睡眠中にビクッとなり目覚めた経験がある方は多いのではないでしょうか。
周囲に人がいる状況で起こると恥ずかしくなりますが、無意識のうちに起こる現象のため、実際のところ防ぐのは難しいです。
また、現象の原因がわからず「病気なのかも」と不安を抱いている方もいるかもしれません。
この記事では、睡眠中に突然ビクッとする原因を解説し、病気との関連性や対策方法などを紹介します。興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
睡眠中にビクッとするのは「ジャーキング」という生理現象
睡眠中にビクッとする現象は「ジャーキング」と呼ばれるもので、誰にでも起こりうる生理現象です。医学的にはミオクローヌスと呼ばれる筋肉の不随意運動の一種で、入眠時ミオクローヌスとも呼ばれます。
ジャーキングが起こるのは筋肉の痙攣が原因だとされています。起きている時の筋肉は緊張しており、就寝すると緩みますが、睡眠状態に移行する時に脳が誤作動を起こし、筋肉を緊張させる信号が送られることでジャーキングが発生します。
竹村俊輔
日暮里内科・糖尿病内科クリニック 院長 医学博士
ジャーキングは、睡眠が浅い時、疲れが溜まっている時、不自然な体勢で眠っている時に起こりやすいとされています。まだ解明されていない部分もあるため今後も検証が必要な状態です。
睡眠中にビクッとする現象は病気?
ジャーキングは生理現象なので病気ではなく、体がビクッとすること以外に症状はありません。
ただし、もしジャーキングが頻繁に起こることで「今日も起こったらどうしよう」と不安を感じることが、不眠に繋がる可能性は考えられます。
また、以下のとおり、ジャーキングと似た症状の病気もあるため、体がビクッとする以外にも症状が出るのであれば注意が必要です。
- 周期性四肢運動障害:数秒間にわたる筋肉のけいれんが周期的に起こる
- 睡眠てんかん:睡眠中に手足がけいれんする
竹村俊輔
日暮里内科・糖尿病内科クリニック 院長 医学博士
ジャーキングと似た症状が起こる病気には、前述の周期性四肢運動障害、睡眠てんかん、けいれんなどが挙げられます。既往にこれらの症状がある方は鑑別が必要です。体がビクッとするだけでなく、体に異常が見られるのであれば、速やかに医療機関を受診しましょう。
周期性四肢運動障害やてんかんとの見分け方
周期性四肢運動障害やてんかんとジャーキングは、生じるタイミングで見分けられる可能性があります。
ジャーキングの症状は入眠の際に生じますが、周期性四肢運動障害の症状が生じるのは睡眠中です。周期性四肢運動障害の場合、本人が寝ている時に症状が生じるため、自覚できないケースが多いといわれています。
また、てんかんは、入眠時以外にも日常生活のさまざまなタイミングで繰り返し生じます。
もし周期性四肢運動障害やてんかんと思われる症状が続く場合は、医療機関での受診を検討しましょう。
睡眠時にビクッとする原因を解説
ジャーキングはいつ起こるか予測できないものですが、起こるきっかけはいくつか考えられます。
- 就寝時の姿勢が悪い
- 音に反応している
- 体が疲れている
- ストレスを抱えている
ジャーキングが起こることを防ぎたい方は、これらの状況をできる限り避けることが望ましいです。
以下、それぞれを詳しく解説します。
就寝時の姿勢が悪い
無理な姿勢で就寝すると、崩れた姿勢に体が反応して元の状態に戻そうとして、ジャーキングが起こります。
無理な姿勢とは、例えば机に伏せて寝る、電車で座って寝るなどの状態です。就寝時には、このような無理な姿勢はできるだけ避けましょう。
睡眠は心身の疲労回復に重要な役割を果たすため、寝る時の姿勢に気を配ることは大切です。就寝時の理想的な寝姿勢は以下の記事で解説しているため、ぜひこちらもご一読ください。
音に反応している
ジャーキングは音に反応して起こることが多いとされています。特に、睡眠がまだ浅い状態で大きな音がした時や急に話しかけられた時などは音に反応し、ジャーキングが引き起こされやすくなると考えられます。
体が疲れている
体が疲れている時には眠りが浅くなる傾向があるため、ジャーキングが起こりやすくなります。
本来であれば、体がリラックスした状態で眠りにつくことが望ましいです。
しかし、運動してから時間が経たないうちに就寝すると、筋肉に負荷がかかったままの状態となり、ジャーキングを引き起こす可能性があります。
就寝直前に激しい運動を行って体に疲労を溜めるのは避けたほうが良いでしょう。
ストレスを抱えている
ストレスを抱えていると心身ともに緊張状態になるため、ジャーキングが引き起こされやすくなると考えられます。
また、ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、夜になっても活動的な「交感神経」が優位な状態となることが影響するともいわれています。
竹村俊輔
日暮里内科・糖尿病内科クリニック 院長 医学博士
ジャーキングを防ぐには、就寝環境を整える、疲労を溜めない、ストレスをなるべく抱えないなど対策が必要です。なるべくセルフコントロールに努めてください。
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睡眠中にビクッとする「ジャーキング」を防ぐ方法
