朝起きた時に手や腕がしびれていると、不安になると思います。「もしかしたら病気かも」と思いつつ、何が原因なのかわからず悩んでいる方も多いかもしれません。
片手のみに症状が出る場合もあれば両手に症状が出る場合もあるなど、人によって症状は異なります。手や腕のしびれは不安な症状ですが、理由を知ることで対処できる場合もあるでしょう。
この記事では、朝起きた時に手がしびれている場合に考えられる原因と、原因ごとの対処法などについて説明します。手がしびれる症状に疑問を抱いている方は、ぜひご一読ください。
朝起きたら手がしびれる2つの原因
朝起きた時に手がしびれている原因として、「自律神経が乱れている」「寝姿勢が崩れている」といったことが考えられます。それぞれの原因について、以下で詳しく説明します。
自律神経が乱れている
何かしらのことが引き金となって自律神経が乱れてしまい、朝起きた時の手のしびれに繋がっている可能性があります。自律神経とは、体温や血圧など体の機能をコントロールするために無意識下で働く神経のことです。
自律神経には、交感神経と副交感神経という異なる働きを持つ2つの神経があり、通常であれば、これらがバランスをとって体の機能を維持しています。「交感神経」は体を活動モードにさせること、「副交感神経」は体をリラックスモードにさせることが役割です。
しかし、不規則な生活習慣やストレスなどによって自律神経のバランスが乱れてしまうと、体にさまざまな不調が生じます。
主な症状としては、疲労感や耳鳴り・肩こり・動悸などが挙げられますが、手足のしびれも自律神経の乱れによって生じる不調としてよく見られる症状の一つです。
ただし、自律神経の乱れによって生じる手足のしびれは寝起きに限った症状ではなく、日常生活でも気になる場面があるでしょう。
寝姿勢が崩れている
マットレスや枕など、使っている寝具が体に合っていない場合、上手く寝返りが打てなかったり寝姿勢が崩れたりすることがあります。
寝姿勢が崩れることで、体の重さが腕にのしかかり、神経が圧迫されることで手や腕のしびれが生じます。
また、悪い寝姿勢によっては腕だけでなく首の神経も圧迫されます。首の神経は腕とも繋がっているため、体の下敷きになっていない腕にもしびれを自覚することがあります。
大武修一郎
おおたけ整形外科・内科 院長
医療機関では、まず問診で、片手か両手か、親指から小指で何指に症状があるかなどを確認します。
診察では、首や肘や手首などの身体の局所を動かして手以外に症状が増大するか、また筋力の低下がないかを調べます。
おおよその原因を推察して、レントゲンやCTやMRIなどの画像検査で原因を特定していきます。
朝起きたら手がしびれるのは病気?
朝起きた時に手がしびれている場合に考えられる原因は上述したとおりですが、手のしびれには病気が関わっている可能性もあります。
片手のみがしびれるのか、もしくは両手がしびれるのかによって、考えられる病気はそれぞれ以下のとおりです。
- 片手のみがしびれる:脳卒中、軽中等度の頸椎疾患、手根管症候群(片側性)など
- 両手がしびれる:糖尿病、手根管症候群、重度の頚椎の疾患、頚髄疾患、手根管症候群(両側性)など
上述したような病気が原因でしびれが生じていると考えられる場合は、早急に病院を受診して専門家による適切な診断を受けるようにしてください。
症状によって受診する科は異なり、例えば内科・整形外科・脳神経外科・神経内科などが考えられます。しかし、受診する科が分からない場合は自分で無理に判断しようとせずに、まずはかかりつけ医に相談して指示を仰ぐと良いでしょう。
大武修一郎
おおたけ整形外科・内科 院長
脳卒中に伴って出現した片側のしびれや、しびれに加えて急激に脱力や麻痺が出現する頚椎・頚髄の疾患の場合には特に注意が必要です。
朝起きたら手がしびれる症状はどのくらいで治る?
