「最近疲れやすくなった」「寝ても疲れが取れない」といった悩みを抱えており、何とか改善させたいと思っている方は多いでしょう。
体が疲れていると何事にもやる気が起きず、仕事や家事をすることが億劫になってしまいます。
疲労の原因は人それぞれ異なるため、自分の疲労のタイプを把握したうえで改善方法に取り組むことが大切です。
この記事では、疲れやすいと感じる時の原因や、疲れやすい方の特徴まで詳しく解説します。
疲れにくい体を目指す際に試してほしい生活習慣の改善方法も紹介するので、「疲れはどうしようもない」と諦めずにぜひご一読ください。
疲れの原因には3つのタイプがある
ひとまとめに「疲れ」といっても、その症状にはさまざまなタイプがあります。
まずは自分の疲れが下記の3つのうち、どれに当てはまるかをチェックしましょう。
- 肉体的な疲労
- 精神的な疲労
- 神経的な疲労
それぞれについて以下で詳しく説明します。
肉体的な疲労
肉体的な疲労とは、運動や労働を行うことでエネルギー不足の状態になった時に感じる疲労のことを指します。
多くの方が、重労働や激しい運動のあとに「疲れた」と感じたことがあるでしょう。この疲労のメカニズムは、エネルギーを消費する際に蓄積される乳酸の蓄積が関係していると考えられています。
乳酸とは、筋肉を動かすためにエネルギーを作る際、糖を分解して作られる疲労物質のことです。
乳酸を作る過程では水素イオンも作られますが、この作用によって筋肉が酸性に傾くとエネルギーの素となる糖の蓄えが減り、疲労に繋がると考えられています。
精神的な疲労
精神的な疲労とは、日常生活における悩み事によって受けるストレスで生じる「心の疲れ」のことを指します。
心が疲れる原因として考えられるのは、学校・家庭の人間関係や仕事へのプレッシャーなど、人それぞれさまざまです。人によっては、過度な運動や労働によって肉体的な疲労を感じるとともに、精神的にも疲労が溜まるケースもあるでしょう。
例えば、無理な残業が続くと睡眠時間が減って肉体的に疲労しますが、次第に「体がつらいから仕事に行きたくない」と考えるようになり、精神的に落ち込んでしまう可能性も考えられます。
適度な緊張感があると生活にメリハリがつくため、程よいストレスは健康的な生活に必要なものだといえるかもしれません。
しかし、慢性的に過剰なストレスがかかり続けると、不安や抑うつ、吐き気などの体調不良に繋がることもあるため注意が必要です。
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長
「原因も分からず、急に涙が出る」「眠れなくなった」「夢ばかり見るようになった」「やたらイライラする」などは、精神的な疲労が表に出てきたときに見られやすい危険信号です。
神経的な疲労
神経的な疲労とは、長時間のデスクワークやパソコン操作などによって、脳の神経系が疲れるタイプの疲労のことです。
大量の情報を処理するために脳の働きが活発になると、呼吸で取り込んだ大気中の酸素が活性化して「活性酸素」という状態になります。
活性酸素が増えすぎると、抗酸化防御機構のバランスが崩れて「酸化ストレス」という状態になり、肉体的な疲労とは別に疲れやだるさを感じるとされています。
近年では、パソコンやスマホの普及によって常に大量の情報に触れている方も多いため、脳が活発に働くことによる神経的な疲労も増えていると考えられています。
女性特有の疲れやすい原因もある
上述した一般的な疲労とは別に、女性の場合は「女性ホルモン」が関係して疲労を感じている可能性があります。
疲労に関係するのは、妊娠と出産の準備などを行う役割を持つ「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンです。
排卵前にはエストロゲンの分泌量が増え、排卵後にはプロゲステロンの分泌量が増えますが、このようにホルモンの分泌量が短期間で大きく変動する時期には、体調不良が起こりやすいとされています。
なかでもプロゲステロンが増加すると、イライラ・食欲増加・眠気などが引き起こされるため、時期によっては前述した3種類の疲労とは関係なく心身のだるさを感じることがあるかもしれません。
また、過剰なダイエットなどによって女性ホルモンのバランスが崩れることや、更年期になって女性ホルモンの分泌量が減ることも、疲労に繋がる原因として考えられます。
更年期が始まる年齢は、子どもの独立や夫婦関係の悪化など、さまざまなライフステージの変化が訪れやすい時期です。これらの出来事が精神的なストレスとなって、心身の疲労に繋がることもあるでしょう。
更年期障害のように、女性特有のことが原因となって日常生活に支障をきたすほどの疲れが出ているのであれば、一度医療機関を受診して専門医から適切なアドバイスを受けることも検討してください。
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長
男性だけとは限りませんが、男性は仕事に対してストレスを感じて疲労へと繋がっている場合が一番多いとされています。社会的に責任が多いからといわれています。
また、男性更年期も、その時期には関係してきます。
疲れやすいと感じるのは体質が関係している?
