普段からよく眠れていない方や眠りが浅いと感じる方は、寝る前に取っている行動を見直してみましょう。寝る前の過ごし方によっては、それが不眠の原因となっている可能性があります。
この記事では寝る前にやってはいけないこと、睡眠の質を高める方法などを詳しく紹介します。ぐっすりと熟睡できるようになりたい方は、ぜひご一読ください。
現代では5人に1人が不眠に悩まされている
現代の日本では、21.7%の人が「睡眠で休養が取れていない」と感じており、5人に1人が睡眠に関する問題を抱えているといわれています(※1)。
しかし、日本では不眠に悩んでいても医療機関を受診する人の割合は低く、アルコールに頼る人の割合が高いというデータもあります(※2)。寝酒は一見寝つきが良くなるようにも思えるものの、不眠を促進させてしまう恐れがあるため、本来は不眠の対処に行うことは禁物です。
不眠の原因には、加齢や生活リズムの乱れ、ストレス、うつ病や不安障害などの精神疾患、睡眠時無呼吸症候群、レム睡眠行動障害、などさまざまなものが考えられます。
解消するためには、原因となる生活環境の改善や疾患の治療、自分に合った安眠法を見つけて実践することが重要です。併せて、寝る前にやってはいけないことも心得ておきましょう。
なお、すでに慢性的な不眠に悩んでいる場合は、不眠の背景を知るためにも医療機関を受診することをおすすめします。
(※1)参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023 」
(※2)参考:Soldatos CR, Allaert FA, Ohta T, Dikeos DG. How do individuals sleep around the world? Results from a single-day survey in ten countries. Sleep Med. 2005 Jan;6(1):5-13. doi: 10.1016/j.sleep.2004.10.006. Epub 2004 Dec 10.
不眠による影響
不眠になると、日中の倦怠感や意欲・集中力・食欲の低下などさまざまな心身の不調に繋がります。
自然に改善する程度の不眠は誰でも経験し得るものですが、慢性的な不眠になると不眠恐怖が生じ、さらに不眠が悪化してしまう悪循環に陥る恐れもあります。
不眠症について詳しく知りたい方は以下の記事も併せて参考にしてください。
寝る前にやってはいけない9つのこと
「寛ぎながらテレビを見る」「読書をする」など、寝る前の過ごし方は人それぞれですが、寝る前に取っている行動によっては快眠を妨げる原因となる場合もあります。
特に下記の9つは快眠を妨げてしまう原因となるため、注意しましょう。
- スマホの使用やパソコンでの作業
- お酒を飲む
- カフェインを摂取する
- タバコを吸う
- 就寝直前に熱めのお風呂に入る
- 就寝直前に食事をする
- 就寝前に激しい運動をする
- 眠れない状態のまま寝床で過ごし続ける
- 夕方以降に仮眠する
以下で詳しい内容を順番に紹介します。
スマホの使用やパソコンでの作業
寝る前にスマホでゲームやSNSを楽しんだり、パソコンで作業を行ったりする方は多くいるでしょう。しかし、寝る前のスマホ・パソコンの使用は眠れない原因となるので注意してください。
スマホやパソコンなどの画面からは波長が短くエネルギーが高い光「ブルーライト」が発せられており、夜の時間帯に浴びてしまうと脳が「昼間だ」と錯覚してしまいます。その結果心身が覚醒し、眠りにくくなってしまうのです。
また、夜に強い光を浴びると体内時計のずれに繋がり、普段の就寝時間に寝つけなくなる可能性もあります。自然と入眠するためにも、寝る前はスマホやパソコンをベッドから遠い位置に置いておくなどして、触らないように心がけましょう。
お酒を飲む
