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2024.01.18 更新

【医師監修】ナルコレプシー(居眠り病)の症状とは?当てはまる場合は医療機関に相談しよう

【医師監修】ナルコレプシー(居眠り病)の症状とは?当てはまる場合は医療機関に相談しよう

「突然睡魔に襲われることがある」「日中眠り込んでしまう」など、強い眠気に悩まされている方は、「ナルコレプシー」という病名を耳にしたことがあるかもしれません。

「自分がナルコレプシーなのでは?」と感じて、その原因や対策法について気になっている方も多いでしょう。

この記事では、ナルコレプシーの症状や原因などについて紹介します。

なお、ナルコレプシーの症状に当てはまると思った場合は、医療機関を受診して、専門医に相談しましょう。

  1. ナルコレプシーは「居眠り病」とも呼ばれる病気
  2. ナルコレプシーであらわれる症状
  3. 日中の過度な眠気
  4. 情動脱力発作
  5. 睡眠麻痺
  6. 幻覚
  7. ナルコレプシーになる原因として考えられること
  8. ナルコレプシーは自己診断できる?
  9. ナルコレプシーの症状を軽減する方法
  10. まとめ

ナルコレプシーは「居眠り病」とも呼ばれる病気

ナルコレプシー」とは、日中過度の眠気に襲われて、時間や場所を問わず居眠りをしてしまう病気のことです。自分では制御できない強い眠気が特徴的で、「居眠り病」とも呼ばれます。

ナルコレプシーは「過眠症」の一つであり、10代から20代前半にかけて症状があらわれることが多いです。自分の意思では制限できず我慢できない眠気なので、日常生活に支障をきたすこともあります。

日本では600人に1人くらいの割合で発症しており、世界のなかでも発症する頻度が高いといわれています。

白濱龍太郎

白濱龍太郎

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

各国で調査された中で、結果日本人が多いとされていますが、明確な理由はわかっていません。

ただし、日本人の患者はほぼ100%の確率で、白血球の血液型であるHLAのDR2/DR15という遺伝子が陽性になることは解明されています。つまり、遺伝がかかわっている可能性があると言えます。

ナルコレプシーであらわれる症状

ナルコレプシーの症状は眠気だけではなく、以下のように大きく分けて4つあります。

  • 日中の過度な眠気
  • 情動脱力発作
  • 睡眠麻痺
  • 幻覚

それぞれの症状について、詳しく解説します。

日中の過度な眠気

日中の過度な眠気」は、ナルコレプシーの代表的な症状です。睡眠不足による眠気ではないため、十分に睡眠をとっても眠気に襲われることがあります。

自分の意思ではコントロールできず、日中の会議中や車の運転中など、通常考えられないシーンで寝てしまうことがあるため、場合によっては、一般的な社会生活を送ることが難しくなるケースもあるといえるでしょう。

眠ったあとはすっきりとした爽快感を感じられますが、再び眠気に襲われることもあります。

白濱龍太郎

白濱龍太郎

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

強い眠気があらわれる頻度に決まりはありませんが、寝ている時間は2~3分から10数分程度です。起床後はすっきりしますが、2時間から3時間でまた強烈な眠気がくるという典型症例があります。

情動脱力発作

情動脱力発作」とは、笑う・驚く・怒る・恐怖を感じるなど、強く感情が動いた時に力が抜けてしまう症状のことをいいます。

症状が出ている時でも意識はあり、数秒間から数分間で症状が治まることが多いです。

力が抜けると、腰が抜ける・倒れこむ・持っているものを落とすなどの症状が出て、ろれつが回らなくなることもあります。

ただし、ナルコレプシーの人すべてに情動脱力発作が起こるわけではありません。

睡眠麻痺

睡眠麻痺」とは、入眠する時や目覚めた時に体を動かせない状態になることを指し、いわゆる「金縛り」と呼ばれるものです。

意識があるのに体を動かせない、声を出せない状態になるため、恐怖心を感じることがあります。睡眠麻痺は長時間続かず、数分程度で自然に治まることが多いようです。

情動脱力発作と同じく、睡眠麻痺もナルコレプシーの人すべてに起こるわけではありません。

幻覚

ナルコレプシーになると、入眠する時や目覚める時に、鮮明な「幻覚」を見ることがあります。「人が近くにいる」「動物に襲われる」など、生々しい内容の幻覚を見ることが多いです。

幻覚は、どちらかというと入眠時に見やすい傾向にあり、必ずしも夜に見るわけではなく、昼間に眠りこんだ時に見る人もいます。

人によっては幻覚を見ている時に金縛りになることがありますが、助けを呼びたくても声が出ない状況に陥ると、恐怖心を感じることもあるようです。

ナルコレプシーになる原因として考えられること

ナルコレプシーになる原因として考えられること

ナルコレプシーになる原因は、まだ完全には解明されていません。

しかし、最近の研究では、脳のなかの「オレキシン」を作り出す神経細胞の機能が低下することで起こると考えられています。オレキシンとは、起床している状態を適切に維持するなど、睡眠と覚醒を制御する役割をもつ神経伝達物質のことです。

このほか、インフルエンザのような感染症や頭部の外傷などによっても、ナルコレプシーが引き起こされるケースがあるとされています。

また、一卵性双生児の一方がナルコレプシーの場合、もう片方も発症することがあり、遺伝が原因となる可能性も考えられているようです。

ナルコレプシーは自己診断できる?

