寝る前の読書は、睡眠に対して良い影響を与える可能性があるとされていますが、日中に本を読む場合とは違い、コツや注意点があります。そのため、寝る前に本を読むのであればコツや注意点を正しく理解することが大切です。
この記事では、寝る前の読書で期待できる効果や、本を読む時のポイントを解説するほか、読書以外の寝る前におすすめの行動も紹介します。
寝る前に読書の習慣を取り入れたい方や、睡眠の質を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
寝る前の読書には睡眠の質を高める効果が期待できる
自律神経には活動的な状態の時に優位になる交感神経と、リラックスしている時に優位になる副交感神経があります。副交感神経が優位になることで寝付きが良くなるとされているため、就寝前はリラックスした状態を保つことが望ましいです。
就寝前にリラックスする方法はいくつかありますが、読書もその一つです。自身の好きな本を読んでリラックスすることで、寝付きが良くなる可能性があるとされています。
また、難解な書籍を読むと、鎮静効果やリラックス効果が期待できる「βエンドルフィン」という神経伝達物質が分泌されるともいわれており、眠れない時に眠気を促す効果があるとする説が存在するようです。
そのほか、読書には認知症予防の効果もあるとされています。
山口祐司
福岡浦添クリニック院長
就寝前に読書をすると、その本の内容に入り込み、ストレスが軽減することで入眠しやすくなります。また、就寝前の読書をルーチン化することで条件反射により寝つきが良くなります。
さらに、就寝前にスマホやタブレットなどのスクリーンを見なくなり、メラトニン分泌が正常化して深部体温を低下させ、入眠しやすくなります。
寝る前に読書する時のポイント
寝る前に読書をする時は、いくつかのコツや注意点があります。主なポイントには以下のことが挙げられるため、覚えておきましょう。
- 電子書籍は避けて紙媒体の本を読む
- 読書はベッドに入る前にする
- 読書時は部屋の明るさと姿勢に注意する
- ジャンルや物語の内容に気を付ける
- たまに音読を取り入れてみる
それぞれ解説します。
電子書籍は避けて紙媒体の本を読む
寝る前に読書をする場合は、電子書籍を避けて紙媒体の本を読みましょう。スマホやタブレット端末から発せられるブルーライトは、太陽光にも含まれている強いエネルギーを持つ光です。
睡眠時はメラトニンというホルモンが分泌されることで、眠気が自然と促されます。メラトニンは暗い環境で分泌されやすくなりますが、ブルーライトを浴びると分泌が抑制されるため、就寝前に電子書籍を読むと睡眠の質が低下する可能性があります。
山口祐司
福岡浦添クリニック院長
紙の本で重いカバーブックや装丁されたペーパーバックの本を持ったまま読むことが嫌で電子書籍を読む人は、ブルーライトを出さない白黒スクリーンの電子書籍を使用したり、ブルーライト遮断メガネを装着したりすることをおすすめします。
読書はベッドに入る前にする
夜寝る前に、ベッドの中での読書が習慣になっている人もいると思います。しかし、リラックスして、良い眠りにつくためには、寝る前の読書もベッド以外の場所でするようにしましょう。
ベッドの中で本を読むと眼や首に負担がかかります。悪い姿勢での読書は、ストレス管理や体調管理の観点で望ましくありません。
首に負担をかけずに、正しい姿勢で本を読むポイントとしては、椅子に深く座り背筋を伸ばし、あごを引いた状態で首までまっ直ぐに保つことです。
また、ソファで読書する場合には、本と目線の高さに距離がでないよう、クッションなどを使って高さを保つことが重要です。
ベッド以外の場所で本を読むことで「ベッドは寝るところ」だと脳に認識させることがより良い睡眠に繋がります。
読書時は部屋の明るさと姿勢に注意する
就寝時は明るすぎない寝室環境が推奨されていますが、暗い部屋で読書をすると目が悪くなる可能性があります。そのため、寝る前に読書をするなら照明スタンドなどを活用して、目に負担がかからないように気を付けましょう。
また、就寝前の読書は姿勢にも注意が必要です。寝ながらの読書は目に負担がかかるだけではなく、肩こりや首の痛みの原因になる場合があります。
読書をする時は腰にクッションを当てるなどして無理のない姿勢で本を読み、眠たくなったらクッションなどをはずして寝る姿勢をとってから就寝することをおすすめします。
ジャンルや物語の内容に気を付ける
読書といっても本のジャンルはさまざまありますが、読書に熱中すると逆に寝付きが悪くなり、寝不足になる可能性があるため注意が必要です。特にストーリー性のある本は熱中しやすい傾向があります。
また、前述していますが、哲学書のように難解かつストーリー性がない本は、鎮静効果・リラックス効果が期待できる「βエンドルフィン」が分泌されるといわれているため、寝る前に読む本として一つの候補にすると良いかもしれません。
山口祐司
福岡浦添クリニック院長
就寝前の読書をルーチン化するためには、無味乾燥な内容の本や面白くない本は避け、自分にとって興味がある内容や軽い筋書のものを選択すべきです。何年間も読んできた古典や、子ども時代に好きだった本を再び読むのも良いでしょう。
しかし、就寝前の読書時間は20分ほどにしてください。
たまに音読を取り入れてみる
声を出して本を読む「音読」もリラックス効果があり、睡眠の質の向上が期待できます。
通常、家の中で本を読む際は、黙読をする方が多いでしょう。しかし、音読で文章を声に出すことにより、しっかりとした呼吸が伴い、副交感神経が刺激されて脳や体をリラックスした状態にできます。
