筋トレをしたり美容や健康のために運動をしたりしている方にとって、トレーニングや運動の成果がきちんと形になってあらわれるかどうかは、非常に重要なポイントです。
筋トレや運動によって鍛えられた筋肉がきちんと成長してくれるかどうかには、睡眠の質や量が大きく関わっています。
筋肉にとって最適な睡眠習慣、逆に筋肉にとってNGな睡眠習慣はどのような習慣なのでしょうか。
この記事では、筋肉と睡眠の関係性や筋肉にとって最適な睡眠習慣、筋肉の発達を妨げる睡眠前の習慣などについて、説明します。
筋肉と睡眠の関係性
筋肉は眠っている間に作られますが、筋肉と睡眠の関係性としては以下の点が挙げられます。
- 睡眠が筋肉の成長を促す
- 睡眠をとることで肉体疲労が回復する
- 筋肉の成長と良質な睡眠は美容や健康にも効果的
それぞれ、詳しく説明します。
睡眠が筋肉の成長を促す
筋トレをしたり運動をしたりすることで筋肉は成長しますが、筋肉はトレーニングを行った瞬間に成長するのではありません。トレーニングで破壊・損傷した筋肉は、成長ホルモンの働きによって修復される時に成長します。
睡眠中には成長ホルモンが多く分泌されるので、筋肉の成長を促すためにはしっかりと睡眠をとることが重要です。筋肉を成長(超回復)させるためには、「筋トレ、食事、睡眠」のサイクルを心がけましょう。
睡眠をとることで肉体疲労が回復する
人間の睡眠は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に分けることができます。
このうちレム睡眠は、「脳は活動しているが体の筋肉が弛緩している」状態です。体の睡眠とも呼ばれる睡眠で、肉体の疲労を回復させるために重要な役割を担っています。睡眠をとって肉体の疲労を回復させることが、筋肉の成長にも効果的です。
筋肉の成長と良質な睡眠は美容や健康にも効果的
成長ホルモンは筋肉を成長させるだけでなく、美容や健康にも関わっています。
成長ホルモンには骨や筋肉の成長を促進させる作用がありますが、それ以外に代謝や脂肪分解を促進する作用もあります。トレーニングだけなく美容や健康の観点からも、良質な睡眠を確保して成長ホルモンを分泌させることは非常に重要です。
十分に睡眠がとれない場合、筋肉への影響はある?
トレーニングや運動をしている方の中には、睡眠時間を削ってでもトレーニング等の時間を確保しようとする方もいます。
ただ、十分に睡眠がとれていなければ、以下に挙げるような影響があらわれると考えられるので、睡眠時間を削るのはあまり好ましくありません。
- 成長ホルモンの分泌が不足し筋肉の成長を妨げる
- 筋トレの効率が低下する
- 筋肉痛や疲労が残ることがある
それぞれの影響について、詳しく説明します。
成長ホルモンの分泌が不足し筋肉の成長を妨げる
上述したように、成長ホルモンは寝ている時に多く分泌されます。
そのため睡眠をしっかりとっていなければ成長ホルモンの分泌が不足し、せっかく筋トレや運動を行っていたとしても、その効果が減少してしまいます。
ソシアス美緒
麻酔科標榜医 日本アンチエイジング外科美容再生研究会認定医
その他にも、睡眠不足で成長ホルモンが不足すると、新陳代謝が悪くなって肌荒れの原因になったり、疲れやすくなったり、集中力が低下したりするといった影響があります。
筋トレの効率が低下する
睡眠が不足している状態で筋トレや運動をしたとしても、正しいフォームで行えなかったり適切な負荷がかけられなかったりといった可能性があります。結果として、筋トレや運動の効率が低下してしまうでしょう。
また、睡眠不足の状態だと集中力が欠如しがちで筋トレや運動が思わぬケガに繋がる可能性もあるため、危険です。
筋肉痛や疲労が残ることがある
成長ホルモンは筋肉を成長させるという役割を担うだけではなく、破壊・損傷した筋肉の回復という役割も担っています。ただし、筋トレや運動をした後に十分な睡眠をとることができなければ、成長ホルモンの分泌は不十分です。
