椎間板ヘルニアは、主に腰の痛みや下肢のしびれが症状としてあらわれる病気です。日中の活動に支障が出るだけでなく、痛みのせいで睡眠をとりにくくなる厄介な病気として知られます。
椎間板ヘルニアを悪化させずに楽な状態で眠るには、寝具として使うマットレス選びにこだわることが大切です。
この記事では、椎間板ヘルニアの概要や楽な寝姿勢、マットレス選びのポイントを詳しく解説します。
椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアとは、背骨の間のクッション材である椎間板が変形し、神経を圧迫してしまう病気のことです。
代表的な症状としては、坐骨神経痛といわれる腰・下肢の痛みやしびれのほか、足に力を入れにくくなることなどが挙げられます。
また、どの部分の腰椎に椎間板ヘルニアが発生しているかによって、痛みが生じる場所が変わってくるのも特徴の1つです。一般的には、お尻や太ももの裏に痛みが生じるケースが多いといわれています。
椎間板ヘルニアの主な原因
椎間板ヘルニアの主な原因は、日常生活の負担による椎間板の変性です。
例えば、重いものを持ち上げる、激しいスポーツを行うなど、腰に負担がかかる動作が多いと椎間板を痛めてしまい、椎間板がすり減ると椎間板ヘルニアに繋がる場合があります。
このほか、加齢や遺伝的要因も原因となる要素です。
神田良介
北千束整形外科 院長
遺伝的要因にはあまり特異的な変性の形はありませんが、ここに環境因子的要因ということを含めた上、特に家族集積性において過度の負荷を椎間板に与えやすい状況下では、椎間板が潰れやすいとか、破錠しやすいとかが起こりやすいと考えられます。
椎間板ヘルニアを治療する方法
椎間板ヘルニアの治療方法には、主に保存療法と手術の2種類があります。保存療法とは、投薬治療や注射、コルセットなどの装具療法、リハビリなどをとおして、痛みを始めとした症状の対処を行う治療を指します。
疾患を抱える方の約半数以上は手術をしなくても数ヶ月程度で痛みが改善するといわれており、重度の椎間板ヘルニアでない場合は保存療法を選択するケースが多いです。
保存療法で痛みが改善しない場合や痛みがひどい場合、また神経症状が著しい場合は手術での治療を行うケースが多いです。手術の方法によってメリットやデメリットが異なるため、受ける際は医師と相談したうえで慎重に決めましょう。
神田良介
北千束整形外科 院長
椎間板ヘルニアにおける手術的過料は、近年めざましく発展しており内視鏡下の手術では状況により3日で退院できる場合や、また複雑なものでも3週間以内で退院できる場合が多いです。
術後は腰椎用コルセットの装着はマストです。さらにリハビリはオペに至ったヘルニアの症状により様々ですが腰椎の場合はまずは歩行訓練を行います。加えて体幹や下肢の筋力訓練、神経症状に対しての物療や電気的治療も行います。
椎間板ヘルニアの方がマットレスを選ぶ際のポイント
椎間板ヘルニアによる痛みを抑えるためには、普段どれだけ腰に負担をかけないで過ごせるかが重要です。
負担を減らすには「重い荷物を持たない」、「無理な姿勢をとらない」などさまざまなポイントが挙げられますが、腰への負担を考慮するうえで特に重視したいポイントは眠る時に使うマットレス選びです。
使っているマットレスの種類によっては、腰への負担が増えてしまう可能性があります。腰の痛みに睡眠を妨げられないためにも、腰に優しいマットレスを使いましょう。腰に優しいマットレスを選ぶポイントは下記の3つです。
- 体の曲線にフィットするマットレスを選ぶ
- 体圧分散性が高いマットレスを選ぶ
- 厚みがあるマットレスを選ぶ
各ポイントの内容を以下で詳しく紹介します。
体の曲線にフィットするマットレスを選ぶ
