昼食を食べた後などに、突然の眠気に襲われた経験のある方は多いのではないでしょうか。食後に強い眠気が生じる主な原因は、血糖値が急激に変動する「血糖値スパイク」と呼ばれる現象にあります。
食後にやるべきことがあり、強い眠気が生じると困る方もいるでしょう。この場合、いくつかの方法で眠気対策が可能です。
この記事では、血糖値と眠気の関係性や血糖値スパイクが起きる原因、予防方法を詳しく解説します。
血糖値と眠気の関係性
日頃の疲れや寝不足など、眠気に繋がる原因は色々とありますが、その中の一つが血糖値の変動です。
血糖値とは、血液内にあるブドウ糖の濃度を指します。ブドウ糖は脳が活動するために必要なエネルギー源で、食事から摂取した糖質が消化されたものがブドウ糖です。
糖質を摂取した食後は血糖値が上昇しますが、すい臓から分泌される「インスリン」と呼ばれるホルモンが血糖値を調整してくれるため、過剰に変動することはありません。インスリンの働きによって、血糖値はほぼ一定の値をキープしています。
しかし、血糖値が何らかの原因によって調整ができなくなると、眠気や倦怠感に繋がる場合があります。
また、人は食事をすると全身を巡っていた血液が、消化のために胃や腸あたりに集中します。すると脳へ酸素を送る量が一時的に減るため、眠気を感じやすくなることも食後に眠たくなる原因の一つです。
詳しい予防方法は後述しますが、一般的にはゆっくりとよく噛んで食べることで、眠気を抑えられるといわれています。
食後の眠気は「血糖値スパイク」の可能性も
食後に襲ってくる強い眠気は、血糖値スパイクによる高血糖が原因かもしれません。血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇・急下降する現象のことです。
糖質を摂取した食後は血糖値が上昇しますが、通常であればインスリンの働きによって上昇しすぎないように調整される仕組みになっています。
しかし、糖質を過剰摂取するとインスリンの働きが追いつかず、高血糖になってしまいます。高血糖になると、すい臓が慌ててインスリンを大量に分泌し、その反動で血糖値が急激に下がっていきます。
青木厚
あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長
血糖値の急上昇により眠気・倦怠感が生じて、血糖値の急降下によって動悸や冷や汗などの低血糖症状が出現します。
血糖値スパイクが起きる原因
血糖値スパイクによる眠気に悩んでいる方は、この機会に原因を把握しましょう。具体的な原因を知っておけば、今度から血糖値スパイクを予防しやすくなります。
血糖値スパイクが起きる主な原因は、食べ過ぎや飲み過ぎ、早食いです。
血糖値スパイクによる眠気にお悩みの方は、食事の摂り方を見直しましょう。例えば、糖質の多く含まれた食べ物や飲み物を大量に摂取したり、早食いをしたりすると、短時間で体内に大量の糖質が入ってしまうため、血糖値スパイクの原因となります。
外食時や特別な日の食事はつい食べ過ぎ、飲み過ぎをしてしまうこともありますが、食後の眠気を防ぎたいなら避けるべきです。食事の際は食べ物や飲み物の量に気をつけたうえで、時間に余裕を持って食べることを心がけましょう。
血糖値スパイクを予防する方法
血糖値スパイクを予防するには、普段の生活習慣に気を配ることが大切です。下記の5つを心がけ、血糖値スパイクを予防しましょう。
- 1日3食食べる
- まずは野菜から食べるゆっくりとよく噛んで食べる
- バランスの良い食事を心がける
- 食後の30分以内に運動をする
以下で詳しい内容を説明します。
1日3食食べる
血糖値スパイクを予防したい方は、毎日3食しっかり食べることを意識してください。1回でも食事を抜くと1度の食事の吸収量が増えてしまい、食後の血糖値が上昇しやすくなるといわれています。
特に、朝の時間帯が忙しく朝食を抜いてしまう方は注意しましょう。朝の時間に余裕がない場合は、起床時間を早めるなど時間を作る工夫に取り組み、朝食を摂ることをおすすめします。
まずは野菜から食べる
食事の際はいきなり主食から手をつけるのではなく、まず野菜から食べることを心がけましょう。野菜を先に食べると食物繊維が糖質を包み込んでくれるため、糖質の吸収を緩やかにできます。
野菜から食べる食事の方法は「べジファースト」といわれ、血糖値スパイクの予防だけでなくさまざまな生活習慣病の予防に役立つことから、最近ではよく耳にする食べ方の一つです。
