だるさや肩こりなど、体の不調はさまざまありますが、片頭痛ならではのズキズキとした痛みはとてもつらく、仕事中に起きてしまうと作業に集中できません。このような不意に襲ってくる片頭痛に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、片頭痛が起きる原因や対処法などについて紹介します。片頭痛に悩まされている方は参考にしてください。
片頭痛とは
片頭痛とは、ズキズキと脈打つような痛みが特徴的な頭痛です。主にこめかみや目の周辺が痛み、症状は4時間から数日程度続くといわれています。頻度は人によっても異なりますが、1ヶ月に1回~2回、多い場合は1週間に3~4回など痛みが起こる場合もあります。月の半分以上、慢性的な片頭痛となっている場合もあります。
また、頭痛だけでなく吐き気や嘔吐を伴う場合があり、光・音・気圧などの外部環境の変化に対して敏感になることも多いと考えられています。体を動かして頭の位置が変わると痛みが増してしまうため、ひどい場合は日常生活に支障が出る可能性もあります。
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長
片頭痛とほかの頭痛を見分けるコツとして、以下のことがある場合は、片頭痛の可能性が高くなります。
①閃輝暗点(眼がチカチカする、視界がぼやけるなど、視界が欠ける)
②光、匂い、音などで片頭痛が悪化する
③血管がどくどくする、拍動性の頭痛
④吐き気がする、吐いてしまう
片頭痛持ちの人の特徴
慢性的に頭痛が起きる人の脳は、敏感な性質を持っていると考えられます。脳が敏感だと周囲の環境からの刺激に常に反応してしまい、脳のリズムが崩れやすいためです。
そのため、完璧主義の方や神経質な性格の方は片頭痛になりやすいといわれています。また、片頭痛持ちの方は身内も頭痛を持っている場合が多く、10歳〜20歳で発症する方が多いといわれています。
片頭痛が発生する主な原因
片頭痛が発生する原因ははっきりと解明されていませんが、一般的には下記の4つが説として有力だと考えられています。
- 血管の収縮や拡張
- 三叉神経の炎症
- 遺伝的な要素
- 女性ホルモンの変化による影響
血管の収縮や拡張
主な原因の一つとして考えられているのは、脳の血管の縮小や拡張です。根本的な原因としては、セロトニンと呼ばれる物質が大きく関わっていると考えられています。
セロトニンは精神的な負荷がかかると、血小板から放出される仕組みになっています。その際、脳の血管は収縮し、セロトニンが出尽くすと血管は拡張します。拡張すると血管の周囲にある神経が刺激され、片頭痛が発生するといわれています。
三叉神経の炎症
三叉神経の炎症説は、上記で紹介した血管の縮小や拡張説と似たような説です。先述したように、セロトニンが放出されると血管は収縮し、出尽くすと今度は拡張する仕組みになっています。
拡張した際の刺激によって、血管をとりまく三叉神経は興奮性を増すといわれています。すると三叉神経の末端から炎症物質が放出され、血管が炎症を起こします。この情報が三叉神経を通して脳に伝わると、片頭痛を起こす場合があります。
遺伝的な要素
片頭痛には、遺伝的な要素も関係していると考えられています。片頭痛は遺伝性が高いとされており、親や兄弟に片頭痛持ちの方がいる場合は片頭痛になる可能性が高くなるといわれています。
女性ホルモンの変化による影響
先述した原因以外に、女性ホルモンの影響も考えられます。女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2つがあり、このうちエストロゲンの減少が片頭痛の原因になる可能性があります。
エストロゲンは「排卵に向けて増え、排卵時には急激に減る」という周期を1ヶ月の間に繰り返します。この時、血管の収縮のコントロールや、痛みを抑える役割を持つセロトニンも減少することで、片頭痛に繋がるといわれています。
このことから、女性は比較的片頭痛を起こしやすいと考えられています。ただし、あくまで女性に多いというだけで、片頭痛は男性にも起きる点に注意してください。
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長
エストロゲンが低下する生理開始前(2~3日前)から、長い方は生理中も片頭痛が起こりやすくなります。また、排卵日前後にも出やすくなります。
