日頃から寝付きが悪いと、寝付けないことがストレスになったり、翌日の活動に悪影響を及ぼしたりすることがあります。
寝付きが悪い方のなかには、心身ともに落ち着かせる方法として、ストレッチが気になっている方もいるでしょう。就寝前にストレッチを取り入れるなら、具体的な手順や注意点について正しく理解することが大切です。
この記事では、ストレッチが安眠に繋がる理由や、おすすめのストレッチの方法を紹介します。ストレッチを効果的にするポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
就寝前にストレッチすると安眠に繋がりやすい理由
安眠するためには、「自律神経のバランスが整っている」「深部体温が適切に上下する」という2点が大切です。
人の体温や血圧などをコントロールする「自律神経」には、活動的な状態の「交感神経」と、心身を休める状態の「副交感神経」があります。体がリラックスすると眠りやすくなるため、就寝時には副交感神経が優位になった状態が理想的です。
また、眠気は深部体温が上昇したあと、下降するタイミングで促されます。
ストレッチをすれば、上記の「自律神経」と「深部体温」への対策が行えるため、スムーズな入眠が促されやすくなると考えられています。
こわばった筋肉をストレッチで動かせば、体の緊張がほぐれてリラックスできます。さらに、血流が良くなることで体温が上がり、布団に入るタイミングで体温が下がれば、自然な眠気が促されやすくなるでしょう。
吉岡容子
高梨医院院長
深部体温の下降を考慮すると、ストレッチをする時間帯は就寝前の15〜30分前が理想です。ただし、激しい運動でないのであれば、就寝の直前でも問題ありません。
安眠のためにストレッチをする際のポイント
ここからは、安眠を目指してストレッチをする時のポイントを紹介します。
ただ体を動かすのではなく、以下のポイントに気を付けてストレッチするとより効果が期待できるため、ぜひ参考にしてください。
- 無理をしないでリラックスする
- 部屋を薄暗くして落ち着いた雰囲気をつくる
- ゆっくりと深い呼吸でストレッチする
それぞれのポイントを詳しく紹介します。
無理をしないでリラックスする
「頑張ろう」と意気込んで体に力が入ると、いくらストレッチをしても眠りには繋がりづらくなります。無理はせず、心身ともにリラックスした状態でストレッチを行いましょう。
なお、張り切って激しい動きをすると目が覚め、逆効果となるため注意してください。ストレッチは落ち着いた環境で、伸び伸びと行うのが理想です。
また、痛みを感じる部分は無理に動かさず、自分が取り組める範囲でストレッチしましょう。
部屋を薄暗くして落ち着いた雰囲気をつくる
照明がついた明るい部屋にいると、通常は日中に働く「交感神経」が優位になりやすく、心身ともに活動モードになって眠りを妨げることがあります。
就寝前にストレッチをする時は、部屋の明かりを薄暗くして落ち着いた雰囲気にすると良いでしょう。
可能であれば、就寝する1時間前から部屋を薄暗くしておくと、自然な睡眠に繋がりやすくなります。部屋の明かりを暗くしたら、スマホやパソコン、テレビの明るい画面は見ないようにしましょう。
ゆっくりと深い呼吸でストレッチする
ストレッチをする時は、ゆっくりとした深い呼吸を心がけましょう。お腹を膨らませて息を吸う「腹式呼吸」を行うと、体内に取り込める酸素量が多くなります。
腹式呼吸は、以下の正しい方法で行ってください。
- 鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませる
- お腹の力を抜き、口からゆっくりと息を吐く
- ①と②を繰り返す
ストレッチをする時の呼吸は、呼吸を止めずに吸う・吐くを連続して繰り返すと、自律神経が整いやすくなります。
就寝前にできる簡単なストレッチ方法
安眠したい方に向けて、就寝前に簡単に取り組めるストレッチ方法を3つ紹介します。
- 背伸びストレッチ
- 腕を回すストレッチ
- 足先を動かすストレッチ
布団の上でも取り組める方法を紹介するので、ぜひ就寝前の習慣にしてみてください。
