多忙な日々を過ごしている方のなかには、「帰宅後ソファに横になって朝まで眠ってしまった」「家に帰ると眠すぎて動けない」などの経験がある方もいるのではないでしょうか。
強い眠気も一時的なものであれば良いのですが、帰宅後すぐに眠くなる状況が続くと、何か問題があるのではと不安になるでしょう。
この記事では、仕事からの帰宅後に眠くなる原因や影響を解説します。仕事中や仕事後の対処法、睡眠の質を高める方法もあわせて紹介しているため、仕事後の眠気で悩みを抱えている方はぜひ参考にしてください。
仕事から帰宅後に眠くなる原因
仕事から帰宅後にすぐ眠くなる原因は、以下の点が考えられます。
- 睡眠不足
- 仕事の疲労やストレス
- 緊張状態の緩み
それぞれの原因を見ていきましょう。
仕事から帰宅後に眠くなる原因①:睡眠不足
仕事から帰宅してすぐ眠くなる、いつの間にか寝落ちしてしまう原因に多いものが睡眠不足です。
睡眠不足には残業が多く睡眠時間自体が確保できないケースや、ベッドに入っても次の日の仕事が気になってなかなか寝付けない(入眠障害)、睡眠中に何度も目が覚めてしまう(中途覚醒)ケースなどがあります。
慢性的な睡眠不足は、睡眠負債に繋がる恐れがあるため注意が必要です。例えば、4時間睡眠が1週間続くと、脳のパフォーマンスは2日徹夜した時と同じ程度に落ちてしまいます。
脳のパフォーマンスが落ちてしまえば、次の日の仕事にも影響がでます。思うように仕事がはかどらず、また睡眠時間を確保できない悪循環に陥りかねません。そのため、早い段階で対処する必要があります。
仕事から帰宅後に眠くなる原因②:仕事の疲労やストレス
仕事の疲れやストレスの蓄積も、帰宅後にすぐ眠くなる原因の一つです。疲労やストレスがたまると、脳や体を休ませようとする機能(恒常性維持機能)が働きます。
通常は恒常性維持機能の働きが強まっても、体内時計による覚醒力が働くため、帰宅後すぐには眠くなりません。
しかし、仕事の疲れやストレスが過度に蓄積している場合には、体はより多くの休息を求めます。帰宅してすぐに動けなくなる、寝落ちしてしまう状況が続く時は、仕事で多くのストレスを抱えていないか、疲れすぎてないか、振り返ってみるのも良いでしょう。
仕事の帰宅後に眠くなる原因③:緊張状態の緩み
一般的に、人は活動している時は緊張状態にあり、休息している時にはリラックスした状態となります。これは自律神経による自然な働きです。
仕事中は交感神経が優位に働いて体の活動性が上昇し、帰宅後は副交感神経が優位となって回復モードに入ります。
ただし、仕事中に緊張状態が続いていると、帰宅後に緊張状態が一気に緩み、急激な眠気に襲われる場合があります。過度な緊張状態の継続は交感神経と副交感神経のバランスを崩し、自律神経に影響を与えるケースもあるため、注意が必要です。
帰宅後すぐに寝るとどんな影響があるのか
睡眠不足や疲れから眠くなることは、人の体の自然な作用です。しかし、帰宅後すぐに寝てしまうと、以下のような影響がでる場合もあります。
- 睡眠の質が落ち、睡眠不足に繋がる
- 家事などが後回しになり時間が取られる
- 生活リズムが崩れる
睡眠の質が落ち、睡眠不足に繋がる
帰宅後すぐに眠ってしまうと、いざ本格的に眠ろうとする時になかなか寝付けなかったり、眠りが浅くなったりする場合があります。
極度の疲労による一時的なものであれば、あまり問題にはならないでしょう。しかし、帰宅後にすぐ眠ってしまう状態が継続すると、睡眠の質が低下し、睡眠不足や不眠症の原因となる場合があります。
家事などが後回しになり時間が取られる
人は一度眠りに落ちてしまうと、目覚めた後に「睡眠慣性」が働きます。睡眠慣性とは、目が覚めた直後に体に起こる作業能力の低下や眠気の増加のことです。
帰宅後にすぐ寝てしまい、料理や洗濯、入浴や食事など身の回りのことを後回しにすると、睡眠慣性による作業能力の低下により、家事などの作業に多くの時間が取られてしまいます。結果、帰宅後のプライベートな時間がより少なくなり、睡眠時間も減少する恐れがあります。
