日中の疲れ、寝不足など普段の睡眠時間に影響をもたらす要素はさまざまありますが、そのなかの一つが季節によるものです。季節によって睡眠時間は異なり、冬は夏に比べると睡眠が長くなる傾向があるといわれています。
この記事では、冬に睡眠時間が長くなる理由や最適な睡眠時間、睡眠の質を高める方法を解説します。
秋〜冬は睡眠時間が長くなる
毎年、秋〜冬になると「睡眠時間がいつもより長くなった」と感じたことのある方は多くいるでしょう。実際に睡眠時間は季節によって変化しており、秋〜冬は春〜夏に比べると睡眠時間が長くなる傾向があります。
秋〜冬の季節に睡眠時間が長くなる理由は、主に人間に備わっている冬眠本能が働いているためだと考えられています。
冬眠とは、心身のほとんどの活動を停止させた状態で冬の時期を越す現象のことです。冬眠の誘発には気温の低下と日照時間の長さが影響していると考えられており、一部の動物たちは気温が低く日照時間の短い秋〜冬頃に冬眠を始め、春頃に目覚めます。
人間は冬眠を必要としない生き物ですが、冬眠をする一般的な哺乳類と同じ身体機能が備わっています。そのため、秋〜冬の季節が訪れると体に備わった冬眠本能が働き、睡眠時間がいつもより長くなります。
秋〜冬は睡眠の質が低下しやすい
秋〜冬の季節は、睡眠時間が長くなるだけでなく睡眠の質も低下しやすい時期です。日照時間が短い秋〜冬はセロトニンの分泌量が減るため、ほかの季節に比べると深い眠りを得にくくなります。
セロトニンとは、精神を安定させる作用がある脳内の神経伝達物質のことです。分泌は朝から始まり、夜になるとセロトニンを材料にして生成されたメラトニンが分泌されます。
夜に分泌されるメラトニンは入眠を促す作用があるホルモンで、質の高い睡眠をとるためには欠かせない存在です。つまり、より深く眠るにはメラトニンの材料であるセロトニンの分泌が必須となります。
セロトニンは日中に太陽の光を浴びることで分泌されますが、秋〜冬の季節は日照時間が短くなるため、セロトニンが不足しやすいです。セロトニンが不足するとメラトニンの分泌量も減り、睡眠の質の低下に繋がります。
中山明峰
めいほう睡眠めまいクリニック 院長
セロトニンは脳が思考するために重要なホルモンです。低下すると人は考える能力が低下し、食欲をなくして不安やうつ状態になり、さらに悪化するとうつ病になると考えられています。
冬でも快適な睡眠時間を過ごす方法
睡眠の質が低下しやすい冬の季節でも快適な睡眠時間を過ごすには、より眠りやすいと思える就寝環境を整えることが大切です。
冬の時期の就寝環境は、下記の4つを意識することで整えやすくなります。
- 眠りやすい湿度と温度を保つ
- 冬に適した暖かい寝具を使う
- 乾燥対策を行う
- 日中に太陽の光を浴びる
各項目の内容を以下で順番に見ていきましょう。
眠りやすい温度と湿度を保つ
冬は温度が低いうえに空気が乾燥しやすく、寒さや不快感から眠れなくなることもあります。寒さや乾燥対策をするためにも、冬はいつも以上に寝室の温度と湿度に気を配りましょう。
冬の寝室の温度は22℃〜23℃、湿度は50%〜60%が理想的だといわれています。就寝前は温度計や湿度計を確認し、必要に応じて暖房や加湿器を使って理想的な数値になるよう調整しましょう。
冬に適した暖かい寝具を使う
冬の寒さが苦手な方は、寝具を冬用の暖かい製品に変えてみると良いでしょう。例えば、羽毛布団やボア生地の寝具など、保温性の高い冬用の寝具なら気温が低い日でも快適に眠れます。
特に羽毛や綿を素材にした寝具は保温性が高い製品が多いです。また、厚みがある製品も保温性が高い傾向があります。
乾燥対策を行う
冬は空気が乾燥しやすい時期です。部屋の乾燥が気になる方は、下記の方法で乾燥対策を行いましょう。
- 暖房の使用を控え、電気毛布などで暖をとる
- 加湿器を設置する
- 濡れたタオルを部屋に吊るす
特に気をつけたいのが暖房の活用です。冬は暖房を使う機会が増えますが、使いすぎると空気の乾燥を加速させる原因になってしまいます。心配な場合は電気毛布や湯たんぽなどを活用し、暖房を頼りすぎないように心がけてくてださい。
日中に太陽の光を浴びる
先述したように、日照時間が短い冬の季節はセロトニンが不足しやすいです。
セロトニン不足を防ぐためにも、日中はできるだけ太陽の光を浴びて分泌を促しましょう。セロトニンが十分に分泌されるとメラトニンも増え、快適に眠りやすくなります。
中山明峰
めいほう睡眠めまいクリニック 院長
寒い冬場に日光を浴びるために外に出る必要はありません。窓から差し込む光を浴びるだけでもセロトニンは分泌されます。さらにバランスの良い食事をとることも、セロトニンの分泌に重要です。
季節を問わない最適な睡眠時間とは?
