成長ホルモンは子供の筋肉や骨などの成長を助けるために重要な役割を果たしますが、大人になると分泌されなくなるわけではありません。
そのため、大人にとって成長ホルモンはどのような役割を担うものなのか、気になる方もいると思います。また、「成長ホルモンは寝ている間によく分泌される」といわれることもありますが、成長ホルモンと睡眠にはどのような関係があるのかも、知っておきたいところでしょう。
この記事では、子供と大人それぞれにとっての成長ホルモンの役割、成長ホルモンと睡眠の関係性、睡眠の質を高める方法に関して説明します。
成長ホルモンの役割
成長ホルモンが担う役割や与える効果は、子供と大人で異なります。子供と大人それぞれにとっての成長ホルモンの役割に関して、以下で詳しく説明します。
子供の場合
成長ホルモンは脳の下垂体から分泌されるホルモンです。子供にとっての役割は、免疫力を強化する、筋肉を増やす、骨を強化するなどが挙げられます。
成長ホルモンは生後3ヶ月から分泌されることが確認されており、幼児期・青年期と成長するにあたり、分泌量も増加していきます。子供が健やかに育っていくためには、成長ホルモンの適切な分泌が欠かせません。
武井智昭
高座渋谷つばさクリニック 院長
子どもさんが成長ホルモンを分泌するためには、心身ともにリラックスしており、眠れる環境にあることです。お友達と良い関係で体を使って遊ぶ、就寝60分前にはスマホやゲーム・テレビを見ないことによる良質の睡眠をとることが重要です。
大人の場合
成長ホルモンは体の成長だけでなく、体のさまざまな代謝調整にも関わります。そのため成長期の子供だけでなく、大人にとっても欠かせないホルモンです。
年齢とともに成長ホルモンの分泌が少しずつ減っていくのは、自然にみられる現象ではあります。ただし、あまりにも分泌が減ってしまうと、脂質の代謝に異常をきたしたり、心血管系疾患のリスクが高まったりする点には注意が必要です。
成長ホルモンの効果を得るには睡眠が重要
成長ホルモンは代謝に関わるホルモンなので、分泌が増えることで疲労回復などの効果が期待できます。成長ホルモンの分泌を増やすには、「ゴールデンタイム」に深い睡眠をとることが重要です。
睡眠のゴールデンタイムと聞くと、「22時〜深夜2時」をイメージする人が多いと思います。しかし、成長ホルモンが最も盛んに分泌される真のゴールデンタイムは、「入眠後3〜4時間の間」と定義されるため、人それぞれ異なります。そのため、入眠後3〜4時間の間に質の高い睡眠をとることを心がける必要があります。
武井智昭
高座渋谷つばさクリニック 院長
成長ホルモンは深い睡眠で分泌されます。人間の睡眠は眠りが深いノンレム睡眠と、夢を見るなど浅いレム睡眠に分かれます。成長ホルモンなどの分泌は入眠後の30~60分後から出始めます。
睡眠の質を高める方法
ゴールデンタイムに深く眠って睡眠の質を高める方法には、主に以下のようなことが挙げられます。
- 適度な運動をする
- リラックスする
- 入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
- スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までに留める
- 飲酒・喫煙を避ける
- カフェインの摂取を避ける
それぞれに関して、以下で詳しく説明します。
適度な運動をする
適度な運動による程良い疲労感は、心地良い眠りに繋がります。ただし、激しい運動は交感神経を優位にしてしまい、眠りが浅くなるため控えましょう。
ウォーキングやジョギング・水泳などの軽めの有酸素運動を、寝る3時間前までに行うことが効果的です。
リラックスする
リラックスすることは副交感神経を優位にするのに効果的なので、リラックスした状態を保つことで自然と眠りにつきやすくなります。リラックスの方法はアロマを焚いたり好きな音楽を聴いたりなど人それぞれなので、自分の好きな方法を実践しましょう。
ただし、ゲームなどは、画面からの強い光が影響して眠りにくくなるため、控えたほうが良いでしょう。
入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
寝る直前の入浴は、睡眠の質を高めるうえでは好ましくありません。そのため、就寝時間の約90~120分前に入浴することを意識しましょう。入浴時間は25~30分程度、お湯の温度は38℃程度のぬるめが理想的です。そうすることで副交感神経優位の状態になるので、睡眠の質の向上に繋がります。
なお、熱いお風呂に入ると交感神経が優位になり、反対に眠りにくくなってしまいます。お風呂のお湯は熱いほうが良い方もいると思いますが、睡眠の質を高めたい場合は低めに設定しましょう。
スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までに留める
一般的に人は、「日光を浴びると覚醒し、夜になると眠くなる」睡眠リズムを持っています。これにはメラトニンと呼ばれるホルモンが関係しており、メラトニンの分泌量が増えると眠くなります。
メラトニンは、強い光を浴びると分泌量が減り、暗い場所にいると分泌量が増えるようになっているため、夜になると自然と眠気が生じます。
寝る直前にスマホやパソコンの画面を見ていると、その光によって脳が昼間であると錯覚し、メラトニンの分泌量が減ってしまいます。その結果、上手く寝付けなくなり睡眠の質が低下しする場合があります。そのため、寝る約2時間前からスマホやパソコンには触らないことが理想的です。
飲酒・喫煙を避ける
アルコールは神経に作用したり代謝によって尿意をもたらしたりする可能性があるので、睡眠の質を高めるうえでは好ましくありません。また、寝酒は寝付きこそ良くなりますが、睡眠自体が浅くなるため避けたほうが良いでしょう。
タバコには覚醒作用があり睡眠には悪影響なので、飲酒同様に控えることが望ましいです。
武井智昭
高座渋谷つばさクリニック 院長
飲酒が過度になる場合や喫煙の習慣が長い場合は、睡眠時に優位となる「副交感神経」があまり働かないため、深い睡眠がとれず組織修復に重要な成長ホルモンの分泌が低下する傾向があります。
カフェインの摂取を避ける
カフェインには覚醒作用があるため、就寝の3〜4時間前からは摂取を控えたほうが良いです。カフェインは興奮物質であり、摂取することで交感神経が刺激され緊張状態となることも、質の良い睡眠をとるためには好ましくありません。
また、カフェインの利尿作用によって睡眠中に尿意で起きてしまうなど、睡眠が妨害される場合もあります。
まとめ
成長ホルモンの分泌は子供が健やかに成長するために欠かせませんが、大人にとっても体の代謝を調整する重要な役割を担っています。成長ホルモンの分泌を増やすには、「ゴールデンタイム」に深い睡眠をとることが重要です。
なお、睡眠のゴールデンタイムは「22時〜深夜2時」ではなく、「入眠後3〜4時間の間」と定義されるため注意しましょう。
睡眠の質を高めるためには、適度な運動をすることやカフェインの摂取を避けることなどが重要です。自分なりにできることから始めて、質の高い睡眠をとることを意識しましょう。