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2023.12.09 更新

【医師監修】睡眠不足がもたらす影響とは?正しい対処法も紹介

【医師監修】睡眠不足がもたらす影響とは?正しい対処法も紹介

睡眠不足は、倦怠感などの体への影響だけではなく、精神面にも影響を及ぼします。

それらの影響が相互に関係し、さらに別のリスクを引き寄せる可能性もあるため、自分が睡眠不足であると感じる方は、身近なところから快適な睡眠をとるための行動を心がけることが必要です。

この記事では、睡眠不足による体や精神への影響と、睡眠不足の対処法についてわかりやすく紹介します。

質の良い睡眠をとるための具体的なコツについても紹介するため、睡眠不足で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

  1. 睡眠不足による体や精神への影響やリスク
  2. 仕事や勉強の効率が低下する
  3. 病気にかかるリスクが高くなる
  4. 気分が落ち込みやすくなる
  5. 疲労がとれなくなる
  6. 睡眠不足とは具体的にどのような状態?
  7. 睡眠不足を感じている場合の対処法
  8. 睡眠時間を確保する
  9. 生活リズムを整える
  10. 質の良い睡眠をとる
  11. まとめ

睡眠不足による体や精神への影響やリスク

睡眠不足による日常生活の影響やリスクとして、下記のようなものが挙げられます。

  • 仕事や勉強の効率が低下する
  • 病気にかかるリスクが高くなる
  • 気分が落ち込みやすくなる
  • 疲れがとれなくなる

それぞれ、詳しく解説していきます。

仕事や勉強の効率が低下する

睡眠不足は一般的に「寝不足」と呼ばれますが、脳の休息がとれていない状態ともいえます。その結果として、記憶の整理ができなくなったり、物忘れをしたりすることが多くなるでしょう。

このように、思考力や記憶力、学習能力などに悪影響を及ぶと、仕事や勉強の効率の低下に繋がります。

しかし、厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠指針 2014」によると、睡眠不足の人は眠気によって作業能率が低下していることに、自分では気づかないケースも多いことが分かっています。

適切な睡眠は、仕事上の作業効率を上げるほか、事故やヒューマンエラーのリスクを減らすためにも大切なことです。

病気にかかるリスクが高くなる

睡眠不足は、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすといわれています。

例えば、睡眠不足になると免疫力が低下し、感染症などにかかりやすくなる傾向があります。免疫力が低下すると風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなるため、予防のためにも十分な睡眠をとることが大切です。

また、ホルモンバランスを崩すことにより、下記のような生活習慣病を発症しやすくなることが知られています。

  • メタボリックシンドローム
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 心筋梗塞
  • 心不全

上記のほかにもさまざまな生活習慣病の発症リスクが高まります。

さらに、生活習慣病からくる心臓や脳の病気のリスクも合わせて高くなるため、長期的な健康を考えると、十分な睡眠をとることを心掛けることはとても大切です。

山下あきこ

山下あきこ

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役

睡眠時間が短いと起こりやすい疾患は、心筋梗塞や脳梗塞、肺炎、がん、認知症、うつ病、痙攣、幻覚、骨粗鬆症、不妊症などです。

また、体の免疫力が低下し、風邪をひきやすくなるだけでなく、自律神経の働きをに作用し、めまいや頭痛、高血圧などの原因にもなります。

さらに、痛みを感じやすくなるため、腰痛や肩こりの要因にもなります。

気分が落ち込みやすくなる

睡眠不足は精神面にも強い影響を及ぼします。

些細なことにイライラしたり、怒りっぽくなったり、不機嫌になったりなど、人によってその度合いはさまざまですが、中高生の子供では睡眠不足から情緒不安定になり、不登校に繋がるなどのリスクもあります。

一方、大人の場合は、精神面に影響が出ることにより仕事でミスをすることが多くなり、睡眠不足の疲労感と重なることによって、思考もネガティブになってしまう可能性があるでしょう。

長期に渡ってそのような状態が続くと、うつ病の症状があらわれるリスクも高くなります。

うつ病の方の9割近くは何かしらの不眠症状を伴い、睡眠による休養感も少ないとされており、その結果、さらに睡眠不足が深刻化し、生活リズムの崩れやほかの病気へ影響するリスクも考えられるでしょう。

このような精神面の影響は、その後のさまざまな症状に影響することも考えられるため、睡眠不足と感じる場合は、少しずつでも改善を心がけることが大切です。

疲労がとれなくなる

先述のとおり、慢性的な睡眠不足は、精神面だけではなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも影響を及ぼす可能性があります。

睡眠中は成長ホルモンが分泌されることが知られていますが、子どもの場合、成長ホルモンは成長を促し、大人の場合は日中の心身の疲れやストレス解放、体内組織の修復、老化の進行などを抑制します。

つまり、睡眠不足によって体内のホルモン分泌が妨げられることは、疲れやすくなる上、老化を促進させる原因にもなり得るということです。

睡眠不足とは具体的にどのような状態?

