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2024.01.22 更新

【医師監修】睡眠の質には体温の上下が重要?人間の体温変化について詳しく解説

【医師監修】睡眠の質には体温の上下が重要?人間の体温変化について詳しく解説

睡眠と体温には密接な関係があり、体温を上手くコントロールできれば、より良い睡眠を実現することが可能です。眠れない原因にはさまざまなものがありますが、「寝つきが悪い」「寝苦しい」と悩んでいる方は、体温を適切に調整できていない可能性があります。

この記事では、「睡眠と体温の関係」について詳しく解説します。そのうえで、体温をコントロールするメリットや、睡眠の質を高めるための体温調整方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  1. 睡眠と体温の関係
  2. 睡眠に向け体温を調整するメリット
  3. 睡眠の質を高めるための体温調整方法
  4. まとめ

睡眠と体温の関係

睡眠と体温には、以下に示す関係があります。

  • 深部体温が下がると眠気が誘発される
  • 覚醒に向けて深部体温が上がる

それぞれについて詳しく説明します。

深部体温が下がると眠気が誘発される

人間は、深部体温が下がりはじめると眠くなるようにできています。深部体温とは、脳や内臓など、体の奥深く(中心部)の温度のことです。具体的には、手足の皮膚温が上昇し、ラジエーターのように熱が放散されて深部体温が下がり、眠気が誘発される仕組みになっています。

このような仕組みが人体には備わっているため、冷え症の方は熱放散の効率が悪いために深部体温を下げられず、睡眠への移行が妨げられやすい場合があります。

簑原沙和

簑原沙和

医学博士、日本形成外科学会専門医

手足の熱放散以外にも、入浴や足湯、サウナ、運動などにより一時的に深部体温を上げることで、体温を下げようとする機構(恒常性:ホメオスタシス)が働き、入眠に必要な深部体温の下降につながります。

この働きは、ノンレム睡眠を増加させると報告されています。

覚醒に向けて深部体温が上がる

睡眠中に低下していた深部体温が上昇に転じると、覚醒に向かいます。電気毛布などで体温を高く保つと、中途覚醒が多くなり、睡眠が不安定になることも報告されています。

体温が上がりにくい方は覚醒に向かいづらくなるため、朝になっても起床できない傾向があります。

睡眠に向け体温を調整するメリット

体温を調整するメリットは、以下の2つです。

  • 寝付きが改善される
  • 寝苦しさを解消できる

それぞれについて詳しく説明します。

寝付きが改善される

上述したように、冷え性などで手足の温度が低い方は、熱を上手く放散できません。そのため、深部体温が下がりにくく、寝つきが悪くなる場合があります。

反対に、体温を上手くコントロールできれば、スムーズに入眠できる可能性があることを理解しておきましょう。

寝苦しさを解消できる

真夏の夜に「なかなか眠れない」「寝苦しい」と感じた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。これは、高湿度による不快感に加え、気温により体温を上手く逃がせないことも原因です。

手足から熱を逃がす工夫をして深部体温を下げ、眠気を誘発すれば、真夏の暑苦しい時期などでも眠りやすくなるでしょう。

簑原沙和

簑原沙和

医学博士、日本形成外科学会専門医

体温を調整してもなかなか眠れない場合には、

①生活習慣や睡眠環境による不眠
②身体疾患やかゆみ、痛みによる睡眠妨害
③睡眠を傷害しうる薬剤の服用

などが原因として挙げられます。

睡眠の質を高めるための体温調整方法

睡眠の質を高めるための体温調整方法

以下では、「体温のコントロール」という観点・切り口で、睡眠の質を高める方法を紹介します。

  • 入浴は就寝の約90~120分前に済ませる
  • 適度な運動を行う
  • 寝室環境(室温・湿度)を整える
  • 通気性の高い寝具を使用する

各方法について詳しく説明します。

入浴は就寝の約90~120分前に済ませる

就寝の約90分~120分前に入浴を済ませておけば、眠る際に体温が下がりはじめるため、スムーズに入眠できます。また、入浴すると手足の血行が良くなって熱を放出しやすくなるため、深部体温が下がりやすくなることも覚えておきましょう。

おすすめの入浴時間は、38℃のぬるめのお湯であれば25分~30分程度、42℃の熱めのお湯であれば5分程度、半身浴なら約40℃のお湯で30分程度です。

入浴時間が長すぎたりお湯の温度が高すぎたりすると、深部体温が下がりにくくなるので注意してください。

適度な運動を行う

人間の体は、睡眠前後の体温の落差が大きいほうが眠りやすくなる仕組みになっています。体温の落差を生じさせる方法には、さまざまなものがありますが、おすすめはストレッチ、ウォーキングといった「適度な運動」を行うことです。

運動を行う時間帯は、夕方が最適です。一般的に体温がピークに達するのは16時頃であり、このタイミングで運動をすれば就寝時との体温の落差を大幅に広げられます。

なお、就寝直前に激しい運動を行うことは避けましょう。体に負担がかかって興奮状態になり、反対に睡眠の質が低下します。

寝室環境(室温・湿度)を整える

以下は、快適な睡眠を実現するうえで理想的な「寝室環境」です。

  • 室温:25〜26℃
  • 湿度:40〜60%

夏場はエアコンや除湿器、冬場はストーブや加湿器などを用いて、寝室の温度・湿度が上記の範囲内になるようにコントロールしましょう。

また、理想的な「寝床内気候」は、以下のようになります。

  • 気温:32〜34℃
  • 湿度:45〜55%

寝床内気候とは、「就寝時に人と寝具の間にできる空間の温度および湿度」のことです。寝具や寝巻きなどで調整できます。

理想的な寝室・寝床内の環境を整え、体温が上がり過ぎたり下がり過ぎたりしないように心がければ、快適な睡眠を実現できるでしょう。

通気性の高い寝具を使用する

通気性が悪い寝具を使用していると、熱がこもって体温が上昇する原因になりかねません。快適な睡眠を実現するために大切なのは、通気性の高い寝具を用意することです。

以下に寝具の種類ごとに通気性が良い素材・構造の例を示します。

  • ベッドリネン(シーツや布団カバーなど、ベッドで使用する布製品類):麻、ガーゼなど
  • 枕(の内容物):そばがら、パイプ、ダウン、ファイバーなど
  • 寝巻き:麻、ガーゼなど
  • マットレス:ファイバーマットレス、ボンネルコイルマットレス、ポケットコイルマットレス

これらの素材・構造の寝具を使用すれば、熱がこもりにくくなり、深部体温の上昇を防げるでしょう。

まとめ

手足の皮膚の温度が下がって深部体温が下がると眠気が生じ、反対に深部体温が上がり始めると覚醒に転じるなど、睡眠と体温には密接な関係があります。「なかなか寝付けない」「熟睡できない」と悩んでいる方は、体温を上手くコントロールできていないことが原因かもしれません。

今回紹介した体温調整方法を是非試してみてください。それでも体温調整が難しく快適に眠れない場合は、何らかの病気を患っている可能性があります。医療機関を受診して医師に相談することも検討してください。

この記事の監修者
簑原沙和
簑原沙和医学博士、日本形成外科学会専門医
医学博士、日本形成外科学会専門医。2015年神戸大学医学部卒、2022年昭和大学大学院法医学講座修了。現在は、東京臨海病院形成外科に勤務し、眼形成を中心に一般形成外科の診療を行う。日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、検診マンモグラフィ読影認定医師、乳房増大に関する実施医師でもある。
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