平日が忙しい人のなかには休日に「寝だめ」をする人も多いのではないでしょうか。
「昨日はいつもより多く寝たから大丈夫」といったような言葉を聞くこともあるかもしれませんが、本当に寝だめに効果があるかどうかについて知ることは大切です。
この記事では、寝だめに効果があるかどうかについての真偽や、どうすれば寝だめに頼らずに毎日を快適に過ごせるかついての具体的な対処法を紹介します。
「平日は忙しいから睡眠時間を削りたい」と考えている方は、寝だめを実践する前に参考にしてください。
- 寝だめに睡眠不足解消の効果は期待できない
- 寝だめではなく質の高い睡眠をとることが大切
- 睡眠の質を高めるために食生活で心がけること
- 就寝の3時間前までの食事を済ませる
- ヘルシーな食事を心がける
- 就寝前に温かい飲み物を飲む
- 就寝前にアルコールやカフェインの摂取を避ける
- 睡眠の質を高めるために生活習慣で心がけること
- 就寝の90~120分前に入浴する
- 適度な運動習慣を身につける
- 寝だめを避け毎日同じ時間に就寝・起床する
- 寝だめや寝不足で崩れた体内時計を日光で整える
- 睡眠の質を高めるために就寝環境で気を付けるポイント
- 体に合う寝具を使う
- ヒーリングミュージックなどでリラックスする
- アロマを焚いてリラックスする
- スマホやパソコンの操作を控える
- 温度・湿度、音や光を調整する
- まとめ
寝だめに睡眠不足解消の効果は期待できない
寝だめには基本的に効果がないことがアメリカのコロラド大学の研究などでわかっています。
寝だめのなかでも、過去の睡眠不足を解消するために休日などに睡眠時間を多く取る「補充睡眠」の場合、一定の時間であれば効果があるという報告もあります。
しかし、睡眠不足になることを考えて前もって睡眠時間を増やす「先取り睡眠」や、慢性的な睡眠不足を解消するための寝だめに効果は期待できないとされているので、注意しましょう。
もし、寝だめに効果を感じていたとしても、長時間睡眠は体内時計を狂わせ生活習慣や睡眠リズムが崩れる原因となるのでおすすめできません。
睡眠リズムが崩れると自律神経が乱れるなどして眠れなくなり、不眠症といった病気に繋がるリスクもあります。
そのほかにも長時間睡眠は睡眠リズムが乱れることによって、生活習慣病のリスクを高めるなどのデメリットが多いため、睡眠不足は寝だめによって解消するのではなく毎日の睡眠の質を高めることで対処することをおすすめします。
寝だめではなく質の高い睡眠をとることが大切
睡眠において大切なのは「時間」よりも「質」です。
日本人の平均睡眠時間は6〜8時間とされていますが、これはあくまでも全体のなかでの平均であり、実際に最適な睡眠時間は体質や季節、年齢などによって異なるため一概に定義することはできません。
自分にとって最適な睡眠時間を知るには「日中に眠気で困らない程度の自然な睡眠」を基準にすると良いでしょう。
つまり、一般的な平均睡眠時間より短くても、日中の生活において眠気がないのであれば問題ないということです。
反対に、十分な睡眠時間を確保しているのにも関わらず日中に眠気を感じる場合は、睡眠の質が低い可能性があります。睡眠の質が低い場合は、睡眠時間を確保しても睡眠不足のような状態になることがあるため注意しましょう。
慢性的に毎日の睡眠不足が積み重なると「睡眠負債」と呼ばれる状態になり、心身に悪影響を及ぼすことがあります。
睡眠負債によって起こることが考えられる心身の不調としては下記のようなものがあります。
- 目覚めが悪い
- 日中の眠気やだるさ
- イライラする
- 自律神経の乱れによる高血圧や不整脈
- ホルモンバランスの乱れによる肥満や糖尿病
- 精神神経系の異常によるうつ病
- アルツハイマー病など認知機能の低下
睡眠は十分な時間を確保することももちろん大切ですが、「質」を高めることを心がけることも重要です。
そのため、寝だめによって睡眠不足を解消しようとするのではなく、ぐっすりと眠るような質の高い睡眠を心がけましょう。
質の高い睡眠をとるためにできることについて、以降で詳しく紹介するので毎日の生活に取り入れてみてください。
睡眠の質を高めるために食生活で心がけること