そのような状態では筋肉が十分回復しきらないので、筋肉痛や疲労が長く残りやすいでしょう。
また、寝ている間は細胞組織を再生させるために全身が休息モードになりますが、筋肉の弛緩が不十分だと、前日の筋緊張が翌日以降に持ち越されてしまう場合があります。
筋肉にとって最適な睡眠習慣を紹介
ここまで説明してきたように、筋トレや運動の効率を上げるためには睡眠が欠かせません。筋肉にとって最適な睡眠習慣とはどのようなものなのか、以下で詳しく説明します。
自分の睡眠スタイルを把握する
筋肉の成長を促す成長ホルモンが多く分泌されるのは、入眠後から3~4時間後までの間です。そして、成長ホルモンを分泌させるためには、入眠後90分の間に深い睡眠がとれているかが重要となります。
成長ホルモンは、メラトニンという睡眠ホルモンにより分泌が促され、起床後14〜16時間後に分泌が始まり、深夜1〜3時ごろにピークを迎えます。
成長ホルモンが分泌されるタイミングと、メラトニンが作用するタイミングを踏まえて、自分にとって必要な睡眠時間をきちんととることを心がけましょう。
十分な睡眠時間を確保する
あくまでも目安ではありますが、日本人の成人の平均睡眠時間は6〜8時間といわれています。筋トレや運動の効果がしっかり発揮されるように、なるべく6~8時間の睡眠時間を確保することを心がけましょう。
ただし、ただ睡眠時間が長ければ良いというわけではなく、長さと同様に睡眠の深さも大事です。そのため、睡眠環境を整えて睡眠の質を確保することも意識する必要があります。
ソシアス美緒
麻酔科標榜医 日本アンチエイジング外科美容再生研究会認定医
筋肉にとって最適な睡眠習慣を確保するためには「食事」も大切です。適度なトリプトファンの摂取は、睡眠の質を向上させるだけでなく筋肉の成長も助けます。
トリプトファンは必須アミノ酸の1つで、乳製品、レバー、大豆に豊富に含まれます。食べ物から摂取したトリプトファンは、セロトニンを経て睡眠を促すメラトニンに変化します。
筋肉の発達を妨げる睡眠前の習慣
筋肉にとって最適な睡眠習慣がある一方で、以下のような、筋肉にとって好ましくない習慣として考えられるものもあります。
- 就寝直前の運動
- 就寝直前の食事
それぞれ、以下で詳しく説明します。
就寝直前の運動
睡眠の質を高めるためには、体を休ませてリラックスさせる効果のある副交感神経が優位になっていることが重要です。
しかし、就寝直前に激しい運動をしてしまうと交感神経が優位になり、疲れているのに眠くならないという状態に陥ってしまいます。
また、トレーニングや運動をした後にすぐ寝てしまうと、筋肉の疲労が溜まったままで眠りにつくことになります。
その状態だと、筋肉の成長(超回復)が上手く機能せず、ひどい筋肉痛が出やすくなる可能性があります。寝る前に運動をする場合は、軽い運動に留めるようにしましょう。
就寝直前の食事
食事をとることで、体は食べたものを消化するよう働き始めますが、就寝直前に食事をとってしまうと体が消化活動に集中することで、脳や体を休めることに対する優先順位が下がってしまいます。
よって、疲労がしっかりとれなくなるケースに繋がるのです。
そういった状態を避けるためには、就寝の3時間前には食事を済ませることが理想です。それが難しい場合は夕方に軽食を挟むなどして、夕食として食べる量を減らすなどの工夫をしましょう。
ソシアス美緒
麻酔科標榜医 日本アンチエイジング外科美容再生研究会認定医
飲酒や喫煙は、筋肉を分解するコルチゾールの血中濃度を増加させます。また、就寝直前の飲酒は脱水を引き起こしたり、眠りの質を低下させたりするため、控えたほうが良いでしょう。
まとめ
筋肉と睡眠には深い関係があり、質の高い睡眠をとることは筋トレや運動にとって非常に重要です。
十分な睡眠がとれなければ筋トレや運動の効率が低下するだけでなく、翌日以降に筋肉痛や疲労が残ることにも繋がります。
筋肉にとって最適な睡眠習慣を把握して、日頃から実践することを心がけましょう。