睡眠不足が血圧に影響を及ぼすということを、耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
睡眠不足によるデメリットは高血圧以外にもさまざまなことが挙げられますが、睡眠不足の方にとってはそれらも気になるところでしょう。
睡眠不足を解消するためには、睡眠時間だけでなく睡眠の質にも意識を向ける必要があります。
この記事では、睡眠不足と血圧の関係や血圧が上がる以外の睡眠不足のデメリット、睡眠の質を高める方法などについて説明します。
睡眠不足になると血圧が上がる
睡眠不足は、自律神経の乱れを引き起こします。通常の状態であれば起床時は交感神経が優位になって血圧が上昇し、日中に最も高くなります。そして夕方に向けて副交感神経が優位になって血圧は低下し、睡眠中に最も低くなります。
睡眠不足などの睡眠の問題は、体内時計の乱れから自律神経の乱れに繋がり、高血圧発症のリスクを高める可能性があります。
睡眠時の高血圧が原因で起きるかもしれない疾患
睡眠不足は高血圧に繋がりますが、睡眠時の高血圧は睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性も考えられます。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まることで体が酸欠状態になるため、睡眠が中断される病気です。
目を覚ました後でもあらためて眠ることはできますが、眠り始めると再び無呼吸の状態になるので、慢性的な睡眠不足の状態に陥ります。寝ている間の無呼吸にはなかなか気付きにくいため、多くの潜在患者がいると考えられています。
なお、高血圧は睡眠時無呼吸症候群の原因になり得ますが、逆に睡眠時無呼吸症候群が高血圧を引き起こすケースもあります。睡眠時無呼吸症候群と考えられる症状が気になるのであれば、医療機関の受診をおすすめします。
血圧が上がる以外の睡眠不足のデメリット
睡眠不足は高血圧に繋がることが考えられますが、それ以外にも以下に挙げるようなさまざまなデメリットのきっかけになる可能性があります。
- ストレスの増加
- 太りやすくなる
- 集中力が低下する
- 病気にかかりやすくなる
それぞれのデメリットについて、詳しく説明します。
ストレスの増加
人は睡眠中に脳内の情報を整理しているため、溜まったストレスも睡眠中にある程度減少します。しかし、睡眠不足が続くと脳内での情報整理が上手く行われないため、ストレスが溜まりっぱなしになってしまいます。その結果、ストレスを感じてイライラしやすくなります。
太りやすくなる
睡眠不足が続くと、自律神経系やホルモン系の調節機能が崩れてきます。その結果、消費エネルギーの低下や食事摂取量の増加を招くので、太りやすくなることが考えられます。また、睡眠不足になると昼間に眠気を生じるため、日中の活動意欲が低下します。そのため結果的に運動不足となることも、肥満を助長する要因の一つです。
集中力が低下する
脳は睡眠中にしっかりと休息することで、本来のパフォーマンスを発揮することが可能です。しかし、睡眠不足が続くと脳が休息できないので、パフォーマンスが落ちてしまいます。その結果、集中力や思考力・記憶力などの低下に繋がる可能性が考えられます。
病気にかかりやすくなる
睡眠不足が続くと免疫力が低下するため、病気にかかりやすくなります。また、糖尿病や高血圧などといった生活習慣病の発症リスクが高くなることも、懸念されます。
睡眠は睡眠時間の確保だけではなく質も重要
睡眠不足を解消するためには、睡眠時間をきちんと確保することがもちろん重要です。しかし、睡眠においては「時間」だけでなく、「質」も重要な要素です。睡眠時間が長くても睡眠の質が低ければ、結局睡眠不足は解消されません。質をきちんと意識したうえで、睡眠をとることを心がける必要があります。
睡眠の質を高める方法
上述したように、睡眠においては「質」を意識することが重要ですが、睡眠の質を高める方法としては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 寝る前にストレッチなど軽く体を動かす
- 就寝3時間前までに夕食を摂り、規則正しい食生活を意識する
- 就寝時間の約90~120分前に入浴する
- 温かい飲みもので体温を上昇させる
- 就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
- アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
- 体に合う寝具(マットレスや枕など)を使う
それぞれの方法について、詳しく説明します。
寝る前にストレッチなど軽く体を動かす
人の体は、内蔵の体温である「深部温度」が下がることで、自然と眠気を生じるようになっています。普段は手足などの末端部分から熱を放出して温度を下げていますが、血行が悪いと上手く熱が放出されないため、不眠および睡眠の質の低下に繋がりやすいです。
足裏や手先といった末端部分のストレッチを行って血行を良くすることで、熱を上手く放出できるようになるので、質の高い睡眠をとりやすくなるでしょう。
就寝3時間前までに夕食を摂り、規則正しい食生活を意識する
規則正しい食生活を心がけることも、睡眠の質を向上させるためには欠かせません。食事をとるタイミングにも注意する必要があり、寝る直前に食事をすると、食べたものを消化するために胃腸が活発に動いている状態で眠りにつくことになります。
胃腸が活発に動いている分、肉体が熟睡できない状態になっているので、睡眠の質が低くなってしまいます。食べたものを胃腸が分解し終わるには、約3時間が必要なので、寝る時間から逆算して夕食を食べる時間を決めましょう。
就寝時間の約90~120分前に入浴する
寝る直前の入浴は睡眠の質を高めるうえでは好ましくないので、就寝時間の約90~120分前に入浴することを意識しましょう。入浴時間は25~30分程度、お湯の温度は38℃程度のぬるめが理想的です。そうすることで副交感神経が優位になるので、睡眠の質向上に繋がります。
熱いお風呂に入ることが好きな方もいらっしゃると思いますが、熱いお風呂に入ると交感神経が優位になって逆に眠りにくくなってしまうので、睡眠の質を高めるという観点からは控えるべきです。
温かい飲みもので体温を上昇させる
温かい飲みものは、体の内側から体温の上昇を促す作用があります。
上述したように深部体温が下がると眠気も自然と生じるので、睡眠前に温かい飲みものを飲むことは、睡眠のリズムを整えるという点で非常に効果的です。ただし、カフェイン入りのものを飲むと目が冴えて眠りにくくなるので、白湯やカモミールティーといったノンカフェインのものを選ぶようにしましょう。
就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
アルコールは、神経に作用したり代謝によって尿意をもたらしたりする可能性があるので、睡眠前にお酒を飲むことは控えるべきです。また、先ほども少し触れましたがカフェインには覚醒作用があります。コーヒー・緑茶・チョコレートといったカフェインを含むものを摂取することも、就寝の3〜4時間前からは控えるようにしましょう。
アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
リラックスすると副交感神経が優位になるので、眠りにつきやすくなります。ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かるも良し、アロマを焚いたり好きな音楽を聴いたりするのも良し、自分なりの方法でリラックスしましょう。
ただ、寝る直前に強い光を長時間見るという行為は、睡眠に悪影響を与える可能性が高いです。そのため、リラックスの方法にゲームや動画鑑賞を選ぶのは控えたほうが良いでしょう。
体に合う寝具(マットレスや枕など)を使う
睡眠環境を見直して体に合った寝具を使うことでも、眠りの質を高められる可能性があります。今利用しているものよりも自分に合った寝具を選ぶことで、熟睡できるようになるかもしれません。
特に寝具の硬さや体圧分散性は睡眠の質に大きく影響するので、それらの点を意識して寝具選びを行うことは、睡眠環境の効果的な改善に繋がります。
まとめ
睡眠不足は高血圧に繋がる可能性があり、高血圧は睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことが考えられます。また、睡眠不足は高血圧以外に、ストレスの増加や集中力の低下といったデメリットのきっかけになりえます。
睡眠不足に陥らないようにするには、睡眠時間だけでなく睡眠の「質」を意識することが重要です。就寝時間の90~120分前に入浴することを意識したり、寝る前に温かい飲みものを飲んだりして、睡眠の質を高めることを心がけましょう。