朝起きた時に手がしびれる症状は、外から神経が圧迫された原因が明確に分かっている場合、自然に治るケースがほとんどなので、そこまで心配する必要はありません。改善までにかかる期間には個人差がありますが、一般的には数週間〜2ヶ月程度で治るといわれています。
また、「手がしびれたままだと生活に支障が出る」と感じる方は、病院に相談したうえで手首から指を固定するスプリントを装着するという対処法もあります。
自律神経が乱れている場合の対処法
上述したように、手のしびれに関して病気が関わっていると疑われる場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。それと併せて、自律神経の乱れや寝姿勢の崩れに関しては、日頃から対策に努めることも大切です。
まずは、自律神経を整えるために取り組める5つの対策を紹介します。
- 規則正しい食生活を心がける
- 適度な運動習慣を身に付ける
- 太陽光を浴びる
- リラックス方法を取り入れる
- ツボを押す
それぞれの対処法について、詳しく説明します。
規則正しい食生活を心がける
自律神経の乱れは、食生活や生活リズムの乱れから来ていることも多いです。規則正しい食生活をして栄養バランスの取れた食事をすることを心がけることで、自律神経が整いやすくなります。
忙しくて朝食を食べないことが多い方もいると思いますが、朝食を抜くことはおすすめできません。朝食を食べることで体内時計のずれがリセットされるため、毎日3食きちんと食べましょう。
栄養素という点からいえば、睡眠に関わるホルモンの分泌に関わる「トリプトファン」を豊富に含む食材を意識して摂取するのがおすすめです。トリプトファンは、乳製品・鶏肉・魚介類・大豆製品・ナッツ類などに多く含まれるため、さまざまなアレンジを楽しみながら日頃の食事に取り入れてみてください。
大武修一郎
おおたけ整形外科・内科 院長
急激な血糖値の上昇下降は自律神経のバランスの乱れに繋がります。ゆっくりとよく噛んで食べるようにして、血糖値の変動を出来るだけなだらかするように心がけましょう。
夕食も食後3時間は起きていられる時間帯で済ませるようにしましょう。
適度な運動習慣を身に付ける
自律神経を整えるために、軽めの有酸素運動やストレッチを行うことは効果的です。適度な運動はストレス解消に効果的で、達成感を得ることにも繋がります。
また、日中に運動して心地良い疲労が得られることで、夜に自然な眠気が促されて睡眠の質が高まりやすくなるため、そういった点でもプラスに働くでしょう。
ただし、いきなり負荷の大きな運動を始めても長続きしづらいため、できる範囲で無理のない運動から始めることをおすすめします。通勤・退勤時に一駅分歩くようにする、なるべくエレベーターを使わずに階段を利用する、休日にランニングをするなど、簡単なことから取り組んでみてください。
太陽光を浴びる
人間の体内時計の周期は約25時間であり、地球の周期(24時間)とは約1時間のずれがあるといわれています。そのずれをリセットする方法として、朝起きたらすぐにカーテンを開けて太陽光を浴びることで、脳内から「セロトニン」という脳内物質が分泌されて、体内時計がリセットされます。そうすることで交感神経と副交感神経の切り替わりがスムーズに行われ、自律神経が正確に働くようになるでしょう。
セロトニンは睡眠を促すホルモン「メラトニン」の原料にもなるため、夜にスムーズな眠気を促すためにも、日中にしっかりと分泌させておくことが大切です。
リラックス方法を取り入れる
日々溜めこんでいるストレスが、自律神経の乱れに繋がっている可能性も考えられます。ストレスを解消して自律神経を整えるためには、心身ともにリラックスすることが大事です。
リラックス方法は人それぞれなので、各々で「自分にとってリラックスできること」を行いましょう。例えば、読書やアロマを焚く、音楽を聴くなど何でも構いません。
具体的な例を一つ挙げるとするならば、リラックスモードの「副交感神経」を優位にさせる効果のある入浴がおすすめです。
体温が一度上昇して下降するタイミングで眠気が促されるため、入浴して体が温まることでスムーズな入眠に繋がりやすくなります。熱いお湯は体を興奮させてしまうため、お湯の温度は38℃程度、入浴時間は25~30分程度が理想的です。
ツボを押す
