物音や外部からの光などによって、夜中に急に目が覚めてしまう経験をしたことがある方は多いでしょう。
「一度起きてしまうと、その後に眠ることができない」など、覚醒後の不眠に悩んでいる方も少なくありません。
このように夜中に目が覚めてしまうのは、不眠症の症状の一つです。
この記事では、夜中に目が覚める原因、もう一度眠るためのポイントなどを紹介します。
夜中に目が覚めるのは不眠症の症状の一種
先述したように、夜中に目が覚めてしまうのは不眠症の症状の一種です。
不眠症の症状はいくつかの種類に分かれており、具体的には「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」の3つがあります。
夜中に目が覚めてしまう症状は、このうち中途覚醒に該当する睡眠障害です。
中途覚醒とは、睡眠中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか眠れないのが特徴の症状です。症状の頻度には個人差がありますが、特に高齢の方に多くあらわれる症状だといわれています。
夜中に目が覚める主な原因
中途覚醒の症状に悩んでいる方は、目が覚めてしまう原因を把握しておきましょう。原因を把握すれば、症状改善の手がかりを得られるかもしれません。
夜中に目が覚めてしまう原因としては、主に下記の4つが挙げられます。
- 加齢
- ストレス
- うつ病などの精神疾患
- 睡眠を妨げる病気を発症している
それぞれの原因について、詳しい内容を見ていきましょう。
加齢
夜中に目が覚めてしまう原因の一つとして考えられるのが加齢です。
人間はレム睡眠と、浅い~深いの段階があるノンレム睡眠を交互に行き来しながら眠っています。
このサイクルは約90分ごとの周期で移行していますが、歳を重ねると深いノンレム睡眠とレム睡眠の割合が減り、浅いノンレム睡眠が増えていくといわれています。
渥美正彦
医療法人上島医院院長
中途覚醒の増加は客観的には30歳代から見られ、かなり若くから増え始めます。男女を比較した研究の結果は一貫していませんが、男性では睡眠時無呼吸症候群や飲酒の影響が大きく、女性では更年期の女性ホルモン減少が関係しやすいといわれています。
浅いレム睡眠の割合が増えることで、わずかな刺激で覚醒しやすい状態が続くということです。そのため、熟睡できず目が覚めやすくなってしまいます。
ストレス
多くのストレスを抱えている方は、そのストレスが中途覚醒の原因となっているかもしれません。
ストレスがあると就寝時にリラックスできないだけでなく、睡眠中も緊張状態が続くため、熟睡できずに目が覚めやすくなってしまうと考えられています。
特に真面目で完璧主義な方、周囲の評価を気にしすぎる方などはストレスを抱えやすいといわれています。思い当たる節がある方は、意識してリラックスできる時間を作るようにしましょう。
うつ病などの精神疾患
中途覚醒をはじめとした不眠症の症状は、うつ病などの精神疾患が原因となる場合もあります。特にうつ病を発症している場合は、不眠症の症状も同時にあらわれているケースがほとんどだといわれています。
中途覚醒の原因が精神疾患にある場合、病気自体の治療を同時に行うことが必要です。心配な方は、近くの医療機関に相談すると良いでしょう。
睡眠を妨げる病気を発症している
睡眠を妨げる病気を発症している場合は、それが中途覚醒に繋がっている可能性も考えられます。
例えば、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が発生する「睡眠時無呼吸症候群」を発症していると、息苦しさを感じて目が覚める場合があるかもしれません。
このほか、「周期性四肢運動障害」も中途覚醒に繋がる可能性がある病気の一つです。周期性四肢運動障害は、睡眠中に足が周期的に動いてしまう症状が特徴の病気です。睡眠中に足が動くことで、途中で目が覚めてしまう場合があるといわれています。
いずれも自分で気がつくのは難しい場合が多いため、このような症状に当てはまる場合は医療機関の受診を検討しましょう。
渥美正彦
医療法人上島医院院長
上記の症状に当てはまる方が医療機関にかかる場合、残念ながらすべての睡眠の病気に対応できる診療科はありません。睡眠時無呼吸症候群は呼吸器内科や耳鼻咽喉科、周期性四肢運動障害を疑う場合は脳神経内科などが比較的適しています。
受診先に迷った際には日本睡眠学会の認定医療機関にお問い合わせください。
夜中に目が覚めてからもう一度眠るためには?
