普段の眠りが浅くあまり眠れないと感じており、安眠できる方法を探している方もいると思います。
安眠に役立つ方法はいろいろとありますが、「ヨガが安眠に良い」と聞いた方ことがあるもいるでしょう。
ヨガが安眠に良いのであれば、どのようなポーズが良いのか、ヨガを行う際の注意点なども知りたいところです。
この記事では、安眠とヨガの関係性や眠りやすくなるヨガの具体例、ヨガを行う際の注意点などを説明します。
安眠とヨガの関係性
ヨガが安眠に役立つ理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- ストレス緩和による睡眠の改善
- 適度な運動が安眠に繋がる
- 副交感神経が優位になり安眠に繋がる
それぞれを詳しく説明します。
ストレス緩和による睡眠の改善
ヨガには、ストレスを緩和させるといわれるポーズがあります。ストレスを抱えると自律神経に乱れが生じて、睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。ストレスを緩和して、自律神経を正しい状態に落ち着かせることは、睡眠の改善に繋がります。
福井美典
糖尿病専門医・抗加齢医学会専門医・救急科専門医・総合内科専門医
ゆっくりと呼吸をしながらヨガのポーズをとることによって、適度な筋力負荷がかかるレジスタンス運動や有酸素運動ができ、血行が良くなります。その結果、体調が整い、ストレス緩和になります。
適度な運動が安眠に繋がる
適度な運動によって体が疲労を感じることで、睡眠が促進されます。ただし、激しい運動は反対に睡眠を妨げるので、負担が少なく長続きするような有酸素運動がおすすめです。ヨガは代表的な有酸素運動の一つなので、安眠に役立つと考えられます。
副交感神経が優位になり安眠に繋がる
ヨガでは呼吸法が重要ですが、呼吸を整えることで交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態になります。副交感神経が優位な状態は、心身をリラックスさせることに繋がります。その結果、自然と安眠に繋がると考えられます。
眠りやすくなるヨガの具体例
安眠のためには、ストレスを緩和して自律神経を整えることが重要です。そのようなヨガのポーズは、主に以下の3つが挙げられます。
- 猫のポーズ
- 猫と牛のポーズ
- 合蹠(がっせき)のポーズ
それぞれのポーズを詳しく説明します。
猫のポーズ
猫のポーズは、以下のとおりに行います。
- Step.1腕を肩幅に開き、足は腰幅に開いて四つん這いになる
- Step.2手のひらは肩の真下に置き、ひざは股関節の真下につく
- Step.3息を吸いながら頭を下げて、胸を開いて背中をそらす
- Step.4ゆっくりと息を吐いて、背中を丸める
リラックス効果や自律神経を整えることが期待できるポーズです。
猫と牛のポーズ
猫と牛のポーズは、以下のとおりに行います。
- Step.1肩の下に手が、骨盤の下にヒザがあるようにして、四つん這いになる
- Step.2ゆっくり息を吐きながら、両手で床を押し背骨全体を丸める
- Step.3ゆっくり息を吸いながら背中を反らせ、視線も上に
- Step.4呼吸に合わせて3〜5回くり返す
このポーズを行うことで、背骨のまわりをほぐせます。背骨のまわりには自律神経が通っているため、背骨のまわりをほぐすことで自律神経のバランスが整って、安眠に繋がることが期待できます。
合蹠(がっせき)のポーズ
蹠は「足の裏」という意味であり、合蹠(がっせき)のポーズは「足の裏を合わせるポーズ」を意味します。合蹠のポーズには座ったまま、もしくは仰向けで行う方法があり、どちらも自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
座ったまま行うポーズは以下の手順で行います。
- Step.1体育座りのような姿勢から両膝を左右に開いていく
- Step.2足の裏を合わせ、離れないように両手で足先を固定する
- Step.3吸う息で背筋を伸ばし、息をゆっくり吐きながら上体を前に倒す
続いて、仰向けで行うポーズは以下の手順で行います。
- Step.1仰向けになり両ヒザを曲げて胸に抱える
- Step.2足の裏同士を合わせて、ヒザを横に開く
- Step.3足の小指側から手で包んで指を組む
- Step.4背筋は床の上で長く伸ばし、そのまま3〜5回呼吸する
ヨガを行う際のコツ
ヨガを行う際のコツは、主に以下の2点が挙げられます。
- 呼吸を意識する
- 無理はしない
それぞれのコツを以下で詳しく説明します。
呼吸を意識する
ヨガでは呼吸法が重要です。呼吸を意識することで自律神経が整いやすくなり、血流も改善されインナーマッスルの強化にも繋がります。呼吸を意識せずにヨガを行うと、本来の効果を得られない場合があるため注意しなければなりません。
ヨガの呼吸法にはいくつもの種類がありますが、代表的な呼吸法の一つであるカパラバティ呼吸法のやり方を、簡単に説明します。
カパラバティ呼吸法では両鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、吸い切った後に両鼻から一気に強く息を吐いて、お腹をへこませます。1秒間に1回程度のペースで鼻から息をフッフッと吐き出し、20回程度繰り返した後に、一気に吐き切ります。
息を吐く時もお腹をへこませることを意識することが重要です。頭が冴えて気分がスッキリする効果も期待できます。
無理はしない
ヨガのポーズの中には初心者には難しいものや、体が硬い方には難しいものもあります。チャレンジしてみたいポーズがあっても、難しそうだと感じたら無理をしてはいけません。自分にできるポーズから行い、慣れてきたら少しずつチャレンジしていくと良いでしょう。
ヨガを行う際の注意点