ツボを押すことで体の不調改善に効果が期待できますが、その中には自律神経の乱れに効くとされるものもあります。ストレス解消や自律神経を整える効果があるツボとして挙げられるのは、神門(しんもん)・合谷(ごうこく)・心包区(しんぽうく)などです。
神門は、手首(小指側)の腱の内側、くぼんだ所にあるツボで、押すとストレスを緩和させる効果があります。軽く圧迫するように刺激すると良いでしょう。
合谷は、手の甲側で親指と人差し指の骨の分かれ目、やや人差し指側にあるツボで、自律神経の働きを正常に戻す効果があります。気持ちいいと感じる強さで、やや強めに押し揉みましょう。
心包区は手のひらのほぼ中央、中指と人差し指のまたの間から2cm程度下がったあたりにあるツボで、自律神経の調子を整えるのに効果があります。親指の腹で軽く円を描くようにして、気持ち良い程度の力で押し揉みましょう。
ただし、ツボ押しに関しては無理しない範囲で行い、必要に応じて専門家に任せたりアドバイスを仰いだりすることも検討してください。
寝姿勢が崩れている場合の対処法
自律神経の乱れと同様に、寝姿勢が崩れる場合にも自分なりに行える対処法があります。寝姿勢が崩れると、肩こりや腰痛といったさまざまな不調を引き起こす可能性があるため、理想的な寝姿勢で眠れるよう努めましょう。
- マットレスを見直す
- 枕を見直す
以下では、使っている寝具の見直し方について、詳細な内容を解説します。
マットレスを見直す
寝姿勢の崩れには、寝具が影響していることも多いです。マットレスを見直して理想的な寝姿勢で眠れるようになると、体の不調の解消が目指せるだけでなく、睡眠の質も高まる可能性があります。
マットレスの体圧分散性は寝姿勢に大きく関わる要素なので、特に注意して選ぶようにしましょう。スムーズに寝返りを打つためには、適度な反発力があることも大切です。
就寝中には、全身に体の重みである体圧がかかり続けた状態となっています。特に、腰や肩といった体の出っ張った部分に体圧が集中しやすいため、上手に寝返りを打たないと腰や肩に痛みが生じてしまうかもしれません。
そこで、体圧分散性に優れており適度な反発力があるマットレスを使えば、体が押されるようにして寝返りを打ちやすくなるため、体の一部に体圧がかかり続けることを防ぎやすくなるでしょう。
自分に合うマットレスの選び方についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
枕を見直す
就寝中の寝姿勢を適切に保つためには、自分の体に合う高さの枕を使うことも重要です。
枕の理想的な高さは寝方によって異なり、仰向け寝の場合は背骨が緩やかなS字カーブを描く高さ、横向き寝の場合は頭から背中の骨が真っすぐになる高さが、それぞれ理想とされています。
寝方に応じて枕の高さが合っているかを確認する方法は、以下のとおりです。
- 仰向け寝:目線が真上より軽く足側に向く(足元を向きすぎている場合は枕が高すぎると判断)
- 横向き寝:目線が床と平行になる
ただし、体格などによっても「快適に眠れる」と感じる枕の高さには個人差があります。上述したポイントを踏まえつつ、自分にとって寝やすいと感じる高さの枕を選ぶよう心がけましょう。
自分に合う枕の条件や、枕選びのポイントについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
まとめ
起床時に手がしびれる症状は不安になるものですが、その背景には自律神経の乱れや寝姿勢の崩れがあることが多いです。
外から神経が圧迫されたエピソードが明確に分かっている場合、症状は自然に治っていくのが一般的ですが、あまりにも症状がつらい、ほかの症状もあらわれているといった場合には、何かしらの病気が隠れている可能性もあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
また、医療機関の受診を検討すると同時に、普段から生活習慣を整えることも大事です。
自律神経を整えるために取り組める方法としては、規則正しい食生活や適度な運動習慣を取り入れる方法などがあります。正しい寝姿勢で眠るためには、自分の体に合うマットレスや枕を使うことがおすすめです。
ぜひ記事内で紹介した方法を実践して、日々を健康的に過ごせるよう努めましょう。