夜中に目が覚めてしまった時、「また眠ろう」と思ってもなかなか寝つけない場合もあるでしょう。このような悩みを抱えている方は、目が覚めた後に下記の3点を意識して過ごしてみてください。
- 眠れなくても焦らずにリラックスする
- ブルーライトを避ける
- 呼吸法を変える
これらのポイントを押さえておけば、目が覚めた後も眠りやすくなります。以下で具体的な内容を紹介します。
眠れなくても焦らずにリラックスする
夜中に目が覚めた後は、「早く寝なくてはいけない」という意識が働き焦ってしまいやすいです。しかし、眠れない時に無理矢理寝ようとしても焦りから神経が興奮してしまい、ますます眠れなくなってしまうため注意してください。
眠れない時は、まずリラックスすることが大切です。気分の落ち着く音楽を流す、アロマオイルを焚くなどの方法でリラックスして気持ちを落ち着かせましょう。心身をリラックスした状態に導くことで、スムーズに眠りやすくなります。
ブルーライトを避ける
睡眠中に目が覚めてしまった時、「眠くなるまでスマホやパソコンを操作しよう」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
端末の画面から発せられているブルーライトを見ると、光によって脳が「朝だ」と認識してしまい、眠気が訪れずに入眠しにくくなってしまいます。
目が覚めた時はスマホやパソコンの操作を避け、リラックスするように意識しましょう。
呼吸法を変える
先述のとおり、目が覚めてからもう一度眠るためには心身をリラックスさせることが大切です。
リラックスする方法は上記でも紹介しましたが、より手軽にできるものを探している方には「呼吸法を意識する」という方法がおすすめです。深い呼吸をするだけで、体をリラックスさせることができます。
なかでも腹式呼吸はリラックス効果が高いので、ぜひ実践してみてください。腹式呼吸を行う手順は下記のとおりです。
- お腹がへこむのを意識しながら口から大きく息を吐く
- お腹が膨らむのを意識しながら鼻から息を吸う
- ゆっくりと息を吐く
夜中に目を覚まさず熟睡するには睡眠の質を高めることが大切
夜中に目が覚めやすい方は、この機会に睡眠の質を見直してみると良いでしょう。睡眠の質を高めて熟睡できるようになれば、中途覚醒を防ぐことにも繋がります。睡眠の質は下記の方法で高めることができるので、ぜひ試してみてください。
- 日常的にストレッチなどで体を軽く動かす
- 規則正しい食生活を維持する
- 就寝時間と起床時間を一定にする
- 就寝時間の90分〜120分前に入浴する
- 就寝前に温かい飲み物を飲む
- 自分の体に合った寝具を使う
- 夕食は就寝3時間前までに済ませる
ここからは、それぞれの方法の詳しい内容を紹介します。
日常的にストレッチなどで体を軽く動かす
デスクワークなどで普段体を動かす機会が少ない方は、運動する習慣をつけるようにしましょう。
日常的に運動を行うと寝つきが良くなり、睡眠の質が高まるといわれています。1回の運動だけでは効果が薄いため、習慣的に行うと良いでしょう。
ただし、激しい運動は逆に睡眠を妨げる場合があるので注意が必要です。運動のメニューはランニングやウォーキングなど、軽めの有酸素運動に留めましょう。
なお、就寝3時間くらい前に行う運動は特に効果的だといわれています。時間に余裕がある方は運動する時間も意識してみてください。
規則正しい食生活を維持する
睡眠の質を高めるには、規則正しい食生活を続けることも大切です。
食生活の乱れは生活習慣の乱れに繋がり、生活習慣の乱れは睡眠習慣の乱れに繋がります。睡眠習慣を乱さず夜にしっかりと眠るためにも、規則正しい食生活を心がけましょう。
特に朝食は睡眠の質に影響する要素が大きいので、必ず食べるようにしてください。
朝に朝食を食べて太陽の光を浴びると体内時計がリセットされ、「日中に活動して夜に休息する」という規則正しい生活習慣をつけられます。