ここまで睡眠不足のリスクについて紹介しましたが、そもそも「睡眠不足」とは具体的にどのような状態のことを指すのか解説します。

睡眠不足とは「自分にとって十分な睡眠がとれていない状態のこと」で、一般的には寝不足ともいわれます。

さらに具体的に説明すると、十分な睡眠をとっていないために活動時間帯に「眠気」「頭痛」「倦怠感」などの不調が生じている状態のことを指します。

下記の項目を参考にして、自分が睡眠不足かどうかチェックしてください。

  • 30分〜1時間以上眠りにつけない
  • 予定の時間より早く目が覚めてしまいその後眠れない
  • たっぷり寝ても熟睡できた感じがない
  • 夜間に何度も起きてしまう
  • 日中に気分良く過ごせない
  • 日中に通常通り活動できない
  • 日中に眠くて仕方ない

上記の項目のいずれかに当てはまるのであれば、睡眠不足の可能性が考えられるでしょう。該当する方は注意が必要です。

また、睡眠不足とあわせて「睡眠負債」についても注意が必要です。

「睡眠不足」が1日単位と短期的であることに対し、「睡眠負債」は毎日少しずつ睡眠不足が積み重なった状態で、慢性化した睡眠不足のことを指します。

睡眠負債が数週間、数ヶ月、数年と長期的に続くことによって、下記のように心身に悪影響を及ぼす可能性も高くなります。

睡眠負債の期間影響
数週間
自律神経の乱れによる高血圧や不整脈など
数ヶ月ホルモンバランスの乱れによる肥満、糖尿病、脂質異常など
数年精神神経系の異常による抑うつなど

睡眠不足を防ぐことはもちろん大切ですが、睡眠不足が慢性的になり「睡眠負債」の状態にならないように注意することも非常に重要です。

睡眠不足を感じている場合の対処法

睡眠不足を感じている場合、対処法としてはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは睡眠不足の対処法として、下記の方法を紹介します。

  • 睡眠時間を確保する
  • 生活リズムを整える
  • 質の良い睡眠をとる

基本的ではありますが、睡眠不足解消にはとても大切なポイントであるため、それぞれしっかり抑えておきましょう。

睡眠時間を確保する

睡眠不足を解消するためには、まず自分の生活を見直し睡眠時間を確保することが大切です。

仕事などの関係で生活のサイクルが固定化している方もいると思いますが、「今の生活サイクルで30分早く寝るためにはどうしたら良いか?」などを考えることはとても大切です。「時間が無い」と諦めず、積極的に睡眠時間確保の方法を考えましょう。

例えば、睡眠時間が少なくなっている原因が「勤務先と自宅が遠い」ことにある場合、「勤務先の近くに引っ越す」ことも選択肢の一つです。

また、寝る前に無意識にスマホやパソコンを触っている場合も、それらを意識的に控えることで睡眠にあてる時間を増やせます。

当たり前になっている生活サイクルや環境を一度見直すことで、睡眠時間を確保する方法を見つけましょう。

適切な睡眠時間はどのくらい?

睡眠時間を確保するうえで気になる点の一つとして「適切な睡眠時間」があります。

一般的には、睡眠時間は6〜8時間が理想だといわれていますが、これはあくまでもさまざまな研究における統計から導き出された結果です。

実際には、一人ひとりのライフスタイルや体質により個人差が大きいため、一概に6〜8時間の睡眠が適しているわけではありません。また、一人ひとりの睡眠時間は年齢や季節によっても変化するといわれています。

例えば、厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠指針 2014」によると、一般的には成人してからは加齢するにつれて徐々に睡眠量は減っていくことが分かっています(※)。

年齢一晩あたりの睡眠量
10歳代前半8時間以上
25歳約7時間
45歳約6.5時間
65歳約6時間

季節では、日が長い春〜夏では睡眠時間が短く、日が短い秋〜冬では睡眠時間が長くなるとされています。

このような変化に加え、前述のとおり体質などによっても異なるため、適切な睡眠時間は一般的な数字を参考にするのではなく「自分にとって最適な時間」を見つけることが大切です。

一般的な時間に当てはまらなかったとしても、基本的には日中に眠気や体の不調がなければ問題はありません。そのため「平均して6〜8時間寝なければいけない」と考えるのではなく、自分が気持ちよく生活できる睡眠時間を見つけることを意識しましょう。

