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2024.01.18 更新

【医師監修】睡眠障害の診断基準は?代表的な6種類の病気の症状を理解しよう

【医師監修】睡眠障害の診断基準は?代表的な6種類の病気の症状を理解しよう

「夜眠れない」「日中に眠気に襲われる」など、睡眠に何かのトラブルを抱えている方は多いのではないでしょうか。

睡眠に関する悩みはつらいもので、眠気があると日中のパフォーマンスに悪影響を及ぼすこともあります。

睡眠の悩みを解消させるには、自分の悩みが該当する睡眠障害の種類を把握して、医療機関の受診をはじめとした適切な対策に取り組むことが大切です。

この記事では、睡眠障害の種類や、治したい時にはどうすれば良いのかなどをわかりやすく解説します。十分な睡眠をとるために大切となる生活習慣の整え方も紹介するので、睡眠に関する悩みがある方はぜひ参考にしてください。

  1. 「睡眠障害」とは睡眠に関するトラブルを抱えた状態のこと
  2. 睡眠障害にはさまざまな種類がある
  3. 不眠症
  4. 過眠症(ナルコレプシーなど)
  5. 睡眠関連呼吸障害
  6. 概日リズム睡眠障害
  7. 睡眠時随伴症
  8. 睡眠関連運動障害
  9. 睡眠障害を治したいと思った時に取り組むべき流れ
  10. 1.睡眠のメカニズムや仕組みを理解する
  11. 2.睡眠障害の原因と改善策を考える
  12. 3.生活習慣の改善方法を実行する
  13. 生活習慣を整えて睡眠の質を高めるための方法
  14. 規則正しい食生活を心がける
  15. 適度な運動を習慣にする
  16. 就寝前に入浴してリラックスする
  17. まとめ

「睡眠障害」とは睡眠に関するトラブルを抱えた状態のこと

睡眠障害」とは、睡眠に何かしらのトラブルを抱えている状態を指します。具体的な例として挙げられるのは、夜なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める、急に眠たくなってしまうといった症状などです。

睡眠には、体の疲労回復・記憶の整理と定着・免疫機能の向上・自律神経のバランスを整えるなど、さまざまな役割があります。

十分に睡眠をとらないと心身ともに回復できず、日常生活に影響が出てしまうことも考えられるため、自分にとって必要な睡眠時間を確保して睡眠の質を高めることは大切です。

また、日本では、5人に1人が何かしらの睡眠トラブルを抱えているとされているため、睡眠障害は特殊な病気ではなく、誰にでも起こりうる病気といえるでしょう。

白濱龍太郎

白濱龍太郎

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

睡眠障害の種類はたくさんあり、病気によって固有の症状が出現します。睡眠障害を判断する際はDSM-5という基準があります。

臨床的に意味のある苦痛、社会的、職業的、教育的、学業上、行動上、またはほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている、さらに、その睡眠困難は少なくとも1週間に3日起こり、3ヶ月持続する(慢性の場合は)という基準です。

睡眠障害にはさまざまな種類がある

一口に「睡眠障害」といってもさまざまな種類がありますが、代表的なものは以下の6種類です。

  • 不眠症
  • 過眠症
  • 睡眠関連呼吸障害
  • 概日リズム睡眠障害
  • 睡眠時随伴症
  • 睡眠関連運動障害

それぞれどのような病気なのかについて、詳細を解説します。

不眠症

不眠症」とは、睡眠に関するトラブルが1ヶ月以上続き、日中に眠気が生じたり集中力が低下したりと生活に影響を及ぼす病気のことです。

例えば、翌日にデートや大事なプレゼンなどを抱えており、緊張していて夜眠れないというケースは一時的に眠れなくなっているだけなので、不眠症には該当しません。

不眠症は、あらわれる症状によって4種類に分けられています。以下の表に、種類と特徴をまとめました。

種類特徴
入眠障害布団に入ってもなかなか寝付けず、眠るまでに30分〜1時間以上かかる
中途覚醒眠りについたあと、眠りが浅くて何度も目が覚める
早朝覚醒本来起きる予定の時間よりも2時間以上前に目が覚め、再び眠れない
熟眠障害睡眠時間は十分なのに、ぐっすり眠った感じがしない

不眠症は、睡眠障害のなかで最も多い病気だとされています。さらに、4種類のなかでは「入眠障害」に該当する方が一番多いようです。

過眠症(ナルコレプシーなど)

過眠症」とは、夜に十分な睡眠をとっているにも関わらず、日中に過度な眠気が生じる病気のことです。過眠症の種類には、ナルコレプシーや特発性過眠症などがあります。

ナルコレプシーとは、日中に耐えられないほどの眠気に襲われ、30分以内の短時間だけ眠り込んでしまう病気です。突然体の力が抜けてしまったり、入眠時に金縛りにあったりすることもありますが、目覚めたあとはすっきりとします。

