インフルエンザワクチンを接種する際は、体調の良い万全な状態で受けるのが理想的です。しかし、仕事や育児などで十分な睡眠がとれず、睡眠不足の状態で予防接種の当日を迎えるケースもあるのではないでしょうか。
日中、眠い状態でインフルエンザワクチンを接種する場合、「そもそも接種して大丈夫?」と不安になるかもしれません。インフルエンザワクチンを接種するにあたり、睡眠不足をはじめとしたいくつかのポイントに注意する必要があるため、正しい知識を把握しておきましょう。
この記事では、インフルエンザワクチン接種時の注意点や基本情報について解説します。インフルエンザを予防するための心がけも紹介するので、インフルエンザ予防に役立ててください。
インフルエンザワクチンの基本情報
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染し、インフルエンザウイルスが体内で増殖して起こる病気です。日本での流行シーズンは例年12月~3月、潜伏期間は約1〜3日とされています。
インフルエンザは流行がはじまってから感染が拡大するまで、期間が短いところが特徴です。また、発症してすぐに、発熱をはじめとした症状があらわれはじめます。
インフルエンザに感染してあらわれる主な症状は、以下のとおりです。
- 関節痛
- 頭痛
- 筋肉痛
- のどの痛み
- 鼻水
- 咳
そのほか、肺炎、気管支炎、副鼻腔炎、さらに小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発することもあります。
インフルエンザの流行に備えて接種するインフルエンザワクチンには、「発症を予防する」「重症化を予防する」という2つの効果が報告されています。
以下では、厚生労働省の情報を参考に、さらに詳しい内容を解説します。
(※)出典:厚生労働省 インフルエンザQ&A
接種する回数
推奨されるインフルエンザワクチンの接種回数は、年齢によって異なります。
- 13歳以上:1回接種
- 13歳未満:2回接種
上記の接種回数が一般的ですが、基礎疾患を持っていて医師が推奨する場合など、13歳以上でも2回接種するケースもあります。
また、13歳未満の場合、年齢によって1回あたりの摂取量も異なります。
- 6ヶ月以上3歳未満:0.25ml
- 3歳以上13歳未満:0.5ml
2回接種する場合、ある程度の期間をあけてから接種するのが基本です。13歳未満は約2~4週間、13歳以上は約1~4週間の期間をあけて接種を行います。
接種する時期
日本においてインフルエンザが最も流行する1月末~3月上旬という時期を踏まえて、厚生労働省では12月中旬までにインフルエンザワクチンを接種することが推奨されています。
インフルエンザワクチンの効果は、1回目を接種してから約2週間後からあらわれ、効果は約5ヶ月持続すると考えられています。流行する前に必要な回数を接種し終わるのが理想的なので、流行シーズンから逆算して接種時期を決めましょう。
例えば2回接種が必要な子どもの場合、1回目を10月に受けたら2回目は11月に受けられるため、流行シーズンまでに接種し終えることが可能です。
なお、病院によっては予約が込み合っている可能性もあるので、早めに接種時期を検討することをおすすめします。
接種にかかる費用
インフルエンザワクチンの接種は、健康保険の適用ではありません。保険が適用されない自由診療では、各医療機関が料金を設定するため、必要な費用は医療機関によって異なります。
原則として全額自己負担となりますが、具体的な費用はワクチンの供給状況や住んでいる地域によっても変動するため、お住いの市区町村のホームページなどをご確認ください。
なお、市区町村によっては、主に乳幼児や65歳以上の高齢者の接種費用を一部助成する制度を用意している場合もあります。
森川髙司
森川内科クリニック 理事長
大人は1回の接種で済みますが、小さいお子さん〜13歳未満の方が2回接種する場合、その都度、医師の技術料や拘束時間が発生するため、トータルしてみると大人より料金がかさむ場合が多いです。
インフルエンザワクチンを接種する時の注意点
続いて、インフルエンザワクチンを接種する際に注意すべき点を解説します。体調を整えて、ワクチン接種を受けられるよう努めましょう。
- 過度に眠いと感じる時や発熱時は避ける
- ワクチン接種後に副反応が起こる可能性がある
それぞれの対策について、詳しく解説します。
過度に眠いと感じる時や発熱時は避ける
一般的に、過度な睡眠不足に陥った状態でインフルエンザワクチンを接種するのは避けたほうが良いとされています。
睡眠不足だけでなく、ほかにも以下の症状がある場合は、接種を避けるのが望ましいです。
- 発熱している方(体温が37.5℃以上)
- アナフィラキシーショックを起こしたことがある方
- 重篤な急性疾患に罹患している方
- ワクチン接種後2日以内に発熱、もしくはアレルギー症状がみられた方
上記だけでなく、医師が適当でないと判断した場合には接種できません。当日は二日酔いや睡眠不足に気を付け、頭痛や腹痛といった体調不良がある場合は医師に接種可能か相談しましょう。
ワクチン接種後に副反応が起こる可能性がある
