朝起きた時に体がぼんやりと熱い、あるいは頭痛や倦怠感が続く場合、心因性発熱の可能性があります。
心因性発熱はストレスが原因のため、熱を下げる解熱剤を飲んでも改善されにくい症状です。そのため、寝不足で体が熱く体調がすぐれない時は、ストレスを解消できる対処法を行いましょう。また、症状によっては医療機関の受診も検討してください。
この記事では寝不足で体が熱くなる心因性発熱の原因や対処方法を分かりやすく解説します。
寝不足で体が熱くなる原因
寝不足で体が熱くなる、あるいは微熱が続き、病院で検査を受けても異常がないといわれたり、解熱剤でも熱が下がらなかったりすることがあります。これらの症状を心因性発熱と呼びます。
心因性発熱の微熱は風邪をひいた時の発熱とメカニズムが違い、主な原因はストレスです。
例えば、学校や仕事で人に会うなどの精神活動や、残業や介護疲れなどで慢性的なストレス状況が続くと、自律神経のうちの交感神経が優位になり深部体温が上昇しやすくなります。
また、睡眠は副交感神経を優位にする働きがあり、十分な睡眠を確保できていればストレスを軽減できます。しかし、寝不足が続くと、かえってストレスをためてしまいます。
つまり、普段の生活や睡眠不足で心理ストレスを多く抱えていると、交感神経が過剰に働き体温が上昇するため、心因性発熱を発症しやすくなります。心因性発熱が慢性的に続くと心身に悪影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすので、なるべく早めに対処しましょう。
関根一真
アーチクリニック 院長
心因性発熱が続くと、腹痛や頭痛などの身体症状の出現、不眠や気分不快などの精神症状の悪化を起こす可能性があります。
寝不足で体が熱い場合の対処法
心因性発熱は、ストレスにより交感神経が活発になっているため、体が微熱を持っている状態です。そのため、リラックスして発熱の原因であるストレスを解消したり、交感神経の働きを抑えたりすれば、熱が下がる可能性があります。
リラックスしたいと考えている方は、次の方法を試してみましょう。
- 寝不足を解消する
- お風呂に浸かる
- アロマを焚く
- 適度な運動を行う
なお、上記の方法はあくまでも一例で、自分に合った方法でリラックスすることが重要です。
寝不足を解消する
睡眠には副交感神経を優位にする働きや、ストレスに対応するホルモンを分泌する働きがあります。しかし、寝不足だと副交感神経が整わず、ホルモンの分泌量が減少するため、ストレスを溜め込みやすくなります。
つまり、寝不足を解消すれば、ストレスが軽減され、心因性発熱を改善できる場合があります。心因性発熱の治療法では生活指導が重視されており、睡眠時間を十分確保することは重要です。
寝不足で体が熱い場合は、まずは十分な睡眠がとれるように生活リズムを見直しましょう。生活リズムが整うと、自然と規則正しい睡眠リズムに繋がります。
また、寝不足が続いてしまう方や睡眠時間の確保が難しい場合などは、夜の睡眠だけでなく、日中に15〜30分の仮眠をとることがおすすめです。仮眠により脳がリフレッシュされて、心身がリラックスできます。
お風呂に浸かる
入浴には疲労回復のほかに、リラックス効果もあります。また、人間は体温が上昇してから下がり始めるタイミングで眠気が誘発されるので、お風呂に浸かることで睡眠の質を高められます。
就寝の約90~120分前に入浴を済ませると、ベッドに入るタイミングで体温が下がり始めるため、自然な眠気が促されて眠りやすくなります。
また、ゆっくり湯船に浸かると体内の疲労物質や老廃物が流れやすくなるため、疲労回復効果も期待できます。ゆっくり浸かる場合は、高温ではなく約38℃のぬるま湯で25~30分程度の入浴がおすすめです。
アロマを焚く
アロマは、種類によっては副交感神経に作用し、抗不安作用、鎮静作用、抗うつ作用などのストレス軽減効果があるため、ストレスの改善が見込まれます。自分好みのアロマを見つけ、ティッシュやハンカチに1~2滴垂らして枕元に置くと、リラックスした状態で睡眠がとれます。
