普段眠っている時、「息苦しさを感じて目が覚めてしまう」と悩んでいる方もいるでしょう。このような症状が出ている場合、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性があるので注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠の妨げとなるほか、心身に起こるさまざまな不調の原因になる病気です。この記事では睡眠時無呼吸症候群の概要や対策、治療方法について詳しく解説します。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体が低酸素状態になる病気のことです。
一般的には、寝ている間に呼吸が10秒以上止まり、酸素が3%以上低下した状態が1時間に5回以上あらわれている場合、睡眠時無呼吸症候群だと診断されます。
就寝中に大きないびきをかいたり、息苦しさを感じたりして途中で目が覚めてしまうのが睡眠時無呼吸症候群の主な症状です。また、中途覚醒によって睡眠の質が低下することで、昼間の強い眠気や集中力の低下、体のだるさなど日中の活動にも影響を及ぼします。
睡眠時無呼吸症候群の種類と原因
睡眠時無呼吸症候群には、主に「中枢性睡眠時無呼吸症候群」と「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の2種類があります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、何らかの原因によって体の呼吸中枢が正常に機能せず、眠っている時に呼吸が止まってしまう病気です。呼吸中枢に異常が起きる主な原因としては、心不全や脳卒中が挙げられます。ただし、眠りにつく前後で呼吸が乱れる生理的現象で出現することもあります。
一方、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道である気道が狭くなる、または完全に閉じてしまうことで呼吸が止まる病気です。多くの場合は肥満に原因があり、首の回りについた脂肪が気道を狭めてしまうことで症状が生じます。
無呼吸の症状が生じている方のうち、9割程度は閉塞性睡眠時無呼吸症候群であるといわれています。
また、これらの種類が混じった混合型の睡眠時無呼吸症候群もあります。
睡眠時無呼吸症候群の主な合併症
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、合併症にも注意してください。無呼吸の症状が原因となり、下記のような合併症を引き起こす可能性があります。
心筋梗塞
- 高血圧
- 認知症
- 脳卒中
- 糖尿病
- 精神疾患など
合併症のリスクを下げるためには、睡眠時無呼吸症候群の治療に専念することが大切です。少しでも症状に覚えがある方は、早めに医療機関に相談しましょう。
睡眠時無呼吸症候群の対策方法
睡眠時無呼吸症候群は、普段の生活習慣に気をつけることで対策できます。なかでも実践しやすい対策方法としては下記の6つが挙げられます。
- 口呼吸ではなく鼻呼吸をする
- 寝姿勢を横向きにする
- ダイエットをする
- 飲酒や喫煙を控える
- 睡眠薬の服用を控える
- 塩分の過剰摂取に気をつける
各対策方法を順番に説明します。
口呼吸ではなく鼻呼吸をする
睡眠時無呼吸症候群の症状が発生しないか心配な方は、口ではなく鼻で呼吸をするように意識しましょう。口呼吸は鼻呼吸に比べると、喉の部分が塞がりやすいです。また、就寝時に口が開いていると喉の奥に舌が落ち、睡眠時無呼吸症候群の症状に繋がってしまいます。
寝ている間の呼吸を自分の意思でコントロールするのは難しいですが、就寝時に鼻呼吸を促してくれるテープ式の製品を活用すれば口呼吸を防止しやすくなります。口呼吸を防止する製品はドラッグストアやオンラインショップなどで購入できるので、探してみると良いでしょう。
ただし、いびきをかくことは病気が隠れている可能性があるため、これらのグッズで効果がない時には医療機関に相談するようにしましょう。
寝姿勢を横向きにする
普段仰向けで眠っている方は、この機会に寝姿勢を横向きに変えてみましょう。仰向けの姿勢だと重力によって舌が下側のほうに下がるため、気道が狭くなってしまいます。
一方、横向きの姿勢は気道を確保しやすく、無呼吸の症状を抑えやすいです。軽度の睡眠時無呼吸症候群であれば、横向きの姿勢で眠るだけで症状が改善する場合もあるといわれています。
ダイエットをする
先述したように、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因の一つが肥満です。首周りの脂肪が増えることで気道が狭くなり、寝ている間のいびきや息苦しさに繋がってしまいます。
そのため、現在肥満気味の方はダイエットをして対策しましょう。減量すれば喉周りの脂肪が落ちて気道が広がり、症状の改善や予防に期待できます。
また、減量後は適切な体重をキープする努力を忘れないようにしてください。減量に成功したからといって食事の量を急に増やしたり、運動を怠ったりすると、すぐにリバウンドしてしまう可能性があります。
飲酒や喫煙を控える
寝つきの悪さに悩んでいる方のなかには、スムーズに入眠するために寝酒をしている方もいるでしょう。しかし、お酒を飲んでから眠ると就寝中に気道の筋肉の緊張が緩むことで、気道が狭くなってしまうので注意してください。
