「寝つきが悪い」「途中で目が覚める」などで悩んでいる方は、睡眠効率が低く、質の高い睡眠が取れていない可能性があります。
睡眠は、日常生活における心身の疲労回復とともに、長期的に見ると生活習慣病予防にとって重要な役割があるため、睡眠効率が低い方は早めの対処を心がけることが大切です。
この記事では、理想的な睡眠効率と、睡眠効率を上げるために日常的に実践できることを紹介します。
普段睡眠の質が低く、寝起きが悪い方や、日中に活き活きと活動できない方は参考にしてください。
理想的な睡眠効率はどのくらい?
睡眠効率とは、寝床にいた時間に対して実際に眠っていた時間の割合を指し、「実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100」(%)であらわされます。
例えば、睡眠時間が7時間であることに対し、ベッドにいた時間が7時間であれば、睡眠効率は100%ということになります。
また、睡眠時間が7時間であることに対し、ベッドにいた時間が10時間であれば、睡眠効率は70%です。
睡眠効率は、睡眠の質を判定する際の基準として用いられることがあり、数値が高いほど睡眠の質が高いことを表します。
目安として、1週間の平均睡眠効率が85%程度である状態を目指すと良いとされています。
睡眠効率を上げることの心身へのメリット
睡眠効率を上げることは、質の高い睡眠をとることを意味します。
そのため、睡眠効率を上げることは、下記のような心身へのメリットがあるといえます。
- 心身に溜まった疲労を回復する
- ストレスの解消や低減に繋がる
- 記憶力が向上する
- 細菌やウイルスへの免疫力を向上させる
- 生活習慣病を予防する
- 美容や美肌、老化防止に繋がる
それぞれ、以下で詳しく紹介します。
心身に溜まった疲労を回復する
睡眠の代表的な効果は、心身の疲労回復効果です。
睡眠中に分泌される「成長ホルモン」は筋肉、骨、内臓、皮膚などのダメージを修復し、疲労回復する役割があるとされています。
質の高い睡眠が得られると、日中を活動的に過ごせるようになります。
その結果として、生活習慣の一つでもある睡眠のリズムも整うようになり、質の高い睡眠が継続するという好循環に繋がることも期待できるでしょう。
ストレスの解消や低減に繋がる
睡眠は休息というイメージがあるかもしれませんが、寝ている最中にも脳は動き続けています。
寝ている最中、心身の回復効果に加えて、脳の情報整理が行われているとされており、この記憶の整理中に、不要な情報や嫌な情報が取り除かれ、ストレスが低減されるといわれています。
前提として、寝ている間は、体と脳の両方が休息している「ノンレム睡眠」と、体は休息状態でも脳は働いている「レム睡眠」が交互に繰り返されています。
名古屋大学の研究結果によると、「深いノンレム睡眠時に、嫌な記憶が消去される」「レム睡眠時に夢などで体験した恐怖体験などが消去される」などが判明しているとのことです。
また、睡眠不足によって集中力や注意力の欠け、仕事のミスなどでストレスとなる原因が増えるといったケースもあります。
このような効果を踏まえると、質の高い睡眠をとることは、日常のストレスを解消、低減することに繋がるといえます。
記憶力が向上する
睡眠の重要な働きとして、前述の記憶の消去に加えて、記憶の定着効果もあります。
前述したとおり、就寝中の深いノンレム睡眠では、嫌な記憶を消去しているといわれていますが、浅いノンレム睡眠時やレム睡眠時には記憶の整理や定着が行われるといわれています。
短時間睡眠では、浅いノンレム睡眠の時間が減り、昼間に練習した(覚えた)ことが身につきにくく、色々な出来事の関連情報が記憶されないとされています。
また、短時間睡眠では朝方の長いレム睡眠がないので、記憶の定着や記憶の索引付けがされにくくなる可能性もあります。
つまり、質の高い睡眠をとることは、これら記憶の定着効果を高めることに繋がるということです。
細菌やウイルスへの免疫力を向上させる
睡眠中に増える「成長ホルモン」には、傷んだ細胞の修復と疲労を回復する役割があるということを紹介しました。
そして、この効果によって、細菌やウイルスに対する抵抗力、および免疫力も維持・強化されるといわれています。
また、睡眠不足は自律神経の乱れに繋がり、さらに免疫力が落ちて風邪などをひきやすくなると考えられているため、注意が必要です。
睡眠そのものも生活習慣の一つで、神経系や免疫系、内分泌系等の機能に関わり、健康の保持には欠かせないものであることを覚えておきましょう。
生活習慣病を予防する
慢性的な寝不足状態にある人は、生活習慣病にかかりやすいことがわかっています。
生活習慣病にかかる原因は人によって異なりますが、睡眠不足によって体内時計が狂うことが原因の一つとして挙げられます。
