睡眠に関することわざで「寝る子は育つ」という言葉があります。このことわざが本当なのか、疑問に思っている方は多いでしょう。
子どもの成長と睡眠の関係性を知ることで、ことわざの真相が見えてきます。
この記事では、「寝る子は育つ」という噂は本当なのか、言葉の意味や真相を解説します。理想的な子どもの睡眠時間や睡眠の質を高める方法も紹介するので、我が子に「寝る子は育つ」を実現させたいと考えている方はぜひ参考にしてください。
「寝る子は育つ」ということわざは正しい意味を持つ
「寝る子は育つ」とは、よく眠る子は元気に育つという意味を持つことわざです。
ことわざとは、昔から伝えられてきた知恵や教訓を含む言葉ですが、「寝る子は育つ」ということわざは単なる迷信ではないようです。
子どもの成長には、就寝中に分泌される成長ホルモンが関係しています。成長ホルモンには、軟骨に働きかけて骨の成長を促す役割があり、身長が伸びるために欠かせないものです。
眠りについてから2時間ほどの間に分泌量がピークを迎えるため、適切に睡眠をとることは子どもの成長のために大切だといえます。
このとおり、就寝中に子どもが成長するために必要な成長ホルモンの分泌が活発になることから、「寝る子は育つ」ということわざは正しい意味を持つといえるでしょう。
ただし、あくまでも「正しく睡眠をとれば、骨や筋肉に作用する成長ホルモンが分泌される」ということです。単純に「たくさん寝たから身長が高くなる」「寝た分だけ体格が良くなる」というわけではない点に注意してください。
森田麻里子
Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント
成長ホルモンは、深い睡眠に入っているときに多く分泌されると考えられています。
睡眠時間の長さだけではなく、生活リズムを一定にすることなど、睡眠の質を高めることも意識してください。
睡眠不足は子どもの成長に悪影響を及ぼす
厚生労働省によると、現在、子どもの4~5人に1人は睡眠に関する何らかのトラブルを抱えているとされています。
子どもの睡眠時間が不足すると、成長に悪影響を及ぼす可能性があるため、しっかりと睡眠時間を確保することは大切です。
子どもの睡眠時間が不足することで考えられる影響には、以下のようなものがあります。
- 成長が遅れる
- 集中力が低下する
- イライラしやすくなる
- 記憶力が低下する
- 落ち着きがなくなる
- 免疫力が低下する
近年は、ゲームやSNS、受験勉強など、子どもが夜更かしをしやすくなる要因が数多く存在します。これらによって睡眠リズムに乱れが生じると、例えば「朝起きられず学校に行けない」「イライラして物に当たる」など、日常生活に支障をきたす可能性もあるでしょう。
また、上記の症状があらわれるだけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病や、うつ病の発症に繋がる可能性もあります。
もし病気が疑われる場合には、医療機関を受診して適切な診断を受けるようにしてください。
森田麻里子
Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント
睡眠不足は食欲に関わるホルモン分泌に影響し、肥満の一因となることがわかっています。
大人は、さらに自律神経やメンタルヘルスにも影響を及ぼし、生活習慣病やうつ病のリスクを高めます。これは、子どもでも同様なのではないかと考えられています。
【年齢別】子どもの理想的な睡眠時間を解説
子どもが適切な睡眠時間を確保するためには、子どもにとって理想とされる睡眠時間を把握しておかなくてはなりません。
理想的な子どもの睡眠時間は、年齢別に以下のとおりです。
- 0〜3ヶ月:14〜17時間
- 4〜11ヶ月:12〜15時間
- 1〜2歳:11〜14時間
- 3〜5歳:10〜13時間
- 6-13歳:9〜11時間
- 14-17歳:8〜10時間
出典:米国国立睡眠財団「How Much Sleep Do We Really Need?」
上記のとおり、年齢によって必要な睡眠時間は異なるため、年齢に応じた睡眠時間を確保するよう心がけましょう。
ただし、やや短い睡眠時間でも元気な子どもがいたり、いつも長い睡眠時間をとる子どもがいたりなど、子どもそれぞれで必要な睡眠時間は異なります。
上記の睡眠時間を目安として、我が子にとって必要な睡眠時間を確保することを目指すと良いでしょう。
森田麻里子
Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント
子供にとって最適な睡眠時間を知るためには、日中元気に活動できているかが大切です。
ただし、一見元気そうに見えても、疲れてハイテンションになっている場合もあります。
また、目安の時間より明らかに睡眠時間が短い場合には、しっかり睡眠時間を確保することで、穏やかに過ごせる時間が増えます。
