仕事や勉強のスケジュールが逼迫し、「寝不足」に陥る場合があります。さらに、寝不足に伴う「めまい」に悩む方がいるかもしれません。
めまいは、寝不足のほかにもさまざまな原因で引き起こされます。脳の病気によりめまいが発生する場合があるため、原因を知っておくことが重要です。
この記事では、めまいと寝不足の関係について解説したうえで、寝不足以外の原因や、めまいを予防する方法、発生した際の対処法も紹介します。
めまいと寝不足の関係
めまいとは、平衡感覚を失って、自分自身や周囲の人物・物体が動いていないのに、動いているように感じる状態を指しますが「症状」であり「病名」ではありません。また、頭痛や吐き気を伴う場合もあります。
寝不足に陥ると、自律神経(交感神経および副交感神経)のバランスが崩れ、めまいが誘発される場合があります。そのほか、寝不足の状態で三半規管が過敏に反応することも、めまいの発生に関係しています。
豊田早苗
とよだクリニック院長
寝不足によって交感神経が優位な状態になると、血管が収縮して、脳や体の平衡感覚をつかさどる三半規管へ十分な酸素や栄養が届かず、働きが悪くなってしまいます。そのため、めまいが発生するといわれています。
寝不足によってめまいが発生している際に病院を受診する場合は、神経内科もしくは耳鼻科を受診しましょう。
寝不足以外のめまいの原因
めまいは、寝不足以外の原因でも発生します。以下は、寝不足以外の主な原因です。
- 脳や内耳の病気
- 血圧
- ストレス
それぞれを詳しく説明します。
寝不足以外の原因①脳や内耳の病気
脳や内耳の病気が原因で、めまいが発生する場合もあります。以下は、めまいを引き起こす可能性がある病気の例です。
- 脳梗塞
- 脳出血
- 脳炎
- くも膜下出血
- 脳腫瘍
- メニエール病
めまいの原因が寝不足なのか、上記の病気が原因で発生しているのかを、自力で見極めるのは容易なことではありません。時間が経過しても症状が改善されない場合や、次第に悪化していく場合、何度も繰り返し発生する場合は、医療機関の受診も検討しましょう。
寝不足以外の原因②血圧
起立性低血圧症(急に立ち上がった際などに、血圧が下がること)も、めまいの原因の一つです。立ち上がった際に脳内の血流量が一時的に急減して脳が酸欠状態に陥ると、平衡中枢が不安定になり、めまいが生じます。
そのほか、高血圧の方は、服用している降圧薬が効きすぎて一時的に低血圧状態になり、めまいが発生する場合もあります。
寝不足以外の原因③ストレス
精神的なストレスによって「自律神経失調症」と呼ばれる状態(※)に陥り、めまいが起こる場合もあります。「充分に睡眠がとれる状況になり、寝不足が解消されたのにめまいが発生する」という場合は、ストレスによる自律神経の乱れが原因かもしれません。
自律神経失調症になると、めまい以外にも多種多様な症状が出現します。専門分野ごとに細分化された大病院に行くことも選択肢の一つではありますが、まずは気軽に何でも相談できる「かかりつけ医」の受診も検証しましょう。
(※)「軽度の鬱病」「神経症」「不安障害」といった病気の「症状」をまとめて指し示す用語(正式な「病名」ではない)
めまいを予防する方法
「めまいの発生を予防したい」という方は、以下の2つの方法を実践しましょう。
- 寝不足を解消する
- ストレスを溜めないように心がける
これらを実践しているにもかかわらず、めまいが発生するならば、脳や内耳の病気も疑われるので医療機関を受診するべきです。
各方法について、詳しく説明します。
寝不足を解消する
めまいの予防には「規則正しい生活」が欠かせません。仕事や勉強などのスケジュールに余裕を持たせて、なるべく徹夜や夜更かしを避け、充分な睡眠時間を確保することが大切です。
やむを得ない事情で徹夜などをした場合は、質の良い睡眠をとって、寝不足を速やかに解消しましょう。適切な睡眠時間は、一般的に6~8時間程度とされています。足りない睡眠量を補うために、昼間に15分程度の仮眠をとることも効果的です。