睡眠の質を高めるために食生活において心がけることとして下記のようなものが挙げられます。
- 就寝の3時間前までの食事を済ませる
- ヘルシーな食事を心がける
- 就寝前に温かい飲み物を飲む
- 就寝前にアルコールやカフェインの摂取を避ける
それぞれについて以下で詳しく紹介します。
就寝の3時間前までの食事を済ませる
寝る直前にものを食べると睡眠中に体は消化活動を優先してしまうので、眠りが浅くなり睡眠の質が低下する可能性があります。
食事内容にもよりますが消化は食後2〜3時間で行われるとされているため、寝る3時間前くらいまでに食事を済ませておくことをおすすめします。
ヘルシーな食事を心がける
日頃からの食事内容も消化の良いものを心がけると質の高い睡眠に繋がります。
脂質が多い食事は肥満などの生活習慣の原因となり、生活習慣病は睡眠時無呼吸症候群のリスクを高め睡眠の質を低下させる大きな要因となる可能性があるため注意が必要です。
さらに睡眠時無呼吸症候群は高血圧、脳卒中、心筋梗塞といった病気のリスクも高めるなど悪循環になるので、日頃からの食事内容は栄養バランスが良くヘルシーなものを摂るように心がけましょう。
就寝前に温かい飲み物を飲む
人は体温が上昇し、下がり始めるタイミングで眠気が誘発されるといわれています。
就寝前に温かい飲み物で体温を上昇させると、低下するころに心地良い眠気が促されるため上手く活用しましょう。
体を温めることはリラックス効果にも繋がるので、体を休める状態である副交感神経優位の状態にしてくれることも期待できます。
寝る前に飲む温かい飲み物としてはハーブティーやホットミルク、生姜湯などがおすすめです。
なお、温かい飲み物のなかでもコーヒーや緑茶、紅茶などカフェインを含んでいるものは覚醒作用によって睡眠の質を低下させる可能性があるため、避けるように心がけましょう。
就寝前にアルコールやカフェインの摂取を避ける
前述のとおりカフェインは覚醒作用により快適な入眠を妨げ、睡眠の質を低下させる可能性があるため注意が必要です。
カフェインを含む飲み物の一例としては下記のようなものが挙げられます。
- コーヒー
- ココア
- 緑茶
- 紅茶
- 栄養ドリンク
- エナジードリンク
特に敏感な人は、睡眠の5〜6時間前からカフェインの摂取を控えることをおすすめします。
また、アルコールはリラックス効果による入眠を促すため、寝つきが悪い時などに「寝酒」として用いられることがありますが、アルコールも睡眠の質を低下させる原因の一つとなることがあります。
アルコールを摂取すると確かに眠りに入りやすいですが、睡眠後半の覚醒度が上がることにより睡眠の質を低下させることがわかっています。
また、利尿作用によって途中覚醒が増え、目覚めるとその後眠れないなどデメリットが多くあるためおすすめしません。
アルコールに依存すると少量では眠れなくなるほか、肥満といった生活習慣にも繋がるなど睡眠だけではなく健康面でのデメリットも多くあります。
快適で質の高い睡眠を目指すのであれば、アルコールに頼らず自然に眠れるようにしましょう。
睡眠の質を高めるために生活習慣で心がけること
続いて、睡眠の質を高めるために生活習慣において心がけることについて、下記を紹介します。
- 就寝の90~120分前に入浴する
- 適度な運動習慣を身につける
- 寝だめを避け毎日同じ時間に就寝・起床する
- 寝だめや寝不足で崩れた体内時計を日光で整える
それぞれについて以下で詳しく紹介するので参考にしてください。
就寝の90~120分前に入浴する
前述したとおり、人は体温が上昇し、低下し始めるタイミングで眠気があらわれるとされています。
体を温める方法として、飲み物以外にも入浴のタイミングを調整することで自然な入眠を促すことが期待できるでしょう。
例えば、寝る90〜120分前ほどに入浴することで寝床に入るタイミングで体温が下がりはじめ、自然な眠気が促されて心地良く入眠できる可能性があります。
ただし、熱いお湯での入浴は体を興奮させて寝つきを悪くするほか睡眠の質を下げる可能性があるため、ぬるめのお湯での入浴がおすすめです。
おすすめな温度や入浴時間、入浴方法などは下記のとおりです。