具体的に、4時間睡眠などの睡眠不足の状態が2日間続くと、食欲を抑えるホルモンである「レプチン分泌」が減少し、逆に食欲を高めるホルモンである「グレリン分泌」が活発化することで、食欲の増大や食生活が乱れることがわかっています。
また、慢性的な寝不足状態にある人は、糖尿病や心筋梗塞、狭心症などの「冠動脈疾患」という生活習慣病にかかりやすいこともわかっています。
そのため、規則正しく質の高い睡眠をとることは、生活習慣病を予防するにあたって、重要といえるでしょう。
美容や美肌、老化防止に繋がる
睡眠中に分泌される「成長ホルモン」は肌の健康に深く関わっているといわれています。
成長ホルモンは、壊れたり古くなったりした細胞を再生する働きがあるため、老化防止や肌の健康を保つためには欠かせないものです。
一般的に、健康な肌は28日周期で新しい肌に生まれ変わるといわれていますが、睡眠不足になると周期が遅れ、古い角質が残ったままになるため、肌の表面が硬くなりシワやくすみのほか、ニキビや吹出物の原因になると考えられています。
成長ホルモンが特に多く分泌される時間帯は、最も深い眠りにつき始めてから3時間とされています。
そのため、睡眠の質を高めることや、深い眠りにつくことで、美容や老化防止への効果が期待できるでしょう。
日頃からできる睡眠効率を上げる方法
ここまで紹介したとおり、睡眠効率を上げることは、心身のさまざまな健康や生活習慣の予防などの効果があります。
睡眠効率を上げるためには、日頃から質の高い睡眠がとれるように心がけ、規則正しい睡眠リズムを作ることが大切です。
睡眠の質を高める方法としては、以下のようなものがあります。
- 適度なストレッチや運動などで体を動かす
- 規則正しく健康的な食生活を心がける
- 就寝の90〜120分前にぬるめのお湯で入浴する
- 体に合ったマットレスや布団を使い睡眠の質を高める
- 寝る前に温かいものを飲む
- 就寝直前にアルコールやカフェインの摂取を控える
- 自分に合った方法でリラックスしてから睡眠する
- 就寝前のスマホ・パソコン操作を控える
どれもすぐに実践できることなので、日常に取り入れてみてください。それぞれについて、以下で詳しく紹介します。
適度なストレッチや運動などで体を動かす
ストレッチや運動など、体を動かすことは血行を促進し、心身をリラックスさせる効果があります。
人はリラックスすると、就寝中に「副交感神経優位」の状態になるため、自然で快適な入眠と、質の高い睡眠が期待できます。
また運動による肉体的な疲労感によって、自然な入眠と深い眠りに繋がりやすいため、日頃から運動習慣を身につけておくことは、睡眠効率を上げるために効果的です。
さらに、人は体温が上昇して、下がり始めるタイミングで眠気が起こるため、就寝3時間前ほどに散歩やウォーキングなどの軽い有酸素運動をすることもおすすめです。就寝のタイミングで自然な眠気を誘発できる可能性があります。
なお、激しいストレッチや運動は体を興奮させ寝つきを悪くさせるため控えたほうが良いでしょう。
寝る直前は、軽いストレッチや運動をして、質の高い睡眠をとることを心がけましょう。
規則正しく健康的な食生活を心がける
朝、昼、夜の決まった時間に規則正しく食事をとることで、睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつけられます。
例えば、朝食をとることによって日中を活動的に過ごすことは、夜の快適な入眠や深い睡眠に繋がります。
一方で、不規則な食事は体内リズムを崩し、睡眠のリズムを崩す原因になりやすいため注意しましょう。
また、寝る直前に食事をとると、睡眠中に消化活動が行われるため睡眠の質が下がる可能性があります。夕食は就寝の3時間前までに済ませ、消化が悪いものは避けるようにしましょう。
就寝の90〜120分前にぬるめのお湯で入浴する
入浴は、体温の上昇やリラックスの効果が期待できるため、質の高い睡眠をとるための方法としておすすめです。
前述のとおり、人は体温が上昇し、低下し始めるタイミングで眠気があらわれます。よって、就寝前に運動や入浴によって体温を上昇させることは、心地良い入眠に繋がると考えられます。
寝る90~120分前に入浴することで、リラックスするとともに、寝床につくタイミングで自然な眠気が誘発され、心地良く入眠できる可能性が高くなります。
ただし、熱いお湯での入浴は体を興奮させ、寝つきが悪くなる可能性があるため、お湯の温度には注意しましょう。
下記、おすすめの入浴方法になるので、ぜひ実践してみてください。
- 入浴は38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度
- 42℃の熱めのお湯であれば5分程度
- 半身浴なら約40℃のお湯で30分程度
体に合ったマットレスや布団を使い睡眠の質を高める
マットレスや布団などの寝具は、睡眠の質に大きく関係します。
