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2024.01.22 更新

【医師監修】アルコールのせいで睡眠中に覚醒?寝付きが良いと感じても寝る前の飲酒は控えるべき理由を解説

【医師監修】アルコールのせいで睡眠中に覚醒?寝付きが良いと感じても寝る前の飲酒は控えるべき理由を解説

お酒を楽しく飲んだ次の日、「疲れが取れていない」「寝付きにくかった」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。過度なアルコール摂取は睡眠に悪影響を与えるため、飲みすぎには注意しなくてはなりません。

アルコールと正しく付き合うためにも、アルコールが睡眠に及ぼす影響やアルコールの適正量を知っておきましょう。

この記事では、アルコールと睡眠の関係性や飲酒によるデメリットをわかりやすく解説します。無理なくアルコールを楽しみたい方は、ぜひご一読ください。

  1. アルコールと睡眠には深い関係性がある
  2. アルコールが睡眠に与える4つのデメリット
  3. 睡眠の質が低下する
  4. 利尿作用でトイレに起きる
  5. いびきをかく
  6. アルコールに依存する可能性がある
  7. アルコールと上手に付き合うための適正量
  8. 眠れない時はアルコールに頼らず医療機関を受診する
  9. まとめ

アルコールと睡眠には深い関係性がある

アルコールを摂取すると、はじめは眠気が促されるため「寝つきが良くなった」と感じることがあります。しかし、眠気が生じるのは最初だけであり、酔いが醒めると脳が覚醒するため、夜中に目が覚める原因となってしまいます。

また、アルコールを摂取してすぐに寝られたとしても、寝起きがすっきりしないといった弊害も考えられるでしょう。アルコールを就寝前に摂取すると、睡眠の導入から翌朝の目覚めまで悪影響を与えてしまう可能性があります。

人は睡眠時、浅い睡眠(レム睡眠)から深い睡眠(ノンレム睡眠)に移行します。アセトアルデヒドの影響で浅い睡眠が抑えられ最初よく眠れますが、その反動で睡眠の後半に浅い睡眠が増えてしまい中途覚醒を招いてしまいます。

加賀康宏

加賀康宏

霞ヶ関診療所院長

人は睡眠時、浅い睡眠(レム睡眠)から深い睡眠(ノンレム睡眠)に移行します。アセトアルデヒドの影響で浅い睡眠が抑えられ最初よく眠れますが、その反動で睡眠の後半に浅い睡眠が増えてしまい中途覚醒を招いてしまいます。

アルコールが睡眠に与える4つのデメリット

アルコールを摂取すると、さまざまな形で睡眠に悪影響を及ぼします。主に考えられるのは、以下のとおりです。

  • 睡眠の質が低下する
  • 利尿作用でトイレに起きる
  • いびきをかく
  • アルコールに依存する可能性がある

それぞれのデメリットを詳しく解説します。

睡眠の質が低下する

前述のとおり、アルコールを飲むと就寝中に目が覚めやすくなり、睡眠の質が低下します。睡眠の途中で目覚めてなかなか寝付けなくなると、溜まった疲れも取れづらくなるでしょう。

また、夜中に目覚めて睡眠不足になると、翌日の日中に長い昼寝をしてしまい夜にまた眠れなくなる、という悪循環に落ちる可能性もあります。

利尿作用でトイレに起きる

アルコールには利尿作用があるため、せっかく眠りについても尿意によって夜中に目覚めやすくなります。アルコール摂取による睡眠の質の低下も相まって、夜中トイレに起きてからなかなか眠れなくなるケースもあるでしょう。

また、夜中トイレに起きると、物音や照明の明るさで周囲の方を起こす可能性があり、迷惑をかけてしまうかもしれません。

尿意だけでなく寝汗も増えやすくなるため、脱水症状を招くリスクも考えられます。もちろん、脱水を防ぐために就寝前の水分補給は大切ですが、アルコールは水分補給に適切ではないと理解しましょう。

いびきをかく

就寝前にアルコールを摂取すると、普段からいびきをかく方だけでなく、普段は全くいびきをかかない方でもいびきをかきやすくなります。

そもそもいびきとは、狭まった気道を空気が通る際に生じる音です。アルコールを摂取するとのどの筋肉が緩んで気道が狭まりやすくなるため、いびきをかきやすくなると考えられます。

そのほか、アルコールを飲むと鼻が詰まって口呼吸になりやすくなることも、いびきをかく原因となり得るでしょう。

また、アルコールを飲むと、血液中の酸素濃度が低下しても覚醒しづらくなって無呼吸状態が助長されるため、睡眠時無呼吸症候群の方は特に気を付けなくてはなりません。

アルコールに依存する可能性がある

アルコールを飲んで寝ることが習慣化すると、徐々に慣れが生じていきます。すると、最初のうちに感じていた寝つきやすさも感じなくなり、どんどん飲酒量が増えてアルコール依存に陥る可能性があるため注意が必要です。

