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2023.04.24

【医師監修】嗜眠とは?ほかの意識障害との違いや陥る原因、対策などをわかりやすく解説

【医師監修】嗜眠とは?ほかの意識障害との違いや陥る原因、対策などをわかりやすく解説

嗜眠とは、意識障害の程度を表す用語です。高齢者に多く見られる状態なので、身内の介護をしている方は耳にしたことがあるかと思います。しかし、原因によっては若い方でも嗜眠傾向になることがあるので注意が必要です。

この記事では、嗜眠の基本知識や原因、対策などをわかりやすく解説します。きちんと睡眠を取っているのに、日中に眠気が取れない方などは参考にしてください。

  1. 嗜眠(しみん)とは意識障害の程度を表す用語
  2. 嗜眠と傾眠の違い
  3. 昏迷と嗜眠の違い
  4. 嗜眠傾向になる原因
  5. 加齢や体力の減少
  6. 睡眠リズムやパターンの乱れ
  7. 慢性硬膜下血腫や外傷などの疾患
  8. 周期性傾眠症などの過眠症
  9. 嗜眠に陥らないようにするための対策
  10. 生活リズムを整える
  11. 早めに医療機関で診断を受ける
  12. 医療機関で嗜眠傾向があると診断されたら生活を見直そう

嗜眠(しみん)とは意識障害の程度を表す用語

何らかの理由により意識が清明ではなく、覚醒度や自分自身と周りの認識のいずれかが障害されている状態を意識障害と呼びます。

特に、急性期の意識障害は、せん妄、昏蒙、傾眠、嗜眠、昏迷、昏睡という段階に分かれており、嗜眠は、その意識レベルの一つです。

嗜眠は傾眠と昏迷の間に位置し、強く刺激すれば覚醒するレベルの状態を表しています。普段と比べて周囲の状況を認識しにくく、思考が遅くなる場合があり、周りからは疲れているように見える場合もあります。

山本耕司

山本耕司

奏の杜耳鼻咽喉科 千葉いびき・無呼吸クリニック 院長

嗜眠傾向がある場合のデメリットとして、生産性の低下や交通事故のリスク、社会生活の制限等が考えられます。睡眠環境の改善や睡眠スケジュールの調整、薬物やアルコール摂取の制限を行うことで、嗜眠傾向の改善が得られることもあります。

嗜眠と傾眠の違い

傾眠も意識障害の程度を表す用語で、嗜眠よりも軽度な状態を指します。

傾眠は、放置してしまうと眠りに落ちてしまうような状態で、声かけなどの軽い外部刺激で容易に覚醒する状態です。

次の記事で、傾眠のことを詳しく解説しているので、興味がある方はご覧ください。

傾眠
【医師監修】傾眠(傾眠傾向)とはどんな症状?要因やならないための対策についても解説

昏迷と嗜眠の違い

昏迷も意識障害の程度を表す用語で、嗜眠よりも重篤な状態を指します。

昏迷は、体を揺するなどの比較的強い刺激を与えなければ覚醒しない状態です。また、強い刺激に対して反応しますが、発語がはっきりしない、自分自身や周囲の状況を理解できない、体験や出来事を思い出せないなどの症状があらわれる場合があります。

嗜眠傾向になる原因

嗜眠傾向とは、刺激を与えれば覚醒するが、放置すると睡眠状態に陥ってしまう状態を指します。嗜眠傾向になる原因は以下のとおりです。

  • 加齢や体力の減少
  • 睡眠リズムやパターンの乱れ
  • 慢性硬膜下血腫や外傷などの疾患
  • 周期性傾眠症などの過眠症

すべての方に当てはまるとは限りませんが、嗜眠傾向になる原因を順番に解説します。

加齢や体力の減少

嗜眠傾向は高齢者に多くみられる症状です。加齢に伴い神経伝達機能が低下するため、心身が健康でも自然に起きる可能性があります。また、怪我や病気などで寝たきりになり体力が低下した場合でも発症する場合があるので、注意しましょう。

山本耕司

山本耕司

奏の杜耳鼻咽喉科 千葉いびき・無呼吸クリニック 院長

加齢により神経伝達機能が低下すると、脳が刺激される回数が減り、脳が覚醒する機会も減少するため、意欲や意識レベルの低下を引き起こし、嗜眠傾向が起こりやすくなります。

睡眠リズムやパターンの乱れ

体内時計が乱れてしまい、睡眠や覚醒のリズムがズレてしまうと嗜眠が起きやすくなります。

特に、高齢者の場合は中途覚醒や早朝覚醒、レム睡眠が少ないことによる不眠などが原因で睡眠パターンが乱れやすいので、健康面で問題がなくても嗜眠傾向に陥る可能性があります。