若い頃と比べて活発さがなくなり、疲れやすくなったことから「自分は体質的に疲れやすいタイプなのかもしれない」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、生まれ持った体質というよりも、日々の生活習慣によって「疲れやすい体の状態になっている」というケースが考えられます。
「疲れやすい体の状態」を引き起こす生活習慣の具体的として挙げられるのは、以下のとおりです。
- 運動不足
- バランスの悪い食生活
- 過激なダイエット
- 睡眠不足
- 睡眠リズムが崩れる生活
上記のように乱れた生活を送っていると、自律神経が乱れたり免疫力が低下したりするため、「疲れやすい体の状態」に変化してしまう可能性があります。
疲れやすいと感じており悩んでいるのであれば、「疲れやすい体質だからしょうがない」と諦めるのではなく、日々の生活習慣を見直して疲れにくい体を作ることを目指しましょう。
久手堅司
せたがや内科・神経内科クリニック院長
心身のリセットには睡眠が一番重要なので、睡眠の質、睡眠のある程度の長さが必要です。朝起きた時に疲れが取れていないと、その日は一日疲れが抜けにくくなります。
疲れやすいと感じる時の対処法
日々の生活のなかで疲れやすいと感じている方は、生活習慣の改善に取り組んではいかがでしょうか。
すぐに取り組める対処法として、以下の行動が挙げられます。
- バランスのとれた食生活を心がける
- 適度な運動習慣を身につける
- 入浴で心身をリラックスさせる
- 睡眠環境を快適な状態に整える
- 同じ姿勢を続けないよう意識する
それぞれの内容を詳しく説明するので、ぜひ日常生活のなかで意識してみてください。
バランスのとれた食生活を心がける
時間がなくても食事は抜かず、バランスの良い食生活を心がけましょう。食事のバランスが悪く、摂取する栄養素が偏っていたり不足していたりすると、疲れを引き起こしやすくなることがあります。
「朝食や昼食を抜いて夜にまとめて食べる」という方がいるかもしれませんが、就寝を控えている夜に過剰な量の食事をとるのは理想的ではありません。
就寝前に大量の食事をとると、入眠するタイミングになっても体が消化を優先させて、睡眠の質が低下する可能性があります。
また、大量のアルコール摂取や喫煙も肝臓に負担をかけるため、控えたほうが良いでしょう。
適度な運動習慣を身につける
日中に適度な運動を行って体が疲労すると、夜に眠気が促されてスムーズな入眠に繋がることが期待できます。自分にとって必要なだけの睡眠時間が確保できていれば、翌朝すっきり起きられて活き活きとした1日を過ごしやすくなるでしょう。
体温が上昇してから下降するタイミングで眠気は促されるので、就寝時刻の3時間ほど前に軽めの運動を行うのがおすすめです。
取り組むのは、ウォーキングのような軽めの有酸素運動で構いません。逆に、就寝前に激しい運動を行うと体が興奮して寝つきづらくなるため、ヤル気があったとしても激しすぎる運動は避けるようにしましょう。
実際、運動習慣がある方には不眠の症状が少ないとされているため、十分に眠っても疲れがとれにくいと悩んでいる方は、ぜひ運動習慣を身に付けてみてください。
入浴で心身をリラックスさせる
運動による体温の上下によって眠気が促されるのと同様、入浴することで体温を上昇させるのも、夜に眠気を促すためには効果的です。
寝床に入るタイミングで体温が下がり始めるように、就寝時刻の90〜120分前に入浴することをおすすめします。
