チョコレートを食べることで睡眠に良い影響があると聞いたことがあり、関係性が気になっている方がいるのではないでしょうか。
睡眠とチョコレートの関係性に関してはさまざまな意見があるため、多くの情報を理解したうえで、生活に取り入れるのか検討する必要があります。
この記事では、睡眠とチョコレートの関係性やそのほかに期待できる効果、食べる時の注意点などを紹介します。チョコレートだけに頼らず睡眠の質を向上させる方法も説明するので、ぜひ参考にしてください。
睡眠とチョコレートの関係性
睡眠の質に影響する要因として、就寝前の状態があります。体や精神が緊張していると寝つきが悪くなるため、就寝前はリラックスした状態でいることが大切です。
チョコレートには、「γ-アミノ酪酸」や「テオブロミン」といったリラックス効果が期待できる成分が含まれており、就寝前にチョコレートを食べることでリラックスできるといわれています。
よくチョコレートのパッケージに記載されている「GABA」は、γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)の略称で、このような理由から睡眠に良いチョコレートとして販売されていることがあります。
ただし、睡眠とチョコレートの関係性は諸説あり、GABAは直接摂取しても意味がないという意見もあるため、チョコレートを食べたから睡眠の質が改善できるわけではないことを覚えておきましょう。
チョコレートには健康面の効果も期待できる?
チョコレートは睡眠との関係性があるほか、健康面でもうれしい効果があるとされています。
チョコレートに含まれるポリフェノールには、抗菌作用や血管を広げる作用があり、動脈硬化の防止や血圧の低下、アンチエイジングに期待ができると考えられています。
こちらに関しては実証研究も行われており、効果に関するデータ(※)もあるようです。ただし、必ずしも効果を実感できると断言できるものではない点には注意が必要です。
齋藤幹
さいとう内科・循環器クリニック院長
チョコレートに含まれるポリフェノールによる血圧低下作用、LDLコレステロールの低下作用が報告されており、高血圧や脂質異常症の予防につながる可能性があります。
チョコレートを食べる時の注意点
チョコレートは脂肪を多く含みカロリーが高いため、過剰摂取は望ましくありません。チョコレートを食べ過ぎると栄養バランスが悪くなる可能性があるため、食べる際は適量を心がけましょう。
また、チョコレートに含まれているカフェインには気管支拡張作用や利尿作用、興奮作用などがあります。
カフェインはお茶やコーヒーなどにも含まれており、日常生活で摂取する機会が多い成分です。そのため、チョコレートを食べ過ぎるとトイレが近くなったり、寝付きがわるくなったり、睡眠に悪影響となることも考えられます。
そのほか、チョコレートの食べ過ぎによって、動悸や下痢など健康面への影響が生じる可能性もあるとされるため、「チョコレートを食べているから大丈夫」ではなく、日々バランスの整った食生活を送るよう努めましょう。
齋藤幹
さいとう内科・循環器クリニック院長
チョコレートは製品によって糖質と脂質を多く含有しており、脂質やエネルギーの過剰摂取となるため、糖尿病の方や脂質異常症の方は注意が必要です。
また、チョコレートには生理活性のあるカフェインやテオブロミンが含まれているため、妊娠中・授乳中の多量の摂取は危険性が指摘されています。
睡眠の質を高めるために気をつけたいこと
チョコレートの摂取は適量を守りつつ、睡眠の質を高められるよう改善に取り組むことが大切です。睡眠の質を高めるために心がけたいことや、おすすめの行動としては、以下のことが挙げられます。
- 規則正しい生活を心がける
- 就寝の約90~120分前に入浴する
- 夕方から夜に適度な運動をする
- 音楽を聴いてリラックスした状態で寝る
- 自分の体に合った寝具を使う
それぞれ解説します。
規則正しい生活を心がける