寝る前にお酒を飲むと眠りやすくなるように感じる場合がありますが、実は快眠を妨げる原因となるので気をつけましょう。
寝る前に摂取したアルコールが代謝されると覚醒作用のある物質が発生し、途中で目が覚めやすくなったり眠りが浅くなったりする可能性があります。
カフェインを摂取する
カフェインには覚醒作用が含まれているため、寝る前に飲むと眠れなくなる原因となります。日中の眠気を飛ばすために飲むのは効果的ですが、寝る前にカフェインを摂取するのは避けましょう。
カフェインは、主に下記の飲み物に含まれています。
- エナジードリンク
- コーヒー
- 紅茶
- ウーロン茶や煎茶などのお茶類
なお、カフェインの効果が持続する時間は4時間程度といわれています。
睡眠に影響を与えないためにもカフェインを摂取するのは遅くとも15時までに留めてください。
タバコを吸う
喫煙者の方の中には、寝る前にリラックスするために「タバコを吸ってからベッドに入っている」という方もいるのではないでしょうか。
しかし、タバコに含まれているニコチンには、即効性の覚醒作用があるので注意してください。寝る前に喫煙をすると覚醒作用が原因となり、入眠しにくくなる可能性があります。
ニコチンによる覚醒効果は、約1時間持続するといわれています。そのため、タバコを吸うのは就寝1時間〜2時間前までに留めましょう。
就寝直前に熱めのお風呂に入る
就寝直前に熱めのお風呂に入ると、心身が覚醒してしまい眠りにくくなる可能性があります。
睡眠の妨げとなるのを防ぐためにも、入浴は38℃のぬるめのお湯で25分~30分程度、半身浴なら約40℃のお湯で30分程度、42℃の熱めのお湯であれば5分程度に留めましょう。
なお、就寝直前の入浴は心身が覚醒する原因となるためおすすめできませんが、就寝時間90分〜120分前の入浴は睡眠の質を高めるうえで効果的です。
人は体内部の体温「深部体温」が低くなると眠くなります。この深部体温は入浴すると上がりますが、お風呂上がりには下がっていきます。
そのため、就寝時間の90分〜120分前に入浴すれば、深部体温が丁度良いタイミングで下がり、ベッドに入る時間に自然と眠気が訪れるでしょう。
就寝直前に食事をする
就寝直前に食事をすると、就寝中に消化活動が行われる影響で睡眠の質が低くなる可能性があるので注意してください。
就寝中に消化活動が行われると脳が刺激されてしまい、眠りが浅くなる場合があります。
なお、消化活動は一般的に2時間〜3時間かかるといわれています。そのため、夕食は就寝3時間前までに済ませると良いでしょう。
就寝前に激しい運動をする
就寝前に激しい運動をすると、体が覚醒してしまい寝つけなくなる可能性があります。特に就寝1時間以内の激しい運動は、睡眠の質に良くない影響が出るといわれているので注意してください。
ただし、軽いストレッチ程度の運動であれば、体がほぐれて眠りやすくなるといわれています。
眠れない状態のまま寝床で過ごし続ける
人間が一晩に眠れる時間の長さは限られているため、眠れない状態のまま寝床に居続けるとかえって眠りにくくなることがあります。そのため、寝床で過ごす時間は実際に眠れる時間の平均プラス30分に留めることがおすすめです。
なお、寝床で20分以上過ごしても眠れない場合は、思い切って寝床からいったん出るのも一つの選択です。寝床から出て部屋を暗めの照明にし、眠れない悩みから離れてリラックス状態を維持しやすい活動に取り組みましょう。
夕方以降に仮眠する
仮眠は日中の眠気を飛ばして集中力を保つには最適な方法です。しかし、夕方以降に仮眠をすると夜に眠気が訪れず、寝つけなくなる場合があるので気をつけましょう。仮眠をとるのは遅くとも15時までに留めることをおすすめします。
また、夕方前でも仮眠の時間が長すぎる場合は、睡眠に良くない影響が出る可能性があるので注意してください。仮眠の時間は15分〜30分に留め、寝過ぎないか不安な方はアラームをセットするなどして対策しましょう。