自分がナルコレプシーなのか気になっていて、自己診断したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、ナルコレプシーは病気なので、自己診断せずに医療機関を受診して、適切な診断と治療を受けることが重要です。

医療機関を受診する目安は、「改善に取り組んでも、睡眠に関するトラブルが1ヶ月以上続く」場合です。ただし、1ヶ月経っていなくても、症状がつらい場合や仕事に影響が出ているのであれば、すぐに病院へ行くことを推奨します。

もしかかりつけ医がいるのであれば、最初に相談してみると良いでしょう。かかりつけ医がいない場合は、睡眠障害に対応できる睡眠外来・脳神経外科・神経内科・精神科などを受診することとなります。

睡眠の問題に加えて憂うつなどの症状もある場合は、メンタルクリニック・心療内科などの受診も検討してください。

ナルコレプシーの症状を軽減する方法

ナルコレプシーは原因がはっきりと解明されていないため、根本的な治療法もまだありません。

しかし、医師による薬物療法と生活習慣を整えることで、つらい症状を軽減できることがあります。薬物療法を希望する場合は、医療機関を受診して医師の指示を仰いだうえで実施しましょう。

それと同時に、ナルコレプシーの症状軽減を目指し、日常生活でも何かしらの改善に取り組みたいのであれば、生活習慣を整えることも大切です。

生活習慣の改善についても医師のアドバイスのもと行われることがありますが、自分自身でも意識できることとして何らかの策を持っておきたい場合には、以下3つの行動を覚えておきましょう。

  • 夜に十分な睡眠をとる
  • 毎日同じ入眠・起床時刻にして、生活リズムを整える
  • 日中に10分〜20分程度の短い仮眠をとる

夜に十分な睡眠をとるために、食事・運動・日光浴・寝室環境の4つを意識しましょう。

適切な時間に朝昼晩3食きちんと食べると体のリズムが整い、軽い運動で体に疲労感を与えることで、夜に自然な眠りを促しやすくなります。

また、朝起床したら日光をたっぷり浴びて、体内時計のリセットを行うことも忘れないでください。

寝室で心地良く眠れるように、部屋の明るさや温度などの寝室環境を整えることも大切です。リラックスできるように、肌触りの良いパジャマや寝心地の良い寝具を使いましょう。

また、短い仮眠を生活リズムのなかに組み込んでおくと、日中の過度な眠気対策となります。仮眠は毎日同じ時間にとり、生活リズムを乱さないように心がけましょう。

白濱龍太郎

白濱龍太郎

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

医療機関では、日中の眠気を緩和するために、脳の大脳皮質に届いて刺激し覚醒水準を高める薬を用います。モダフィニルという薬が第一選択です。

ほかにはメチルフェニデートを用いる事もありますが、いずれの薬も処方可能な医師は登録医制で、専門医でないと処方ができません。

まとめ

ナルコレプシーは、日中に過度の眠気に襲われる病気のことです。自分でコントロールできない症状があらわれるため、生活や仕事に支障をきたすことがあります。

「ナルコレプシーかもしれない」と疑っており、少しでも気になることがあるのであれば、すぐに医療機関を受診して適切な診断を受けることをおすすめします。

医療機関における治療と同時に、生活習慣を見直すことも大切です。十分な睡眠時間の確保や短時間の仮眠などを生活に取り入れて、ナルコレプシーへの対策をしていきましょう。

この記事の監修者
白濱龍太郎
白濱龍太郎RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。同大学睡眠制御学快眠センター等での臨床経験を生かし、総合病院等で睡眠センターの設立、運営を行ってきた。それらの経験を生かし、睡眠、呼吸の悩みを総合的に診断、治療可能な医療機関をめざし、2013年に、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニックを設立。2014年には、経済産業省海外支援プログラムに参加し、インドネシア等の医師たちへ睡眠時無呼吸症候群の教育を行った。2018年にはハーバード大学公衆衛生大学院の客員研究員として睡眠に関する先端の研究に従事。社会医学系指導医、睡眠学会専門医、認定産業医を有し、教育、啓発活動にも取り組んでいる。
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