また、特発性過眠症とは、日中に眠気が生じて居眠りをしてしまう病気です。1時間以上眠ることもありますが、目覚めてもすっきりしないという特徴があります。

睡眠関連呼吸障害

睡眠関連呼吸障害」とは、寝ている時に呼吸が浅くなる、呼吸が頻繁に停止するなど、睡眠中の呼吸に異常がある状態の総称です。

呼吸が浅くなったり停止したりすることで血液中の酸素が不足すると、目が覚めてしまって熟睡できなくなると考えられています。

睡眠関連呼吸障害のなかでも代表的な病気は、睡眠時無呼吸症候群です。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気のことで、目安として1時間に5回以上、無呼吸や低呼吸になります。

大きないびきや呼吸の乱れといった症状があらわれることがありますが、本人が自覚できることは少なく、家族などの指摘によって判明するケースも多いようです。

概日リズム睡眠障害

「概日リズム」とは、約1日ごとの周期で繰り返される体内時計のリズムのことです。体内時計がずれて昼夜のサイクルと合わなくなると、夜眠りたい時に眠れなくなる、朝起きられなくなるなどの症状が出ますが、この症状を「概日リズム睡眠障害」と呼びます。

概日リズム睡眠障害に該当するのは、時差症候群交代勤務睡眠障害などです。

時差症候群とは、海外旅行のように体内時計を短時間で無理にずらした時に起こる体の不調を指します。交代勤務睡眠障害は、日勤と夜勤を交互に行うなど、体内時計と就寝する時間がずれることで起こる症状のことです。

睡眠時随伴症

睡眠時随伴症」とは、睡眠中に生じる異常な行動をまとめて指す言葉です。異常な行動の例として、寝言・ねぼけ・おねしょ・睡眠時遊行症・歯ぎしりなどが挙げられます。

睡眠時随伴症として代表的なのは、レム睡眠行動障害・夢遊病・夜驚症といった病気です。

レム睡眠行動障害とは、夢を見ている状態で、大声で寝言をいったり体を激しく動かしたりする異常行動のことを指します。

また、寝ながら歩き回ったり、手足を動かしたりするのが夢遊病、睡眠中に突然不安になり、恐怖心から悲鳴を上げたり泣き出したりするのが夜驚症です。

睡眠関連運動障害

睡眠関連運動障害」は、寝ている時に睡眠の妨げとなる体の動きが生じる症状のことです。体の動きは比較的単純なものが多く、代表的なものにむずむず脚症候群周期性四肢運動障害があります。

むずむず脚症候群とは、むずむず・痛い・かゆいなど、睡眠を妨げる不快な症状が足に出る病気です。足を動かすと症状は軽くなりますが、時間が経つと再び起こるため、何度も睡眠が妨げられます。

また、周期性四肢運動障害になると、睡眠中に足や腕などが細かく動いて睡眠を妨げます。ただし、自分では体が動いていることに気付かないのが一般的です。

睡眠障害を治したいと思った時に取り組むべき流れ

睡眠障害を治したいと思った時に取り組むべき流れ

睡眠障害を疑う場合には、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大前提です。それと合わせて、自分で意識できる心がけもあります。

睡眠障害に悩む場合、医療機関の受診とともに、以下の流れで睡眠障害に対する理解を深め、症状の改善を目指しましょう。

  1. 睡眠のメカニズムや仕組みを理解する
  2. 睡眠障害の原因と改善策を考える
  3. 生活習慣の改善方法を実行する

それぞれの項目について、詳しく解説します。

1.睡眠のメカニズムや仕組みを理解する

まず睡眠のメカニズムや仕組みを理解して、どのような睡眠をとるべきなのかを考えましょう。

前述のとおり、睡眠には体の疲労回復や記憶の定着など、さまざまな役割があります。「心身の回復を促すために睡眠が重要な役割を果たす」ということを理解しておくことが望ましいです。

人間の体内時計の周期は約25時間なので、地球の周期である24時間とは約1時間のずれが生じます。睡眠リズムを整えるためには、この1時間のずれをリセットさせなくてはなりません。

不規則な生活を送っていると体内時計のずれがリセットされないので、睡眠障害に繋がる可能性があります。ずれをリセットさせるためにおすすめなのは、朝から太陽光を浴びたり、きちんと朝食を食べたりするといった方法です。

2.睡眠障害の原因と改善策を考える

次は、睡眠障害の原因となっている出来事を見つけ出し、どのような行動をしたら良いかを考えましょう。睡眠障害の改善を目指すには、原因に応じた行動を実践することが大切です。

睡眠障害の原因を見つけるために、普段の自分の生活習慣がどのように乱れているのかを見つめ直してください。例えば、「ゲームで夜更かししている」「SNSのために、布団のなかでもスマホの強い光を見ている」などが考えられます。

突き止めた原因から、「時間を決めてゲームをする」「就寝前にスマホを見ない」などの改善策を考えていくと良いでしょう。

3.生活習慣の改善方法を実行する

自分の生活習慣がどのように乱れているのか把握できたら、改善するために実行に移していくこととなります。

医療機関を受診して、生活習慣の見直し方について医師のアドバイスを仰ぎましょう。症状によっては薬物療法を行うケースもあるので、こちらも医師の指示のもと対応を行ってください。

