睡眠中、叩く・蹴るなどの激しい行動を起こしていると家族に指摘されたことがある方や、家族が睡眠中に暴れているのを見たことがある方は、無意識の行動に不安になっているのではないでしょうか。
あるいは、睡眠中の行動をいろいろ調べるうちに、「自分もしくは家族がレム睡眠行動障害かもしれない」と気になっている方もいるかもしれません。
この記事では、睡眠中に無意識に行動を起こす「レム睡眠行動障害」の症状や原因をわかりやすく解説します。そのまま放置するとどうなるのかも解説するので、ぜひ参考にしてください。
レム睡眠行動障害とは
睡眠のサイクルには「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2つの種類があります。
レム睡眠とは、体は休んでいるものの脳は働いている状態で、レム睡眠中に夢を見ることが多いです。一方、ノンレム睡眠は体も脳も眠っている状態であり、夢はあまり見ないとされています。
「レム睡眠行動障害」は、レム睡眠中に夢の内容と同じ行動を実際に起こしてしまう病気です。
通常、レム睡眠中は筋肉の緊張が緩んでいるため、体に力が入らない状態です。しかし、何らかの原因でレム睡眠中も筋肉が緊張した状態になると、異常行動を起こすことがあります。
レム睡眠行動障害は子どもから大人まで幅広く起こりますが、中高年の発症率が高い傾向にあるようです。
レム睡眠行動障害と似ている病気
レム睡眠行動障害と似た病気に、「夢遊病」と「夜驚症」があります。レム睡眠行動障害・夢遊病・夜驚症は、「睡眠時随伴症」と呼ばれる同じカテゴリーの病気です。
睡眠時随伴症には、レム睡眠中に起こるものと、ノンレム睡眠中に起こるものがあります。レム睡眠中に起こるものがレム睡眠行動障害、ノンレム睡眠中に起こるものが夢遊病と夜驚症です。
夢遊病は睡眠時遊行症とも呼ばれ、寝ている時に歩き回る病気のことをいい、行動中に周囲から声をかけられても目覚めることが難しい特徴があります。夢遊病は子どもに多く見られ、大人になると自然に治まることが多いようです。
一方、夜驚症は睡眠時驚愕症とも呼ばれ、恐怖を感じて叫ぶ、逃げ出すなどの行動が見られる病気です。夢遊病と同じく子どもに多い傾向にあります。
レム睡眠行動障害の症状
レム睡眠行動障害は、不快な夢の内容がそのまま体に反応して症状が起こるケースが多いようです。例えば、以下のような行動を起こすことがあります。
- 寝言で大声を出す
- 手足を大きく動かす
- 家のなかを歩き回る
- 壁を蹴る
行動の程度には個人差がありますが、ひどい場合は本人や家族が怪我をするケースもあります。
なお、レム睡眠行動障害は、上記の行動中に声をかけて起こすと意識が戻り、夢の内容をはっきりと覚えているところが特徴です。眠りが浅くなることが多く、人によっては朝起きた時に疲労感を感じることもあります。
レム睡眠行動障害の原因
レム睡眠行動障害の原因は、まだはっきりと解明されていません。ここでは、原因として考えられているものの一例を紹介します。
- 頭部の炎症性疾患(頭部の外傷・脳炎など)
- 神経疾患(パーキンソン病・レビー小体型認知症・多系統萎縮症など)
- アルコール
- ストレス
病気が原因となり引き起こされるケースとしては、頭部の外傷や炎症の影響、神経疾患の初期症状によるものがあります。
また、特に病気ではなくても、強いストレスが心身の負担となり突発的に発症するケースもあるようです。さらに、就寝前のアルコールによって睡眠の質が低下し、眠りが浅いレム睡眠の時間が増えて、レム睡眠行動障害に繋がっている可能性も考えられます。
レム睡眠行動障害の治療
レム睡眠行動障害は、飲酒やストレスで症状が悪化することがあるため、生活習慣の見直しなどでストレスを緩和することが大切です。
年間を通して稀にしか生じない場合は、必ずしも治療は必要ありませんが、クッションを置くなどして、ケガをしないよう睡眠環境を工夫しましょう。
異常行動により睡眠が妨げられる場合やケガのリスクが大きいと考えられる場合、健康について不安な場合などは、医療機関でご相談ください。
レム睡眠行動障害は殴る蹴るなどの行為によって周囲の人を傷つける可能性があり、転倒すると患者本人が傷つくこともあります。
レム睡眠行動障害で受診するなら、脳神経内科や精神科・睡眠専門外来がおすすめです。
もし病院選びで迷ったら、まずかかりつけ医に相談するのも一つの手です。
まとめ
レム睡眠行動障害は、睡眠中に夢の内容と同じ行動を起こす病気であり、殴る蹴るなどの暴力に繋がるケースもあります。レム睡眠行動障害は幅広い年代に見られますが、高齢者の発症が多いようです。
炎症性疾患や神経疾患などの病気が原因だといわれることがありますが、はっきりとした原因はまだ解明されていません。人によってはアルコールやストレスによって引き起こされる可能性もあるため、アルコールは控えてストレスを溜めない心がけが大切です。
レム睡眠行動障害を放置すると周囲も本人も怪我する恐れがあるため、気になることがあれば医療機関を受診しましょう。