晩春から初秋にかけては、夜の暑さのせいで寝苦しく感じて困っているという方も多いと思います。
暑い夜に寝苦しく感じる原因を理解することによって、寝苦しさに対してどのように対策すれば良いかが分かります。
また、寝苦しいと睡眠の質も下がってしまいがちなので、少しでも睡眠の質を上げるために、自分なりにできることはやっておいたほうが良いでしょう。
この記事では、暑いと寝苦しく感じる原因や暑い夜でも快適な睡眠をとる方法、より質の高い睡眠をとるための対策などについて説明します。
寝苦しくなる原因
主に春から夏にかけて、気温が高く、寝苦しい夜を過ごすこともあるでしょう。
寝苦しさの原因には、人の体温が関係しています。
人の体温は大きく分けて2種類あります。1つは体温計などで測ることができる「皮膚表面」の体温で、もう1つは、体温を調節する脳の中の視床下部でコントロールされる内臓の体温で、「深部体温」と呼ばれるものです。
深部体温は、皮膚表面の体温よりも0.5℃~1℃程度高いことが特徴で、深部体温が下がることで自然と眠気を感じるようになっています。夏場は温度・湿度ともに高いことから、深部体温が下がりにくいため、なかなか寝付けずに寝苦しさを感じることが多いのです。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
深部体温が下がると体内の酵素反応が不活発化し、代謝が下がって脳を含んだ全身が、休息状態となります。手足の皮膚温が深部体温に対して相対的な上昇が起こり、この上昇の大きさが眠気と関係があることがわかっています。
夏場でも快適な睡眠をとる方法
寝苦しい夜でも快適な睡眠をとる方法としては「エアコンを上手に使う」「熱帯夜に適した素材のパジャマを着る」が主に挙げられます。それぞれの方法について、詳しく説明します。
エアコンを上手に使う
温度や湿度対策のためには、エアコンの利用が効果的です。ただ、寝る時になってエアコンのスイッチを入れても部屋はすぐには冷えないので、しばらくは温度や湿度が高いままです。そのため、寝る1時間程度前からエアコンを動かしておき、部屋を眠りやすい環境に整えておくことが重要です。
暑いとつい冷やし過ぎてしまいがちですが、温度は25℃〜26℃、湿度は50%〜60%が理想的なので、エアコンの設定温度には注意しましょう。冷やし過ぎは朝起きた時に体がだるかったり、夜中に目が覚めてしまったりする原因になります。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
深部体温の調整に大切なのが、血行が良いことです。冷やしすぎは、血行が悪くなり、深部体温の調整が上手くいかなくなったり、交換神経が刺激されて睡眠が乱れたりする原因になります。
熱帯夜に適した素材のパジャマを着る
パジャマの素材も、寝苦しさを解消するための重要な要素の一つです。麻は繊維の中でも特に吸水性に優れているので、麻でできたパジャマを着ていれば、汗をかいてもべったりと肌に張り付かず快適に眠ることができるでしょう。
シルクも吸水性が高い素材ですが、かく汗の量が多いと肌に張り付いてしまう可能性があります。コットンも吸水性に優れていますが、生地の伸縮性があまりないので「パジャマを着ている感」が気になる可能性があります。着心地なども踏まえて、自分に一番合っていると思われる素材のパジャマを選ぶと良いでしょう。
より質の高い睡眠をとるには
たとえ夏場で寝苦しくとも、質の高い睡眠は重要です。少しでも質の高い睡眠をとるために意識しておきたいこととしては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 寝る前にストレッチなど軽く体を動かす
- 就寝3時間前までに夕食を摂り、規則正しい食生活を意識する
- 就寝時間の約90~120分前に入浴する
- 温かい飲み物で体温を上昇させる
- 就寝前はリラックスする
- 体に合う寝具(マットレスや枕など)を使う
それぞれについて、詳しく説明します。
寝る前にストレッチなど軽く体を動かす
上述したように、人の体は深部温度が下がることで自然と眠くなるようになっています。普段は手足などの末端部分から熱を放出することで温度を下げていますが、夏場の暑さや血行不良などの理由で上手く熱が放出されないと、不眠および睡眠の質の低下に繋がりやすいです。
足裏や手先といった末端部分のストレッチを行って血行を良くすることで、少しでも熱を放出しやすくすることが重要です。
就寝3時間前までに夕食を摂り、規則正しい食生活を意識する
規則正しい食生活を心がけることも、睡眠の質を向上させるためには欠かせません。寝る直前に食事をすると、食べたものを消化するために胃腸が活発に動いている状態で眠りにつくことになるため、肉体が熟睡できません。
そのため、食事をとるタイミングにも注意を払う必要があります。食べたものを胃腸が分解し終わるには約3時間は必要なので、就寝する3時間前までには夕食を摂るようにしましょう。
白濱龍太郎
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
快適に眠るためには、脂質や食物繊維が少ない、やわらかい、血糖の急上昇が起きにくいものがおすすめです。例としては、雑穀米や豆腐、バナナ、カフェインレスの温かいのみ物、スープ、味噌汁、低脂肪乳製品などです。
就寝時間の約90~120分前に入浴する
寝る直前の入浴は睡眠の質を高める上では好ましくないので、就寝時間の約90~120分前に入浴を意識しましょう。お湯の温度は38℃程度のぬるめが良く、入浴時間は25~30分程度が理想的です。そうすることで副交感神経が優位になるので、睡眠の質を高めることに繋がります。
熱いお風呂に入ることが好きな方もいらっしゃると思いますが、熱いお風呂に入ると交感神経が優位になるので、逆に眠りにくくなってしまいます。睡眠の質を考えるうえでは、お風呂の温度はなるべくぬるめにすることを心がけましょう。
温かい飲み物で体温を上昇させる
温かい飲み物は、体の内側から体温の上昇を促す作用があります。上述したように深部体温が下がると眠気も自然と生じるので、睡眠前に温かい飲み物を飲むことは、睡眠のリズムを作るという点で非常に理にかなっています。
ただし、カフェイン入りのものを飲むと目が冴えて眠りにくくなるので、白湯やカモミールティーといった、ノンカフェインのものが良いでしょう。
就寝前はリラックスする
心身が緊張していると入眠しにくくなってしまうため、就寝前はなるべくリラックスすることが大切です。
リラックスする方法は、アロマを焚く、ヒーリングミュージックを聴く、読書をするなど人それぞれです。自分なりの方法でリラックスしながら、就寝前の時間を過ごしましょう。
体に合う寝具(マットレスや枕など)を使う
睡眠環境を見直して体に合った寝具を使うことも、眠りの質を高めるうえでは重要です。今利用しているものよりも自分に合った寝具を選ぶことで、熟睡できるようになるかもしれません。
特に、寝具の硬さや体圧分散性は睡眠の質に大きく影響するので、それらの点を意識して寝具選びを行うことは、睡眠環境の改善に繋がります。
まとめ
春~夏にかけては、夜の気温が高いことから内臓の体温である「深部体温」がなかなか下がらずに、寝苦しく感じることが多いです。
エアコンを使って寝室の温度や湿度を眠りやすい環境に整えたり、麻などの吸水性に優れた素材で作られたパジャマを着たりして、対策を行うことを心がけましょう。
寝苦しい中でも少しでも質の高い睡眠をとることができるように、寝る前にストレッチを行ったり、就寝時間の約90~120分前に入浴したりといったことを意識することも重要です。