質の高い睡眠をとるために、日頃から規則正しい生活を心がけましょう。人の体には体内時計が備わっており、夜更かしなどの不規則な生活は体内時計を乱す原因になります。
規則正しい生活を送るためには、毎日同じ時間帯に睡眠をとれるように適度な運動をしたり、過剰な昼寝はしないようにしたりと、日中の過ごし方を工夫することがおすすめです。
また、日光を浴びると体内時計はリセットされるため、朝目が覚めたらカーテンを開けて日光を浴びるのも効果的です。
就寝の約90~120分前に入浴する
睡眠時は深部体温が1℃ほど下がり、眠気は深部体温が下がってきた時に自然と感じます。
そのため、就寝前に一度体温を上げることで、寝付きが良くなる可能性があります。
体温を上げる方法の一つとしておすすめなのが入浴です。就寝の約90~120分前に入浴することで血行が良くなって体温が上がり、ちょうど良いタイミングで深部体温が下がるため、眠気が促されやすくなるでしょう。
入浴する際のお湯の温度は、以下を目安にしてください。
- 38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度
- 42℃の熱めのお湯であれば5分程度
- 半身浴なら約40℃のお湯で30分程度
また、入浴剤を入れると保温効果が高くなり、入浴剤の香りでリラックス効果も期待できるため、試してはいかがでしょうか。
夕方から夜に適度な運動をする
軽いランニングや散歩などの適度な運動は、睡眠の質を高くする効果が期待できます。ただし、運動は1日だけすれば良いということではなく、習慣的に続けることが大切です。
また、激しい運動は睡眠を妨げる原因になるため、就寝前に息の上がるような運動に取り組むのは避けましょう。
なお、運動するタイミングは、夕方から夜(就寝の3時間くらい前まで)が効果的といわれています。余裕のある方は、運動する時間帯にも気を配りましょう。
音楽を聴いてリラックスした状態で寝る
脳がリラックスしている状態では、α波と呼ばれる波形があらわれます。
寝る前はリラックスしている状態が望ましいため、就寝前はα波を誘発する音楽を聴いてリラックスするのもおすすめです。α波を誘発する音楽としては、川のせせらぎや小鳥・虫の声などの自然音が代表的です。
逆に、アップテンポの激しい音楽や歌詞入りの曲は脳が活性化して、目がさえる可能性があるため避けたほうが良いでしょう。
なお、リラックスできる行動であれば、音楽以外にもアロマを焚いたり温かい飲み物を飲んだりするのも良いでしょう。
自分の体に合った寝具を使う
寝具は睡眠の質に大きく影響する要素なので、睡眠の質を高めるためには、自分の体に合った寝具を揃える必要があります。寝具は寝姿勢が崩れにくく、寝返りを打ちやすいものを選びましょう。
マットレスに関しては、就寝中の体にかかる重力による負荷を分散させるために、体圧分散性に優れているものがおすすめです。加えて、寝返りをスムーズに打てる適度な反発力があるかにも注目すると良いでしょう。
そのほか、枕は小さすぎないサイズを選び、不自然な姿勢にならない高さのものが理想です。就寝時の理想的な寝姿勢は、仰向け寝と横向き寝それぞれ以下のとおり異なります。
- 仰向け寝:背骨が緩やかなS字カーブを描く状態
- 横向き寝:首から背骨が真っすぐになる状態
上記の寝姿勢をキープでき、自分にとって寝やすいと感じる寝具を選びましょう。
まとめ
チョコレートに含まれているGABAやテオブロミンにはリラックス効果があることから、寝る前にチョコレートを食べることで睡眠の質が高くなる可能性があるといわれています。
ただし、睡眠とチョコレートの関係については諸説あるため、「チョコレートを摂取すれば必ず睡眠の質が高まる」と断言できるものではない点に注意しましょう。
また、チョコレートを大量に食べると健康面に悪影響を与える可能性があるため、チョコレートを食べる時は適量を心がけてください。
睡眠の質を高めたいのであれば、基本的には生活習慣や就寝前の行動、自分に合った寝具を使うといった日常生活における行動に気を配ることをおすすめします。