腰への負担を考慮するなら、体が沈み込み過ぎずに体の曲線にフィットする「適度な柔らかさ」と「程よい反発力」があるマットレスを選びましょう。体が適度に沈み込むことで、腰椎への負担を和らげて腰への負担が軽減しやすくなります。
しかし、マットレスが柔らかすぎても体に負担がかかるため注意が必要です。腰への負担を抑えるためには、ある程度の反発力も兼ね備えた丁度よいマットレスを使うことが大切です。
なお、硬すぎるマットレスは腰の負担が増える原因となるため、注意してください。硬めのマットレスは反発力が高く、体が沈み込みにくい特徴があります。
そのため、肩や背中、骨盤などの出っ張った部分で体を支えることで腰椎がしなってしまい、腰の痛みに繋がる場合があります。
体圧分散性が高いマットレスを選ぶ
体圧分散とは、寝ている時に体にかかる圧力(体重による負荷)を分散させることを意味します。各マットレスで体圧分散の性能は異なりますが、腰に負担が少ないマットレスを探している方には体圧分散性の高いマットレスがおすすめです。
体圧分散性の高いマットレスは広い範囲で体を支えてくれるため、一部分だけに負担が集中せず、腰の痛みを始めとした体の不調を防ぎやすくなります。
マットレスの中でもウレタンマットレス、ラテックスタイプマットレス、ポケットコイルマットレスは体圧分散性が高い製品が多いため、ぜひ試してください。
厚みがあるマットレスを選ぶ
長年使い続けてヘタリが進んだマットレスは、体の一部が沈み込みやすくなり、腰の自然なS字カーブを保つことが難しいです。そのまま放置してヘタったマットレスを使用していると、寝ている間に姿勢が崩れて、腰椎に持続的に圧力がかかり続ける可能性があります。
また、マットレスの厚みが薄い場合も同様です。マットレスが薄すぎると体が床板についてしまい、圧迫感が生じる可能性があります。腰の負担が増える場合もあるため、マットレスは横になった時に底つき感がない製品を選びましょう。
一般的にはマットレスの厚さが10cm以上あれば、体格に関係なくしっかりと体を支えてくれるといわれています。心配な方は20cm〜25cm程度の厚みがある製品を選ぶと良いでしょう。
椎間板ヘルニアでも楽に眠れる寝姿勢
眠る際に椎間板ヘルニアによる腰の痛みが気になる場合、体への負担が比較的少ない仰向け寝、または痛い方やしびれている方を上にした横向き寝で眠ることがおすすめです。
ほかの寝姿勢としてはうつ伏せ寝も代表的ですが、うつ伏せは神経を圧迫して症状を余計に悪化させる可能性があり、また、腰が緊張しやすく痛みが出やすい姿勢のため、椎間板ヘルニアを患っている方はできるだけ避けましょう。
また、仰向け寝や横向き寝で眠っても腰が痛む場合は、寝姿勢に少し工夫すると痛みを解消しやすくなります。以下では楽に眠るためのコツを寝姿勢ごとに紹介します。
仰向け寝の場合
仰向け寝で腰の痛みを感じる場合は、膝を立てた姿勢で眠ると良いでしょう。膝を立てて眠ると、腰が丸まって痛みを感じにくくなります。
「膝を立てる姿勢を維持すると疲れる」と感じる方は、膝やふくらはぎの下にクッションや座布団を敷くと楽になります。
横向き寝の場合
横向き寝の姿勢で腰に痛みを感じる場合は、腰のくびれ部分に幅10cm程度になるように折りたたんだタオルを敷いてみましょう。タオルの厚みで腰部を支えることで、痛みを和らげることができます。
神田良介
北千束整形外科 院長
寝返りが打ちやすいようにマットレスや布団はあまり柔らかすぎない方がいいです。
しかし、硬すぎると必ず腰を痛めます。また、覚醒してから起き上がる際の姿勢も重要です。目が覚めて体が固まった状態で起き上がると動きにくい筋肉を無理やり使ってときにはぎっくり腰のように腰が攣ったり炎症を起こすことがあります。
ゆっくり優しく起き上がることを心がけると良いでしょう。
