頭痛を経験したことがある方は多いと思いますが、なかでも「睡眠中に頭痛で目が覚める」「睡眠不足もしくは寝すぎで頭痛がする」など、睡眠に関連する頭痛の悩みはつらいものです。
頭痛は痛みの具合に関係なく、仕事や家事など日中の活動にも支障をきたすため、頭痛が生じた時の対処法を正しく理解しておきましょう。
この記事では、睡眠に関係する頭痛の特徴や症状、対処法を紹介します。睡眠中のひどい頭痛に悩まされている、または起床後に頭痛がするなど悩んでいる方は、参考にしてください。
睡眠中に痛みで目が覚める睡眠時頭痛とは
頭痛には症状によっていくつか種類がありますが、睡眠中に起こる頭痛は「睡眠時頭痛」の可能性があります。
睡眠時頭痛とは、睡眠中に一定の時間になると頭痛が生じて目が覚める病気です。頭痛により起きてしまうことから「目覚まし頭痛」とも呼ばれます。
以下では、より詳しい特徴や症状について解説します。
睡眠時頭痛の特徴
主な睡眠時頭痛の特徴には以下のものが挙げられ、該当する場合は睡眠時頭痛の疑いが強くなります。
- 睡眠中のみ頭痛が起こり必ず目が覚める
- 月に10回を超えて頭痛で目が覚める状態が3ヶ月以上続く
飲食やテレビの視聴など、周囲からすると一見「頭痛があるようには見えない行動」を起こすと痛みが和らぐ傾向があるのも、睡眠時頭痛の特徴の一つです。
なお、睡眠時頭痛は、女性や50歳以上の中高年が発症しやすいといわれています。
睡眠時頭痛の主な症状
睡眠時頭痛の主な症状は、ズキズキする痛みや一定のリズムで繰り返す痛み、鋭利な痛みが15分以上続くといったことがあります。
また、頭痛の範囲は前頭葉から側頭部にかけて、または全体的な痛みが生じる場合が多いようです。
痛みの強さは病気の重さと相関していないことが多いため、頭痛が継続する場合は、医療機関の受診を推奨します。
宮本倫行
練馬光が丘病院脳神経外科 主任部長
症状は軽度から中等症が多いものの、脳腫瘍や水頭症などでも睡眠時頭痛と同じような頭痛を呈する場合があります。頭痛が続くようでしたら、医療機関を受診して医師に相談しましょう。
特に激しい痛みや体のしびれ、けいれんや高熱といった症状がある場合は、速やかに受診するのが望ましいでしょう。
睡眠時頭痛の治療方法
睡眠時頭痛の予防にはカフェインが有効とされています。睡眠時頭痛が続くようであれば、寝る前に睡眠に影響を出さない程度のカフェインを含むコーヒーの摂取も良いかもしれません。
治療としても、カフェインをとると痛みが治まることがあります。ただし、こちらも再度の睡眠障害をきたすことがあるため、摂取量に注意しましょう。
医療機関を受診する場合、睡眠時頭痛をはじめとした多くの頭痛は、主に頭痛外来や脳神経内科、脳神経外科を訪れることになります。
宮本倫行
練馬光が丘病院脳神経外科 主任部長
外来を受診されたら、まず診断が正しいかどうか検査を施行します。脳CTや脳MRIで頭蓋内に病気がないかを評価し、なければ片頭痛や群発頭痛などほかの頭痛の可能性を問診から評価します。この過程を経て、睡眠時頭痛という診断となります。
治療として、まずは睡眠時の姿勢などにより筋緊張性頭痛が隠れている場合があります。このため、寝具や枕が適切かどうかの指導を行います。これでも改善しない場合にカフェイン摂取や薬剤投与を検討します。
寝すぎや睡眠不足で生じる頭痛の種類
睡眠中に痛みが生じる睡眠時頭痛だけでなく、寝すぎや睡眠不足によって頭痛が生じる場合もあります。ここでは、睡眠に関係する主な頭痛として、以下の2種類の頭痛を紹介します。
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
それぞれ特徴を解説するので、把握しておきましょう。
片頭痛
片頭痛は、ズキンズキンとした脈をうつような痛みが生じる頭痛です。頭痛というとすべて片頭痛と思っている方も多いですが、症状や頻度、検査により医師が診断する頭痛のなかの一つの種類となります。
さまざまな要因で敏感になった脳の血管が拡張・収縮を起こして、片頭痛が生じると考えられています。
また、片頭痛は目の前がチカチカするといった症状が予兆としてあらわれることもあります。このような症状のあとに頭痛が生じた場合は、片頭痛が疑われるでしょう。