「寝る子は育つ」を叶えるために大切な心がけ
子どもが理想的な睡眠時間を確保するためには、日々、規則正しい生活リズムで過ごすことが大切です。
続いて、子どもに意識させてほしい生活習慣を3つ紹介します。どれも簡単に取り入れて習慣化できるものなので、ぜひ実践してみてください。
- 朝起きたら太陽光を浴びる
- 食事は決まった時間帯に食べる
- 落ち着いて眠れる寝室で就寝する
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
朝起きたら太陽光を浴びる
人間の体内時計の周期は、地球の周期である24時間より10分程度長いといわれています。体内時計がずれないように、人間の体にはリセットする仕組みが備わっています。
体内時計は太陽光を浴びることでリセットされるため、朝起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びることを習慣化させましょう。体内時計が正常に動いていれば、日中、活発に過ごしやすくなり、夜にきちんと眠くなるサイクルが整います。
また、就寝前に明るい光を見ると脳が「朝だ」と勘違いして覚醒してしまうため、夜に強い光、特にブルーライトを浴びないようにすることも重要です。
特に、子どもは大人よりも光を感じやすく、スマホに熱中して画面との距離も近くなりやすいことから、ブルーライトの影響を受けやすい傾向にあります。就寝前にスマホの操作は極力させないよう努めましょう。
食事は決まった時間帯に食べる
毎日、決まった時間帯に食事を食べると、体内時計が整いやすくなります。消化や分解といった体内の機能も、体内時計によってコントロールされるため、朝・昼・晩決まった時間に食事を済ませましょう。
学童期以降は、夕食は就寝時刻の3時間ほど前までに済ませることをおすすめします。就寝直前に消化の良くない食事を食べると、消化が優先されて眠りが浅くなる可能性があるため、避けたほうが良いでしょう。
さらに、夜遅くにご飯を食べると、朝起きてもお腹が空かない状況に陥る可能性もあり、朝食を抜く原因にもなってしまいます。朝食を食べることでも体内時計はリセットされるため、忙しくても朝食を抜かずにきちんと食べるのが理想です。
もし、食事の時間がバラバラになれば、体内時計のリズムが乱れて体に不調があらわれることもあるため、1日3食をできる限り同じ時間帯で食べるよう意識してみてください。
落ち着いて眠れる寝室で就寝する
子どもが安心して寝るためには、就寝する部屋の環境も大切です。テレビがうるさい、明るい蛍光灯がついている、寒すぎるなどの部屋では、寝づらくなってしまいます。
寝室の温度・湿度は、夏場は25℃〜27℃、冬場は18℃〜20℃、湿度は通年50%前後が理想的です。エアコンやヒーター、加湿器などを使用して、快適な室温を保ってください。
寝室が明るいと目が覚めて寝付きづらくなるため、照明は消して眠りましょう。真っ暗な部屋だと怖くて眠れないという子どもの場合、足元に小さめの暖色系ライトを置くのもおすすめです。
物音が気になって眠れない場合は、ホワイトノイズを流すのもおすすめです。ホワイトノイズとはザーという雑音で、物音をかき消して眠りやすくする効果があります。
子どもの睡眠のために親も生活習慣に気を付けよう
子どもの睡眠には、親の生活リズムも大きく関わっています。例えば、親が夜中まで起きていたら子どもも夜ふかしになりやすいですし、親が布団のなかでずっとスマホを触っていたら、子どもも真似をするかもしれません。
親も子どもと同様に、朝から太陽光を浴びたり3食きちんと食べたり、規則正しい生活を送るよう意識することが大切です。
また、寝具が体に合わないと快適に眠りづらくなるため、子どもの寝具にも気を配る必要があります。子どもが使う寝具は親が選ぶケースも多いため、子どもが寝やすいと感じるものを選んであげましょう。
寝具を購入する際には、体圧分散性に優れており適度な反発力があるマットレスを選べば、寝返りが打ちやすくなり体にかかる負担を軽減しやすくなります。
枕は、適切な高さのものを選びましょう。大人用のものは高すぎる可能性があるので、注意してください。
また、乳幼児には枕は必要ありません。特に乳児では、マットレスは固めのベビー用で、しわが寄らないようにぴったりとシーツを敷くなど、安全面にも注意して選んでください。
まとめ
「寝る子は育つ」ということわざは、就寝中に成長ホルモンが分泌されるメカニズムを考えると正しいといえるでしょう。
子どもが睡眠不足になると、集中力の低下やイライラなどの悪影響が生じる可能性があるため、子どもにとって必要な睡眠時間を確保することが大切です。
子どもの成長のためにも、睡眠時間を確保するのと同時に、生活習慣を見直すことで睡眠の質を高められるよう努めましょう。
また、子どもの睡眠には、親の生活リズムも大きく関わります。この記事で紹介した内容を参考にして、子どもと一緒に生活習慣を整えてみてください。