ヨガを行う際の注意点は、主に以下の3つが挙げられます。
- 準備体操を行う
- 床の場合はヨガマットを敷く
- 動きやすい服装に着替える
それぞれの注意点を詳しく説明します。
準備体操を行う
ヨガのポーズの中には、普段あまり使っていないような筋肉を使うポーズもあります。そのため、いきなりヨガのポーズを始めると、場合によっては筋を違えるなど体を痛めてしまうことも考えられます。まずは準備体操を入念に行って、体をほぐすことが重要です。
床の場合はヨガマットを敷く
ヨガのポーズは床に座ったまま、または床に膝立ちになった状態で行うものが多いです。そのため、床が硬いと体に痛みが生じる、もしくは正しくポーズを取れないといった可能性があります。ヨガマットを敷くことで怪我の可能性が減り、正しいポーズを取りやすくなります。
動きやすい服装に着替える
ヨガでは手足を伸ばす姿勢や、体をひねる姿勢などをとることが多いです。そのため、伸縮性のある服装や運動に適した服装に着替えることがおすすめです。
動きやすい服装で正しいポーズを取ることで、ヨガ本来の効果を得やすくなります。伸縮性がない服装のままだと、怪我に繋がる場合もあります。
ヨガ以外でも安眠する方法
安眠に良い方法は、ヨガだけではありません。ヨガを行なっても安眠しにくいという方へ、ヨガ以外で安眠する方法を紹介します。
日常生活の中で実践しやすい方法は、主に以下の5つが挙げられます。
- マットレスや枕を自分に合ったものに変える
- アロマや音楽でリラックスする
- 就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
- 入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
- スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までにとどめる
それぞれの方法を詳しく説明します。
マットレスや枕を自分に合ったものに変える
睡眠環境を見直して体に合った寝具を使うことで、安眠しやすくなる可能性があります。今使用しているものよりも自分に合った寝具を選ぶことで、熟睡しやすくなります。
特に寝具の硬さや体圧分散性は睡眠の質に大きく影響するので、それらの点を意識して寝具選びを行い、睡眠環境を改善しましょう。
アロマや音楽でリラックスする
リラックスすることで副交感神経系が優位になるので、安眠しやすくなります。代表的な方法は、アロマを焚いたり音楽を聴いたりといったことが挙げられます。
自分なりの方法でリラックスすることが望ましいですが、ゲームやスマホなどは、画面の光が睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるのでおすすめしません。
就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
アルコールは、神経に作用したり代謝によって尿意をもたらしたりする可能性があります。睡眠前の寝酒は、寝付きは良くなりますが睡眠が浅くなるため、避けたほうが良いでしょう。
また、カフェインには覚醒作用があります。コーヒー・緑茶・チョコレートといったカフェインを含むものを摂取することも、就寝の3〜4時間前からは控えることが賢明です。
福井美典
糖尿病専門医・抗加齢医学会専門医・救急科専門医・総合内科専門医
お菓子や清涼飲料水などの糖質を過剰に含む食事は、夜間の高血糖や低血糖により血糖値の乱高下を引き起こすため、アルコールやカフェイン同様、就寝前の摂取は控えるべきでしょう。
夜間の低血糖による症状としては、悪夢や、寝汗が特徴的です。高血糖による症状としては、夜間の頻尿などが一つのサインとなります。
入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
寝る直前の入浴は、睡眠の質を高めるうえでは好ましくありません。そのため、就寝時間の約90~120分前に入浴することを意識しましょう。
入浴時間は25~30分程度、お湯の温度は38℃程度のぬるめが理想的です。そうすることで副交感神経優位の状態になるので、睡眠の質の向上に繋がります。
なお、熱いお風呂に入ると、交感神経が優位になって興奮状態になり眠りにくくなってしまいます。お湯は熱いほうが良い方もいると思いますが、安眠したい場合は控えることが無難です。
スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までにとどめる
一般的に人は、「日光を浴びると覚醒し、夜になると眠くなる」という睡眠リズムを持っています。
これには「メラトニン」と呼ばれるホルモンが関係しており、メラトニンの分泌量が増えると眠くなります。メラトニンは強い光を浴びると分泌量が減り、反対に暗い場所にいると分泌量が増えるようになっているので、夜になると自然と眠気が生じます。
寝る直前にスマホやパソコンの画面を見ていると、その光によって脳が昼間であると錯覚し、メラトニンの分泌量が減り安眠しにくくなります。スマホやパソコンに触るのは、寝る約2時間前までにとどめておくことが理想的です。
まとめ
ヨガにはストレスの緩和や副交感神経を優位にさせる作用などが期待できます。ヨガのポーズにはさまざまな種類があり、それぞれのポーズで効果が異なりますが、安眠におすすめなのは猫のポーズや合蹠(がっせき)のポーズなどです。
ヨガを行う際は、呼吸を意識することや準備体操をきちんと行うこと、動きやすい服装に着替えて無理のない範囲で行うことなどを心がけましょう。
ヨガ以外では、アロマや音楽でリラックスしたり就寝前のアルコールやカフェインを控えたりといったことも、安眠に役立ちます。自分にできる範囲で、習慣付けていくことがおすすめです。