睡眠時によだれが出やすく、その原因が知りたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
よだれが発生するのは自然な現象ですが、量が多く口からたれてしまうことには原因があります。
この記事では、睡眠時によだれが出る原因や改善方法、睡眠中のよだれの役割などを説明します。
睡眠時によだれが出る原因
睡眠時によだれが出るのは、口呼吸が原因だといわれています。口が開いた状態だと分泌された唾液がそのまま流れてしまうためです。
また、枕の高さが合っていない場合もよだれが流れやすくなります。
よだれは、横向きで寝ている時より仰向けで寝ている時のほうがたれにくいです。しかし、枕の高さが高かったり低かったりすると、仰向けの状態をキープすることが難しく、横向き寝になりやすい傾向があります。
枕が高い場合は気道がふさがって喉が苦しくなり、枕が低い場合は顎が上がることで首や肩に負担がかかるため、無意識に体勢を変えてしまうことが原因です。
竹村俊輔
日暮里内科・糖尿病内科クリニック 院長 医学博士
上記で説明のとおり、口呼吸している人は就寝中のよだれが出やすい特徴があります。睡眠時における枕の高さがフィットしていない方も出やすいので、注意してください。
睡眠時に口呼吸になる原因
睡眠時に口呼吸になる原因は、風邪・アレルギー性鼻炎・花粉症などによる鼻づまり、睡眠時無呼吸症候群などの疾患の可能性が考えられます。
鼻づまりの場合、鼻水などによって鼻呼吸が行いにくく、口呼吸になってしまいます。自覚しやすい症状のため、長く続く場合は医療機関を受診して治療しましょう。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に口呼吸を行っているケースが顕著に見られます。自分では気が付きにくい疾患ですが、鼻づまりなどの理由がないのに、口が乾きやすくなったり口呼吸になりやすいと感じたりする場合は、一度診察を受けると良いでしょう。
睡眠中に口呼吸になる原因について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
睡眠時に口呼吸になることで起こる弊害
睡眠時の口呼吸により起こる弊害としては、主に以下が挙げられます。
- 睡眠の質が下がる免疫力の低下
- 口周りの筋肉がたるんで顔がゆがむ
- 口臭が発生しやすくなる
- 虫歯や歯周病になりやすくなる
- 風邪などを引きやすくなる
- いびきをかきやすくなる
それぞれの弊害について、詳しく説明します。
睡眠の質が下がる
口呼吸になると口腔内や喉が乾燥するほか、鼻呼吸による「空気の温度・湿度を調整する機能」も働かなくなるため、乾いた空気や冷たい空気が気管に直接入り込み、気管や肺に負担がかかります。
その結果、「呼吸が正常ではない」という信号が脳から出て覚醒状態となり眠りにくくなるため、睡眠の質が低下する可能性があります。
免疫力の低下
睡眠時に口呼吸をしていると、口腔内が乾燥し、殺菌・抗菌・消毒・洗浄作用のある唾液が口腔内から減ってしまいます。
その結果、免疫力が低下して肌荒れなどに繋がる場合があります。
口周りの筋肉がたるんで顔がゆがむ
睡眠時に口呼吸をしていると、唇に力が入らないため、唇や頬の筋力が低下していきます。
その結果、頬や口元がたるむだけでなく、顔全体の筋肉にも影響が出て顔がゆがんでしまう可能性があります。
口臭が発生しやすくなる
前述のとおり、睡眠時の口呼吸によって、口腔内の唾液が減少してしまいます。
唾液が減少すると洗浄作用が弱まり、食べ物やプラークが口腔内に残りやすく口臭の原因になります。
加えて細菌が繁殖しやすくなることも、要因として考えられるでしょう。
虫歯や歯周病になりやすくなる
通常、歯は唾液に含まれる成分によって再石灰化することで、初期の虫歯を修復しています。
しかし、唾液が少なくなると、この働きが弱くなるので、虫歯が進行しやすくなります。
また、口腔内の細菌も増加しやすいことから、歯周病のリスクも高まる可能性があるでしょう。
風邪などを引きやすくなる
睡眠時に鼻呼吸している場合は、鼻の中の鼻毛や粘膜が空気中に含まれるウィルスや病原菌などに対するフィルターの役割を果たします。
しかし、口呼吸の場合、これらのウィルスや病原菌などが直接気管に入るため、鼻呼吸と比べると風邪などを引きやすくなります。
また、口呼吸の場合は冷たく乾燥した空気が直接、気道や肺に送られます。その結果、喉や肺を痛めやすいことも、風邪を引きやすくなる原因です。
いびきをかきやすくなる
口呼吸で口を開けて寝ると、いびきの原因にもなります。
口呼吸により舌に力が入りにくくなると、睡眠時に舌が気道をふさいでしまうため、睡眠時無呼吸症候群に繋がってしまう可能性も考えられます。
竹村俊輔
