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2024.01.22 更新

【医師監修】高齢者は不眠のリスクが上がる?年齢で起きる睡眠の変化について解説

【医師監修】高齢者は不眠のリスクが上がる?年齢で起きる睡眠の変化について解説

高齢の方のなかには「早朝に目が覚めてしまう」「睡眠時間が短くなった」など、睡眠に関する不安や悩み、問題を抱えている方もいらっしゃいます。

睡眠は年齢とともに特徴が変化するため、早寝早起きになったり睡眠時間が少なくなったりすることが必ずしも問題になるわけではありません。

しかし、年齢を重ねることによる睡眠の課題も多くなるため、高齢者ならではの原因が不眠に繋がっている可能性も考えられます。

この記事では、高齢者の睡眠の特徴や不眠になる原因、対処法などを解説します。加齢に伴う睡眠について悩みや問題を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

  1. 高齢者の睡眠の特徴
  2. 不眠症など睡眠障害のリスクも高くなる
  3. 高齢者の主な不眠の原因
  4. 活動量・運動量の低下
  5. 孤独や経済面などのストレス
  6. 夜間頻尿
  7. メラトニンの分泌量の減少
  8. 高齢者の不眠には病気が関係している可能性もある
  9. 高齢者の不眠への対処法
  10. 医療機関を受診する
  11. 適度な運動に取り組む
  12. ストレス解消法を見つける
  13. 水分の摂り方に気を付ける
  14. メラトニンの分泌を促す
  15. まとめ

高齢者の睡眠の特徴

加齢に伴い見た目や身体機能が変化するように、睡眠も年齢とともに変化します。高齢者の睡眠の主な特徴は、以下のとおりです。

  • 早寝早起きになる
  • ノンレム睡眠が減りレム睡眠が増える
  • 寝付きが悪くなる

睡眠は、ホルモンや自律神経など、人体のさまざまな機能が関係するものです。厚生労働省によると、ホルモンの分泌や自律神経を管理する体内時計は年齢とともに変化していき、高齢者は全体的に生体機能のリズムが前倒し(※)となる傾向があります。

そのため、高齢者が若いころに比べて早起きになったり、必要な睡眠時間が短くなったりするのは一般的なことです。

また、高齢者は眠り自体も浅くなるため、ちょっとした物音や尿意で夜中に目が覚めることも多くなる傾向があります。

こうした、加齢によって生じる睡眠の変化は当然のことなので、過度に心配する必要はありません。「早く目覚めてしまう」「眠りが浅い」など、睡眠に関する悩みを気にしすぎると、かえってストレス要因になる可能性もあります。

加齢による一般的な睡眠の悩みではなく、ほかの症状が出ていたり異常が見られたりする場合には、原因を把握して適切に対処する必要があるでしょう。

(※)厚生労働省 e-ヘルスネット「高齢者の睡眠」

不眠症など睡眠障害のリスクも高くなる

高齢者の方は、不眠症をはじめとした睡眠障害を患うケースも珍しくありません。厚生労働省によると、不眠症とは睡眠に関する問題が1ヶ月以上続く状態(※)のことです。

不眠症は症状によって、以下4つの種類が存在します。

不眠症の種類症状
入眠障害・寝床に入って寝つくまで30分〜1時間以上かかる
・入眠できないことが苦痛と感じる
中途覚醒・睡眠中に目が覚める
・一度目覚めると寝つけなくなる
早期覚醒・予定の起床時刻より2時間以上早く目覚める
熟睡障害・十分に眠っても熟睡感が得られない

不眠症はストレスや生活習慣、薬の副作用などが原因の一つとなります。また、何かしらの病気が引き金になることもあります。

睡眠時無呼吸症候群は、代謝がおちることで肥満の原因に繋がったり、ホルモン動態が変化し抗重力筋が低下することにより高齢になると起こしやすい病気でもあります。

また、レストレスレッグス症候群は若年女性のほかにも、高齢になると多くなりやすい病気でもあります。レストレスレッグス症候群はドーパミンとの関わりがあるため、高齢者になると多くなるパーキンソン病などがベースとして、二次性に起こることもあります。

睡眠時無呼吸症候群・レストレスレッグス症候群などの睡眠に直結する病気は医療機関での治療により改善ができるため、眠れない以外にほかに症状がないかを確認してみることもおすすめします。

