就寝時の「脚がむずむずする」「痛くてかゆい」といった不快な感覚は、とてもつらい症状です。
寝ている時にじっとしていられないほどの症状がある場合、むずむず脚症候群の可能性があります。
むずむず脚症候群とは、夕方から夜間、脚に不快さを感じる疾患のことです。むずむず脚症候群の原因はいくつかあり、医療機関での治療はもちろん日常生活を見直すことも大事とされています。
この記事では、むずむず脚症候群の特徴などをわかりやすく解説します。日常的にできるむずむず脚症候群の改善方法も解説するので、むずむず脚症候群に悩む方は参考にしてください。
むずむず脚症候群の4つの特徴
むずむず脚症候群とは、脚など下半身を中心に不快な感覚が出現する病気です。「ムズムズする」「ほてる」「足を動かさずにはいられない衝動がある」といった症状があらわれます。
別名「レストレスレッグス症候群」ともいわれるむずむず脚症候群は、日本人の2~4%が罹患しているとされており、男性より女性に多く見られる病気です。
むずむず脚症候群の特徴として、以下の4点が挙げられます。
- 不快感がある
- じっとできない
- 動くと症状が軽減する
- 夕方〜夜に症状が出る
それぞれの特徴について、詳しい内容を解説します。
不快感がある
むずむず脚症候群であらわれる不快感は、脚・腰・背中・下腹部に多いですが、腕・手などにも生じることがあります。
足を動かすことで不快な感覚はすぐに消えますが、じっとしていると再び出現してしまうところが特徴です。
むずむず脚症候群による不快感は「熱い」「むずむずする」「虫が這う」「電気が流れる」など、さまざまな言い回しであらわされますが、なかなか言葉では表現しにくいともいわれています。
じっとできない
むずむず脚症候群になると、じっとできず、脚を動かさずにはいられない衝動が生じることが多く、体を動かすようにかり立てられるような気持ちになるケースもあります。
就寝時だけでなく、電車や飛行機で安静にしている時に症状が出ることもあり、こういった状況でもじっとしていられないところがつらいと感じるポイントです。
動くと症状が軽減する
むずむず脚症候群は、症状が出た時に脚を叩いたり、寝返りを繰り返したりすると不快感が軽減するところが特徴です。
しかし、最初は不快感があらわれるだけであっても、さらに症状が重くなると、じっとしていることも難しく、歩き回らなければいてもたってもいられない状態になるケースもあります。
なお、この脚を動かす、歩き回るなどといった行動は自発的に行うものであり、脚や体が勝手に動くわけではありません。あくまで、むずむず脚症候群の症状である不快感を軽減させるための行動です。
夕方〜夜に症状が出る
むずむず脚症候群は、夕方から夜にかけて不快感やじっとしていられない症状が出ることが多いです。
夜に症状があらわれると、不快感によって入眠できない、途中で起きてしまうなどして睡眠障害の原因にもなり得ます。
なかには、はじめは夜だけに症状が出ていたのに、夕方仕事をしている最中にも症状が出るようになるケースもあります。
吉岡容子
高梨医院院長
夕方から夜に症状が出やすい理由は、はっきりとは解明されていませんがドーパミン量が関係しているといわれています。
朝から昼はドーパミン量が多く、夕方から夜間はドーパミン量が少なくなるため症状が出やすいと考えられます。
むずむず脚症候群になる原因を解説
むずむず脚症候群の正確な原因は未だ解明されておらず、考えられる原因は複数あるとされています。
主な原因として考えられるものは、以下の6つです。
- ドパミンの機能障害
- 鉄不足
- 遺伝
- 病気(パーキンソン病など)
- 妊娠
- カフェインの摂取
まず原因として考えられるのは、ドパミンの合成異常が関わっている可能性です。
ドパミンは人間の神経で情報の受け渡しを担っていますが、ドパミンの分泌量が減少すると正しい情報を伝えられなくなるため、脳への情報伝達が上手くいかず体に不快感があらわれるとされています。
次に考えられるのは、体内の鉄分が不足している可能性です。貧血の症状がある方、脳の鉄分が欠乏している方、腎不全による人工透析を受けている方は、むずむず脚症候群の症状が出やすい傾向にあります。
また、むずむず脚症候群の症状がある方の約30%に、家族でも同様の足の不快感を訴える人がいると報告されていることから、家族や親族からの遺伝も原因の一つと考えられるでしょう。
場合によっては、パーキンソン病・甲状腺機能低下症・糖尿病・うつ病といった病気や、その薬の影響でむずむず脚症候群の症状があらわれることもあります。
妊婦の約15%の方も、むずむず脚症候群の症状を経験しているとされていますが、多くの方は、授乳期間が終わるまでには自然に症状がなくなるようです。