長期間かつ多量にアルコールを摂取すれば、年齢や性別を問わずアルコール依存に陥ることがあります。寝酒を続けていると、お酒を飲まないとなかなか寝つけなくなってしまい、毎晩お酒を飲むことが当たり前になってしまうでしょう。

なお、多量飲酒に該当するのは「6ドリンク以上(純アルコール60g以上)」の飲酒です。これは、ビール中ビン3本、グラスワイン6杯、日本酒3合を超える量にあたります。

この量の飲酒を続ければ体調に悪影響を与えることとなり、肝硬変や糖尿病をはじめとする病気に繋がる可能性もあります。

アルコール依存の方は、飲酒をやめて数時間すると手の震えや発汗、イライラ感、幻覚・幻聴などがあらわれます。お酒を飲むと症状が落ち着くためさらにお酒を飲み続けてしまうリスクがあり、アルコール性肝硬変による胃食道静脈瘤破裂、肝臓がん、腹水貯留など合併症のリスクも高まります。

加賀康宏

加賀康宏

霞ヶ関診療所院長

アルコール依存の方は、飲酒をやめて数時間すると手の震えや発汗、イライラ感、幻覚・幻聴などがあらわれます。お酒を飲むと症状が落ち着くためさらにお酒を飲み続けてしまうリスクがあり、アルコール性肝硬変による胃食道静脈瘤破裂、肝臓がん、腹水貯留など合併症のリスクも高まります。

アルコールと上手に付き合うための適正量

アルコールと上手に付き合うための適正量

アルコールによる睡眠への悪影響を防ぐためには、アルコールの適正量と飲むタイミングを把握する必要があります。適正量を把握し、その量を超えないようにお酒を楽しみましょう。

厚生労働省によると、お酒の適量は「純アルコール量にして20g程度」とされていていますが、酒の種類ごとにアルコール度数は異なるため、許容量も異なります。

主な酒類の換算の目安は、以下のとおりです。

お酒の種類アルコール度数純アルコール量
ビール500ml5%20g
清酒180ml15%22g
ウイスキー・ブランデー60ml43%20g
焼酎(35度)180ml35%50g
ワイン120ml12%12g

(※)出典:厚生労働省ホームページ 「アルコール」

なお、純アルコール量は、「酒の量(ml)×度数または%/100×比重」で計算できます。より正確な数値を知りたい方は、ご自分で計算してみると良いでしょう。

また、アルコールの分解には数時間ほどかかるとされていますが、人によって必要な時間は異なります。「就寝の何時間前までなら飲んで良い」とは一概にいえませんが、適正量を知って飲みすぎない意識が大切です。

眠れない時はアルコールに頼らず医療機関を受診する

眠れないことが理由で寝酒をしているなら、寝酒はやめて睡眠に関する検査・治療を行っている医療機関を受診することを推奨します。

不眠に悩んでいる場合は、主に心療内科、精神科、内科の受診となります。アルコール依存が疑われるなら、アルコール専門外来や心療内科、精神科に相談しましょう。

ただし、睡眠時無呼吸症候群を疑うなら耳鼻咽喉科も候補になるなど、それぞれの症状に応じて受診する科は異なるため、どの科を受診するか悩む場合は、かかりつけ医に相談するのも一つの手です。

医療機関では就寝前の行動に関する問診や、不眠に関連する病気の検査を行った後、治療が行われます。内服薬や漢方薬の処方のほか、注射を行うケースもあり、病院によって方針は異なるため、事前に医療機関のホームページを確認すると良いでしょう。

眠れなくて悩んでいる方は「眠れないだけで病院に行くなんて大袈裟」と思わず、医師に相談してください。

加賀康宏

加賀康宏

霞ヶ関診療所院長

心療内科では問診による医師の診断後、集団精神療法や認知行動療法などのリハビリテーション治療が行われます。内科では、血液検査や腹部超音波等画像検査による身体評価を行い、必要な薬物治療を行います。

まとめ

アルコールを飲むと眠くなると感じたことがあるかもしれませんが、酔いが醒めるとかえって覚醒する上に、アルコールによる利尿作用で夜中に目が覚め、睡眠の質の低下に繋がります。

睡眠に悪影響を与えないためにも、アルコールは適正量を守って楽しむことが大切です。「純アルコール量にして20g程度」を目安にして、日頃から飲みすぎないよう気を付けましょう。

また、寝酒を繰り返すとアルコール依存の可能性が高まります。眠気を促すためにアルコールを摂取しているのであれば、寝酒はやめて速やかに医療機関に相談しましょう。

この記事の監修者
加賀康宏
加賀康宏霞ヶ関診療所院長
霞ヶ関診療所 院長。総合内科専門医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。昭和大学医学部卒業後、大学病院、地域の市中病院の勤務を経て、2017年より霞ヶ関診療所院長に就任。総合診療科として生活習慣病や消化器疾患を中心に内科疾患を診療。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)の医療監修や「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日)等にも出演。
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