腰に負担をかけないために注意すること
腰に負担をかけないために注意することは、睡眠関連と睡眠以外の注意点に分けられます。
それぞれ、順番に解説します。
睡眠関連で注意すること
腰に負担をかけないために、うつ伏せ寝や手枕などの首や腰に負荷をかける寝方をするのはやめましょう。睡うつ伏せで寝ると、首を横に大きくひねる姿勢となり、頚椎に強いねじれと圧迫がかかります。
さらに、腰も反った状態になりやすく、腰椎にも過度な負担が加わるため、推奨できません。
また、手を枕代わりにしたり、枕の高さが合っていなかったりすると、首の筋肉や神経を圧迫する可能性があるため注意が必要です。
腰に負担をかけないためには、背骨の自然なカーブを保ちやすい仰向け寝や、膝を軽く曲げた横向き寝が適しています。
ほかにも、寝具の高さや硬さも重要で、自分の体に合った枕とマットレスを選ぶことが、快適な睡眠と腰の負担軽減に繋がるポイントです。
睡眠以外で注意すること
腰に負担をかけないために、睡眠以外で注意することは主に以下のとおりです。
- 重いものを中腰で持ち上げる
- 長時間の前かがみや座りっぱなしの姿勢
- 激しい運動やスポーツ
- 自己流のマッサージ
それぞれ、順番に解説します。
重いものを中腰で持ち上げる
中腰の姿勢で重いものを持ち上げると、腰椎に強い圧力が集中し、椎間板への負担が一気に高まります。特に腰を前に曲げた状態は、腰に負担がかかります。
荷物を持ち上げる際は、膝をしっかりと曲げて腰を落として荷物を体に引き寄せてから持ち上げましょう。
また、「重い」と感じた時は無理をせず、周囲に助けを求めると良いです。
長時間の前かがみや座りっぱなしの姿勢
座っている状態や前かがみの姿勢は、一見楽に見えても、実は立っている時以上に椎間板へ圧力がかかっています。特に猫背の状態では腰への負荷がさらに大きくなり、痛みやしびれの悪化を招きやすいです。
デスクワークやスマホの操作時には、背筋を伸ばして骨盤を立てることを意識しましょう。
また、30〜60分ごとに立ち上がって軽く歩いたり、ストレッチを取り入れたりすると、血流が改善されて腰への負担も軽減されます。椎間板ヘルニアを悪化させないためにも、日常の姿勢を整えましょう。
激しい運動やスポーツ
ジャンプやひねり動作を伴う激しい運動やスポーツは、腰椎に瞬間的かつ強い負荷をかけるため、椎間板ヘルニアの方は注意が必要です。
運動を取り入れたい場合は、医師や理学療法士と相談しながら、腰に負担をかけにくいウォーキングやストレッチ、水中運動などから始めましょう。自己判断での再開は避け、回復の段階に応じた運動強度を心がけることが重要です。
自己流のマッサージ
椎間板ヘルニアの痛みを自己流のマッサージで緩和するのは避けましょう。
素人判断で無理に筋肉を押したり揉んだりすると、神経や周辺組織を傷つけるリスクがあります。特に、炎症が起きている部位やヘルニアの突出部分を刺激すると、かえって症状を悪化させる可能性があります。
根本的な改善を目指すのであれば、医師に相談の上で治療法等を相談しましょう。どうしても家族に頼む場合もまずは医師に相談し、アドバイスを受けてから行ってください。
まとめ
椎間板ヘルニアは、重いものの持ち上げ方や姿勢などの日常の過ごし方に気をつけつつ、寝姿勢やマットレスにも気を配りましょう。特に自分の体を支えてくれる役割を持つマットレスは、腰への負担を減らすうえで重要なアイテムです。
現在使用しているマットレスで腰への負担を感じる方は、新しい製品への買い替えを検討すると良いでしょう。
普段の過ごし方やマットレスに気をつけても痛みがひどい場合は、無理せず医療機関に相談することをおすすめします。
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