なお、理想的な食事の順番は最初に野菜、次はタンパク質を含む食材、最後にお米・パンなどの主食だといわれています。糖質が豊富な主食を先に食べてしまうと、血糖値が上昇しやすくなるため気をつけてください。
ゆっくりとよく噛んで食べる
早く食べると血糖値も急に上がりやすいことから、前述したように「血糖値スパイク」の状態に繋がりやすくなります。
血糖値の急上昇を防ぐためには、食べるものを意識するだけでなく、食べるスピードにも注意しましょう。
食べ物を口に入れたら30回噛む、1回に多くの食べものを口に入れない、食事中もこまめに水分補給し一呼吸置く習慣をつけるなどで対策できます。
一呼吸置く方法として、一口入れるたびに箸を一旦置く方法もあるため、早食い傾向の方はお試しください。
バランスの良い食事を心がける
血糖値スパイクを予防するには、食事のバランスに気をつけることも大切です。食事の内容が糖質の多いものに偏ってしまうと、血糖値が上昇しやすくなるため注意してください。
糖質が多い食事の例としては、ラーメンや丼もの、フルーツなどが挙げられます。食事のメニューを決める時は、野菜や魚など糖質を含む主食以外の食材もバランス良く取り入れましょう。
また、血糖値が急激に上昇しにくい「低GI食品」を意識して摂るのも良いでしょう。血糖値を上がりにくくするためには、上がりやすい食材を控えると良いのではと考えるかもしれませんが、血糖値が上がりやすい食品も、体のエネルギー源としては必要です。
そのため、エネルギーになりながらも血糖値が上がりにくい食品を選ぶ方法をおすすめします。おもな低GI食品は、肉や魚、乳製品、葉もの野菜、果実などです。主食ではそばや押し麦などが低GI食品といわれています。
食後の30分以内に軽い運動をする
血糖値スパイクを防ぐためには食後の軽い運動が効果的です。運動をすると体のエネルギー源であるブドウ糖が消費されるため、血糖値が下がっていきます。
運動には数多くの種類がありますが、血糖値スパイクの予防のために行う場合、特にウォーキングがおすすめです。体への負担が少なく習慣的に続けやすいうえ、ウォーキングが血糖値を下げる効果を持つという研究結果もあります。
また、食後に関係のない日中の眠気にお悩みの方は、以下の記事もご覧ください。
青木厚
あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長
食後に運動すると、全身の細胞がブドウ糖を取り入れやすい状態になるため(インスリン抵抗性の改善)、グルコーススパイクを予防できます。
日中に強い眠気を感じる場合は糖尿病の可能性も?
日中に強い眠気を感じる場合は、糖尿病の可能性も疑いましょう。
糖尿病は、体の高血糖状態が続く病気のことです。高血糖状態だと人の体を覚醒に促す物質「オレキシン」の働きが弱まり、症状として眠気があらわれると考えられています。
眠気以外には、下記の3つも糖尿病の代表的な症状です。
- 口の乾きや体重の減少
- 体力の低下
- 尿の回数が増える
上記の症状に心当たりがある方は、治療の必要があるため早めに医療機関に相談することをおすすめします。
なお、糖尿病は食事や運動療法、薬物療法で治療していく方法が一般的です。
薬物療法で治療する場合は、血糖値をコントロールするためにインスリン注射薬・飲み薬が処方されることが多いですが、薬が効きすぎると低血糖状態になってしまい、不快な症状に悩まされることもあります。
眠気が気になる場合は、普段から診てもらっている医師に相談してみると良いでしょう。
青木厚
あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長
「糖尿病かもしれない」と思った際、口の乾きや体重の減少・体力の低下・尿の回数が増えるという症状のほか、全身倦怠感がある場合には受診が必要です。
まとめ
食べ過ぎや飲み過ぎなどが原因で糖質を過剰に摂取すると、血糖値スパイクによる眠気に襲われる可能性があります。
食後の眠気を改善したい方は、食事の内容や摂り方に問題がないかを見直して、解説した血糖値スパイクを防ぐ方法を取り入れてください。
また、眠気のほかに全身倦怠感や体重の減少、口の渇きなどがある場合は、糖尿病を発症している可能性も考えられます。心配な点がある方は、一度医療機関で検査を受けることをおすすめします。