生活リズムが崩れる
帰宅後にすぐ眠りに落ち、眠った後に家事を行い、深夜からまた眠るといった不規則な睡眠習慣がついてしまうと、生活リズムが崩れる原因になるため注意が必要です。
生活リズムが崩れると体内時計が乱れてしまい、睡眠や血圧、体温やホルモン分泌に影響を与えます。メラトニンやセロトニンなどの睡眠に関わるホルモン分泌に影響がでるほか、肥満や高血圧などの生活習慣病の原因となる場合もあります。
帰宅後の眠気に対処する方法
帰宅後すぐの睡眠を防ぐためには、疲労やストレスをためすぎないこと、緊張状態の継続を避けることなどが重要です。ここでは、仕事中・仕事後のシーンに分け、対処法を紹介します。
仕事中にできる対処法
まずは仕事中にできる対処法です。職種や仕事の状況により難しい場合もあるかもしれませんが、できることからぜひ取り入れてください。
- お昼休みや休憩などでリフレッシュ
- 仮眠をとる
- ツボを押す
お昼休みや休憩などでリフレッシュ
仕事中の過度な緊張や疲労・ストレスを防ぐためには、休憩時間などにリフレッシュすることが大切です。リフレッシュ方法には以下のようなものがあります。
- お昼休みに美味しいランチに行く
- 水分をこまめにとり、チョコレートなど甘いものを摂取する
- 仕事の合間にストレッチをする
- 音楽を聞くなど何も考えない時間をつくる
例えば、お昼休みに職場を離れ美味しいランチを食べに行くことは、気持ちや体をリフレッシュさせる方法の一つです。
また、水分不足は体に疲労がたまる原因となるため、水分補給はこまめに行いましょう。チョコレートなど甘いものを摂取すると、脳のエネルギーとなる糖分を補給でき、疲労回復に役立ちます。
仮眠をとる
仕事後に疲れを残さない方法として、仮眠はとても効果的です。特に12時から15時くらいの仮眠はパワーナップ(積極的仮眠)と呼ばれていて、ストレス軽減や疲労回復が見込めるほか、集中力の向上や作業効率のアップが期待できます。
仮眠の時間は、15~30分程度がおすすめです。夜の睡眠に影響が出にくいうえに、頭や体がすっきりします。帰宅後に疲れてしまって動けなくなる場合が多い時は、仮眠を上手に取り入れてみましょう。
ツボを押す
仕事のストレスを緩和し、疲労の蓄積を軽減する方法に「ツボ押し」があります。ツボ押しは仕事のちょっとした合間に簡単にできる対処法です。
例えば、手のひらの中心にある「労宮(ろうきゅう)」を刺激すると、ストレスによって疲れた心を癒すといわれています。労宮を刺激する場合は、親指やボールペンなどで手のひらの中心にあるくぼみをゆっくりと押し込んでください。
そのほか、手首の少し下にある「内関(ないかん)」もストレスの軽減に効果が期待できます。
仕事後にできる対処法
次に、仕事の後にできる対処法を紹介します。
- 適度な運動をする
- 湯船につかる
- すぐに横にならない
それぞれの対処法を以下で詳しく解説します。
適度な運動をする
適度な運動はリフレッシュ効果や気分を前向きにする効果があり、疲れた体にさまざまな良い影響を与えてくれます。また、運動には覚醒効果があることから、帰宅後にすぐ眠くなる場合にも効果的です。
運動は激しいものよりも負担の少ない有酸素運動がおすすめです。具体的には下記のようなものがあります。
- 軽くランニングをする
- 一駅手前で降りてウォーキングをする
- 仕事帰りにジムで汗を流す
なお、適度な運動は睡眠にも効果があります。運動によって脳内の温度が上がり、上がった温度が下がるとともに睡眠へと誘われるためです。運動のタイミングは就寝の3時間くらい前を目安にすると、眠る際に脳内の温度が低下し、心地良い睡眠に繋がります
湯船につかる
体の疲労を強く感じる場合には、湯船にお湯をためて入浴し、体をリラックスさせましょう。お風呂には温熱効果があり、全身の血行を改善させます。血液は栄養分や酸素、免疫物質などを体中に運ぶため、入浴は全身の疲労回復に役立ちます。