不眠になると、睡眠の質が低くなることで十分な睡眠欲求を満たせず、日中の倦怠感や意欲の低下、集中力の欠如などが症状としてあらわれるため、早期改善が望ましいでしょう。

(※)厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」

田中奏多

田中奏多

東京TMSクリニック院長

睡眠時無呼吸症候群は、代謝がおちることでふくよかになったり、ホルモン動態が変化し抗重力筋が低下することにより高齢になると起こしやすい病気でもあります。
また、レストレスレッグス症候群は若年女性のほかにも、高齢になると多くなるなりやすい病気でもあります。レストレスレッグス症候群はドーパミンとの関わりがあるため、高齢者になると多くなるパーキンソン病などがベースとして、二次性に起こることもあります。

高齢者の主な不眠の原因

高齢者の不眠のリスクが高くなる原因には、主に以下のものが挙げられます。

  • 活動量・運動量の低下
  • 孤独や経済面などのストレス
  • 夜間頻尿
  • メラトニンの分泌量の減少

それぞれを詳しく解説します。

活動量・運動量の低下

高齢者は退職している場合が多く、生活にメリハリがなくなってしまったり、活動量が減ることで身体機能が衰えやすくなる傾向があります。

適度な運動は体を疲労させて深い眠りを促進しますが、高齢者は運動不足になる傾向があるため、睡眠の質の低下に繋がる可能性があります。

また、社会との接点が少なくなることで生活リズムの調整も難しくなります。体内時計は太陽光を浴びることによりリセットされますが、日中に活動する機会が減ると、体内時計もリセットされづらくなるでしょう。

孤独や経済面などのストレス

ストレスは睡眠の質の低下を招き、場合によってはうつ病のリスクを高める原因にもなり得ます。そして、うつ病が不眠に繋がってしまうことも珍しくありません。

特に高齢者は、家族との死別や退職による孤独感、パートナーの介護など、環境の変化によりストレスを感じることが多くなる傾向があるため、ストレスが原因で不眠に陥ることも少なくないでしょう。

夜間頻尿

夜間頻尿は毎晩、排尿のために起きなければいけない状態のことです。高齢者だと70代以上の方で2回以上起きてトイレに行く場合は、夜間頻尿に該当する可能性があります。

排尿の回数は加齢とともに増えることがわかっており、高齢者の40〜80%は夜間頻尿だと考えられているそうです。

高齢者の夜間頻尿が多くなる原因には、1日の尿量が多くなる「多尿」や、膀胱に溜められる尿が少なくなる「膀胱の容量減少」のほか、加齢に伴って眠りが浅くなり、目が覚めるごとにトイレが気になるといったことが挙げられます。

夜間頻尿については下記の記事でも詳しく解説しているので、夜間頻尿に関する悩みがある方はこちらもご参照ください。

頻尿
【医師監修】夜間頻尿になる原因を男女別に解説!食事や運動習慣を見直して改善に努めよう

メラトニンの分泌量の減少

睡眠にはメラトニンというホルモンが関係しており、メラトニンが分泌されることで夜に自然と眠気が促されます。

メラトニンは暗い環境で分泌されるのですが、高齢者はメラトニンの分泌量が若いころのピーク時より10分の1以下に減少することがわかっています。メラトニンの分泌が減少すると、睡眠と覚醒のリズムが崩れてしまい不眠に繋がります。

高齢者の不眠には病気が関係している可能性もある

一般的に、高齢になると関節炎の痛み体のかゆみを伴う疾患を抱えている方も多くなる傾向があります。これらの病気自体が不眠の原因になることがあるほか、病気の治療薬が原因で不眠になるケースもあります。

また、前述した高齢者特有のストレスにより「うつ病」を発症し、不眠に繋がるケースも考えられるでしょう。

そのほか、アルツハイマー病のような認知症は高齢になるほど発症しやすく、認知症の方は同年代と比較しても睡眠が浅くなり、さまざまな睡眠の問題が生じる傾向があります。

このように、病気を患いやすい高齢者の場合は、抱えている病気が原因で不眠に陥る可能性も高くなると考えられます。

高齢者の不眠への対処法

高齢者の不眠への対処法

高齢者で不眠に悩む場合、放置せずに適切な対処を行うことが大切です。主な対処法としては、以下のものが挙げられます。

  • 医療機関を受診する
  • 適度な運動に取り組む
  • ストレス解消法を見つける
  • 水分の摂り方に気を付ける
  • メラトニンの分泌を促す

それぞれを解説します。

医療機関を受診する

最も確実な対処法は、医療機関で受診して相談してみるとよいでしょう。必要に応じて医師の診断のもと治療を行うことで、よくなる可能性があります。症状が長く続いたり対策しても効果が見られなかったりする場合は、医療機関での受診を検討すると良いでしょう。

