妊娠中はつわりに悩まされる方も多いですが、つわりの症状の一つとして眠気を覚える方もいます。日中に眠気に襲われてしまうと、仕事や家事に影響を与えることになりかねません。
この記事では、眠りつわりとはどのようなものか、つわりによる眠気を覚ます方法、普段からできる眠りつわりへの対策などに関して説明します。
眠りつわりとは
つわりにはさまざまな症状がありますが、その中の一つに異常な眠気があります。眠気を感じるつわりのことを、「眠りつわり」と呼ぶことが多いです。常に眠たく、1日中眠気がまとわりついているように感じることが特徴です。
岩橋晶子
ゆかりレディースクリニック 医師
つわり=妊娠初期の悪心・嘔吐です。妊娠初期に見られるつわり以外の症状としては、めまいふらつき・熱っぽい・お腹の張り・便秘・胸の張り・イライラや落ち込み・食欲がなくなるまたは増える等です。
眠りつわりの原因
眠りつわりの原因ははっきりとは解明されていませんが、以下のようなことが原因の可能性があると考えられています。
- ホルモンバランスの変化による自律神経の乱れ
- プロゲステロン(女性ホルモン)の増加
ホルモンバランスが変化して自律神経が乱れると睡眠に悪影響を及ぼして、眠気を感じやすくなることがあります。
また、プロゲステロンは、眠気を促す作用のあるホルモンです。そのためプロゲステロンが増加すると、眠気を感じやすくなります。
眠りつわりが起きやすい時期
眠りつわりが起きやすいのは、一般的に妊娠5週目頃から12週~16週目頃までといわれています。ただし、後期まで眠気が継続する方もおり、個人差が見られます。
仕事中などに、つわりによる眠気を覚ます方法
眠りつわりによって眠くなったとしても、仕事や家事などのやるべきことがあり眠れない場合もあるでしょう。眠気を覚ます方法は、主に以下のようなことが挙げられます。
- 仮眠をとる
- ツボを押す
- 適度な運動をする
- ガムを噛む
それぞれの方法に関して、詳しく説明します。
仮眠をとる
仮眠をとることで脳の状態が一度リセットされるので、仮眠後は眠気を感じにくくなります。
ただし、仮眠の時間が長すぎると、目を覚ました後もボーッとした状態が続くことが多いです。仮眠の時間は15分~30分程度を目安にしましょう。
ツボを押す
親指と人差し指の骨が交わる少し手前のくぼみに、「合谷(ごうこく)」と呼ばれるツボがあります。合谷は眠気覚ましに効果的なツボなので、合谷を刺激すれば眠気を取りやすくなるでしょう。親指と人差し指を開き、反対の手の親指と人差し指ではさむようにすると押しやすいです。
また、眠い時や疲れた時に目頭を押さえる方は多いと思いますが、その部分も「清明(せいめい)」と呼ばれるツボで、眠気覚ましに効果的です。目を閉じながら円を描くように押しましょう。
適度な運動をする
適度な運動をして体を動かすことも、眠気覚ましには効果的です。眠気を感じている時には副交感神経が優位になっていますが、適度に体を動かすことで交感神経優位の状態にできます。
激しい運動を行う必要はなく、散歩や軽いストレッチなどがおすすめです。
ガムを噛む
ガムを噛むことによって脳に刺激がいき、脳内の血液量が増えるため、眠気が解消しやすくなります。ミントなどの成分が含まれているガムであれば、清涼感による刺激も加わるので、より高い眠気解消効果が期待できるでしょう。
普段からできる眠りつわりへの対策
日ごろから睡眠の質を向上させて日中の眠気を防ぐことで、眠りつわりを対策できるかもしれません。睡眠の質を高める方法は、主に以下のようなことが挙げられます。
- アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
- 入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
- スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までにとどめる
- 自分の体に合った寝具を使う
それぞれの方法に関して、詳しく説明します。
アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
リラックスすることは副交感神経を優位にするのに効果的なので、睡眠の質の向上が期待できます。リラックスの方法は、アロマを焚いたり好きな音楽を聴いたりなど人によって異なるため、自分に合ったリラックス方法を試すと良いでしょう。
ただし、ゲームなどは画面からの強い光が影響して眠りにくくなり睡眠の質が低下するため、あまり好ましくありません。
入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
眠る直前の入浴は、睡眠の質を高めるうえでは好ましくありません。そのため、就寝時間の約90~120分前に入浴することを意識しましょう。入浴時間は10分程度、お湯の温度は38℃程度のぬるめが理想的です。副交感神経優位の状態になるので、睡眠の質の向上に繋がります。
なお、熱いお風呂に入ると、交感神経が優位になり反対に眠りにくくなります。睡眠の質を高めたい場合は、低めの温度設定を心がけましょう。
スマホやパソコンの使用は就寝2時間前までにとどめる
一般的に、人は「日光を浴びると覚醒し、夜になると眠くなる」という睡眠リズムを持っています。これには「メラトニン」というホルモンが関係しています。
メラトニンの分泌量が増えると眠気が促されるとされており、強い光を浴びると分泌量が減り、反対に暗いところにいると分泌量が増えるようになっています。このシステムのおかげで、夜になると自然と眠気が生じます。
眠る直前にスマホやパソコンの画面を見ていると、その光によって脳が昼間であると錯覚し、メラトニンの分泌量が減ってしまいます。その結果、上手く寝付けなくなり睡眠の質が低下してしまいます。そのため、眠る約2時間前からスマホやパソコンには触らないことが理想的です。
自分の体に合った寝具を使う
自分に合ったマットレスや枕を使うことで、眠りの質を高められる可能性があります。現在使っている寝具よりも、より自分に合った寝具を選ぶことで、熟睡できて日中の眠気を感じにくくなるでしょう。
妊娠中は、身体の負担を考慮して普段とは異なる妊婦用の寝具を使うことで睡眠の質が上げられるかもしれません。
眠りつわりの症状が重い場合は医療機関を受診する
眠気があまりにもひどい場合やその他のつわりの症状が重い場合は、医療機関の受診も検討しましょう。
自己判断によって医療機関の受診が遅れるのはリスクを伴うので、違和感を覚えたらすぐに医療機関を受診しましょう。
まとめ
眠りつわりの原因は、ホルモンバランスの変化による自律神経の乱れや、女性ホルモンの増加などが考えられます。仕事中や家事の最中に眠気に襲われた場合は、仮眠をとる、ツボを押すなどで対処しましょう。
また、普段から質の高い睡眠をとることも、日中の眠気への対策として効果的です。リラックスした状態で眠りについたり、身体に合った寝具で負担をかけないようにしたりすることで、睡眠の質を高められます。
眠気があまりにもひどい場合は、妊娠悪阻の可能性もあるため、なるべく早く医療機関を受診しましょう。