さらに、カフェインが含まれるコ-ヒ-や紅茶などを摂ると、むずむず脚症候群による不快感があらわれる場合があります。このケースでは、カフェインを摂取しなくなると症状が消失することがほとんどのようです。
吉岡容子
高梨医院院長
カフェイン、アルコールなどは神経細胞を興奮させる要因となります。神経細胞が興奮すると症状が悪化したり、夜間だけでなく日中も症状が出やすくなったりします。
むずむず脚症候群がつらい方は医療機関を受診しよう
むずむず脚症候群は病気なので、自己判断で治療を行うのではなく、症状があらわれた際には医療機関を受診して、専門家による検査や治療を行うことをおすすめします。
しかし、むずむず脚症候群の疑いがある場合は何科を受診すれば良いか、悩む方も多いでしょう。「むずむず脚症候群かも」と思ったら、以下の科を受診してください。
- 睡眠専門外来(睡眠と関係が深い病気であるため)
- 内科
- 神経内科
- 精神科
- 脳神経内科
なお、すでにパーキンソン病と診断されている、歩行障害があるなどの場合には神経内科を受診しましょう。
医療機関では、前述した4つの特徴に当てはまるかという点から診断が行われます。場合によっては血液検査などが行われることもありますが、医療機関によって詳細な内容は異なるため、訪れた医療機関の指示に従うと良いでしょう。
また、治療は薬物療法を行うケースがありますが、治療の詳細も医療機関や診断結果に応じて異なるため、医師の指示を仰いでください。
吉岡容子
高梨医院院長
むずむず脚症候群は、ライフスタイルの改善のみでは完治は難しいです。医師の診断のうえ、服薬を開始すれば2~4週間ほどで症状の改善が認められます。
むずむず脚症候群の方が日常生活で取り組める対策
むずむず脚症候群が疑われる場合、基本的には医療機関を受診することを推奨しますが、それと同時に日常生活を見直すことも大事です。
つらい症状への対処法を行うことで、症状の一部が軽減する可能性もあるため、日常で取り組める対策もチェックしておきましょう。
むずむず脚症候群の方が日常生活で取り組める対策として、以下のことがあります。
- 嗜好品を見直す
- 食生活を見直す
- むずむず脚症候群の症状を忘れる行動をとる
- 適度な運動を行う
それぞれのポイントを詳しく解説します。
嗜好品を見直す
タバコやアルコール、コーヒー・紅茶・緑茶などに含まれるカフェインは、むずむず脚症候群の症状を悪化させる可能性がある嗜好品です。
これらの嗜好品を控えることで症状が軽減しやすくなる場合があります。
また、カフェインには覚醒効果があり眠りを浅くしてしまうため、睡眠の質を高めるという意味でも就寝直前に摂取するのは控えるようにしましょう。
食生活を見直す
むずむず脚症候群の原因の一つとされる鉄不足を解消するためにも、鉄分を含む食品を食生活に取り入れることをおすすめします。鉄分を含む食品の一例は、以下のとおりです。
- レバー
- カツオ
- あさり
- ホウレンソウ
- 小松菜
どれも料理で使いやすく、スーパーなどでも気軽に手に入れられる食材ばかりです。ほかにも鉄分が含まれる食品は数多くあるため、好みに合わせて意識的に食生活に取り入れてみてください。
むずむず脚症候群の症状を忘れる行動をとる
テレビやゲームに没頭して「むずむずする不快な症状」から意識をそらすことも有効的な対策といえます。
積極的に用事を作り、不快感が特に強くなる時間帯を忙しく過ごすと良いでしょう。取り組むのは、楽器の演奏やYouTubeの視聴、インターネットなど、集中できることであればなんでも構いません。
自分が没頭できる用事を探して、少しでも「むずむずする不快な症状」を忘れられる時間を増やすよう心がけましょう。
適度な運動を行う
むずむず脚症候群の症状は動いていると楽に感じるケースが多いため、ウォーキングなど軽めの運動に取り組んでみましょう。
体を適度に動かして規則正しい生活を送ることで、体が疲労してスムーズな入眠が促されやすくなるため、睡眠の質を高めるという観点でもおすすめです。
ただし、激しい運動は余計に症状がつらくなる可能性があるので、無理せず適度に筋肉をほぐすよう意識してください。
運動が苦手で続けられるか不安な方は、まずは入浴中や就寝前に、脚の筋肉をストレッチすることから始めてみましょう。
まとめ
むずむず脚症候群は、夕方から夜にかけて、耐え難いほどの不快な症状があらわれるつらい病気です。
明確な原因はわかっていませんが、ドパミンや鉄との関連、家族からの遺伝、妊娠など、さまざまな出来事が引き金となってあらわれると考えられています。
つらい症状をいくらか軽減させるためには、日常生活で軽い運動をする、食生活を見直すといった対策を行うことも大事です。
むずむず脚症候群が疑われる場合は、まずは睡眠外来や精神内科などの医療機関を受診しましょう。症状が重い場合は投薬治療を行うこともあるため、医師の指示に従うようにしてください。