「何が原因かわからないけど、寝る時に腰が痛い」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
睡眠時に腰痛がひどくなる原因は人それぞれであるため、自分にとっての原因や対処法を知り、改善させる必要があります。
なかには安静にしていれば治ると思い、長時間睡眠をとる方もいるかもしれません。しかし、寝ている時間が長すぎると、体の負担が腰へ集中し、腰痛をさらに悪化させる可能性があります。
この記事では、睡眠時にひどくなる腰痛の原因や、軽減させるための対処法などについて紹介します。
慢性的な腰痛に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
起床時の腰痛は何が原因?
起床時の腰痛の原因としては下記のようなものが挙げられます。
- 睡眠時の姿勢に問題がある
- 寝具が自分に合っていない
- 睡眠時間が長すぎる
それぞれの内容について、以下で詳しく紹介します。
睡眠時の姿勢に問題がある
腰痛は、睡眠時の姿勢が関係している場合があります。
例えば、腰痛を和らげるために「うつ伏せ」や「横向き」で寝る方も多いでしょう。しかし、このような寝方をすると、長時間背骨が曲がった状態になるため、腰への負担や痛みに繋がることがあります。
一方「仰向け」は、寝る時の姿勢としてはおすすめですが、反り腰の方の場合、腰とマットレスに隙間ができてしまう点に注意が必要です。
体の下側に体重がかかり、緊張状態になりやすいため、腰痛の原因になります。
「理想の寝姿勢」については後述するため、睡眠時の姿勢に問題があると感じた方はぜひ参考にしてください。
寝具が自分に合っていない
寝具が自分に合っていないことも、睡眠時に腰痛がひどくなる原因の一つです。
マットレスにはさまざまな硬さのものがありますが、硬すぎても柔らかすぎても腰への負担が増す原因になってしまいます。
例えば、マットレスが硬すぎると体が沈まないため、肩や腰などで体重を支えることになります。体で負担の大きい部分が血行不良になり、腰痛に繋がる原因になるのです。
一方、マットレスが柔らかすぎると、最も体重がかかりやすい腰の部分が沈み込みやすくなります。
その結果「くの字」の姿勢になるため、長時間、腰に負担がかかり続けることになります。また、体が沈むことで寝返りも打ちにくくなるため、腰への負担を軽減できません。
睡眠時間が長すぎる
睡眠には心身を癒す回復効果がありますが、長時間に渡る睡眠は、腰痛を悪化させる原因の一つです。
とくに、同じ姿勢で寝続けると体の一部が圧迫され、負担がかかります。
筋肉がこり固まり血行不良になるため、腰痛だけではなく、肩こりの原因に繋がることも考えられるでしょう。
川上洋平
かわかみ整形外科 院長・医学博士
睡眠不足だけでなく、寝過ぎも体に悪影響を及ぼすことがわかっています。アメリカの研究では、7時間睡眠の人が最も死亡率が低く、8時間を超えると死亡リスクが上昇すると報告されています。また、理想の睡眠時間は、さまざまな研究結果により6〜8時間といわれています。
しかし、年齢や性別、精神状態によって、個人差が大きく生じ、全ての方にこの時間が当てはまるわけではありません。理想の睡眠時間を測るうえでは、目覚めが良く、日中に眠気を感じず活動的に過ごせるどうかが目安とされています。
寝過ぎると体内時計が狂ってしまい、起床時に疲労感を感じたり、夜に寝つきが悪くなったりするといったデメリットがあり、腰痛の原因にもなるといわれています。
腰痛持ちの方はとくに寝具や寝姿勢に要注意
腰痛は、前述した主な原因のほかにも、下記のようなさまざまなことが関係している場合があります。
- 日中の姿勢が悪い
- 運動不足
- 長時間にわたるデスクワーク
- 骨や筋肉の異常や老化
- 肝臓など内臓の病気
- 寝具が体に合っていない
原因は人によってさまざまですが、特に、寝具や寝姿勢は、腰痛と密接に関係しているため、こだわることをおすすめします。
