布団に入るとすぐに「気絶したように眠ってしまう」ことがあり、病気ではないかと心配になっている方がいるかもしれません。急に意識がなくなるという点では、寝落ちと気絶は似ているため、「もしかしたら気絶したのかも」と不安になると思います。
睡眠不足が原因で気絶するように眠ってしまう場合は、睡眠不足を解消するために、日頃の生活習慣を整えることからはじめましょう。
この記事では、気絶と睡眠の違いが知りたい方に向けて、気絶したように寝てしまう原因や、両者を見分ける方法をわかりやすく解説します。規則正しい生活を送るために取り組めることも紹介するので、ぜひご一読ください。
気絶と睡眠の違い
気絶と睡眠は意識が失われる点で似ているように思えますが、いったい何が違うのでしょうか。気絶と睡眠は、それぞれ以下のように定義できます。
- 気絶とは血流の減少によって突然意識が消失すること
- 睡眠とは体内の疲れをとるメンテナンスの時間
ここからは、それぞれどのような現象なのかわかりやすく解説します。両者の違いを知ることで、自分に起きていることが気絶なのか睡眠なのか見極めましょう。
気絶とは血流の減少によって突然意識が消失すること
気絶とは、脳の血流が一時的に減少して突然意識が消失することを意味し、「失神」「脳貧血」と呼ばれることもあります。
脳の血流が減少する原因はさまざまですが、恐怖や痛みなどの強い感情が起こる、長時間立っている、突然立ち上がるといったケースで起こりやすくなるようです。
睡眠とは体内の疲れをとるメンテナンスの時間
睡眠とは、体内の疲れをとるために必要な「メンテナンス時間」のことです。睡眠には、「疲労回復」「記憶の整理」「自律神経を整える」といった役割があると考えられています。
眠ると意識は消失しますが、脳は完全に休んでいるわけではありません。記憶の整理などを行うために活動している状態です。そのため、就寝中、意識は消失しているものの、起こされると意識が戻って目覚めることができます。
なお、睡眠の役割や効果について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
気絶したように寝てしまう原因
以下に示す原因によって強い眠気を感じると、気絶したように寝てしまう場合があります。
- 睡眠障害
- 薬の副作用
- 食後の血糖値の上昇
それぞれについて詳しく説明します。
睡眠障害
不眠症の方や睡眠障害の方は、強い眠気を感じることがあります。その結果、気絶したように眠ってしまうケースもあるでしょう。
特に過眠症(ナルコレプシーや特発性過眠症、反復性過眠症など)の場合は、日中、我慢できないほどの眠気に襲われ、しばしば気絶したように眠ってしまいます。
薬の副作用
薬の種類によっては、副作用として眠気が生じる場合があります。なお、誤った方法で服用すると、副作用が強く出るケースがあるのでご注意ください。
副作用で眠気が生じている場合は、医療機関に相談し、薬の種類を変えてもらうのも選択肢の一つです。自己判断で服用を中止したり市販薬に変えたりすると症状が悪化する可能性があるので、必ず医師の判断を仰ぎましょう。
食後の血糖値の上昇
食事の内容にもよりますが、摂取するグルコース(ブドウ糖)の量が多いと、「グルコーススパイク」と呼ばれる急激な血糖値の上昇に伴って大量にインスリンが分泌されます。その結果、血糖値が急激に降下して強い眠気が生じる場合があります。
また、食後は消化管が活発に働くため、副交感神経が交感神経より優位になって、体がリラックスモードになることも眠気が生じる原因です。
そのほか、神経の活動を覚醒モードにする物質「オレキシン」が、血糖値が高くなると分泌されなくなることも眠くなる原因とされています。
気絶と睡眠の見分け方
気絶は、体の力が抜けて倒れてしまい、姿勢が保てなくなる点が特徴です。
なお、気絶した場合、脳への血流量が減少する何かしらのきっかけが存在する場合があります。恐怖などの強い感情、排便時のいきみ、長時間立つ、突然立ち上がるなどのあとに倒れた場合、気絶である可能性が高いでしょう。
もし気絶したり突然倒れたりしたら、心臓や心筋の病気である可能性もあります。また、「声をかけても応答がない」「倒れこんだ後にすぐいびきをかきだした」といった場合は、命に関わることがあるため、すぐに救急車を呼んで医療機関を受診しましょう。
睡眠は無意識の状態になりますが、その状態になるまでにはある程度の時間が必要です。そのため、「突然倒れた」「突然意識を失った」など場合は、寝ているのではなく気絶している可能性が高いでしょう。
また、気絶するように寝てしまうことは、睡眠不足の蓄積による「睡眠負債」が原因なのかもしれません。
睡眠負債は休日の寝だめでは解消できないため、毎日しっかり寝ることが大切です。慢性的な睡眠不足を改善するためにも、生活習慣を整えましょう。
ただし、気絶したように寝ることが多い場合は、単なる睡眠不足ではなく睡眠障害が隠れている可能性もあります。強い眠気を頻繁に感じる方は、一度医療機関を受診しましょう。
睡眠不足を解消するために生活習慣を整える方法
前提として、気絶したり突然倒れたりするなら、病気の可能性もあるため医療機関を受診して適切な診断を受けることが大切です。また、あまりにも眠い、眠気で日中の活動に支障をきたすなどのケースも、同様に専門家の診断を受けることをおすすめします。