インフルエンザワクチン接種後には、副反応が起こる可能性があるため注意しましょう。副作用はインフルエンザワクチンを接種した方の10~20%に起こるとされています。
副反応としてあらわれる主な症状は、注射した部位が赤くなる、腫れる、痛む、熱くなるといったことです。そのほかにも、以下のような症状があらわれる場合もあります。
- 発熱
- 寒気
- 倦怠感
- めまい
- 関節痛
- 咳
可能であれば、接種後30分間は接種した場所に留まり、経過を観察しましょう。
なお、インフルエンザワクチンによる副作用は、一般的には2~3日ほどで治まることが多いです。もし症状が長引く場合やつらい場合は、無理せず速やかに医師に相談してください。
森川髙司
森川内科クリニック 理事長
重篤な副反応として、アナフィラキシーショック、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、肝機能障害・黄疸があります。
インフルエンザを予防するための4つの心がけ
インフルエンザを予防するには、インフルエンザワクチンを接種するだけでなく、日頃の心がけも大切です。
ここからは、インフルエンザを予防するために心がけたい4つのポイントを解説します。
- こまめな手洗いを徹底する
- マスクを着用する
- 規則正しく過ごし栄養のある食事を食べる
- 質の高い睡眠をとる
ぜひ日頃の生活に取り入れてみてください。
こまめな手洗いを徹底する
インフルエンザをはじめとしたあらゆる感染症を予防するためにも、こまめに手洗いを行いましょう。
特に、多くの人が触れるドアノブや手すりなどにはウイルスが付着している可能性があります。手に付着したウイルスを持ち帰ることになるので、帰宅時や食事前など、定期的なタイミングでの手洗いを徹底しましょう。
手洗い時には手のひらや手の甲だけでなく、指先・爪の間・指の間・手首まで、石鹸を使って念入りに洗ってください。
マスクを着用する
インフルエンザは、手についたウイルスが目や鼻などの粘膜から侵入する「接触感染」のほか、咳やくしゃみによる「飛沫感染」でも感染するため、両方の対策が重要です。
飛沫感染とは、くしゃみや咳をした時に飛び散る飛沫にウイルスが含まれており、そのウイルスを体内に取り込むことで感染する経路のことです。飛沫感染を防ぐには、マスクの着用が有効的だとされています。
基本的なインフルエンザ予防として、流行時期には人混みを避けることが望ましいですが、やむを得ず人混みへと出かける場合はマスクを着用しましょう。
また、咳やくしゃみが出る時は、咳エチケットも忘れずに行ってください。ティッシュやハンカチで口と鼻を覆い、周囲の人に飛沫を飛ばさないことが、インフルエンザの流行を広げないことに繋がります。
規則正しく過ごし栄養のある食事を食べる
免疫力を高めるために、日頃から規則正しい生活を送り栄養のある食事を食べましょう。免疫力が低下していると、インフルエンザに感染しやすくなります。
まず、しっかりと意識したいのが、朝食を抜かずに1日3食しっかり食べることです。忙しいと朝ご飯を抜いてしまう方がいるかもしれませんが、何かしら食べるようにしましょう。
また、免疫力を高められる食材を取り入れるのもおすすめです。免疫力を高められる食材には、発酵食品や果物、体を温める効果があるネギ、ニンニク、ニラなどが該当します。
さらに、日中に適度な運動を取り入れ、体力をつけることも大切です。運動習慣があまりない方は、軽いウォーキングや有酸素運動から始めると良いでしょう。夜には、ゆっくり入浴したり音楽を聴いたりして、ストレスを解消させる過ごし方を心がけましょう。
質の高い睡眠をとる
免疫力を高める重要性は前述のとおりですが、そのためには正しい睡眠をとることも重要です。
睡眠不足になると免疫力が低下し、インフルエンザや風邪にかかりやすくなります。睡眠時間を削って無理に活動するのではなく、十分な休養を取るようにしましょう。
睡眠は、自分にとって必要な「時間」を確保したうえで、「質」も高めるよう心がけてください。睡眠の質を高める方法には、以下のような行動があります。
- 寝る前にストレッチなど軽く体を動かす
- 寝る前にストレッチなど軽く体を動かす
- 温かい飲みもので体温を上昇させる
- 就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
- アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
- 体に合う寝具(マットレスや枕など)を使う
どれも簡単に取り入れられる方法なので、ぜひ参考にして睡眠の質を高める行動を実践してみましょう。
まとめ
インフルエンザとは、接触や飛沫によってインフルエンザウイルスに感染することで起こる病気です。高熱や頭痛、関節痛といったさまざまな症状があらわれる特徴があります。
インフルエンザワクチンを接種すると、発症の予防や重症化の予防といった効果が得られます。流行が始まる12月中旬までの接種完了が推奨されており、接種回数は年齢によって異なるため、自分の該当回数を確認しておきましょう。
インフルエンザを予防するためには、インフルエンザワクチンを打って終わりではなく、日頃から免疫力を高めたりマスクを着用したりする心がけが大切です。この記事を参考にインフルエンザを予防し、健康的な生活を目指しましょう。