睡眠中にうなされ、熟眠感を得られずに困っている方もいるのではないでしょうか。
睡眠中の出来事なので「改善が難しい」と思われやすい傾向がありますが、うなされる原因を把握したうえで安眠できるように工夫をすれば、熟眠感を取り戻せる可能性があります。
この記事では、睡眠中にうなされる主な原因を5つご紹介し、うなされる状態を放置するリスクや、安眠するための6つの方法を詳しく解説します。
睡眠中にうなされて困っている方は、ぜひ参考にしてください。
「睡眠中にうなされる」とは、どのような状態?
「睡眠中にうなされる」とは、睡眠時に不快感を伴い、声が出たり、苦悶の表情を浮かべたりする状態を指します。この現象はレム睡眠時に起きやすいといわれており、多くの方は苦しそうにうなり声を出す状態をイメージするかと思います。
睡眠時に不快感を伴いうなされていると、熟睡できずに疲れが取れない可能性があります。頻繁にうなされる方は、原因を把握し改善しましょう。
なお、寝言をいう原因や、よくいう人の特徴について知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
睡眠中にうなされる主な原因
睡眠中にうなされる原因として考えられるのは次の5つです。
- 悪夢
- 精神疾患
- 日常のストレスや不安
- ホルモンバランスの乱れ
- アルコール
それぞれの原因を、順番に紹介します。
悪夢
うなされる原因の一つとして「悪夢」が挙げられます。
危険な目にあったり、誰かに追いかけられたりなど、夢の中で恐ろしい体験をした時は睡眠中にうなされる可能性があります。
悪夢を見る原因はさまざまですが、主に考えられるのは下記の3つです。
- ストレス
- 睡眠不足
- アルコール等
眠りの浅いレム睡眠時は、特に悪夢を見やすいといわれています。
また、悪夢により日常生活に支障が出ている状態を医学界では「悪夢障害」と呼んでおり、睡眠障害の一種として扱っています。
榊原聡
つきじ心のクリニック院長
「悪夢障害」の診断基準は、以下の3つです。
①不安や恐怖を伴う具体的な夢を見る
②悪夢の後ははっきりと覚醒する
③そのため、寝ることに苦痛を伴う
日中眠気や疲労感が残る、頭の働きが落ちてしまうなどの状態であれば医療機関を受診して相談することをおすすめします。
精神疾患
下記の精神疾患を抱えている方は、その疾患が原因で悪夢を見たり、うなされたりする可能性があります。
- レム睡眠行動障害
- うつ病
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)など
うなされる原因が精神疾患による場合は、医療機関での治療が必要です。
日常のストレスや不安
日常のストレスや不安も、睡眠中にうなされる原因の一つです。
前述したように、ストレスは悪夢を見る原因となります。多くの不安を抱えている場合は、その不安がストレスに繋がり、悪夢を見る原因となるでしょう。
自律神経の乱れ
ストレスを溜め続けていると、自律神経の乱れからホルモンバランスが崩れ、不眠症を引き起こす場合もあります。
眠りが浅くなると、些細な音にも反応しやすくなり、うなされて目が覚める状況に陥りやすくなります。
なお、交感神経が優位になりやすい「交感神経優位型」の方は、少しのストレスでもすぐに眠れなくなる場合があります。
アルコール
アルコールには脳神経の興奮を抑制する作用があるため、就寝前の飲酒で入眠しやすくなる場合があります。ただし、眠りが浅くなってうなされるケースもあるので注意しましょう。
入眠しやすくなることは事実ですが、時間が経過して血中アルコール濃度が低下すると睡眠を促す作用がなくなり、利尿作用によって覚醒しやすくなります。その結果、睡眠の質が低下したり睡眠障害に陥ったりする可能性があります。
「睡眠中にうなされる」状態を放置するリスク
睡眠中にうなされて熟睡できない状態が続いた場合、以下に示す問題が生じる可能性があるので注意しましょう。
- ほかの病気を発症する恐れがある
- 十分なパフォーマンスが発揮できなくなる
- さらにストレスが溜まる
それぞれについて詳しく説明します。
ほかの病気を発症する恐れがある
うなされる状態が続くと睡眠が妨げられ、睡眠不足に繋がるケースがあります。
睡眠不足に陥ると、ホルモンの乱れなどにより、生活習慣病(糖尿病や高血圧、脂質異常症など)のリスクも高まります。
十分なパフォーマンスが発揮できなくなる
先述したように、うなされる状態では熟睡しにくくなります。その結果、集中力や記憶力が低下して、仕事や学業などのパフォーマンスが悪くなる場合もあります。