熱すぎる湯温だと、活動モードの「交感神経」が高ぶって体が興奮状態になるため、38℃ほどぬるめのお湯で25〜30分ほど入浴しましょう。
また、入浴することで血液の循環が促されると、老廃物を排出したり筋肉の緊張がほぐれたりすることで、疲労を回復する効果も期待できます。
好みの香りの入浴剤を使用して、入浴の時間を「リラックスタイム」にするのも良いでしょう。
時間がないからといってお風呂をシャワーで済ませている方は、ゆっくり入浴する時間を確保することから始めてみてください。
睡眠環境を快適な状態に整える
心身の疲労を回復させるために、日々の睡眠は欠かせません。睡眠における「時間」ばかりを気にする方も多いかもしれませんが、睡眠の時間だけでなく「質」を高めることも大切です。
十分な睡眠時間を確保していても、睡眠の質が低ければ起きた時に熟睡感が得られず、寝起きのだるさや体調不良に繋がる可能性があります。
睡眠の質を高めるために意識したいのが、寝室の温度や湿度・音・光といった就寝環境を見直すことです。
寝室の快適な環境は、夏場で25℃〜26℃、冬場は22℃〜23℃、湿度は通年50%〜60%が理想的とされています。また、就寝時には音楽を消して騒音がする環境は避け、眩しすぎる蛍光灯はきちんと消してから就寝することが望ましいです。
日頃から就寝環境を整えるよう努めれば、快適な睡眠が得られるようになって心身の疲労回復にも繋がるでしょう。
同じ姿勢を続けないよう意識する
デスクワークや家事などで同じ姿勢が続く場合には、ぜひ定期的なストレッチを心がけてください。ストレッチには血液を循環させる効果があるだけでなく、体を動かすことでリフレッシュもできるでしょう。
また、起床時だけでなく、就寝中の姿勢も気を付けたいところです。就寝中に同じ姿勢が続けば、体の出っ張った部分(肩・腰など)に体圧がかかり、痛みに繋がる可能性があります。
就寝中に上手に寝返りを打てれば、体の一部に負担がかかることを防げるため、寝具を選ぶ際には「寝返りの打ちやすさ」に注目して選ぶことをおすすめします。
マットレスに適度な反発力があれば、体が押されるようにしてスムーズに寝返りを打ちやすくなり、体にかかる体圧を分散させやすくなるでしょう。
枕を選ぶ際には、就寝時の姿勢に応じた高さの枕を選んでください。
- 仰向け寝:背骨が緩やかなS字カーブを描く状態の高さ
- 横向き寝:頭から背骨が真っすぐになる状態の高さ
仰向け寝をした時、目線が真上よりやや前を向いていると高さが合っていると判断できます。横向き寝をする際は、目線が床と平行になる状態が目安です。
日々、ストレッチや運動を生活に取り入れることで体の緊張をほぐしつつ、就寝中に上手に寝返りを打てるよう、自分の体に適する寝具を選ぶことも忘れないでください。
まとめ
疲れやすいと感じる場合、原因として「肉体的・精神的・神経的」な疲労のいずれかが考えられます。
女性の場合は、女性ホルモンが原因となって疲れやすさが生じている可能性もあるため、その時には無理をせず上手く付き合っていくことが大切です。更年期などの症状がつらいのであれば、医療機関の受診も検討すると良いでしょう。
また、日々の生活習慣によって「疲れやすい体の状態になっている」ことも考えられるため、規則正しい生活を送ることも大切です。
「自分は疲れやすい体質だから」と自己判断せず、まずは運動やストレッチ、就寝環境の見直しといった手軽なことから生活に取り入れ、続いて寝心地良いと感じる寝具への買い替えを含めた検討を行うと良いでしょう。