生理前特有の症状として、日中に襲ってくる眠気があることは広く知られています。しかし、なかには「生理前になると眠れずに困っている」という方もいるのではないでしょうか。
生理前の不眠は、普段の睡眠の質を高めることで改善できる可能性があります。この記事では、生理前に眠れなくなる原因や、睡眠の質を高める方法について紹介します。
生理前に眠れない主な原因
生理前は、人によっては「寝つきが悪くなる」「眠りが浅く夜間に何度も目が覚めてしまう」「熟睡できない」など、不眠に関する症状が起きる場合があります。
生理前になると眠れなくなる原因には、以下のような内容が挙げられます。
- ホルモンバランスの変化
- 自律神経の乱れ
上記の2つを以下で詳しく解説します。
ホルモンバランスの変化
生理前は女性ホルモンのバランスが変化する時期です。
人は体温が低下すると眠気を感じる仕組みになっているものの、月経前には女性ホルモンの一つであるプロゲステロンの働きにより、体温が高い状態が維持されるため、体温が低下しにくくなります。
人は体温の低下によって眠気が生じます。そのため、ホルモンバランスの変化によって体温が高い状態が続くと、睡眠に悪影響を及ぼします。
なお、女性のホルモンバランスの変化については、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひこちらもご一読ください。
自律神経の乱れ
普段眠っている間は、自律神経の副交感神経が優位に働き、体がリラックスした状態になります。
しかし、生理前になると副交感神経の働きに関わる女性ホルモンのエストロゲンが減少するため、交感神経が優位になり、眠りにくくなります。
藤東淳也
藤東クリニック 理事長・院長
生理前に眠れなくなることについて、PMS(月経前症候群)の症状がある人に睡眠の質が低下している人が多いということがわかってきています。
生理前の不眠の種類
生理前に起きる不眠には2つの種類があります。
- 寝付きが悪くなる
- 睡眠途中で目覚める
上記の2つの種類を以下で詳しく解説します。
寝付きが悪くなる
前述のように、プロゲステロンの働きにより、基礎体温も徐々に上昇します。基礎体温が高くなると眠る時間になっても体温が下がりきらず、寝付きが悪くなり、睡眠も浅くなります。
生理前に寝付きを良くするには、深部体温を下げることが重要です。
睡眠途中で目が覚める
通常、体内のホルモンは、24時間サイクルで体内時計の調節を受けながら働いています。
しかし、生理前になりホルモンバランスが乱れると、体内時計が乱れるとともに睡眠と覚醒のバランスも崩れます。睡眠と覚醒のバランスがはっきりしないため、睡眠途中で目が覚める場合があります。
生理前に眠れない場合の対処法
眠れず悩んでいる方は、普段の睡眠の質を高めるように意識しましょう。普段の睡眠の質を高められれば、生理前の不眠を緩和できる可能性があります。睡眠の質は下記の方法で高めることができるので、ぜひ実践してください。
- 規則正しい生活を心がける
- 日中に仮眠をとる寝る前にリラックスできる飲み物を飲む
- アロマテラピーをする
- 食事のメニューに工夫する
- 夕食は就寝3時間前に済ませる
- 湯船に浸かってリラックスする
- 睡眠環境を整える
- 習慣的に運動する
規則正しい生活を心がける
睡眠の質を高めるためには、普段から規則正しい生活を送るように心がけましょう。規則正しい生活は、体内時計を調整するために重要です。
体内時計とは、睡眠のタイミングや生理的な活動を調節する役割を持つメカニズムで、人の体には必ず備わっています。
体内時計が正しく機能していれば、「朝に目が覚めて夜に眠気が訪れる」という健康的なリズムに沿って生活を送れます。しかし、体内時計が狂ってしまうと就寝のタイミングで眠気が訪れず、不眠に繋がる可能性があります。
体内時計は自分の力でコントロールできるものではなく、規則正しい生活によって正しいリズムに調整ができる仕組みになっています。体内時計を正しく機能させるためにも、規則正しい生活を送るように意識してください。
日中に仮眠をとる
夜にしっかり眠れず昼間に眠気が強くなる場合には、日中の仮眠も効果的です。
夜の睡眠に影響が出にくい15時までに仮眠を取り入れると、睡眠不足による眠気や不眠への対策になります。ただし、長すぎる仮眠は目覚めが悪くなるため、15〜30分程度の仮眠がおすすめです。
寝る前にリラックスできる飲み物を飲む
不眠に悩んでいる方のなかには、「寝る前に考えごとをしてしまい、なかなか寝つけない」という方もいるでしょう。心身が緊張していると、眠れなくなる可能性があるため、就寝前はリラックスすることが大切です。
手軽にリラックスしたい方は、就寝前に飲み物を飲むことをおすすめします。ホットミルクやハーブティーなど、リラックスできる飲み物を就寝前に飲むと、心身の緊張も解けて眠りやすくなるでしょう。