「布団に入ってすぐ寝る」「寝落ちする」ことが多い場合は、睡眠不足が原因の可能性が考えられるため、生活習慣を整えて睡眠不足の解消を目指しましょう。
- 1日3食規則正しい食生活をする
- 運動をする習慣を生活に取り入れる
- お風呂に浸かって体を温める
- 就寝環境を整えて快適な空間で寝る
- 自分の体に合った寝具を使う
ここからは、上記5つの方法の詳細を解説するので、ぜひ生活に取り入れてください。
1日3食規則正しい食生活をする
生活習慣を整えるために、1日3食規則正しい食生活を心がけましょう。朝食を食べて体内時計を整え、日中のエネルギー源を補給することが大切です。
日頃の睡眠不足を解消するために、休日は遅い時間まで寝ている方も多いかもしれません。しかし、生活リズムを整えるためにも、できるだけ休日も平日と同じ時間帯に食事を済ませることをおすすめします。
また、就寝直前に食事をすると、消化活動が優先されて眠りを妨げることがあるため注意が必要です。就寝前は食事を控えるほか、覚醒作用があるコーヒーやチョコレートなどのカフェインが含まれるものも摂らないようにしましょう。
お風呂に浸かって体を温める
質の高い睡眠に繋げるためにも、お風呂に浸かって体を温めてリラックスしましょう。
人間の体には、体温が上昇したあと、下降するタイミングで眠気が促される性質があります。就寝したい約90~120分前に入浴を済ませると、ちょうど希望する時間帯に体温が下がって眠気が生じやすくなるでしょう。
入浴時には、38℃のぬるめのお湯に25分~30分程度浸かり、ゆっくりと体を温めてください。熱めのお風呂が好みの方は42℃で5分程度、半身浴をしたい方は約40℃のお湯で30分程度がおすすめです。
ただし、熱すぎるお風呂は目を覚ましてしまい逆効果になるため、湯温に気を付けて入浴しましょう。
運動をする習慣を生活に取り入れる
日中の運動を習慣にすると、疲労によって夜の寝付きが良くなる可能性があります。日頃から、ウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動を習慣にしましょう。
ただし、激しい運動は目を覚ましてしまうためおすすめできません。体温の上下によって眠気が促されるメカニズムを活かすためにも、就寝3時間ほど前に運動することをおすすめします。
また、1日だけ長時間の運動を行うのではなく、毎日少しずつでも継続することが大切です。朝から散歩すると、太陽光を浴びて体内時計もリセットできるため一石二鳥になります。
就寝環境を整えて快適な空間で寝る
快眠するためには、寝室の温度や湿度、明るさなどの就寝環境を整えて、「過ごしやすい」と感じる空間を作ることが大切です。
寝室の環境を整える時には、まず温度と湿度を調整しましょう。睡眠に適しているとされる温度は、夏場は25℃〜26℃、冬場は22℃〜23℃です。湿度は、通年50%〜60%になるように加湿器などを使って調整してください。
照明を消して暗くする、静かな環境で眠るという2点も、落ち着いて眠るために気を付けたいポイントです。
また、体がリラックスできるように、パジャマは体を締め付けない肌触りの良いものを着用しましょう。夏場は通気性が良い素材、冬場は保温性が高い素材など、季節に合わせて素材を使い分けて、一年中快適に眠れるよう工夫しましょう。
自分の体に合った寝具を使う
枕の高さやマットレスの硬さなど、自分の体に合った寝具を使いましょう。体に合わない寝具を使っていると、寝心地が悪いと感じて睡眠の質が低下する場合があります。
特に、マットレスは睡眠の質に大きく影響を与えるので、こだわって選びましょう。マットレスが硬すぎると体に負担がかかって血流が悪くなり、逆に柔らかすぎると沈み込みすぎて腰痛に繋がることがあります。
質の高い睡眠を求める方には、適度な硬さと反発力があって寝返りを打ちやすく、体圧をバランス良く分散できるマットレスがおすすめです。
もし、食生活や運動習慣などの生活習慣を整えてもぐっすり眠れない場合は、寝具に問題がある可能性があります。一度使用している寝具を見直して、体に合っていなければ買い替えを検討すると良いでしょう。
気絶と睡眠の違いを正しく理解したうえで、適切に対応しよう
気絶とは「脳の血流が一時的に減少し、突然意識が消失すること」を指し、睡眠とは「体の疲れをとるために必要なメンテナンス時間」を指します。気絶したように寝てしまう原因として、「睡眠障害」「薬の副作用」「食後の血糖値の上昇」が挙げられます。
気絶と睡眠は意識が消失する点が似ており、一見どちらなのか判断しづらいものです。両者の違いを正確に理解したうえで、適切に対応しなければなりません。
倒れた時に体の力が抜けて姿勢が保てなくなれば、気絶の可能性が高いでしょう。気絶は病気の可能性もあるので、一緒にいる方が「気絶してそのまま意識が戻らない」「倒れこんでいびきをかいている」などの状態に陥っている場合は、すぐに救急車を呼んでください。
また、布団に入ってすぐに寝落ちしてしまう場合は、慢性的な睡眠不足になっているのかもしれません。何かしらの睡眠障害が隠れている可能性もあるため、気絶と同様、気になる症状がある場合には医療機関を受診してください。
慢性的な睡眠不足が気になっている方は、この記事で紹介した生活習慣を整える方法を実践して、質の高い睡眠がとれるように努めましょう。