最近眠気を感じることが多い方の中には、「眠気の原因が低血圧のせいなのではないか」と感じている方もいるでしょう。
低血圧が原因で眠気を招いている場合、種類にもよりますが対処法や予防法を行うことで眠気が解消される可能性はあります。一方で、低血圧の種類によっては医療機関への受診が必要のため、種類ごとの違いを知っておくことも重要です。
この記事では、眠気の原因が低血圧なのか、低血圧で眠気が起こる理由、低血圧の種類、低血圧によって起こる眠気への対処法や予防法を解説します。
眠気の原因は低血圧かも?
午前中はなかなか仕事のエンジンがかからなかったり、眠気が強く集中できない方もいるでしょう。一般的に眠気が起きている場合、睡眠不足やストレス、生活リズムの乱れなどが主な原因として考えられます。
睡眠は十分にとれており、規則正しくストレスのない生活を送れているにも関わらず、眠気を感じる場合は、低気圧が原因かもしれません。
低血圧にも種類がある
低血圧は、主に以下の4つのタイプに分類されます。
- 本態性低血圧(一次性低血圧)
- 症候性低血圧(二次性低血圧)
- 起立性低血圧
- 食事性低血圧(食後性低血圧)
本態性低血圧(一次性低血圧)は、特別な病気がないにもかかわらず慢性的に血圧が低い状態のことを指します。遺伝の影響が大きく、全身の倦怠感や冷え性のような症状が主に見られます。
症候性低血圧(二次性低血圧)は、ケガによる出血や胃腸の疾患による栄養不良など、原因となる病気がわかっているものを指します。
起立性低血圧は、急に立ち上がった時や体を起こした時などに急激に血圧が下がる状態のことを指し、いわゆる「立ちくらみ」も含まれます。特別な病気がないものの神経系の障害により起こる「特発性起立性低血圧症(とっぱつせいきりつせいていけつあつしょう)」と、糖尿病や心筋症など病気が特定できる「二次性起立性低血圧症」に分類されます。
食事性低血圧(食後性低血圧)は、食後に血圧が過度に下がり、倦怠感が生じたり、眠気が起こったりする状態のことを指します。食べたものを消化するために胃に血液が溜まり、心臓に戻りにくくなることで発生します。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
症候性低血圧は、原因となる疾患が潜んでいる場合もあるため注意が必要です。また、特発性もしくは二次性起立性低血圧も、転倒のリスクがあるため注意が必要です。
低血圧で眠気が起こる理由
眠気の原因として低血圧が考えられることはわかりましたが、低血圧で眠気が起こるメカニズムはどうなっているのでしょうか。
低血圧で眠気が起こる理由を、以下で説明します。
体に血が巡りにくくなる
低血圧は、心臓から押し出された血液が血管の壁を内側から押すポンプ作用が弱くなっていることが原因で生じる症状です。
起立性低血圧や食事性低血圧(食後性低血圧)の場合は、下半身や胃などに血液がたまり、心臓へ戻りにくくなることから起こります。
血液循環が滞ると全身に十分な血液が供給されなくなり、手や足などの末端や脳への血液の流れも滞ります。血液は酸素とともに運ばれるため、脳に血液が不足していると十分な酸素が行き渡らなくなり、疲れやすさや眠気に繋がる場合があります。
自律神経が乱れる
低血圧の中でも、起立性低血圧には自律神経も大きく関わっているといわれています。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、交感神経が優位に働くと、興奮状態になります。一方で、副交感神経が優位になると、体を休ませてリラックスさせる効果があります。
普段は交感神経と副交感神経が適度なバランスを保っているものの、低血圧で自律神経に乱れが生じると、日中に副交感神経が優位になることがあります。
つまり、起立性低血圧の方は、自律神経が乱れて副交感神経が優位になった結果、本来眠くなるべきではないタイミングで眠気を感じることが発生しやすくなっていると覚えておきましょう。
すぐ実践できる!低血圧による眠気への対処法
仕事中など、眠るべきでないタイミングで眠気を感じた場合、何とかして眠気を覚まさなければなりません。低血圧による眠気に対処するために、すぐ実践できる方法として以下のものが挙げられます。
- ストレッチなどの軽い運動をする
- 深呼吸をする
- 仮眠をとる
以下でそれぞれ詳しく解説します。
ストレッチなどの軽い運動をする
ストレッチやウォーキングなどの軽い運動は体内の血流を促すため、眠気対策に効果的です。血の巡りを良くして血圧を上昇させるため、低血圧の方に特におすすめの対処法です。
軽い運動であれば種類を問わず眠気対策に役立ちますが、特にふくらはぎに効く運動が効果的です。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、血の巡りに重要な役割を果たしています。
階段昇降や軽いウォーキングなどを行うことが理想的でしょう。
深呼吸をする
大きく深呼吸をして体に酸素を取り入れると、眠気が覚めることもあります。また、深呼吸にはリラックス効果もあるので、眠気を覚ますだけでなく集中力を取り戻すための効果も期待できます。
ただし、深呼吸をしすぎると具合が悪くなる方は、すぐに深呼吸をやめるようにしましょう。
仮眠をとる