生活習慣に問題がなくても、マットレスなどの寝具が「硬すぎる」「柔らかすぎる」など、体に合っていなければ質の高い睡眠がとれない可能性があります。
さらに、肩こりや腰痛、寝起きのだるさなどの体調不良に繋がる可能性もあるため、注意が必要です。
具体的に、硬すぎるマットレスの場合、腰や肩など、体の一部で体重を支えることになるため、負荷が集中する部分が血行不良を起こしやすくなり、肩こりや腰痛などの症状に繋がることがあります。
一方、柔らかすぎるマットレスの場合、腰のような体の重い部分が沈み込み「くの字」の寝姿勢になりやすいことで、寝返りが打ちづらくなり、長時間同じ姿勢になりやすくなります。
寝返りは、睡眠中に体の同じ場所へ負担が集中することによって起こる血行不良をリセットするために行われる生理現象のようなものです。
よって、寝返りが打ちづらいマットレスでは血行不良による体の不調や、睡眠の質が低下する原因になるため注意しましょう。
マットレスなどの寝具を選ぶ際は、体の一部にかかる負担を均等に分散する「体圧分散性」と、快適な寝返りをサポートする「適度な反発力」の2つを併せ持っているものを選ぶことをおすすめします。
ただし、マットレスの硬さや反発力は、使用する人の体重や体型によって異なるため、自分に合った寝具を探すことを心がけてください。
寝る前に温かいものを飲む
前述のとおり、人は体温が上昇し、低下し始めるタイミングで眠気があらわれますが、温かいものを飲むことも、体温上昇に効果的な方法です。
おすすめの温かい飲み物として、以下のようなものがあります。
- 白湯
- 生姜湯
- ハーブティー
- ホットミルク
後述しますが、カフェインを含むものを寝る前に飲むのはおすすめできません。
上記のようなカフェインレスの温かい飲み物を選ぶようにしましょう。
就寝直前にアルコールやカフェインの摂取を控える
就寝前にカフェインを含む飲み物は覚醒作用によって寝つきを悪くさせるほか、睡眠の質を下げるため、控えましょう。
具体的には、下記のような飲み物が当てはまります。
- コーヒー
- ココア
- 緑茶
- 紅茶
- 栄養ドリンク
- エナジードリンク
また、アルコールはリラックス効果によって入眠しやすくなるため「寝酒」として用いられることもありますが、睡眠の後半に悪影響を与えることがわかっています。
寝起きのだるさのほか、利尿作用によって途中覚醒するなど、睡眠の質を低下させることに繋がるため、睡眠直前のアルコール摂取は控えましょう。
自分に合った方法でリラックスしてから睡眠する
人間の体は、夜に向かって徐々に寝る準備を始めて、リラックスする「副交感神経優位」の状態に変化していきます。
快適に入眠し質の高い睡眠をとるには、上記の状態を妨げないことが大切です。
そのため、寝る前には激しい運動などを避け、自分がリラックスできる方法を取り入れましょう。
リラックスする方法は人それぞれですが、一般的にリラックス効果があるとされているものには以下のようなものがあります。
- 読書
- ヒーリングミュージック
- アロマ・お香
- マッサージ
- ストレッチ
- 入浴
ただし、前述したとおり、カフェインを含む飲み物や食べ物、アルコールの摂取は睡眠の質を低下させることに繋がるため、自分がリラックスできると感じても、避けることをおすすめします。
就寝前のスマホ・パソコン操作を控える
スマホやパソコンなどの電子機器の画面は、人が見ることができる光(可視光線)の中でも強い光である「ブルーライト」を含むものがあります。
ブルーライトを浴びると脳が「昼だ」と錯覚し、その後の寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりする可能性があるため注意しましょう。
人は夜になると「メラトニン」と呼ばれる眠気を促す体内物質の分泌量が多くなりますが、ブルーライトのような強い光を浴びると、メラトニンの分泌が妨げられます。
メラトニンの分泌が妨げられることが、寝つきの悪さや睡眠の質の低下に繋がるといわれています。
そのほか、寝床に入ってからのメールやゲームなどにより夜更かしが増えると、睡眠効率を下げる原因になると考えられるため、スマホやパソコンの操作は、就寝時間の2時間前までに済ませるようにしましょう。
まとめ
睡眠効率は「実際の睡眠時間÷ベッドにいた時間×100」(%)であらわされ、質の高い睡眠がとれているかどうかを判断する際に使われることがあります。
85%程度を目指すと良いとされていますが、早めに寝床に入ったり、睡眠時間を長くとったりすれば良いというわけではありません。
日頃の生活習慣の改善や、寝具を見直すなどで睡眠の質を高めて、睡眠効率を上げられるようにしましょう。
睡眠は、心身の疲労回復効果があるほか、長期的には生活習慣病を予防する効果が期待でき、健康的かつ活発的に毎日を過ごすためには欠かせないものです。
今回紹介した内容を参考にして、睡眠効率を上げることを意識してみてください。