片頭痛の対処法
予期しないタイミングで襲ってくる片頭痛と上手に付き合うためにも、痛みに悩んでいる方は対処法を把握しておきましょう。片頭痛の対処法としては、主に下記の5つが有効だとされています。
- 大きな音や強い光を避ける
- 痛いところを冷やす
- カフェインが入った飲み物を飲む
- ストレスを溜めずに睡眠をしっかりとる
- 医療機関を受診する
大きな音や強い光を避ける
大きな音や強い光があると脳が刺激されてしまい、片頭痛が悪化する可能性があるので注意してください。片頭痛が起きた時は、脳に刺激を与えないことが大切です。できるだけ大きな音や強い光は避け、刺激の少ない部屋で安静にしましょう。
痛いところを冷やす
片頭痛が起きた時は、痛みを感じる部分を冷やすと良いでしょう。痛いところを冷やすと血管の拡張が抑えられるため、痛みが緩和する可能性があります。
例えば、冷やしたタオルをあてる、保冷剤をタオルにくるんであてる、冷却シートを貼るなどをして対処しましょう。
ストレスを溜めずに睡眠をしっかりとる
片頭痛に悩んでいる方は、普段からストレスを溜めすぎないように意識しましょう。ストレスを溜めすぎると、痛みを抑える作用を持つセロトニンが不足してしまう可能性があります。
人の体はストレスを受けると、脳を守るためにセロトニンを放出する仕組みになっていますが、このセロトニンの量には限りがあります。
そのため、多くのストレスを受けるとセロトニンの放出量が増え、結果的にセロトニン不足に陥ってしまいます。痛みを抑える作用を持つセロトニンが不足すると、頭痛を感じやすくなってしまう場合があります。
ストレスを溜めないためにも、睡眠は十分にとって定期的にストレス解消に取り組みましょう。
医療期間を受診する
あまりにも痛みがひどい場合は、無理をせずに医療機関に相談してください。症状に応じて適切な投薬療法を受ければ、痛みが軽減する可能性があります。
医療機関はさまざまありますが、脳神経外科や脳神経内科など、頭痛の治療を積極的に行う機関を受診すると良いでしょう。
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長
初発の強い頭痛や頭痛の回数が多い時には、一度脳MRIを受けて、器質的疾患の鑑別が重要です。
治療は、痛くなった時にアセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬、トリプタンという片頭痛専用の治療薬を用います。そのほか、以下の方法もあります。
予防薬:抗てんかん薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、漢方薬
注射:CGRP関連抗体薬
CGRP関連抗体薬は新薬の注射薬で、効果は非常にあります。1本で4週間くらい効果がありますが、高額です。
片頭痛以外の頭痛の種類
頭痛には片頭痛以外にも種類があります。頭痛の種類を知っていれば対処もしやすくなるので、この機会に把握しておきましょう。
緊張型頭痛
緊張型頭痛とは、頭が締め付けられるような痛みが特徴的な頭痛です。主な原因としては、精神的なストレスまたは長時間のデスクワークなどで血行が悪くなり、首や頭の筋肉が緊張してしまうことで起こると考えられています。
また、血行不良が主な原因であるため、肩こりなどの症状が伴うケースが多いのも特徴の一つです。年齢や性別に関係なく、誰にでも発症する可能性があります。
群発頭痛
群発頭痛とは、片目の奥が激しく痛むタイプの頭痛です。1ヶ月〜2ヶ月の間、毎日同じくらいの時間帯に発生することが大きな特徴です。片頭痛とは違い、比較的男性に多い頭痛といわれています。
群発頭痛が起きる原因は解明されていませんが、一般的には目の後ろにある血管が拡張し、その周囲に炎症が生じて神経を刺激するためだと考えられています。
まとめ
片頭痛は予期しないタイミングで襲ってくるため、事前に対処法を把握しておくことが大切です。
片頭痛が起きた時は大きな音や光は避け、痛みのある部分は冷やすなど、自分の状況に応じて適切に対処しましょう。
また、頭痛にはさまざまな種類があります。あまりにも痛みがひどい場合は、無理をせずに医療機関に相談してください。症状に応じて適切な投薬療法を受ければ、痛みが軽減する可能性があります。