- 入浴は38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度
- 42℃の熱めのお湯であれば5分程度
- 半身浴なら約40℃のお湯で30分程度
入浴にはリラックス効果もあるため、質の高い睡眠を目指すほうが日常的に取り入れられる簡単な方法としておすすめです。
適度な運動習慣を身につける
適度な運動は疲労感によりぐっすりとした深い睡眠が期待できるほか、厚生労働省によると運動習慣がある人ほど不眠が少ないこともわかっているため、睡眠不足を感じている人におすすめです。
また、前述の入浴と同じように、体温上昇から低下による眠気を促す効果もあります。寝る3時間前ほどに軽い有酸素運動で体を温めると、寝床に入るタイミングで体温が下がりはじめ、スムーズな入眠が期待できます。
ただし、激しすぎる運動やストレッチは体を興奮させ寝つきの悪くするため運動の強度には注意しましょう。
寝だめを避け毎日同じ時間に就寝・起床する
睡眠においてとても重要なことは、毎日決まった時間に就寝・起床することだとされています。
人の体は習慣に従ってホルモンの分泌や生理的な活動を調節するといわれていますが、このような生体機能は睡眠リズムに大きく影響するので注意しましょう。
睡眠も生活習慣の一つであり、健康な人であれば睡眠時間が近づくにつれて体が無意識的に睡眠の準備をはじめ、自然な眠気が促されます。
しかし、毎日の就寝・起床時間がバラバラだと体内時計が乱れてしまい、上手く睡眠リズムが作れないことによって睡眠の質が低下する可能性があるのです。
どんなに運動習慣や食生活を整えても、睡眠リズムが乱れているのであれば質の高い睡眠は難しいとされているため、まずは就寝・起床の時間を一定にすることからはじめましょう。
紹介したように「寝だめ」は睡眠リズムを崩す原因となるので、休日であっても平日と同じ時間に就寝・起床することが望ましいといえます。
寝だめや寝不足で崩れた体内時計を日光で整える
交代勤務や夜ふかしなどで睡眠リズムが崩れ体内時計が乱れている場合は、起床後に日の光を浴びることをおすすめします。
人の体内時計の周期は約25時間で、地球の周期である24時間と1時間ほどのずれがあるため、日の光を浴びない生活をしていると徐々にずれていき昼夜逆転の生活になりやすいとされています。
起床後に日光を浴びることで光によって体内時計がリセットされ地球の周期に合うようになるほか、日の光を浴びてから15~16時間後に眠気が出現することもわかっています。
夜型になることを防止でき自然な眠気の誘発にも繋がるので、睡眠リズムが乱れている方は日の光を上手く活用しましょう。
睡眠の質を高めるために就寝環境で気を付けるポイント
続いて、睡眠の質を高めるために就寝環境において気を付けるポイントとして下記の点を紹介します。
- 体に合う寝具を使う
- ヒーリングミュージックなどでリラックスする
- アロマを焚いてリラックスする
- スマホやパソコンの操作を控える
- 温度・湿度、音や光を調整する
就寝環境は睡眠の質に大きく影響するものも多いので、快適な睡眠を目指しているのであれば参考にしてください。
それぞれについて以下で詳しく紹介します。
体に合う寝具を使う
質の高い睡眠を目指すのであれば、自分の体に合う寝具を使うことがとても大切です。
毎日の生活習慣に問題がない場合でも、寝具が体に合っていないのであれば質の高い睡眠をとることは難しいでしょう。
体に合わない寝具は質の高い睡眠が難しいだけではなく、肩こり・腰痛・寝起きのだるさなど体調不良に繋がる可能性があるため注意が必要です。
寝心地が悪い寝具は日中の眠気や睡眠の質が低下することによる睡眠不足、寝付きの悪さの原因になるなどさまざまなデメリットがあります。
快適で質の高い睡眠を目指すのであればマットレスなどの寝具にはこだわりましょう。
例えば、マットレスの場合「体圧分散性」と「適度な反発力」を併せ持っているものを選ぶことが大切です。
睡眠中の体には体重による圧力(体圧)がかかっていますが、その体圧をバランス良く分散できるマットレスでは体への負担を軽減できます。
一般的には、柔らかめのマットレスが体圧分散性に優れているとされていますが、柔らかすぎると体が沈みこみ、寝返りが打ちづらくなるため注意が必要です。