快眠したいなら睡眠時間の長さではなく「睡眠の質」にも注目しよう
快眠するには睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の質を高めることも重要です。睡眠の質が低いとどんなに長く眠っても快眠できないため、睡眠の量と質が保たれ心身の健康を促すような睡眠を目指しましょう。
必要な睡眠時間は個人差があるため一概にはいえませんが、良い睡眠といえるかどうか判断するには、昼間に強い眠気が生じるかどうか、また睡眠中に目覚める回数なども目安として役立ちます。
「寝ても寝た感じがしない」「疲れが取れない」など、睡眠時間は確保しているにも関わらず睡眠に悩みを抱えている方は、睡眠の質を見直してみると良いでしょう。
睡眠の質を高める方法
睡眠の質を高めたい方は、下記の5つの方法を参考にしてください。
- 食事を通してトリプトファンを摂取する
- 就寝前に温かい飲み物を飲む
- 就寝前はリラックスする
- 日中に適度な運動をする
- 体に合っている寝具を使う
以下でそれぞれの方法について、詳しい内容を紹介します。
食事を通してトリプトファンを摂取する
睡眠の質を高めたい方は、食事を通してアミノ酸の一つ「トリプトファン」を摂取するよう心がけると良いでしょう。
トリプトファンは、脳や体を活動状態に導く「セロトニン」というホルモンを作るために必要な栄養素です。
体内で作られたセロトニンは、夜になると心身を休息状態に導く「メラトニン」に変化します。この2つのホルモンが機能していれば「日中に活動して夜に眠くなる」という健康的なサイクルに沿って生活を送ることができ、睡眠の質の向上に繋がります。
なお、トリプトファンは納豆や豆腐をはじめとした大豆製品、卵や牛肉などに含まれています。食事のメニューを決める際は、ぜひこれらの食材を取り入れてみましょう。
就寝前に温かい飲み物を飲む
睡眠の質を高めるには、就寝前に温かい飲み物を飲むのも効果的です。温かい飲み物を飲んで体温が上昇すると、その後深部体温が下がっていく過程で眠気が訪れます。
また、心身がリラックスできるため、より寝つきが良くなるでしょう。
なお、温かい飲み物の例としてはホットココアやホットミルク、白湯が挙げられます。できるだけ刺激が少なく、飲んでいて気持ちが落ち着く飲み物がおすすめです。
就寝前はリラックスする
体や精神が緊張していると寝つきにくくなるため、寝る前はできるだけリラックスしましょう。リラックスする方法にはさまざまありますが、例としては下記の4つが挙げられます。
- 温かい飲み物を飲む
- 読書する
- アロマを焚く
- ヒーリングミュージックを流す
日中に適度な運動をする
そもそも睡眠には、消耗した体の回復や修復の役割があります。そのため、日中の適度な運動習慣は、入眠の促進や中途覚醒を減らすなど睡眠の質を高めることに繋がります。
適度な疲労感を得るために、日中にウォーキングやジョギングのような有酸素運動を取り入れるのもおすすめです。
体に合っている寝具を使う
心地良い環境で眠るためにも、寝具は自分にとって特徴が合っていると思える製品を使いましょう。
人の体格や好きな寝心地はそれぞれ違うため、どの寝具が合っているかも使う人によって変わってきます。
高さや硬さなど寝具の特徴が体に合っていないと、寝にくさを感じて熟睡できない可能性があるので注意してください。
まとめ
現代では、日本人の約5人に1人が睡眠に関する問題を抱えていると言われています。
「スマホを操作する」「タバコを吸う」など、寝る前に取っている行動が知らず知らずのうちに睡眠を妨げる原因となることがあるため、普段からの心がけが大切です。
夜にぐっすり眠って朝スッキリと目覚めるためにも、寝る前は睡眠の妨げになるような行動を取らないように意識して過ごしましょう。