ジャーキングは眠りが浅い時に起こりやすいため、睡眠の質を高めて熟睡することが効果的な対策方法です。
- 生活リズムを整える
- 食生活を見直す
- 適度な運動を取り入れる
- ストレスを発散する
- 寝室の環境(睡眠環境)を整える
基本的な生活習慣を見直して、熟睡できる環境を整えましょう。
生活リズムを整える
「眠りが浅い」「寝ても疲れがとれない」と感じる場合、生活リズムが崩れている可能性があります。
生活リズムが崩れて生じる不調を解消するためには、起床時刻と就寝時刻を一定にし、睡眠を中心とした生活リズムを整えることが大切です。
休日に「寝だめ」をして睡眠不足を解消しようと考える方もいるかもしれませんが、あまりおすすめできません。
平日と休日で起床時刻にずれが生じると、かえって生活リズムの乱れに繋がるため、睡眠不足の時には平日も休日も早く寝るなどの工夫を行ってください。
また、生活リズムと光には密接な関係があり、起床後に太陽光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に自然と眠くなるサイクルが作られます。
朝起きたら太陽光を浴びて、就寝直前にスマホやパソコンの光を浴びることは避けましょう。
体温が一旦上がって下がった時に眠気が引き起こされるため、就寝の90~120分前に入浴して体を温めることもおすすめします。熱すぎる湯温は控えて、38℃のぬるめのお湯に25~30分ほど浸かる方法が効果的です。
食生活を見直す
朝昼晩の食事を抜かないことは前提とし、できれば毎日同じ時間帯に食事を済ませましょう。
特に、朝食には体内時計をリセットする役割があるため、簡単なものでもきちんと食べることが望ましいです。
また、夕食は就寝時刻の3時間前には済ませるよう心がけ、もし遅い時間に夕食をとるのであれば消化の良い食べ物を選んでください。
入眠する時に消化活動が終わっていなければ、体が休めず眠りが妨げられるかもしれません。
さらに、就寝前にはカフェインやアルコール、ニコチンの摂取は控えたほうが良いです。
これらの覚醒作用があるものを摂取すると、眠りが浅くなってジャーキングが起こりやすくなり、夜中に目覚める原因になります。
適度な運動を取り入れる
ウォーキングや散歩など軽めの有酸素運動を行うと、緊張がほぐれて適度な疲労感が得られます。
体が疲れていると自然に入眠しやすくなるだけでなく、運動の習慣がある方ほど不眠が少ないとされているため、ぜひ積極的に取り入れてください。
就寝前に運動するのであれば、心拍数が上がらないストレッチやヨガがおすすめです。ただし、就寝直前に激しい運動を行うと交感神経が活発になって眠りが浅くなるため注意しましょう。
ストレスを発散する
ストレスは心身の疲労に繋がります。時には趣味に打ち込んでストレスを発散し、日々受けるストレスを長期にわたって溜めないことが大切です。
具体的な例として、スポーツやグルメ、カラオケ、映画鑑賞など、ストレスが発散できることであれば何でも構いません。
また、入浴剤を入れた湯船に浸かる、アロマを楽しむ、ホットドリンクを飲むなど、リラックスできる行動をとることもおすすめです。
ストレスの原因や対処法をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
寝室の環境(睡眠環境)を整える
睡眠の質を高めるには、寝室の環境(睡眠環境)を整えることが大切です。睡眠環境を整える方法には、寝室の温度や湿度の調整が挙げられます。
寝室の理想的な温度と湿度は以下のとおりです。
| 季節 | 夏 | 冬 | 
|---|---|---|
| 温度 | 25℃〜26℃ | 22℃〜23℃ | 
| 湿度 | 通年50%〜60%程度 | |
エアコンや加湿器を利用し、寝室内の理想的な温度と湿度を保つことで、睡眠の質が高められる可能性があります。
また、睡眠の質を高めるには、寝る時の寝具も重要です。自分に合っていない枕やマットレスなどを使用すると、体に負担がかかり、睡眠の質を低下させる原因になるため注意しましょう。
睡眠環境の整え方を詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。
まとめ
睡眠中にビクッとして起きるジャーキングは不快なものですが、基本的には病気ではなく生理現象のため、過剰に心配する必要はありません。
うたた寝や昼寝など、睡眠時の姿勢や外部からの音・光が原因と思われる場合には、これらの要素をできるだけ取り払うよう気をつけることで、ジャーキングを防ぐ効果が期待できます。
一方、夜の睡眠時に起こるジャーキングにお悩みの方は、睡眠の質を高めて熟睡することが大切です。「生活リズムを整える」「食生活を見直す」「ストレスを発散する」など、日常生活で対策を行うことが予防に繋がります。
あまりにもジャーキングが頻繁に起こると、「今日も起こるかもしれない」という不安から不眠に繋がる可能性もあるため、気になるなら早めに対策を行いましょう。
なお、体がビクッとする以外にも症状が出るのであれば注意が必要です。「周期性四肢運動障害」「睡眠てんかん」など病気の可能性が疑われるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