さらに、声を出して本を読むことで脳の前頭前野が活性化されるため、セロトニンと呼ばれるホルモンが放出されます。このセロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、気持ちをリラックスさせ、心を穏やかにする作用があります。
セロトニンが担う、もう一つ重要な役割が「メラトニンの原料となる」ことです。メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、季節のリズム、睡眠と覚醒のリズム、ホルモン分泌のリズムを調節する役割があります。
音読は、声を出して本を読むこと自体で得られるリラックス効果と、セロトニンの分泌量が増えることの相乗効果によって、睡眠の質を高めることに効果的です。
読書以外にも!寝る前のリラックス方法
読書以外にも、寝る前のリラックス方法はいくつかあります。以下はルーチンとしても取り入れやすい行動なので、好みの方法を試してみましょう。
- 温かい飲み物を飲んでゆっくり過ごす
- リラックスできる音楽を聴く
- アロマやお香の香りを楽しむ
- ストレッチをする
- ゆっくりと深い呼吸をする
それぞれ解説します。
温かい飲み物を飲んでゆっくり過ごす
眠気は、体温が上がってその後下がるタイミングで自然と生じるため、眠れない時は温かい飲み物を飲んで、ゆっくりと過ごすのも良いでしょう。ただし、カフェインの入った飲み物やお酒は脳が覚醒するため、避けるようにしてください。
就寝前の飲み物としては、白湯やノンカフェインのお茶、コーヒーなどがおすすめです。また、ハーブティーは体が温まるだけでなく、香りによるリラックス効果も期待できます。
なお、ホットミルクのように糖分が含まれる飲み物は虫歯の原因になる可能性があるため、飲んだ後に歯磨きを忘れないようにしましょう。
リラックスできる音楽を聴く
就寝前はリラックスした状態が望ましく、リラックス時の脳波にはα波という波形があらわれます。音楽の中にはα波を誘発するとされるものがあるため、このような音楽を聴くのもおすすめです。
α波を誘発するとされる音楽には、主に以下のものがあります。
- クラシック
- ヒーリングミュージック
- 自然音(雨、波、川のせせらぎなど)
なお、アップテンポの激しい音楽や歌詞入りの音楽は脳が活性化して、逆に寝付きが悪くなる可能性があるため避けましょう。
アロマやお香の香りを楽しむ
好みの香りのアロマやお香を見つけて、寝る前に利用するのもリラックス方法の一つです。アロマやお香の香りには不安や緊張を緩和する作用があるとされており、リラックス効果が期待できます。
ピローミストやロールオイルのように、手軽に香りを楽しめる商品も販売されているので、アロマやお香を焚くことが手間に感じる方は利用するのも良いでしょう。
ストレッチをする
寝る前に10分程度のストレッチを行うのもおすすめです。呼吸と連動する簡単な運動は、体温の上昇と体のリラックス効果が期待できるとされています。
寝る前にゆっくりと深呼吸しながらストレッチをすると、日中の活動で凝り固まった体がほぐれて寝付きが良くなり、睡眠の質が高くなる可能性があるようです。
ストレッチ方法は動画配信サイトでも手軽に確認できるため、参考にするのも良いかもしれません。また、やり方がまったくわからない方は、必要に応じて専門家に相談しながら取り組みましょう。
ゆっくりと深い呼吸をする
質の高い睡眠を得るためには、正しい呼吸法を身につけることが重要です。
「眠気を感じて布団に入っても目が冴えてしまう」「何となくイライラする」「興奮してしまい、何度も寝返りを打ってしまい、なかなか寝付けない」などの場合には、呼吸方法の見直しをおすすめします。
人間には、体を正常に保つための機能として「自律神経」が備わっています。自律神経には、運動を司る「交感神経」と休息を司る「副交感神経」があり、日中は交感神経が優位になることで活動的になり、夜間になると「副交感神経」が優位になることでリラックスした状態になるようプログラムされています。
しかし、現代社会では、昼夜が逆転した生活スタイルやテレビやパソコン、スマホからの強い光を夜間に浴びることで自律神経が乱れることで、夜間でも交感神経が優位になってしまうために、良い睡眠が得られなくなるケースがあります。
こうした自律神経の乱れを整えるためには、正しい呼吸方法による調整が効果的です。睡眠の質の向上に、特に効果的な呼吸方法が「腹式呼吸」です。腹式呼吸は、お腹で行う呼吸法で、息を吸う時にお腹を膨らませて、息を吐く時にお腹をへこませる呼吸方法です。
腹式呼吸には、乱れてしまった自律神経の働きを整えて、副交感神経を優位になることでリラックスさせる効果があります。
腹式呼吸の正しいやり方は、背筋を伸ばして胸を大きく広げます。次に、体内に溜まった息を全て吐き出します。
全ての息を吐き出した後、へこんだお腹を緩ませて、鼻から少しずつ息を吸います。5秒ほどかけてゆっくりと息を吸い、お腹がだんだんと膨らむことを確認したら、今後はゆっくりと口から息を吐き、体の中から全ての空気を出し切ります。
回数としては10回を目処に、ゆっくり繰り返すことでリラックス効果が期待できます。
まとめ
寝る前の読書には、リラックス効果があるとされています。特に哲学書などの難解なジャンルは、読むことでβエンドルフィンが分泌され、自然と眠気を促すとする説もあるようです。
ただし、寝る前に読書をする際は電子書籍を避けたり、熱中しすぎないように心がけたりといった注意点もあるため、記事内で紹介したポイントを把握しておきましょう。
また、読書以外にも「温かい飲み物を飲む」「α波を誘発する音楽を聴く」「ゆっくりと深い呼吸をする」など、リラックスする方法はいくつもあるので、自分の好みの方法を取り入れましょう。