ただし、カフェインやアルコールが入っている飲み物は、睡眠を妨げる要因となるので注意してください。
アロマを焚く
不安やストレスが原因で眠れない場合は、アロマオイルを使ったアロマテラピーもおすすめです。心地良い香りに包まれるとリラックスできるのはもちろん、呼吸も深くなり自然と寝つきが良くなります。
また、アロマオイルと一口にいっても、その種類は数多くあります。お気に入りのアロマオイルがない方は、この機会に自分が好きな製品を探してみると良いでしょう。
食事のメニューを工夫する
より睡眠の質を高めたい方は、食事のメニューに気を配ることをおすすめします。特に「トリプトファン」「GABA」「グリシン」といった3つのアミノ酸を取り入れましょう。
トリプトファンは、心身を覚醒させる作用があるホルモン「セロトニン」を分泌します。セロトニンは夜になると、人を休息モードに導く「メラトニン」に変化するため、それぞれのホルモンが不足せずにしっかり機能していれば、「朝にスッキリ目が覚めて夜には眠くなる」サイクルに沿って1日を過ごせます。
また、リラックス作用があるGABA、体の深部体温を下げる効果を持つグリシンも快眠を手助けしてくれる重要な栄養素です。それぞれのアミノ酸を食事から摂取すれば、よりスムーズに入眠できます。
これらの栄養素を意識しつつ、バランスの良い食事をとりましょう。なお、生理前の不眠の原因は、ビタミンやカルシウム不足とする説もあるため、あわせて摂取することをおすすめします。
藤東淳也
藤東クリニック 理事長・院長
生理前に意識して摂取したい栄養素として、ビタミンでは特にB1・B2・B6・Dがあります。また、鉄を多く含む食材をこまめに摂ることもすすめられます。
夕食は就寝3時間前に済ませる
夕食の時間が就寝直前になると、睡眠中に消化活動が行われるので注意しましょう。睡眠中に胃腸が働くと、その活動によって脳が刺激されるため、睡眠の質の低下に繋がる場合があります。
一般的に、消化活動には2〜3時間程度かかるといわれています。消化活動が終わった状態で眠るために、夕食は就寝3時間前までには済ませてください。
どうしても夕食の時間が夜遅くなる場合は、食物繊維や脂肪の少ない消化の良いメニューにすると良いでしょう。
湯船に浸かってリラックスする
普段の入浴をシャワーで済ませている方は、湯船に浸かることをおすすめします。ゆったりと湯船に浸かれば疲れを癒せるため、心身の緊張が解けてより眠りやすくなります。
また、入浴は就寝時間の90分〜120分前がおすすめです。人の体は深部体温が下がると眠くなるようになっているため、入浴して体温をコントロールすれば丁度良いタイミングで眠気が訪れます。
ただし、お風呂の温度が高すぎたり、入浴時間が長すぎたりすると逆効果になるので注意してください。入浴の温度と時間は38℃のぬるめのお湯で25~30分程度、半身浴の場合は約40℃のお湯で30分程度に留めましょう。
睡眠環境を整える
質の高い睡眠をとるためには、寝室の環境や寝具などの睡眠環境を整えることが重要です。いくら不眠に対して対策をしても、自分が眠る環境が悪いと寝つきの悪さに繋がります。
ここでは睡眠環境を整えるポイントをいくつか紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- 自分に合った寝具を使う
- 外部から光や音が漏れる場合は遮光カーテン・耳栓などを使う
- 寝室の温度や湿度を調整する
習慣的に運動する
適度な運動も睡眠の質を高めるためには大切な要素です。習慣的に運動をすると、寝つきが良くなり深い睡眠をとりやすくなるといわれています。
普段あまり体を動かさない方は、継続して運動する機会を設けましょう。
ただし、睡眠の質を高めるために、激しすぎる運動は避け、ウォーキングやランニングなど軽い有酸素運動に留めましょう。
更年期障害が不眠の原因となっている可能性もある
女性特有の不眠の原因として、生理だけでなく更年期障害の影響も考えられます。更年期障害とは、閉経に向けて訪れる体の変化に対応できず、日常生活に支障が出るレベルの症状が発生している状態のことです。
症状にはめまいや動悸などの身体的な症状のほか、不眠をはじめとした精神的な症状があらわれる場合もあります。心配な方は近くの医療機関に相談すると良いでしょう。
藤東淳也
藤東クリニック 理事長・院長
更年期では、ほてりや発汗といった血管運動神経症状が夜間に起こることで睡眠が妨げられることが考えられます。更年期障害の症状はさまざまありますので、症状に悩むようでしたら医療機関を受診しましょう。
まとめ
生理前の不眠の原因には、「ホルモンバランスの変化」や「自律神経の乱れ」が考えられます。
不眠の症状があらわれていると「日中に眠気が襲ってきて集中できない」「眠りたいのに入眠できずイライラする」のように、日常生活に悪影響が及ぶ可能性もあります。
生理前に眠れずに悩んでいる方は、質の高い睡眠をとれるように睡眠環境や生活習慣を見直しましょう。