医療機関を受診する場合、かかりつけ医がいる方はまずそこで相談すると良いでしょう。

かかりつけ医がいない方や相談先の病院が思い浮かばない方は、不眠・過眠・無呼吸などの症状に応じた医療機関を受診することとなります。

白濱龍太郎

白濱龍太郎

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

睡眠障害の方に対して、医療機関では睡眠衛生指導(厚生労働省 睡眠障害対処 12の指針)を行います。

生活習慣を整えて睡眠の質を高めるための方法

睡眠障害を疑う場合は医療機関を受診するのが賢明ですが、同時に生活習慣も見直していきましょう。生活習慣を整えて睡眠の質を高めていくと、睡眠に関する悩みを解消できる可能性も高まります。

生活習慣を整えるために、まず次の3つを意識するのがおすすめです。

  • 規則正しい食生活を心がける
  • 適度な運動を習慣にする
  • 就寝前に入浴してリラックスする

それぞれの内容について、詳しく解説します。

規則正しい食生活を心がける

人間と地球との間に生じる約1時間の体内時計のずれは、太陽の光を浴びるほか、規則正しい食生活を送ることでもリセットできます。

朝食をしっかりとると、体内時計のうち末梢時計がリセットできて生活リズムが整うため、毎日3食規則正しく食べて、生活リズムを整えていきましょう。

夜は寝付きが悪くなるのを避けるため、就寝3時間前には食事を済ませることをおすすめします。

もし日中眠くなったら、コーヒー・チョコレート・ココアなどのカフェインを上手く取り入れてください。カフェインを体から排出するには8時間ほどかかるので、夕方くらいまでを目安にとると良いでしょう。

ただし、就寝前のカフェインの摂取や飲酒は、脳が覚醒してしまうため控えることが望ましいです。

白濱龍太郎

白濱龍太郎

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長

健康成人において、コーヒーであれば1日2~3杯までが健康障害を起こしにくい摂取量です。

夕食のときに、カフェインを多く含む飲み物を飲む習慣があり、夜眠れなくて困っている方は、デカフェやノンカフェイン飲料、麦茶、ルイボスティーなどに代えることをおすすめします。

適度な運動を習慣にする

日中に運動をして体を疲れさせると、夜に自然な眠気を促しやすくなります。午後に程よく汗をかく運動に取り組めば、適度な疲労感を得られるだけでなく心身のリフレッシュもできるでしょう。

取り組む運動は、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。激しい運動は刺激となって目が覚め、逆効果となるため注意してください。

たまに激しく運動するのではなく、無理なく続けられる軽い運動を習慣にすることが大切です。リモートワークなどで室内にいることが多い方は、外に出て運動をしながら日光を浴びる習慣を付けると良いでしょう。

就寝前に入浴してリラックスする

寝る前に入浴して、体を休めるモードである「副交感神経」を優位な状態にすると、リラックスできて睡眠の質が向上しやすくなります。

就寝90~120分前に、38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度ゆっくり湯船に浸かって、体を温めましょう。

心臓への負担が少ない半身浴もおすすめです。半身浴をする場合は、約40℃のお湯で30分程度を目安にしてください。

また、好みの入浴剤を入れたお湯に浸かれば、リラックス効果も期待できます。シャワーではなく湯船に使って、毎日の疲れをゆっくりと癒してください。

まとめ

日本では、5人に1人が何かしらの睡眠トラブルを抱えているとされており、睡眠障害は意外と身近な症状です。

自分にとって必要な睡眠時間を確保しないと心身ともに回復できず、日常生活に影響が出る可能性があります。つらい状態を長期化させないよう、睡眠障害の改善を目指していきましょう。

不眠や過眠などの症状がつらく、何らかの睡眠障害を疑うのであれば、医療機関を受診することを推奨します。

それと同時に、生活習慣を整えて睡眠の質を高める意識も大切です。ぜひ、この記事で紹介した「食生活・運動・入浴」という3つの方法を試しながら、睡眠の質の向上を目指しましょう。

この記事の監修者
白濱龍太郎
白濱龍太郎RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長
筑波大学卒業、東京医科歯科大学大学院統合呼吸器学修了(医学博士)。同大学睡眠制御学快眠センター等での臨床経験を生かし、総合病院等で睡眠センターの設立、運営を行ってきた。それらの経験を生かし、睡眠、呼吸の悩みを総合的に診断、治療可能な医療機関をめざし、2013年に、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニックを設立。2014年には、経済産業省海外支援プログラムに参加し、インドネシア等の医師たちへ睡眠時無呼吸症候群の教育を行った。2018年にはハーバード大学公衆衛生大学院の客員研究員として睡眠に関する先端の研究に従事。社会医学系指導医、睡眠学会専門医、認定産業医を有し、教育、啓発活動にも取り組んでいる。
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