「うまく眠れない」という症状の受診先としては、主に内科や心療内科、精神科、睡眠外来が考えられます。不眠症をはじめとした睡眠障害を改善するためには、根本的な問題を取り除く必要があるため、まずは原因を把握して適切な科で受診してください。

なお、症状によっては上記以外の科が適する場合もあるため、受診先が不明な場合はかかりつけ医に相談するのも一つの手段としておすすめです。

田中奏多

田中奏多

東京TMSクリニック院長

不眠症は夜にうまく眠れないだけでなく日中の活動が睡眠により影響されているかがポイントになります。睡眠は日中の眠気が強い、日中にだるさが多いなど「これくらいで相談してもいいの?」という状態でも受診はできます。悩んでいる時には専門家に気軽に相談にきてください。

適度な運動に取り組む

日中の適度な運動は肉体に疲労感を与えるため、夜に眠気が促されやすくなります。軽いストレッチやウォーキング、踏み台昇降運動などがおすすめです。

ただし、激しい運動を1日だけ行うのでは意味がありません。定期的な運動を継続して行うことが大切なので、日々の習慣に運動を取り入れて長く継続できるよう努めると良いでしょう。

ストレス解消法を見つける

年齢を重ねると、退職や家族との死別など、生活環境が大きく変化する出来事が多くなるため、ストレスを抱えやすい傾向があります。

しかし、それらの変化自体を避ける事は難しいため、受けるストレスをゼロにするのではなく、自分なりのストレス解消法を見つけて、ストレスを溜めないように心がけましょう。

ストレス解消法がわからない方は、友人に話を聞いてもらう、趣味を楽しむ、スポーツに取り組むなど、はじめやすいものから試してみることをおすすめします。

水分の摂り方に気を付ける

夜間頻尿は多尿を原因とするケースが多いため、夜間頻尿で悩んでいる方は、以下のように水分の摂り方に気をつけると対処できることがあります。

  • 利尿作用のあるカフェインやアルコールの摂取を控える
  • 塩分の摂取を控える
  • 夜間帯の水分摂取を控える

ただし、夜間頻尿の原因は多尿だけではないため、対策をしても改善されない場合は医師に相談し、適切な治療を受けましょう。

メラトニンの分泌を促す

睡眠はメラトニンの分泌により促されますが、メラトニンはセロトニンという神経伝達物質を材料に生成されます。

セロトニンは強い光(太陽光)を浴びたり、筋肉の緊張と弛緩を一定のリズムで繰り返したりすると放出されやすいため、日中に軽めのウォーキングなどを取り入れると良いでしょう。

また、セロトニンはトリプトファンというタンパク質により合成されますが、トリプトファンは体内で生成できないため、外部から摂取しなくてはいけません。

トリプトファンは大豆製品や乳製品、穀類などに多く含まれているため、このような食べ物を食事に取り入れるのもメラトニンの分泌を促す効果が期待できます。

まとめ

高齢者の睡眠は、若いころと比べて早寝早起きになったり眠りが浅くなったりする特徴があります。

高齢者のなかには「若いころより眠れなくなった」と感じる方が多いと思いますが、加齢とともに睡眠時間が少なくなるのは一般的なことです。無理に寝ようとせずに、眠くないなら寝床から出て、眠気を感じたら寝るようにすると良いでしょう。

また、高齢者は不眠に陥りやすい傾向があり、原因も高齢者ならではのものが多くなります。長期間不眠が続いて悩んでいるまたは、対策してもまったく改善されないようなら、一度医師への相談をおすすめします。

この記事の監修者
田中奏多
田中奏多東京TMSクリニック院長
東京TMSクリニック 院長。産業医視点からビジネスマン・ビジネスウーマンを支えております。生薬ベースの漢方内科での経験を活かし、腹診を含めた四診から和漢・井穴刺絡などの東洋医学を扱い、ホルモン、生活習慣をベースに身体から心にアプローチする診療を担当。米国マウントサイナイ大学病院へ留学、ハーバード大学TMSコースを修了。TMSをクリニックへ導入、日本人に合わせたTMSの技術指導、統括を行っております。著書『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』など。
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