片頭痛自体は決して珍しい病気ではなく遺伝する傾向も強いため、親が片頭痛持ちの場合は子どもも片頭痛になることが多いようです。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、一般的に日常生活で最も多い頭痛とされ、疲れが溜まった時や寝すぎた時に生じやすい頭痛です。症状としては、主に後頭部・側頭部に鈍痛や締め付け感があります。
痛み自体は軽度な場合が多く、寝込むような痛みが生じることはほとんどないようですが、痛みによってすっきりとしない状態が続くため、心身への負担が大きい頭痛といえるでしょう。
緊張型頭痛の原因は、肩こりや筋肉の疲労、ストレスなどが影響して頭痛が生じると考えられています。
睡眠時の寝姿勢が頭痛の原因になることも
前述のとおり、緊張型頭痛は筋肉の疲労や緊張が原因となり生じる頭痛です。そのため、寝姿勢が崩れた状態で長時間寝てしまうと、肩や腰に負担がかかり、起床時に緊張型頭痛が起こることがあります。
寝姿勢が崩れる原因として主に考えられるのは、使っている枕やマットレスといった寝具が体に合っていないケースです。
例えば一般的に成人の場合、一晩で数十回の寝返りを打つとされていますが、枕のサイズが小さすぎると、寝返りを打った時に枕から頭が落ちて寝姿勢が崩れます。
また、マットレスが柔らかすぎる場合は、就寝時に体重がかかりやすい腰部分が沈み込んでしまい、体が「くの字」になって寝姿勢が崩れることがあります。
正しい寝姿勢をキープするためにも、自分の体に合う寝具を使うことは重要です。正しい寝姿勢は仰向け寝・横向き寝それぞれ異なるため、以下の姿勢を意識しながら就寝すると良いでしょう。
- 仰向け寝:背中が緩やかなS字カーブを描く寝姿勢
- 横向き寝:首から背骨が真っすぐになる寝姿勢
片頭痛や緊張型頭痛への対処法
寝すぎや睡眠不足によって、片頭痛もしくは緊張型頭痛が生じた場合の対処法を紹介します。頭痛の種類によって対処法が異なるため、状況に応じて適切な対処法を実践してみてください。
なお、頭痛には重篤な病気が隠れている可能性もあります。医療機関では片頭痛や緊張性頭痛に対して薬物療法などの専門的な治療を受けられます。
症状が長期間続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関を受診するよう心がけましょう。
片頭痛の対処法
片頭痛の主な対処法には、以下のものが挙げられます。
- こめかみや後頭部などのズキズキしているところを冷やす
- 暗くて静かな部屋で横になる
- カフェインを摂る
- 内服治療
片頭痛は外部からの刺激に反応して脳の血管が拡大・縮小することで炎症反応を起こし、痛みが生じるため、冷やしたり血管収縮作用があるカフェインを摂取したりして安静にすると、痛みが和らぐ可能性があります。
片頭痛の内服治療では痛みが無くなることを目的に鎮痛剤を投与します。効果がなければ徐々に作用の強い薬にしていきます。近年、薬の種類が増えているので、様々な方法で痛みのコントロールをしていきます。
緊張型頭痛の対処法
緊張型頭痛の主な対処法には、以下のものが挙げられます。
- 首周りを温める
- ストレッチをする
- 枕を自分に合ったものに変える
- 内服治療
- 非薬物療法
緊張型頭痛は頭部周囲の筋肉痛によって生じる頭痛のため、筋肉をほぐして血流を良くすると、痛みの解消に繋がる場合があります。
また、就寝時に緊張型頭痛が生じた際は、使用する枕を替えることで首への負担が軽減され、痛みが和らぐ可能性があります。
緊張性頭痛では日常生活に支障が出る場合に疼痛薬や筋肉をほぐす薬を投与します。非薬物療法は精神療法や鍼治療、神経ブロックなどの治療で、多くの緊張性頭痛の方が対象です。
まとめ
睡眠時にズキズキした頭痛で目が覚めるのは、睡眠時頭痛の可能性があります。そのほか、寝すぎや睡眠不足でも片頭痛や緊張型頭痛といった頭痛が生じるケースがあるため、覚えておきましょう。
睡眠に関係する頭痛には複数の種類があり、それぞれ対処法が異なるため、症状を把握して適切に対処することが大切です。
なお、頭痛には重篤な病気が隠れている可能性もあるため、症状が気になる場合には医療機関を受診して適切な診断を受けましょう。