また、入浴時にアロマを湯に入れる沐浴法(もくよくほう)は、入浴とアロマの相乗効果が期待できるのでおすすめです。
適度な運動を行う
ジョギングやウォーキングなどの適度な運動をすると、ストレスを発散できます。また、運動による肉体的疲労は心地良い眠りを生み出すので、睡眠の質の向上も期待できます。
ただし、厳しい運動は身体にストレスを与えるため、寝付きが悪くなる場合があります。寝不足を解消するためには、午後に軽く汗ばむ程度の、負担にならない有酸素運動が効果的です。
寝不足で体が熱い場合に気をつけるポイント
寝不足で体が熱い場合の対処法を実施する際は、次のポイントに気をつけましょう。
- 暴飲暴食をしない
- 飲酒・喫煙を控える
- 心因性発熱では解熱剤が効かない場合がある
寝不足で体が熱い場合に気を付けるポイントを順番に解説します。
暴飲暴食をしない
人によっては食べることでストレス発散に繋がる場合がありますが、食べ過ぎると生活習慣病の原因になってしまうので注意が必要です。
一方で、暴飲暴食を続けた方が、食べることに罪悪感を持ち食欲を抑えようとすると、かえってストレスの原因になってしまいます。
ストレス解消のために、反動でまた食べ過ぎてしまう悪循環に陥る場合があります。暴飲暴食をしてしまう方は食事内容を見直したり、ほかのストレス解消法を見つけたりするなどして、食欲をコントロールすることが重要です。
飲酒・喫煙を控える
人によっては飲酒や喫煙でリラックスできる場合がありますが、飲みすぎ、吸いすぎは健康被害をもたらします。
アルコールは少量なら気持ちをリラックスさせたり、寝付きを良くしたりする効果はありますが、眠りが浅くなる効果もあります。寝付きは良くなりますが、夜中に覚醒してしまうことで睡眠の質が下がる可能性もあるので、おすすめできません。
また、喫煙をするとリラックスしたような感覚を得られます。ただし、実際は、喫煙できないことによるストレスが、喫煙をしたことで元に戻っただけに過ぎず、本当の意味でのストレス解消とはなっていません。
アルコールや喫煙でのストレス解消は難しいとされています。また、アルコールや喫煙を摂取し続けると健康被害をもたらすリスクがあるため、体調に問題がある方は、なるべく控えましょう。
心因性発熱では解熱剤が効かない場合がある
心因性発熱は、風邪のような感染症の発熱と仕組みが違うため、解熱剤が効かない可能性があります。そのため、心因性発熱の時に解熱剤を飲んでも、体調不良が改善されない場合が多いです。
なお、精神安定剤や抗うつ薬が有効な場合もあります。ただし、これらの薬を服用する場合は、自己判断で服用するのではなく、必ず医師に相談し指示を仰ぎましょう。
医療機関の受診も検討する
上記の対処法を実践しても効果がない場合や、症状がひどい場合は医療機関を受診しましょう。
心因性発熱の治療方法は、生活指導以外に心理療法や薬物治療などがあります。医療機関を受診すれば、自分に合った治療を受けられるので、検討をおすすめします。
関根一真
アーチクリニック 院長
心因性発熱に関しては、心療内科が専門です。最初は発熱のため、内科に受診することが多いのですが、「原因不明だが、検査は異常がないので大丈夫」と言われてしまった場合には心療内科への受診をおすすめします。
まとめ
寝不足で身体が熱くなるのは、心因性発熱の可能性があります。心因性発熱は、ストレスにより交感神経が優位になったことで発熱してしまう症状で、長引くと心身に影響を及ぼします。
睡眠は副交感神経を優位にする働きを持つため、寝不足になると心因性発熱を発症しやすくなります。そのため、リラックスしてストレスを解消したり、副交感神経を優位にしたりして、十分な睡眠をとりましょう。
また、体が熱い場合、心因性発熱以外の病気の可能性も考えられるので、医療機関の受診を検討しましょう。