また、喫煙者は非喫煙者に比べると、睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高いといわれています。普段の健康のためにも、タバコはやめることをおすすめします。
睡眠薬の服用を控える
習慣的に睡眠薬を服用している方は、この機会に服用する頻度を減らせないか検討してみてください。睡眠薬を飲んで眠ると気道の筋力が緩み、気道が狭くなる可能性があります。
ただし、医師からの指示を受けて睡眠薬を飲んでいる場合は、疾患の悪化に繋がる可能性もあるので、独断で服用を中止するのは避けましょう。自分で服用量を調整せずに、まずは処方先の病院に相談してください。
塩分の過剰摂取に気をつける
睡眠時無呼吸症候群を対策するには、摂取する塩分量に気を配ることも大切です。塩分を過剰摂取すると高血圧に繋がり、高血圧は睡眠時無呼吸症候群の症状の悪化に繋がります。
特に気軽に食べられるカップラーメンやファーストフードには、多くの塩分が含まれているので注意が必要です。塩分は適量に留め、摂取しすぎないように意識しましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
睡眠時無呼吸症候群は、症状の重症度によって治療法が変わってくるのが特徴です。ここからは重症度に応じた主な治療法を紹介します。
軽度〜中等度の場合
症状が軽度〜中等度の睡眠時無呼吸症候群には、下記の方法を用いて治療が行われるケースが多いです。
- 口腔内装置治療(マウスピース)
治療内容を以下で解説します。
口腔内装置治療(マウスピース)
口腔内装置治療とは、マウスピースを使った治療法のことです。就寝中にマウスピースを装着することで下あごを固定し、寝ている間に気道が塞がるのを防ぎます。これによって、無呼吸やいびきの予防に期待ができます。
ほかの治療法に比べると装着時のストレスが少なく、どこにでも簡単に持ち運べる気軽さがメリットです。一般的には症状が軽度〜中等度の場合に用いられます。
中等度〜重症の場合
続いて、症状が中等度〜重症の場合に用いられやすい下記の治療法を紹介します。
- CPAP療法
- 外科手術
CPAP療法
CPAP療法とは、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込むことで気道を広げ、睡眠中の無呼吸を防止する治療法のことです。1980年代から用いられている治療法で、中等度〜重度の睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法として広く知られています。
治療に使う装置はCPAPの機器本体と空気を送るためのチューブ、鼻に当てるマスクで構成されており、自宅で眠る時に使います。装置は購入することも可能ですが、レンタルして使うのが一般的です。
外科手術
アデノイドや扁桃の肥大、咽頭腔の狭窄などが原因で気道が塞がっている場合、手術による治療を行うケースもあります。
手術として一般的なのは、「口蓋垂軟口蓋咽頭形成」と呼ばれる手術です。口蓋垂や口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除して気道を広げます。入院をしたうえで、全身麻酔をして行うのが一般的です。近年の新しい治療としてペースメーカーのような器具を体内に埋め込む「舌下神経電気刺激療法」も開発され、専門の耳鼻咽喉科医師が行っています。
また、病院によってはレーザーを使った手術を行うケースもあります。ただし、人によっては術後の痛みが強い、術中術後の合併症が多いなどのデメリットが生じる場合があるので注意が必要です。
いずれにしても、レーザーを含めたすべての手術は、睡眠医療に精通した専門医に相談し、十分に説明を聞いて納得したうえで受けましょう。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療
中枢性睡眠時無呼吸症候群に対しては、原因である疾患に合わせた治療を行うのが一般的です。例えば、心不全に原因がある場合は薬物治療や運動療法、脳卒中や腎不全に原因がある場合は疾患の治療や生活改善などを行います。
また、基本的にはそれぞれの疾患を治療することです。症状が改善しない場合は、先述したCPAPや人工呼吸装置「ASV」を用いた治療が行われるケースもあります。
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は医療機関に相談しよう
睡眠時無呼吸症候群は、昼夜問わず日常生活に大きな影響を及ぼす可能性がある厄介な病気です。放置すると合併症を引き起こす場合もあるので、不安な点がある方はできるだけ早めに医療機関に相談しましょう。
医療機関には多くの診療科がありますが、睡眠時無呼吸症候群は内科や呼吸器内科、循環器科、耳鼻科で診察をしているケースが多いです。また、医療機関によっては睡眠時無呼吸症候群の専門外来を設けている場合もあります。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、呼吸の方法や寝姿勢など普段の習慣に気をつけることで対策ができます。特に睡眠時無呼吸症候群の代表的な原因である肥満に対しては、積極的に対策したいところです。肥満気味の方は減量に集中し、適切な体重維持に努めましょう。
また、すでに睡眠時無呼吸症候群の症状があらわれている場合は、一度医療機関を受診することを強くおすすめします。