ただし、どの方法も無理に行うのではなく、自分ができる範囲で行うことが大切です。もし体に痛みがあるなら、ストレッチをする前に専門家に相談しましょう。
また、ストレッチを行っている途中に痛みがでたら、速やかに医療機関を受診してください。
吉岡容子
高梨医院院長
ストレッチを行うと、骨や筋肉、じん帯などに痛みが出ることがあります。その場合は、整形外科の受診がおすすめです。
間違えやすいのですが、形成外科は熱傷、傷跡、皮膚腫瘍が専門です。
背伸びストレッチ
背伸びストレッチをすると、筋肉の緊張がほぐれて全身のリラックスに繋がります。大きく深呼吸しながら取り組めば、心身ともにリラックスできるでしょう。
背伸びストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、頭の上に両手を伸ばしてバンザイのポーズをする
- 両手・両足をしっかりと伸ばしたまま、30秒キープする
- 全身の力を緩めてリラックスさせる
- ①〜③を数回繰り返す
手足を思いきり上に引き上げて、体全体を伸ばすような意識で取り組みましょう。
腕を回すストレッチ
腕を回すストレッチは、肩を中心に上半身がこわばっている方におすすめです。以下の手順で、ゆっくりとストレッチしましょう。
- 腕を曲げてひじを肩の高さまで上げ、肩甲骨を大きく動かすイメージで腕を回す
- 腕を前に真っすぐ伸ばし、腕の筋肉を揉んでマッサージする
腕が上がらなければ無理せず、できる範囲で行ってください。
足先を動かすストレッチ
足元が冷えて眠れない時は、足先を動かすストレッチに取り組みましょう。具体的なストレッチの手順は、以下のとおりです。
- 仰向けに寝て、足首を手前に曲げて5秒キープする
- 足首の力を抜いてリラックスする
- 足の指をグーにして丸めたあと、パーにして指を広げる
- 足の先が温まるまで、①〜③を20回程度繰り返す
あくまでも目的はリラックスなので、力を入れすぎないように注意しましょう。足先を意識して動かせば血行が良くなって冷え対策にもなるため、冷え性の方は毎日行うことをおすすめします。
吉岡容子
高梨医院院長
これらのほかには、股関節を和らげるようなストレッチがおすすめです。腹部周囲の血流が特に良くなるため、安眠に最適なストレッチとなります。
安眠のためには生活習慣を整えることも大切
寝付きが悪い時にストレッチをするのは良いことですが、慢性的に眠れないなら生活習慣を整えることも大切です。
まず起床したら太陽の光を浴びて体内時計をリセットし、体内リズムを整えるところから始めましょう。毎日同じ時間に太陽光を浴びると、夜に自然な眠気が促されやすくなります。
体内時計をリセットさせるには規則正しい食生活も大切なので、朝食は抜かずに3食きちんと食べるよう意識してください。
就寝前のストレッチだけでなく、日中に適度な運動をする習慣をつけるのもおすすめです。ウォーキングや軽いジョギングといった有酸素運動を、できるだけ毎日継続して行いましょう。
また、ストレッチでも深部体温を上げられますが、湯船に浸かるほうがより効果が期待できます。安眠するには、就寝する90〜120分前に25分~30分程度、38℃のぬるめのお風呂に入ると良いでしょう。
さらに、ストレスなく眠るためには、就寝環境を整える必要があります。枕やマットレスは自分の体に合ったものを使い、室温・湿度・照明・騒音に配慮して、落ち着いて眠れる環境を作りましょう。
まとめ
安眠のためには、自律神経のバランスが整っており、深部体温が適切に上下することが重要です。就寝前にストレッチをすると自律神経のバランスがとれ、深部体温が上下する効果が期待できるため、スムーズな眠りに繋がりやすくなります。
日頃なかなか寝付けないなら、記事内で紹介したストレッチを就寝前の習慣にしましょう。ただし、体に違和感や痛みがある場合は、専門家に相談したうえでストレッチに取り組んでください。
また、慢性的に眠れない場合は、ストレッチに取り組むだけでなく、生活習慣を整えることをおすすめします。朝に太陽の光を浴びて体内リズムを整えて、自分に合った枕やマットレスを使って快眠を目指しましょう。