例えば、「腰痛になる原因がわからない」「運動不足を解消しても腰痛が改善しない」方は、寝具が体に合っていない可能性があります。
マットレスによっては、かかる体重の分散が上手くいかず、腰に負担がかかってしまうからです。理想的な寝姿勢は、立っている時のように「背骨がゆるやかなS字カーブを描いている状態」です。この姿勢を維持するためには、自分の体に合うマットレスを使う必要があります。
また、腰痛を軽減するには寝返りの打ちやすさも大切です。寝返りには、睡眠中に体の部位が圧迫され続けることによる血行不良や筋肉の緊張など防ぐ効果があります。
柔らかすぎて体が沈み込むようなマットレスだと、寝返りが打てないことにより体への負担が増し、寝起きの体調不良のほか肩こりや腰痛などに繋がります。
とくに腰痛持ちの方は、寝返りが打ちやすいマットレスを選ぶことを心がけましょう。
腰痛を軽減させるための睡眠時のポイント
腰痛で悩んでいる方は、睡眠する際に、下記のポイントを意識してみてください。
- 腰痛でも楽に眠れる体勢で寝る
- クッションやバスタオルで負荷を軽減する
- 腰痛に優しい寝具を使う
- 入浴やストレッチで血行を良くする
- 腰痛の症状が続く場合は病院の受診も検討
それぞれのポイントについて、以下で詳しく紹介します。
腰痛でも楽に眠れる体勢で寝る
腰痛に悩んでいる場合、寝る時の姿勢は「仰向け」か「横向き」がおすすめです。
「仰向け」で寝る場合は、できるだけ腰が反り返らないように注意しましょう。
腰を反ってしまうと体重が一部に集中してしまいます。足をまっすぐ伸ばさずに、軽く曲げた状態にすると腰が緊張しないため、腰痛の悪化を防げるでしょう。
また、腰と背中を丸めるように「横向き」で寝ると、腰への負担が減らせます。クッションなどを抱き枕代わりにして寝ることもおすすめです。
ただし、横向きで寝る場合は、肩や胸が圧迫されないように、枕は高さがあるものを選びましょう。
川上洋平
かわかみ整形外科 院長・医学博士
腰痛を予防・解消するためには、上手に寝返りを打つことも大切です。睡眠中に同じ姿勢を長くとっていると、体の特定の部分に持続的な負担がかかります。その持続的な負担を軽減したり、分散したりするために寝返りを行い、同じ姿勢を続けないようにすることが大切です。
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)や、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアの人たちは、腰椎には十分な支えがないため、横向きで寝ていると腰椎がたわんだり、しなったりして神経を圧迫し、足腰に痛み(坐骨神経痛)やしびれが出て、つらい思いをすることがあります。
横向きの寝方で腰痛や坐骨神経痛を解消するためには、腰椎を支える必要があります。それには、腰のくびれ(ウエスト)部分に幅10センチくらいに細長く折ったタオルを敷くと効果的です。また、片方にだけ負担がかからないように、注意深く寝返りを打つことも大切です。
クッションやバスタオルで負荷を軽減する
腰への負担を軽減する方法として、クッションやタオルを有効活用する方法もあります。
仰向けで寝る場合、折りたたんだバスタオルを腰に巻くことがおすすめです。
ヒザ下にクッションを置けば、腰に集中する負担を分散できます。
腰痛に優しい寝具を使う
根本的に睡眠時の腰痛を解決するなら、「自分の体に合うマットレス」や「寝返りを打ちやすいマットレス」を選んで、腰に優しい寝具を使いましょう。
マットレスが自分の体に合っていない場合、健康的な生活習慣や運動不足の解消など腰痛軽減のための行動を心がけても、睡眠中に腰痛を悪化させてしまうことにより、痛みが改善しない可能性があります。
とくに腰痛持ちの方がマットレスを選ぶ際は、「体圧分散性」に優れ、「適度な反発力」があるマットレスをおすすめします。