体内時計が整っていれば体が夜間に休息モードに切り替わるため、眠りやすくなるでしょう。
就寝時間と起床時間を一定にする
就寝時間や起床時間が毎日違う方は、この機会に一定にするよう意識してみてください。就寝時間や起床時間がバラバラだと体内時計が狂ってしまい、眠りたいタイミングで眠気が起こらない場合があります。
上述したように、夜にぐっすり眠るためには体内時計を整えることが重要です。できるだけ毎日決めた時間に起床・就寝し、体内時計が狂わないように気をつけましょう。
就寝時間の90分〜120分前に入浴する
人の体は深部体温が下がると眠くなる仕組みになっています。深部体温を下げる方法にはさまざまありますが、就寝前の入浴が効果的です。
就寝時間の90分〜120分前に入浴して深部体温を高めておくと、お風呂上がりに体温が下がるタイミングで眠気が訪れてくれます。普段の入浴の時間を決めていない方は、就寝時間の90分〜120分前にお風呂に入ると良いでしょう。
ただし、お湯の温度が高すぎたり、入浴時間が長すぎたりすると逆効果なので注意してください。入浴は38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度、42℃の熱めのお湯であれば5分程度、半身浴なら約40℃のお湯で30分程度に留めましょう。
就寝前に温かい飲み物を飲む
深部体温を下げるには、入浴だけでなく温かい飲み物を飲むのも効果的です。温かい飲み物を飲んで体温を上げると、体温が下がっていくタイミングで眠気を誘発できます。
ただし、温かい飲み物であってもアルコールやカフェインを含んだものは避けるようにしてください。アルコールの摂取は中途覚醒の原因となり、カフェインは覚醒作用があるため、就寝前に摂取すると睡眠を妨げてしまいます。
アルコールやカフェインはさまざまな飲み物に含まれていますが、代表的な例としては「お酒全般」「コーヒー」「エナジードリンク」「紅茶」などが挙げられます。心配な方は、飲み物に含まれている成分を事前に確認しておくと良いでしょう。
自分の体に合った寝具を使う
「ベッドに横になると寝にくさを感じて眠れない」という方は、マットレスや枕などの寝具が自分の体に合っていないのかもしれません。寝具は各製品で大きさや硬さ、寝心地などの特徴が異なるため、使う人によって合うかどうかが変わってきます。
体に合っていない寝具を使っていると、質の高い睡眠はとれません。寝具が合っていない方は、この機会に違う製品に買い替えてみましょう。
夕食は就寝3時間前に済ませる
夕食はできるだけ就寝3時間前に済ませるようにしましょう。就寝直前に食事をすると、睡眠中に消化活動が行われてしまうためです。睡眠中に消化活動によって胃腸が働くと脳が刺激され、睡眠の質の低下に繋がります。
一般的に、消化活動には2時間〜3時間程度かかるといわれています。消化活動が終わった状態で眠るためにも、夕食は就寝3時間前までには済ませるように心がけましょう。
どうしても夕食が夜遅くなる場合は、消化の良いヘルシーな食事にするなどメニューに工夫をしてください。
渥美正彦
医療法人上島医院院長
どうしても夕食をとるのが遅くなってしまう日には、なるべく野菜を中心とした軽めのメニューを選びましょう。脂質の多すぎる重いメニューは、消化器系の負担になるので避けましょう。できれば温かいスープなどで体を温め、カフェインやアルコールは控えるのがおすすめです。
まとめ
夜中に目が覚めてその後眠れずにいると、寝不足で翌日のパフォーマンスが下がってしまうだけでなく、睡眠習慣が乱れてしまう可能性もあります。
正しい睡眠習慣を維持するためにも、目が覚めた後は「リラックスする」「スマホを操作しない」など、眠れるように工夫しましょう。
また、「夜中に目が覚めてしまう」という悩みは、睡眠の質を高めることで解消できる場合があります。普段の眠りが浅い方は、睡眠の質を見直してみると良いかもしれません。