お湯の温度は38℃のぬるめで、時間は25分~30分程度がおすすめです。ぬるめのお湯は副交感神経の働きを強め、体をリラックスさせてくれます。なお、寝る直前の入浴は寝つきを悪くする場合もあるため、入浴のタイミングは就寝時間の2~3時間前が目安となります。
すぐに横にならない
帰宅後はすぐに横にならず、先にお風呂や食事などを済ませましょう。帰宅後すぐに横になってしまうと、そのまま眠ってしまったり、倦怠感や疲労感で動けなくなったりする可能性があります。
体の疲労感が強い時は、あまり無理をせず、休息を取りながら少しずつ手を付ける方法がおすすめです。また、あまり多くのことをしようとせず、その日にやるべき最低限のことだけに集中すると、疲れている時でも行動に移しやすくなります。
日頃の睡眠の質を高めることも重要
疲労やストレスを回復するためには、日頃の睡眠の質を高めることも重要です。少しの工夫で睡眠の質は大きく変化します。以下で、睡眠の質を高める方法を紹介するのでぜひ実践してください。
- マットレスや枕を自分に合ったものに変える
- アロマでリラックスをする
- スマホとパソコンは就寝時間2時間前まで
それぞれ詳しく解説します。
マットレスや枕を自分に合ったものに変える
マットレスや枕は、眠っている時の体や首を支える大切な役割を果たしています。自分に合ったマットレスや枕を使用すると、理想的な寝姿勢が保たれ、快適な睡眠へと繋がります。
特に、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、帰宅後すぐに眠くなってしまう方の場合、マットレスや枕などの寝具にこだわることをおすすめします。自分に合った寝具を選ぶと、睡眠の質の向上が期待できます。
以下の記事では、枕について詳しく解説しています。こちらも併せて参照ください。
アロマでリラックスをする
横になってもなかなか寝付けない方は、アロマを試してはいかがでしょうか。リラックス効果を期待できるとされている香りがあります。これは、アロマテラピーの脳波研究でも確認されています。
眠る前にリラクゼーション効果のあるアロマを嗅いだり、枕元にアロマポットをセットしたり、方法はさまざまです。自分が一番リラックスできる方法を試してみましょう。
スマホとパソコンは就寝2時間前まで
最近はスマホやパソコンを長時間使用する方も多くなっていますが、スマホやパソコンへの依存は睡眠時間の減少に繋がります。また、スマホやパソコンの光刺激は睡眠へと導くメラトニンの分泌を低下させ、寝つきにくくなります。
そのため、スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までに抑えましょう。質の高い睡眠には、体が自然と睡眠へ誘われるような環境作りが大切です。
強烈な眠気は病気の可能性も
仕事中の仮眠や仕事後の入浴、睡眠の環境作りなど、対処しても強烈な眠気に襲われる場合は、不眠症や過眠症など病気の可能性もあります。
そのため、少しでも違和感を覚えたら医療機関を受診しましょう。悩みを一人で抱え込まず、専門機関での相談をおすすめします。
まとめ
仕事から帰宅した後すぐに寝てしまう原因には、睡眠不足や疲労・ストレス、緊張状態からの緩みなどがあります。急な眠気は体が休息を求めているサインです。仕事中のリフレッシュや仮眠、仕事後の適度な運動や入浴などを取り入れ、体に過度な疲労やストレスがたまらないように工夫してみましょう。
また、疲労やストレスの回復には質の高い睡眠も大切です。マットレスや枕を自分に合ったものに変えたり、アロマでリラックスしたりするなど対処法を実践すると、快適な睡眠に繋がります。
なお、対処法を実践しても強烈な眠気が続く場合には、過眠症などの病気の可能性もあります。医療機関を受診し、医師に自分の状況を相談してみましょう。