睡眠時は頭、胸部(背中)、腰、脚部の4ヶ所に体重が集中し、なかでも腰は最も体重が集中する場所です。そのため、マットレスは体圧をバランス良く分散できるものを選ぶことで、就寝中の腰への負担の軽減が期待できます。
ただし、体圧分散性だけではなく「反発力」もあわせ持っていることが重要です。
一般的に体圧分散性に優れているとされるのは、体にフィットする柔らかめの低反発マットレスと言われていますが、前述したとおり柔らかすぎると体重が集中しやすい腰部分が沈み込み「くの字」になります。
つまり、体圧分散性に優れている柔らかいマットレスでも、柔らかすぎると寝姿勢が崩れて腰痛を悪化させる原因となるため注意が必要です。
一方で、適度な反発力があるマットレスは、荷重を押し返す力により体が沈み込みすぎず、寝返りも打ちやすくなります。
寝返りは前述しているとおり、睡眠中の体への負担を軽減するために無意識におこなわれる生理現象のようなもので、快適な寝返りが打てるマットレスでは腰への負担を軽減できます。
これらのポイントを意識して、マットレスを選ぶ際には「体圧分散性」と「適度な反発力」があるものを選びましょう。
また、枕に関しては「仰向け」で寝る場合、首の骨がゆるやかなS字カーブを描ける高さのものを選びましょう。低すぎると自然な形をキープできず、首を痛める可能性があるので注意が必要です。
一方、「横向き」で寝る場合は肩が下にくるため、圧迫を防ぐためには適度な高さが必要になります。枕に頭を乗せた時に、首と背骨がまっすぐになる高さのものを選ぶことがおすすめです。
入浴やストレッチで血行を良くする
就寝前の入浴やストレッチは血行を良くするため、腰痛の方におすすめです。リラックス効果があり、副交感神経優位の状態となりスムーズに眠りに入りやすくなります。
熱すぎるお湯で入浴してしまうと、交感神経を優位にし、体を緊張させてしまいます。38~40℃前後のぬるめのお湯がおすすめです。
ストレッチは体がほぐれているお風呂上がりに行うと、より効果的です。激しいものではなく、軽めにとどめてください。
腰痛の症状が続く場合は病院の受診も検討
睡眠時にひどい腰痛が改善しない方は、病院で診てもらいましょう。何かしらの病気を患っている可能性も考えられます。
自分で症状や原因を判断すると悪化する恐れもあるため、専門の病院で診てもらうことが最善です。
また、軽い症状であるにもかかわらず、長期間改善しない場合も病院へ行きましょう。専門の医師にアドバイスをもらえば、すぐに改善する可能性があります。
川上洋平
かわかみ整形外科 院長・医学博士
寝起きの時だけ腰痛を感じる場合は、寝ている間の姿勢に問題があることが多く、あまり病院を受診する必要はありません。
しかし腰痛が持続的なものとなった場合や、しびれなどほかの症状が出現した場合には、椎間板(ついかんばん)ヘルニアや脊椎(せきつい)すべり症など、ほかの原因で腰痛が起こっている場合もありますので、病院を受診するべきだといえます。
例えば、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎すべり症では、持続する腰痛や、神経が圧迫されることで足のしびれや麻痺を発症する場合もあり、整形外科を早めに受診する必要があります。
腰の痛みは脊椎や筋肉による痛みだけではなく、内臓の病気でも生じます。お酒をよく飲む方に起こりやすい慢性膵炎や、尿管結石や腎盂腎炎、子宮内膜症などです。突然起こる腰痛や、異常に痛みの強い腰痛が生じたらすぐに医療機関(整形外科や内科)を受診しましょう。
まとめ
睡眠の際に腰が痛くなる原因は人によってさまざまです。
就寝中は腰へ負担がかかるため、長時間の睡眠は逆効果になります。適切な睡眠時間と、腰痛を悪化させないための寝姿勢や寝具の使用を心がけることが大切です。
この記事で紹介した内容を参考に、自分にとって最適な睡眠時間や寝具を見つけ、腰に優しい快適な睡眠を手に入れてください。