ストレスを溜めないように心がける
上述したように、ストレスが溜まると自律神経が乱れ、めまいが発生する場合があります。以下は、ストレス解消に役立つ一例です。
- 散歩
- 体操
- ペットの飼育
- 植物を育てる
- アロマテラピー
- 音楽などの趣味を持つ
これらの方法や自分なりのストレス解消法を組み合わせて、日頃からストレスを溜めないように心がけましょう。
めまいが発生した場合の対処法
予防に努めていても、めまいが発生する場合があります。以下は、めまいが発生した際の主な対処法です。
- 安静を保つ
- 目や耳に入る刺激を遮断する
- 薬を服用する
それぞれを詳しく説明します。
安静を保つ
めまいが起こった際は、横になるなど自分にとって一番楽な姿勢になり、しばらく安静を保ちましょう。頭を動かす動作も避け、頭の位置を低くすることが大切です。
目や耳に入る刺激を避ける
「部屋を暗くする」「音(テレビ、BGMなど)を消す」といった、目や耳から入る刺激を遮断することも必要です。
強い光を浴びると、目の神経から脳に刺激が伝わり、めまいを悪化させる場合があります。屋外の場合は、日陰(木陰、建物の陰など)に入りましょう。
豊田早苗
とよだクリニック院長
刺激を避けるために仮眠をとることも有効な対策です。30分から1時間程度の仮眠をとることで交感神経優位の状態が解消され、めまいが緩和しやすくなります。
また、仮眠ができない場合は、意識的に深呼吸を行いましょう。副交感神経が刺激され、交感神経優位な状態から副交感神経優位な状態に切り替わり、めまいが緩和できます。
薬を服用する
ドラッグストアなどでは、めまいを改善する市販薬も販売されています。薬を服用し、2時間程度眠ると症状が落ち着く場合があります。
なお、脳梗塞や脳出血といった脳の重大な病が疑われる症状(「激しい頭痛がある」「呂律が回らない」「手足が動かない」「意識が朦朧とする」など)がある場合は、自己判断で市販薬を服用するのではなく、すぐに医療機関(救急病院や脳神経外科、脳神経内科)を受診してください。
豊田早苗
とよだクリニック院長
市販薬を使用してめまいの改善を図る場合、トラベルミンやニスキャップなど抗ヒスタミン成分を含む薬は、眠気が起こります。車の運転や危険な作業は行わないように注意しましょう。
また、抗ヒスタミン成分を含む薬は、緑内障や前立腺肥大症がある場合は、症状を悪化させるため服用してはいけません。服用中の薬や持病などがある場合は、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしましょう。
寝不足を解消してもめまいが起こる場合は医療機関を受診する
上述したように、めまいはさまざまな原因で発生します。必ずしも寝不足が原因とは限りませんが、脳や内耳の病気(脳梗塞、脳出血、メニエール病など)が原因でめまいが発生している可能性があることも認識しておきましょう。
寝不足を解消しても、めまいが改善しない場合や、悪化する場合、再発する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
めまいは、寝不足が原因で引き起こされますが、寝不足だけではなく、「脳や内耳の病気」「血圧」「ストレス」によって発生する場合もあります。
めまいの予防には、寝不足を解消し、ストレスを溜めない心掛けが大切です。万が一、めまいが発生した場合は、安静を保ち、目や耳から入る刺激を遮断してください。薬の服用も効果があります。
ただし、脳の重大な病気(脳梗塞、脳出血など)が原因でめまいが発生した場合(「激しい頭痛がある」「呂律が回らない」「手足が動かない」などの症状がある場合)は、躊躇わずに救急車を呼びましょう。
救急車を呼ぶほどではないにしても、寝不足が解消しているにも関わらず症状が改善しない場合や、悪化する場合、再発する場合は、脳の病気のほか、メニエール病などの可能性もあるので、医療機関の受診を検討してください。