最近なかなか寝付けず、自分は不眠症ではないかと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
快適な睡眠は、心身ともに健康に過ごすために必要不可欠なため、入眠しにくい原因はなるべく早く突き止めて対処したいところです。
この記事では、すぐに入眠できない原因や入眠しやすくなるための対処法などについて説明します。
原因を知り、その対処法を実践することで、質の高い睡眠をとりやすくなるでしょう。
入眠とは眠りにつくこと
入眠とは、「眠りにつくこと、覚醒している状態から睡眠の状態へ移行すること」を指します。
なかなか入眠できないと、布団に入っているのにしばらく目が冴えたままというような状態に陥ってしまうことがあります。
不眠症のタイプは3つ
なかなか寝付けない時、「もしかしたら不眠症なのではないか?」と考える方もいるでしょう。
不眠の症状には入眠障害を含めて3つのタイプがあり、このような症状に加えて、生活に支障が生じている場合に不眠症と呼ばれます。3つのタイプのうち、いくつかが重なっていることも多いです。それぞれの特徴について説明します。
入眠障害
入眠障害は、布団に入ってから寝付くまでに30分以上かかり、それを苦痛と感じる状態のことを指します。
主に、日常的に精神的な不安やストレスを感じている場合になりやすいとされており、特に敏感な方だと「眠れないことで翌日に影響が出る」という不安感からさらに眠れなくなる場合もあります。
中途覚醒
中途覚醒は、寝付いた後に何度も目が覚め、その後なかなか入眠できないような状態を指します。
目が覚める回数や時間は人によりさまざまで、高齢になると表れやすいほか、寝る前にアルコールやコーヒーなど利尿作用のある飲みものを摂取する習慣がある方にも多く見られます。
早期覚醒
早期覚醒は、本来の起床時間より少なくとも30分以上早く目覚め、それ以降眠れなくなる状態を指します。
睡眠時間が短くなるので、結果的に十分な睡眠時間を確保できない状態です。中途覚醒同様に、高齢になるとあらわれやすい傾向があります。
森田麻里子
Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント
眠りたいのになかなか眠れなかったり、夜中や早朝に起きたりする場合は、不眠症の可能性があります。不眠に影響する要因は多くあり、別の病気が原因で不眠になる場合もあるため、医療機関できちんと診断を受けることが大切です。
すぐに入眠できない原因
すぐに入眠できない原因は人それぞれです。入眠できない場合に考えられる主な原因としては、以下のような点が挙げられます。
- 生活習慣の乱れ
- ストレスなどの心理的要因
- 身体的・精神的な疾患
- 服用している薬などの作用
- 睡眠環境
それぞれ、詳しく説明します。
生活習慣の乱れ
仕事の都合などで毎日の寝る時間や起きる時間が不規則になり睡眠リズムが乱れたり、引っ越しや転勤、転職などで環境が大きく変わったりする場合、不眠になりやすい傾向があります。
環境が変わったことがきっかけで不眠になってしまった場合は、慣れに伴って不眠の症状も落ち着いていくでしょう。
ストレスなどの心理的要因
ストレスや緊張は、良い睡眠を阻害する要因の一つです。日々の生活で何かしらのストレスを抱えていると、それが不眠という形になってあらわれることも考えられます。
また、前述のとおり「眠れなかったらどうしよう…」と心配することで強い不安や緊張をもたらし、意識的に眠ろうとすることでさらに不安や緊張が増長します。
ストレスの原因になっていることがわかっている場合、その原因が取り除かれれば、一時的に不眠になっても自然と眠れるようになることもあります。
身体的・精神的な疾患
身体的な疾患による痛みや不快感が入眠を妨げることもあります。
頚椎症や腰痛のほか、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)や気管支喘息(きかんしぜんそく)による呼吸困難が原因で寝付けないことも考えられます。
こういった場合は、不眠そのものよりも、根本にある身体的な疾患に対処することが重要です。
また、寝付けない、早くに目が覚める、疲れていても眠れないなどの症状は、うつ病などの精神的な疾患からあらわれることもあります。
不眠症以外の睡眠障害により眠りにくくなっている場合もあるため、気になる場合には、速やかに専門医にて診察・治療を受けましょう。
森田麻里子
Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント
不眠にはさまざまな原因があり、ほかの病気が関係している場合もあります。眠れないことで困っているなら、一度専門の医療機関を受診して診断を受けることをおすすめします。
服用している薬などの作用
身体疾患治療のための薬のなかには、副作用として不眠の症状が出る場合があります。服用している薬に心当たりがある方は、かかりつけ医に相談しましょう。
また、カフェインやニコチンの摂取も、安眠を妨げる要因の一つです。
薬自体は摂取しなければならない場合があるので避けづらい可能性もありますが、カフェインやニコチンは日々の生活でできるだけ摂取を控えることで、不眠の症状を和らげられるでしょう。
森田麻里子
Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント
膠原病(こうげんびょう)や腎臓病、アレルギー性疾患などで使われるステロイドの内服薬は、不眠の原因になることがあります。
睡眠環境
寝るまでの環境も重要な要素の一つです。周囲の環境が悪いと、すぐに寝付けなかったり何度も目が覚めてしまったりする可能性が高まります。
温度は夏場で25〜27℃、冬場で18〜20℃、湿度は通年50〜60%が理想ですが、暑すぎたり寒すぎたり、また乾燥していたり湿気が多かったりすると寝付きにくくなることがあります。
そのほか、騒音やスマホの光などにより寝付きにくくなったり睡眠の質が低下したりする場合も考えられます。
それぞれどの程度睡眠に影響を与えるかは個人差がありますが、スムーズな入眠や快適な睡眠を望むのであれば、睡眠環境をなるべく整えることを意識しましょう。
すぐに入眠するための対処法
なかなか入眠できずに困っている場合は、入眠しやすくなるための方法を試してみるのもおすすめです。
すぐに入眠するための対処法として、以下のポイントを押さえましょう。
- 足裏や手などのストレッチをする
- ぬるめのお湯に長く入る
- 起きてすぐに太陽の光を浴びる
- 適度に体を動かす
- 乱れた生活習慣を整える
- 寝る前にリラックスタイムを設ける
- 寝る直前の飲酒は控える
- 寝具を見直してみる
-
眠くなってから布団に入る
それぞれの対処法について、詳しく説明します。
足裏や手などのストレッチをする
人の体は、深部温度を下げることで眠くなります。通常は手足などの末端部分から熱を放出して温度を下げていますが、血行が悪いと上手く放出されず体の温度が下がらないため、不眠に繋がってしまいます。
足裏や手先といった末端部分のストレッチを行って血行を良くし、熱を上手く放出できるようにすることで、入眠しやすくなるでしょう。
ぬるめのお湯に長く入る
就寝する90~120分ほど前に、38℃程度のぬるま湯に25~30分ゆっくり浸かることで副交感神経が優位になり睡眠の質が高められます。
ここで重要なのは「ぬるめのお湯に長く」という点です。お湯の温度が高いと、副交感神経ではなく交感神経が優位になり興奮状態になってしまうので、かえって眠りにくくなってしまいます。
起きてすぐに太陽の光を浴びる
太陽の光のような強い光は、体内時計をリセットしてくれる効果があります。また、強い光を浴びてから14時間ほど経過すると自然と眠気が生じてくるともいわれています。
したがって、早い時間帯に太陽の光を浴びることで夜早めに眠くなり、朝も自然と早起きできるという良い生活リズムが生まれるでしょう。
適度に体を動かす
程良い運動による適度な疲労感は、心地良い眠りに繋がります。
激しい運動は交感神経を優位にして体が興奮状態になり、深部体温も上がってしまうため、運動は午前中がおすすめです。
夕方以降に運動する際は、ウォーキングやジョギング、スイミングなど、あくまでも軽めの運動にとどめると良いでしょう。
乱れた生活習慣を整える
生活習慣が乱れたままだと、不眠の症状はなかなか良くなりません。安眠したいのであればまずは生活習慣を見直す必要があります。
平日も休日もできるだけ同じくらいの時間に起床・睡眠することを心がけて、リズムを整えると良いでしょう。
寝る前にリラックスできる時間を設ける
リラックスすることで副交感神経系が優位になるので、寝る前にリラックスタイムを設けることも効果的です。
上述したようにぬるめのお風呂にゆっくりと浸かるのも良いですし、好きな音楽を聴いたり、読書をしたりするのも良いでしょう。
ただし、ゲームなどは画面からの強い光を受ける行為は、体が興奮状態になり眠りにくくなるため、あまり好ましくありません。
寝る直前の飲酒は控える
寝る前にリラックスすることは重要ですが、お酒を飲むのは控えたほうが睡眠の質は高まります。
いわゆる「寝酒」をしてしまうと、中途覚醒や早朝覚醒に繋がりやすく、安眠しやすくなるどころか睡眠の質を低くしてしまう結果になりかねません。
寝具を見直してみる
睡眠環境を見直すことで、眠りの質を高められる可能性があります。
寝具が合うかどうかは個人差があるので、今使っている寝具よりも自分に合ったものにすることで、熟睡できるかもしれません。
寝具の性質は睡眠の質に大きく影響するので、寝具選びの際にはこだわると良いでしょう。
眠くなってから布団に入る
寝つきが悪いと、睡眠時間を確保するために早く寝ようと思いがちですが、これは逆効果の場合があります。眠くないのに布団に入っても結局眠れず、「今日も眠れないのではないか」という不安や緊張がますます強くなってしまいます。そのため、眠くなってから布団に入るようにしましょう。
また、就寝時間が遅くなったとしても、起床時間は遅らせないことが大切です。続けていくうちに、寝る時間も安定しやすくなります
参考:厚生労働省健康局「健康づくりのための睡眠指針 2014 」
まとめ
なかなか入眠できない場合、ほかの睡眠障害や身体的疾患、精神的疾患が隠れている場合もありますが、それ以外にも、生活習慣の乱れやストレスなどの心理的要因、睡眠環境が良くないなどといった理由が考えられます。
ほかの病気が関係していないケースでは、ぬるめのお湯に長く入ったり、生活習慣を整えたり、寝具を見直したりすることが入眠しやすくなるためには効果的です。まずは自分のできる範囲で対処を行い、睡眠の質を高めていきましょう。