう方もいるため、長時間の睡眠が必ずしも悪いわけではなく、熟眠感があり翌日の日中に支障なく活動ができていれば問題ありません。

最適な睡眠時間は人によって異なるため、自分に合った睡眠時間を確保するように心がけましょう。

自分に合った睡眠時間を見つける方法

前述のように適切な睡眠時間には個人差があります。その点を踏まえながら、現在の睡眠に満足できておらず、普段の睡眠時間が自分の年代に推奨される上記の時間よりも短い場合には、睡眠時間を伸ばす必要があるかもしれません。

自分に合った睡眠時間を見つける方法としては、例えば、「毎日7時間寝る」と決めて2週間はその睡眠時間を確保してみましょう。2週間経った時点で、睡眠に満足できていれば7時間が自分に合った睡眠時間ということになります。

まだ寝足りないと感じる場合には、30分ずつ睡眠時間を延ばして様子を見てみましょう。決めた時刻よりも早く目が覚めるようになった場合には、30分ずつ睡眠時間を短くしてみましょう。気持ち良く起床できて日中に支障がない状態になる睡眠時間が、適切な睡眠時間です。

睡眠不足が慢性的に溜まった状態(睡眠負債の状態)では、睡眠不足の反動で本来必要な睡眠時間より長く眠ってしまう傾向があります。睡眠不足である人が睡眠時間を延長する期間は1日、2日では足りません。2週間程度試してから調整することで、普段の睡眠不足の影響のない「自分に合った睡眠時間」を見つけられます。

柳原万里子

柳原万里子

眠りと咳のクリニック虎ノ門 院長

睡眠時間を延長しても日中に強い眠気が生じて支障する場合には、中枢性過眠症(ナルコレプシー・特発性過眠症)や睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害の可能性があります。

また、睡眠時間を延ばそうとしてもなかなか寝つけない場合や、中途覚醒・早朝覚醒が生じてしまい、上手く睡眠時間を延ばせない場合には、不眠症や概日リズム睡眠障害(睡眠・覚醒相後退障害、睡眠・覚醒相前進障害など)が隠れている可能性もあります。

自分で工夫しても睡眠に満足できず、日中に支障がある場合には、睡眠外来を受診しましょう。

まとめ

理想的な睡眠時間は人によって異なるため、一概にはいえません。睡眠時間は体質や年齢のほか、季節によっても変わるため、「何時間寝れば良い」ということではなく、起床時に感じる熟睡感や、目覚めの良さなどを重視しましょう。

また、睡眠時間は短すぎても長すぎても何かしらのリスクが生じる可能性があるため、自分にとって最適な睡眠時間を見つけることが大切です。

記事内で紹介した方法を参考に、理想的な睡眠時間を見つけて、日々の生活で質の高い睡眠をとることを心がけましょう。

また、以下の記事では生活習慣や寝室環境に着目し、睡眠の質を高めるための具体的な方法を解説しています。睡眠の質を改善したい方は、ぜひこちらもご一読ください。

睡眠の質を上げる
【医師監修】睡眠の質を上げる方法13選!生活習慣や寝室環境を見直そう
この記事の監修者
柳原万里子
柳原万里子眠りと咳のクリニック虎ノ門 院長
医学博士。日本睡眠学会認定睡眠専門医。日本呼吸器学会認定呼吸器専門医・指導医。東京医科大学睡眠学寄附講座客員講師。筑波大学睡眠呼吸障害診療科・睡眠総合ケアクリニック代々木の勤務を経て、2022年11月に眠りと咳のクリニック虎ノ門(https://sleep-toranomon.com/)を開院。皆さまの眠りと健康寿命を守る、をモットーに女性ならではの細やかで丁寧な診療を行っている。
ページのトップへ