寝返りは睡眠中に体が圧迫されることによる血行不良を防ぐ生理現象のようなもので、寝返りが快適に打てるマットレスは、血行不良からくる肩こり・腰痛・寝起きのだるさなどを防止することが期待できます。
そのため、快適で質の高い睡眠を目指すのであれば、「体圧分散性」だけではなく寝返りをサポートしてくれる「適度な反発力」を併せ持つマットレスを選ぶことをおすすめします。
ヒーリングミュージックなどでリラックスする
自律神経は、日中には活動モードである「交感神経優位」の状態ですが、夜になるにつれて体を休ませるモードである「副交感神経優位」の状態へと無意識的に切り替わっていきます。
夜の就寝前には、副交感神経優位の状態を妨げないようにすることで、快適な入眠と質の高い睡眠が得られるでしょう。
リラックスする方法はいくつかありますが、音楽にはリラックス状態であるα波(アルファ波)と呼ばれる脳波を引き出すものがあります。
ただし、どのような音楽でも良いわけではなく、下記のような特徴を含む音楽がおすすめです。
- 高周波な音を含む音楽
- 歌詞が含まれていない音楽
- ゆったりとしたリズムの音楽
クラシックやヒーリングミュージック、自然音などはこれらの特徴があるものが多いため、寝る前に聴くと良いでしょう。
ただし、睡眠中の脳波はアルファ波よりも深い状態になっているので、音楽を流しっぱなしにしておくと睡眠の妨げになる可能性がある点には注意が必要です。
睡眠前に音楽を聴く際にはタイマーをかけるなどして、睡眠中は静かになるように心がけましょう。
アロマを焚いてリラックスする
音楽は聴覚からリラックス状態を誘発する効果がありますが、アロマは嗅覚から自律神経を刺激し、リラックス状態を誘発する効果があります。
匂いはダイレクトに脳に伝わるので伝達速度も速いとされているため、寝る前に活用することで心地良い睡眠が期待できます。
成人男女19名を対象とした研究では、アロマテラピーが睡眠効率や疲労感の低下に効果的であることも示されています。
リラックスできる音楽と合わせて睡眠前に取り入れることで、質の高い睡眠が期待できるでしょう。
スマホやパソコンの操作を控える
スマホやパソコンなどの電子機器の画面には、可視光線のなかで最も強いとされているブルーライトを発するものが多くあります。
寝る前にブルーライトのような強い光を浴びると、脳が「昼だ」と錯覚し、寝つきが悪くなったり睡眠の質が低下したりするため注意が必要です。
強い光を浴びることにより眠気を促す「メラトニン」という体内物質の分泌が抑制されることも寝つきが悪くなる原因として関係しているともいわれています。
また、スマホやパソコンでのゲームや動画視聴などは夜ふかしにも繋がり、睡眠リズムを崩す原因となるため、就寝前のスマホ・パソコン操作は控えましょう。
温度・湿度、音や光を調整する
寝室の環境にも気を配るとより快適な睡眠が得られるようになるでしょう。
使用する寝具やパジャマなどの材質によって快適に感じる温度などは変わりますが、一般的に快適とされる温度は夏場で25℃~26℃、冬場で22℃~23℃、湿度は通年50%~60%が理想的とされています。
温度や湿度だけではなく、照明の具合や周辺の騒音なども気を配ることでぐっすりとした深い睡眠を得られる可能性が高くなります。
寝具選びとあわせて快適に眠れる環境も意識的に作りましょう。
まとめ
寝だめには基本的に効果がないほか、睡眠をまとめてとることは睡眠リズムを崩すことによる体内時計の乱れに繋がります。
体内時計が乱れると寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりする原因となるため、寝だめはおすすめできません。
睡眠不足を感じている場合は、寝だめによって解消しようとするのではなく、日常的な睡眠の「質」を高めることを意識しましょう。
今回紹介した食生活や生活習慣、就寝環境などを意識的に改善することで、毎日に睡眠の質を高め日中を快適に過ごせる可能性が高くなります。
一度にすべてを取り入れることは難しいですが、「マットレスにこだわる」「就寝・起床時間を一定にする」など、身近なことからはじめてみることをおすすめします。