車を運転する際に特に気をつけたいのは眠気です。眠気による注意力の低下や集中力の低下は運転中の事故に繋がる可能性もあるため、運転をする際はしっかり眠気対策をする必要があります。
また、車の運転中、頻繁に眠気が生じる場合は病気の可能性もあるため、眠気に繋がる主な原因を理解しておくことも大切でしょう。
この記事では、運転中に眠くなる原因や対策方法を詳しく解説します。運転中の眠気に悩まされている方は、ぜひご一読ください。
車の運転中に眠くなる原因
車を運転していると、眠気に襲われることがあるでしょう。眠気が起こる原因は数多くありますが、運転中の眠気は下記の4つが原因とされるケースが多いです。
- 睡眠不足
- 車の振動
- 食後の血糖値上昇
- 睡眠障害
以下で詳しい原因を順番に解説します。
睡眠不足
運転中に眠くなる原因として、まず考えられることは睡眠不足です。満足に眠れていない日々が続くと、眠れなかった分の睡眠負債が蓄積し日中に強い眠気があらわれることがあります。
睡眠不足の状態で行う運転は普段よりも注意力が低下しやすく、事故に繋がる可能性も考えられます。安全に運転をするためにも、睡眠は毎日しっかりとりましょう。
中山明峰
めいほう睡眠めまいクリニック 院長
睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞、脳梗塞につながることがよく知られていますが、睡眠不足も同様に循環器障害を引き起こすことが知られているのみならず、近年認知症を引き起こすと考えられています。
車の振動
人間の脳には、覚醒状態の維持や睡眠を抑制する「上行性脳幹網様体賦活系(じょうこうせいのうかんもうようたいふかつけい)」と呼ばれる神経系統が存在します。
上行性脳幹網様体賦活系は、体が揺れを感じることで作動すると考えられています。揺れが強ければ上行性脳幹網様体賦活系の働きは活発になり、脳は覚醒するといわれています。
一方で、ゆったりとした揺れだと上行性脳幹網様体賦活系の働きは弱まり、眠気を感じるようになっています。
そのため、単調でゆったりとした揺れが続くような道を走っている時は注意が必要です。体に生じる緩やかな揺れが、眠気に繋がってしまう場合があります。
食後の血糖値上昇
食後は、血糖値が上昇する関係で眠気を感じやすいタイミングなので注意してください。
一度の食事で多くの糖質を摂取すると、体の血糖値は上昇し、その後急激に下がっていきます。その結果、体が低血糖状態となってしまい、脳に送られる栄養が不足して眠気やだるさに繋がる場合があります。
こうした血糖値の急上昇・急下降は、主に食べ過ぎや飲み過ぎに原因があるといわれています。心配な場合は運転前の食事内容を見直しましょう。
睡眠障害
睡眠障害とは、睡眠に関連した病気の総称のことです。運転中に眠くなる場合、日中の眠気に繋がる睡眠障害を発症している可能性も考えられます。
以下では代表的な睡眠障害を2つに分けて紹介します。症状に心当たりがある方は、早めに医療機関に相談してください。
過眠症
過眠症とは、日中に強い眠気が生じる症状の総称です。過眠症にはいくつか種類がありますが、運転中に突然眠気が襲ってくる主な病気としては「ナルコレプシー」が挙げられます。
ナルコレプシーは日中に強い眠気があらわれ、通常であれば眠ることがない状況でも居眠りをしてしまう病気です。ナルコレプシーを発症した場合、運転中であってもそのまま眠ってしまう可能性があります。
突然の居眠りは交通事故に繋がる場合があるため、症状を抱えた状態での車の運転は危険です。思い当たる症状がある方は、車の運転を避けたうえで、医療機関の受診を強くおすすめします。
中山明峰
めいほう睡眠めまいクリニック 院長
基本的に病院に来る過眠だと思われている患者さんの多くは、どこかで睡眠不足をしていることが多いです。充分に寝ても改善しない場合は、過眠症が診断できる睡眠クリニックに受診することを勧めます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が発生する病気のことです。
睡眠中に無呼吸の症状が生じると体内の酸素が低下し、覚醒作用を持つ二酸化炭素の量が上昇して眠りが浅くなる場合があります。その結果、起床時の体のだるさや、日中の強い眠気などの症状に繋がります。
無呼吸のほかには、大きないびきも睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状の一つです。周囲の方からいびきの大きさを指摘される機会が多い方は、医療機関に相談すると良いでしょう。
中山明峰
めいほう睡眠めまいクリニック 院長
睡眠時無呼吸症候群は一般的には肥満の中高年に多発します。日本人の場合は顔面骨格の問題、特に下顎が小さいこと、また、子どもについては扁桃腺やアデノイドが大きいことが関わります。
車の運転中に襲ってくる眠気のリスク
昼食後や夕方など日中の眠気はさまざまなタイミングで生じますが、特に運転中に襲ってくる眠気には注意が必要です。
強い眠気は集中力の低下や判断力の低下を招き、眠いままの状態で運転を続けると重大な事故に繋がる可能性があります。
実際に、居眠り運転が原因で発生する事故は後を絶ちません。普段のニュースを見ているだけでも、居眠り運転による事故の発生は高い頻度で報じられています。警視庁の調べによると、令和3年度だけでも居眠り運転による交通事故は265件発生しています。
そのため、車の運転をする際は眠気対策をしっかり行いましょう。どうしても眠い場合は、運転を控えるようにしてください。
運転中の眠気の対策方法
運転中に生じた眠気は、下記の眠気対策を試してみましょう。
- カフェインを摂取する
- 冷たい水で顔を洗う
- 仮眠をとる
- ガムを噛む
- ストレッチをする
- 換気をする