睡眠でしっかりと疲れを癒すためには、季節を問わず自分に適した睡眠時間を確保することが重要です。理想の睡眠時間は人によって異なりますが、一般的には6時間〜8時間の睡眠をとるのが良いとされています。
しかし、必要な睡眠時間は人それぞれ違うため、「これだけ寝ていれば十分」という基準は一概にいえません。日中の眠気に困っていなければ、十分な睡眠時間を確保できていると考えて良いでしょう。
また、必要な睡眠時間は、歳を重ねると短くなっていきます。これは加齢に伴い基礎代謝が低下することで、睡眠で補うべきエネルギー量も減っていくためです。
昔に比べて睡眠時間が減ると健康面で不安を感じるかもしれませんが、加齢による睡眠時間の変化は病気ではなく自然な現象なので、日中の活動に支障が出ていない限り心配する必要はありません。
中山明峰
めいほう睡眠めまいクリニック 院長
睡眠不足になると、当日だけでなく翌日にも繰り越されてしまいます。
このことを睡眠負債といい、近年の研究では睡眠負債が積み重なると、脳に障害を起こすと言われています。
睡眠は時間の長さではなく質の高さが重要
上記のように睡眠時間は加齢や季節によって変化するため、十分に睡眠がとれているかどうかを時間の長さで決めることはおすすめしません。より良い睡眠をとれるようになりたい方は、時間の長さではなく質の高さを意識すると良いでしょう。
睡眠において、質の高さはとても重要な要素です。長時間眠っても睡眠の質が低いままでは深く眠ることができず、ぐっすりと眠った感覚を得られません。また、日中の眠気やだるさにも繋がってしまいます。
一方で、睡眠の質が高ければ熟睡しやすくなり、朝に気持ちよく起きらられる可能性が高まります。
睡眠の質を高める方法
睡眠の質は主に下記の方法で高めることができます。
- 就寝前に軽くストレッチをする
- 温かい飲み物を飲んで体温を上昇させる
- 夕食は就寝3時間前までに済ませる
- 就寝前の時間はリラックスして過ごす
- 体に合っている枕やマットレスを使う
どれも実践しやすい方法なので、より深く眠れるようになりたい方はぜひ日常に取り入れてみてください。以下で詳しい方法を紹介します。
就寝前に軽くストレッチをする
睡眠の質を高めたい方は、就寝前のストレッチを習慣にするのがおすすめです。ストレッチをして体の緊張をほぐしてあげることで、寝つきが良くなる効果を得られます。
また、暗い部屋でストレッチを行うと心身がリラックスしやすくなり、より高い安眠効果に期待できます。
温かい飲み物を飲んで体温を上昇させる
人間は体内部の温度「深部体温」が低くなることで心身が休息状態に切り替わり、自然と眠気が訪れる仕組みになっています。深部体温は夜になると下がっていきますが、より効率良く下げるには就寝前に温かい飲み物を飲むのが効果的です。
温かい飲み物を飲むと体温が上昇し、その後体温が下がっていく際に眠気が訪れてくれます。飲み物には数多くの種類がありますが、白湯やホットミルク、ホットココアなど、刺激が少なく飲んでいて気持ちが落ち着く飲み物を選ぶのがおすすめです。
ただし、アルコールやカフェインが含まれている飲み物は睡眠の妨げとなるので、就寝前に飲むのは避けましょう。例としては、お酒全般、コーヒー、エナジードリンク、煎茶などが挙げられます。
夕食は就寝3時間前までに済ませる
就寝直前の時間帯に食事をすると、睡眠中に行われる消化活動によって休息をとっている脳が刺激されてしまうので気をつけてください。睡眠中に脳が刺激されると目が覚めやすくなり、睡眠の質が低下してしまいます。
一般的に、消化活動にかかる時間は2時間〜3時間だといわれています。消化活動に必要な時間を考慮すると、夕食は就寝3時間前までに済ませておくのが理想です。
就寝前の時間はリラックスして過ごす
就寝前に不安やストレスを抱えていると心身が緊張してしまい、寝つきが悪くなる可能性があります。そのため、就寝前の時間はできるだけリラックスして過ごすようにしましょう。
手軽にリラックスするには、「気持ちが落ち着くアロマを焚く」「聴き心地が良い音楽を流す」などの方法がおすすめです。このほか、読書やストレッチにもリラックス効果があります。
体に合っている枕やマットレスを使う
睡眠の質を高めるには、自分の体に合っている寝具を使うことも大切です。
寝具が体に合っていれば良いですが、合っていない場合は寝にくさを感じてしまい、なかなか熟睡することができません。眠る時に違和感を感じる方は、この機会に寝具の買い替えを検討すると良いでしょう。
まとめ
冬は睡眠時間が長くなるほか、睡眠の質が低下しやすい時期でもあります。「しっかり眠っているのに体がだるい」と感じる場合は、この機会に睡眠の質を見直してみると良いでしょう。
また、冬に快適に眠るためには、就寝環境を整えることも重要です。寝室の温度や就寝時に使う寝具に気を配り、より眠りやすいと思える環境を作っていきましょう。