(※)厚生労働省健康局 健康づくりのための睡眠指針 2014

山下あきこ

山下あきこ

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役

睡眠不足だけでなく、日常的に長時間の睡眠をとる場合や眠りすぎによる健康リスクもあります。例えば、睡眠過多症候群では、日中の眠さが取れずに生活に支障をきたす場合があるだけでなく、頭痛や起床困難によって社会生活ができなくなるケースもあります。

また横になっている時間が長すぎると、活動量が減り、骨粗鬆(しょう)症や身体機能の低下をきたします。

生活リズムを整える

生活リズムを整えることも睡眠にとっては大切です。生活リズムを整えることは、睡眠リズムを整えることにも繋がります。

毎日起きる時間と寝る時間を決め、一定にすることでそのサイクルを体に覚えさせます。そのほか、朝食を欠かさずとる、起きて1時間以内に太陽の光を浴びるなど生活リズムを一定にすることで、体内時計が狂いにくくなります。

とくに太陽の光は体内時計ズレをリセットし、睡眠・覚醒のリズムを整える効果があります。安定した生活リズムが習慣化すれば決まった時間に自然と眠気が誘発され、眠りに入れるようになります。

山下あきこ

山下あきこ

株式会社マインドフルヘルス 代表取締役

曇りや雨など、太陽の光を浴びにくい天候の時でも体内時計を整えることが可能です。

例えば、起床後1時間以内に朝食を食べて体内時計をリセットすることや、午前中に体を動かすことなどが有効です。もし、昼寝をする場合は15時までにしましょう。

質の良い睡眠をとる

ここまで睡眠の「時間」についての内容をいくつか紹介してきましたが、睡眠は時間だけではなく「」も大切です。

睡眠時間が短すぎると睡眠不足に繋がることは一般的に理解できると思いますが、一方で睡眠時間が長くなることが体に悪影響を及ぼすケースもあります。

また、長時間の睡眠では同じ姿勢が続くことにより血行不良などが起こり、眠りが浅くなったり、肩凝りや背中の凝りに悩まされたり、さらには疲れや怠さにも繋がるといわれています。

このように、長時間眠ったとしても睡眠の質が低ければ「寝ているのになぜか疲れがとれない」「起きた時に疲れを感じる」といったことになります。

このような状態にならないためにも、自分にあった睡眠時間を理解し、睡眠の質を高める行動を心がけましょう。質の良い睡眠をとるための具体的なコツは、以下のとおりです。

  • 寝る直前に食事をとらない
  • 就寝の約4時間前からはアルコールやカフェインを摂取しない
  • 就寝の30分~1時間前からはスマホやパソコンなど控える
  • 就寝の90〜120分前に入浴でリラックスする
  • リラックスできる音楽を聴く
  • アロマや読書などリラックスできることをする
  • 寝具、照明、温度、湿度などの寝室環境を整える

上記のように、覚醒作用があるよう飲み物や睡眠の質を下げる行為を避け、リラックス状態とされる副交感神経優位の状態にすることが、質の高い睡眠に入るためのコツです。

まとめ

睡眠不足は心身にさまざまな影響を及ぼし、慢性化する「睡眠負債」としてさらに悪化します。

そのため、自分が睡眠不足であると感じた場合は、快適な睡眠のための行動を心掛けて、睡眠不足を解消しましょう。

もし睡眠不足が続き、改善の方法が見つからない場合や、体調が優れない場合は医師や専門家への相談も検討し、適切なアドバイスをもらうようにしてください。

この記事の監修者
山下あきこ
山下あきこ株式会社マインドフルヘルス 代表取締役
医学博士、内科医、神経内科専門医、抗加齢医学専門医。 1974年佐賀県生まれ。1999年川崎医科大学卒業、2001年~福岡大学病院脳神経内科勤務、2005年~フロリダ州メイヨークリニックジャクソンビル神経内科留学、2007年~佐賀県如水会今村病院神経内科医長などを経て、病気を治すより、人々が健康づくりを楽しむ社会を目指し、2016年に株式会社マインドフルヘルスを設立。アンチエイジング医学、脳科学、マインドフルネス、コーチングを取り入れたセミナー、企業研修、個人健康コンサルティング等を行っている。自分自身の習慣作りと人に伝える活動ができるマインドフル・ライフコーチの講座が好評。「ZIP!」「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)など、メディア出演も多い。著書:「やせる呼吸」(二見書房 (2018/6/26))、「こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる:医師が教える、薬に頼らない3つの方法」(共栄書房 (2022/7/11))、「賢い食べ方」(あさ出版(2022/10/14))
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