- 眠気覚ましのツボを刺激する
- 助手席の人に話しかけてもらう
以下で具体的な方法を解説するので、運転中の眠気に困っている方はぜひ参考にしてください。
カフェインを摂取する
運転中に眠気が襲ってきた時は、カフェインを含んだ飲み物を飲むことをおすすめします。カフェインには神経を興奮させて心身の覚醒を促す作用があり、眠気覚ましになってくれます。
カフェインが持つ覚醒効果は、摂取してから15分程度で出てきます。万全な状態で運転をするためにも、眠気を感じる際は乗車前のタイミングで摂取しておくと良いでしょう。
なお、カフェインは主に下記の飲み物に含まれています。
- コーヒー
- 紅茶
- 烏龍茶
- 煎茶
- エナジードリンク
これらの飲み物はどれもコンビニやスーパー、自動販売機などで購入できる場合がほとんどです。運転の際は、カフェインが含まれた飲み物を販売している店舗、自動販売機の位置を覚えておくと良いかもしれません。
冷たい水で顔を洗う
運転中に眠気が襲ってきた時は冷たい水で顔を洗うことも効果的です。運転の途中にサービスエリアなどで休憩できるタイミングがある場合は、試してみると良いでしょう。
人の体をコントロールする神経を総称して「自律神経」と呼びます。自律神経には、心身を活発な状態に導く「交感神経」と、体をリラックスした状態に導く「副交感神経」があり、交互にバランス良くはたらくことで機能しています。
車に例えると、交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキのような役割と考えるとわかりやすいでしょう。
冷たい水で顔を洗うことで、交感神経が刺激されて優位にはたらき、眠気が覚めます。 なお、状況によっては顔を洗うことができない場合もあるかもしれませんが、冷たい水に浸したタオルで顔を拭くだけでも効果はあるので、試してください。
仮眠をとる
運転中に耐え難い眠気が襲ってきた時は、駐車場などに車を止めて仮眠をとるのも有効な対処法の一つです。仮眠をとると脳がリフレッシュされるうえに集中力もアップするため、より安全に運転できるようになります。
ただし、仮眠の時間が長すぎると深い眠りに入ってしまい、スッキリと目が覚めず集中力が低下してしまう可能性があるので注意してください。仮眠の効果を発揮させるためにも、仮眠時間は15分〜30分に留めることをおすすめします。
寝過ぎてしまう可能性がある場合は、事前にアラームをセットするなどして対策をしましょう。
ガムを噛む
手軽に眠気対策をしたい方は、ガムを噛むことをおすすめします。
ガムを噛む行為には脳の働きをリフレッシュする効果があり、眠気対策に繋がります。ガムを購入する手間が気になる方は、車内に大きめのボトルガムを常備しておくと良いかもしれません。
ストレッチをする
一度車を停めて、眠気対策にストレッチを行うのもおすすめです。
長時間の運転で同じ姿勢が続くと体の筋肉が硬くなり、血液の流れが悪くなってしまいます。血行不良は眠気の原因となるため、眠い時はストレッチをして血流を促すことが大切です。
ストレッチは背伸びをする、首や腕を回す、など簡単なもので構いません。眠気を感じた際は、軽く体を伸ばすようにしましょう。
換気をする
運転中の眠気対策には、こまめな換気も効果的です。新鮮な空気を取り入れることで気分をリフレッシュできるのはもちろん、車内の二酸化炭素の量が減少するため眠気が起きにくくなります。
反対に、換気をしないまま運転を続けると、車内の二酸化炭素の量が上昇し、眠気が生じる場合があるので気をつけましょう。二酸化炭素の濃度が高いと、体のだるさや眠気に繋がるといわれています。
眠気覚ましのツボを刺激する
停車中など手を動かせる場合は、眠気覚ましのツボを刺激するのも良いでしょう。眠気覚ましに効くとされている代表的なツボは、下記の5種類です。
眠気覚ましのツボはさまざまありますが、乗車中に刺激するなら手に位置している「合谷(ごうこく)」「中衝(ちゅうしょう)」の2つがおすすめです。
合谷は万能な効果があることで知られているツボで、手の背面の親指と人差し指の間に位置しています。
一方、中衝は眠気覚ましの効果が高いツボで、中指の親指寄りの爪の生え際に位置しています。狭い空間でも簡単に刺激できるので、車内で眠気を感じた際はぜひ試してください。
また、眼精疲労にも効く「風池」もおすすめです。風池は後ろ髪の生え際、真ん中の筋を超えた部分にあるツボで、眠気覚ましと眼精疲労回復の効果が同時に期待できます。
なお、眠気覚ましに効くツボの種類についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。ぜひご一読ください。
助手席の人に話しかけてもらう
助手席に人が乗っている場合は、できるだけ話しかけてもらうと良いでしょう。会話に意識が向けられることで、運転中の眠気がまぎれます。
ただし、あくまで眠気がまぎれるだけであり、大きな効果は期待できません。強い眠気がある場合は、ほかの対策方法と併せての実践をおすすめします。
日中の眠気を覚ます方法については、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひこちらもご一読ください。
まとめ
運転中に眠気が生じる原因は、睡眠不足や食後の血糖値上昇、睡眠障害などさまざまです。
運転中に眠気が生じると注意力や集中力が低下してしまい、危険な事故に繋がってしまう場合があります。事故を避けるためにも、車の運転は万全な眠気対策をしたうえで行いましょう。
眠気対策には、ガムを噛む、冷たい水で顔を洗う、ツボを刺激する、換気をするなどさまざまな方法があるので、自分が実践しやすい方法を試してください。対策をしても眠気が解消されない場合、眠いままの状態での運転は避けましょう。