眠気がどうしても覚めないのであれば、潔く仮眠をとるのも一つの方法です。理想的な仮眠の時間は15~30分程度なので、アラームをセットするなどして短時間の仮眠をとりましょう。
イヤホンやアイマスクなどを使用して、周囲の音や光をシャットアウトした環境で寝ることで、質の良い睡眠をとりやすくなります。
なお、以下の記事では、眠っても眠気がとれない原因と対処法を解説しています。眠っても眠気がとれないことでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
低血圧による眠気予防のためにすべきこと
眠気を感じた時、必ずしもストレッチをしたり、仮眠をとったりできる環境であるとは限りません。そのため、眠気を予防する方法も知っておくことが望ましいでしょう。
低血圧による眠気の予防方法としては、主に以下が挙げられます。
- 早寝早起きの習慣を身に付ける
- 食生活を改善する
- 水分をしっかりとる
- 運動を習慣化する
- カフェインを摂取する
- 人混みなどのストレスを避ける
なお、症候性低血圧(二次性低血圧)や二次性起立性低血圧症など、病気などが原因の低血圧の場合は、まず医療機関への受診が大切です。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
低血圧の疑いで診察を受ける際は、まずは循環器内科を受診してください。そのうえで、さらに糖尿病などの疾患が疑われる場合は、代謝内分泌科等の診療科に紹介されることがあります。
早寝早起きの習慣を身に付ける
規則正しい生活を行っていないと自律神経が乱れて日中に眠気を感じるので、決まったリズムでの生活が重要です。早寝早起きの習慣を身に付けると、生活リズムが自然と整います。
起床した際に日光を浴びると体内時計がリセットされるので、朝起きた際にはできるだけ日光を浴びることを心がけましょう。
食生活を改善する
低血圧による眠気予防のために、次のような栄養素をバランス良くとることも重要です。
- 糖質
- たんぱく質
- 脂質
- ビタミン
- ミネラル
特に、筋肉や血液を作るたんぱく質や、血液の流れを助けるビタミンEが含まれている食事をメニューに加えましょう。
例えば、主食に米にすれば炭水化物が、魚や肉、卵、大豆製品などを使えばたんぱく質が、野菜を使ったサラダがあれば不足しやすいビタミンやミネラル、食物繊維などが摂取できます。
米以外にも、パスタを主食にするならサラダを付け加える、うどんやそばなら野菜の天ぷらも食べるなど、バランスの取れたメニューを考えてみましょう。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
炭水化物(パン、ご飯、麺)や、過度な食事は、消化のために消化器系へ血液が移動したり、食後のインスリンの働きにより低血圧が起こる可能性があるため注意が必要です。
水分をしっかりとる
十分な水分の摂取は、血液量を増やして血圧を高めるのに効果的です。水分不足は血液量が減少する原因となるため、できるだけ多くの水分を摂取しましょう。
1日に摂取するべき水分は、1〜2リットルが目安です。ただし、体にむくみが出るようなら、水分の量を減らすことも検討してください。
運動を習慣化する
眠気にすぐ対処する観点でも運動は効果的ですが、日頃から運動を習慣化しておくことももちろん重要です。
前述したように、ふくらはぎに効くウォーキングやジョギングなどを取り入れた運動を習慣的に行うことがおすすめです。適切な運動の負荷は人によって異なるので、いろいろな運動を試して程良い疲労を感じる運動を継続すると良いでしょう。
カフェインを摂取する
カフェインには、交感神経を刺激して血液の循環を良くする働きがあります。食後は血圧が下がりやすいですが、食事と一緒にコーヒーや紅茶などを飲むことで、食後に眠くなるのを防ぎやすくなります。
ただし、夕食時にカフェインを摂取しすぎると夜眠りにくくなる可能性もあるので、量や摂取時間に注意しましょう。
人混みなどのストレスを避ける
低血圧の方は、人混みの中や暑い場所など、ストレスのかかりやすい場所をできるだけ避けて行動しましょう。長時間ストレスの多い場所に留まると血圧が低下し、疲れや頭痛などの症状が悪化する可能性があります。
また、人混みをはじめとした環境的なストレスは、「血管迷走神経反射(けっかんめいそうしんけいはんしゃ)」を引き起こす原因になるともいわれています。血管迷走神経反射とは、ストレスが原因で自律神経のバランスが崩れ、血圧・心拍数が減少して失神する症状です。
低血圧の悪化や血管迷走神経反射を防ぐためには、ストレスを減らす工夫が大切です。人混みや暑い場所は避ける、外出時はこまめに休憩するなどして対策しましょう。
まとめ
低血圧は、血の巡りの悪化や自律神経の乱れなどを起こし、その症状によって眠気に繋がることがあります。そのため、低気圧による眠気を生じた場合は、ストレッチのような軽い運動や深呼吸で血流を促し、自律神経を整えるよう心がけると良いでしょう。短時間の仮眠をとるのも効果的です。
また、普段から眠気を感じにくくするために、早寝早起きを心がけ、食生活の改善や運動を習慣化することもおすすめします。
ただし、病気などが原因で起こる症候性低血圧(二次性低血圧)や二次性起立性低血圧症の場合は、まず医療機関を受診して医師の指示に従いましょう。