日暮里内科・糖尿病内科クリニック 院長 医学博士
口呼吸をすると、直接、花粉や塵(ちり)などを取り込むことになるため、アレルギー疾患にもなりやすくなってしまいます。なるべく口呼吸をしないように注意が必要です。
睡眠時のよだれの原因である口呼吸を改善する方法
睡眠時によだれが出るのを防ぐには、口呼吸ではなく鼻呼吸を行う必要があります。
口呼吸を改善する方法としては、主に以下が挙げられます。
- よく咀嚼する
- 口周りの筋肉を鍛える
- 起きている時に鼻呼吸を意識する
- 医療機関を受診する
それぞれの方法について、詳しく説明します。
よく咀嚼する
口呼吸になってしまう原因の一つとして、口周りの筋力の弱さが挙げられます。
食事の時によく咀嚼する習慣をつけると、口周りの筋肉が刺激され、口呼吸の改善が見込めます。
口周りの筋肉を鍛える
食べる時によく咀嚼する以外にも、口周りの筋肉を鍛える方法はあります。
以下に例を紹介します。
- ガムを噛む
- 口角を上げて笑う
- 口笛を吹く
- ペットボトルを使ってトレーニングする
普段の生活の中で取り入れられるものを意識的に行い、口周りの筋肉を鍛えましょう。
水を入れたペットボトルを下を向いて咥え、落下しないように口(唇)でしっかりと挟み込むことで、口周りの筋肉を鍛えることができます。ペットボトルは、500mlサイズがおすすめです。
起きている時に鼻呼吸を意識する
口呼吸が習慣になってしまっている場合は、普段から鼻呼吸を意識することが重要です。
起きている時に自然と鼻呼吸ができるようになれば、寝ている時の呼吸も徐々に鼻呼吸に改善されるでしょう。
医療機関を受診する
口呼吸の原因が疾患にある際は、医療機関を受診して対処する必要があります。
疾患ではないものの、舌が短すぎることが口呼吸の原因になっているケースもありますが、そちらも保険適応で手術を受けられる場合があります。
疾患かどうかわからない場合でも、原因を把握するために医療機関の受診を検討すると良いでしょう。
竹村俊輔
日暮里内科・糖尿病内科クリニック 院長 医学博士
よく咀嚼したり、口周りの筋肉を鍛えたりしても症状が改善しない場合は、医療機関の受診をおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群の場合は、保険診療でのCPAP療法が可能になります。精査希望の場合は、各医療機関に相談してください。
睡眠中のよだれの役割
「睡眠中によだれが流れるのは避けたい」という方が多いと思いますが、よだれ(唾液)にも役割が存在します。代表的なものは、以下のとおりです。
- 歯などの洗浄・保護
- 口臭の抑制
- 抗菌
それぞれについて詳しく説明します。
歯などの洗浄・保護
唾液には、食べカスや汚れを洗い流す役割があるほか、「ムチン」という物質が含まれており、口腔内の粘膜が傷つくのを防ぐ役割も果たしています。
そのため、唾液の分泌が少なければ、口腔内が傷つきやすくなり炎症などの原因となります。
口臭の抑制
上述したように、唾液には洗浄作用があるため、唾液が分泌されて口腔内の食べカスや汚れが減少すれば、口臭が抑制されます。
そのため、口臭が気になる場合、唾液の分泌量が少なくなっている可能性があります。唾液の量が少なく、口腔内の食べカスを十分に洗い流せない場合、細菌によって作り出される物質によって口臭が発生します。
抗菌
口腔内には、さまざまな細菌が常在しています。
しかし、唾液には抗菌作用を有する物質が含まれているため、口腔内の歯周病菌や虫歯菌などが増殖しすぎないように抑制する効果があります。
睡眠時以外にもよだれが多く出る場合は唾液過多症の可能性も
「睡眠時だけでなく普段からよだれが多く出る」という方は、唾液過多症の可能性があります。唾液過多症とは、唾液の分泌が必要以上に多いと感じる症状です。
健康な成人の場合、唾液は1日1〜1.5ℓ分泌されるといわれていますが、唾液量が増えるとつばを飲む回数が増えたり話しづらくなったりして不快感を覚える方が多いです。
実際に唾液の分泌が増えている真性唾液過多と、嚥下障害や心因により口腔内に唾液が多いと感じる仮性唾液過多に大別されますが、割合としては仮性唾液過多のほうが多いとされています。
まとめ
睡眠時によだれが出やすい原因は、口呼吸にあるといわれています。口呼吸になるのは、鼻づまりや睡眠時無呼吸症候群などの疾患が要因の可能性が考えられます。
口呼吸には、「睡眠の質が下がる」「免疫力が低下する」「風邪などを引きやすくなる」といった弊害があります。口呼吸を改善するためには、食事の時に良く咀嚼する、起きている時に鼻呼吸を意識するなどの習慣づけが重要です。
睡眠時以外にもよだれの量が多いと感じる場合は、唾液過多症の可能性もあるため、一度医療機関の受診を検討してみましょう。