慢性硬膜下血腫や外傷などの疾患

嗜眠傾向は加齢や体力の低下、睡眠パターンの乱れ以外に、外傷や脳血管障害、脳炎、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などの疾患で起きることもあります。

特に、頭を打った時に血管が傷つき、硬膜と脳の間にできた慢性硬膜下血腫が大きくなると傾眠や嗜眠になる傾向が見られます。

頭を打った直後ではなく1~2ヶ月程度経過してから頭痛や歩行障害などの症状もあらわれることが多いので、頭を打った時は早期に医療機関を受診しましょう。

周期性傾眠症などの過眠症

過眠症とは、睡眠障害の一種で、十分に寝ているにも関わらず日中に強い眠気が生じます。

例えば、過眠症の一種である周期性傾眠症は、発症すると2~20日間持続する傾眠(嗜眠)状態を数ヶ月、あるいは数年に一度の周期的に繰り返します。

嗜眠状態が続く場合は過眠症を発症している恐れもあるため、医師に相談をしましょう。

嗜眠に陥らないようにするための対策

嗜眠に陥らないようにするための対策

嗜眠は高齢者になって体力が低下したり、睡眠パターンが乱れたりすると発症しやすくなる症状です。また、外傷や過眠症の傾向があると発症する可能性もあります。

嗜眠傾向に陥らないようにする対策は以下のとおりです。

  • 生活リズムを整える
  • 早めに医療機関で診断を受ける

嗜眠傾向に陥らないようにする対策を順番に解説します。

生活リズムを整える

人間の体内時計の周期は約25時間で、1日の周期である24時間とは1時間ほどのズレが生じます。ズレを調整しないと生活リズムが狂ってしまい、睡眠パターンが乱れる可能性が高くなります。睡眠パターンが乱れると、嗜眠傾向に陥る可能性があります。

そのため、生活リズムを整えるために、次のことを実践しましょう。

  • 毎朝決まった時間に起きる
  • 朝日を浴びる
  • 栄養バランスの取れた食事を摂取する
  • 決まった時間に寝る

体内時計のズレがリセットされれば、夜になると自然に眠くなり、睡眠パターンが整います。また、日中の刺激や活動が少ないと、日中の嗜眠傾向が強くなる場合があるので、無理のない範囲で有酸素運動を行うこともおすすめです。

高齢者の場合は加齢や体力の減少で運動は難しい可能性があるので、「昼と夜で衣服を着替えさせる」「日中に散歩や会話などの刺激を与える」などに取り組みましょう。

早めに医療機関で診断を受ける

加齢や体力の減少、睡眠パターンの乱れ以外で嗜眠傾向に陥りやすくなるのは、疾患や病気などが考えられます。

特に、嗜眠傾向に陥る原因が慢性硬膜下血腫のような外傷の場合、早期に治療を受けないと意識障害や呼吸状態の悪化、重篤な後遺症などに発展する可能性が高いです。

加齢や体力の減少、睡眠パターンの乱れなどに心当たりがなく、日中に眠気が取れない場合は、早めに医療機関で診断を受けましょう。

山本耕司

山本耕司

奏の杜耳鼻咽喉科 千葉いびき・無呼吸クリニック 院長

日中の強い眠気でお困りの場合、まずは近隣の内科を受診することをおすすめします。それでも問題が解決しない場合、睡眠医療を専門とする睡眠学会専門医が在籍する医療機関を受診しましょう。

医療機関で嗜眠傾向があると診断されたら生活を見直そう

嗜眠とは、「強く刺激すれば覚醒するが、すぐに眠ってしまう」程度の意識レベルを指し、人によっては無気力や不活発な状態、あるいは昼寝やうたた寝しているように見えます。

主に、加齢や体力の減少、睡眠リズムの乱れなどが原因で、嗜眠傾向に陥ることがありますが、外傷や睡眠障害などで発症する場合もあります。特に、慢性硬膜下血腫は放置していると血腫が大きくなり、脳を圧迫して重篤な後遺症に繋がる恐れがあります。

早期に治療すれば後遺症を最小限に抑えることが可能なため、日中に眠気を覚える方は、まずは、医療機関を受診して原因を確かめることをおすすめします。

この記事の監修者
山本耕司
山本耕司奏の杜耳鼻咽喉科 千葉いびき・無呼吸クリニック 院長
東京慈恵会医科大学卒業後、同大学耳鼻咽喉科学教室入局。2013年より現職。睡眠時無呼吸症候群の治療であるCPAP(シーパップ)療法や、アレルギー性鼻炎の根本治療となる舌下免疫療法にも注力しており、治療薬処方数は日本一の実績あり。日本睡眠学会専門医、日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会専門医。
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