日中のパフォーマンスを向上させたいのであれば、脳に疲労が蓄積しないように心がけることが大切です。そのためにも、睡眠中にうなされる状態を放置せずに、適切な対処を行いましょう。
さらにストレスが溜まる
睡眠は、ストレスを解消させる方法の一つです。そのため、睡眠時間をしっかりと確保できなければ、さらにストレスが溜まってしまいます。睡眠を十分に確保できていない方は、確保できている方に比べて、ストレスを受けやすくなるため、ご注意ください。
また、先述したように、ストレスを溜め続けていると、自律神経の乱れから不眠症を引き起こす可能性があります。そして、睡眠時間が短くなることで、よりストレスを受けやすくなるという悪循環に陥ってしまうかもしれません。
悪循環を断ち切るために、次の章でご紹介する方法で安眠しましょう。
安眠するための6つの方法
健康的な生活を送るためにも、まずは安眠できるように工夫しましょう。安眠する方法として、下記の6つが挙げられます。
- 生活習慣を改善する
- 就寝前の飲酒を控える
- ストレスを溜めないように心がける
- 睡眠環境を整える
- 体に合った寝具に変える
- 医療機関で診察や治療を受ける
各項目について、以下で詳しく解説します。
生活習慣を改善する
朝起きる時間や寝る時間がバラバラなど、生活習慣が乱れている方は改善しましょう。体内時計が調整されていれば、規則正しい睡眠習慣が身に付き、ぐっすり眠りやすくなります。
生活習慣に乱れを感じている方は、起床時間や就寝時間を決め、規則正しい生活習慣を送るように心がけてください。
就寝前の飲酒を控える
上述したように、就寝前に飲酒をすると入眠しやすくなるものの、血中アルコール濃度低下後に中途覚醒しやすくなり、睡眠の質が低下して、うなされる状態に陥る場合もあります。
そのため、就寝時までにアルコールの分解が完了しない量を飲むことは避けましょう。
例えば、体重60kg~70kg程度の成人男性の場合、500mlのビールまたは180mlの日本酒に含まれるアルコールを分解するのに要する時間は約4時間です。
ただし、個人差があるほか、飲酒量によっても分解にかかる時間が異なるのでご注意ください。
ストレスを溜めないように心がける
うなされる原因は、精神的なストレスによるものが多いです。ストレスは悪夢を見る原因となり、悪夢によってうなされてしまうと安眠できません。
安眠するために、自分の趣味や楽しみを増やすなどして、ストレスを溜めないように意識することが大切です。ホルモンバランスが整って、不要な交感神経の興奮を起こしにくくことから、質の高い睡眠をとりやすくなります。
ストレス発散方法にはさまざまなものがありますが、長く続けるために、自分に適した手法を見つけましょう。
ストレス発散方法が思いつかない方は「部屋に観葉植物を置く」「自然の音を聴く」など、自然に触れることをおすすめします。自然に触れると心身をリラックスさせる副交感神経が活性化し、ストレスを軽減できる可能性があります。
睡眠環境を整える
安眠をするためには、自分がより寝やすい環境を作ることが大切です。遮光カーテンを取り付けたり、寝やすい温度や湿度に調整したりして、より良い睡眠環境を整えましょう。
なお、寝室の温度は夏場だと25℃~26℃、冬場は22℃~23℃、湿度は通年50%~60%が理想的だとされています。
体に合った寝具に変える
普段使っている寝具で寝づらさを感じる場合は、体に合った製品に変えると良いでしょう。
自分に合った寝具を使えば、睡眠の質が向上しやすくなります。「硬い寝心地が好き」「柔らかい寝心地が好き」など、自分の好みに合った寝具を探してください。
自分に合う寝具の選び方をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
医療機関で診察や治療を受ける
睡眠中にうなされて安眠できず、日常生活にも支障が出ている場合は医療機関に相談しましょう。うつ病など、精神疾患を発症している可能性も考えられます。
精神疾患が原因でうなされている場合は、適切な治療を受けると改善する可能性があります。早めに安眠を取り戻すためにも、精神科、精神神経科などで診察を受けましょう。
榊原聡
つきじ心のクリニック院長
うなされて安眠できない場合の治療として、まずは、うなされている原因を考えます。必要であれば睡眠障害を専門にしている医療機関で検査(ポリグラフ検査)を行うこともあります。また、薬物療法で睡眠を改善する治療を行うこともあります。
対策をしても睡眠中にうなされる場合は、医療機関で受診しよう
睡眠中にうなされると寝た気がせず、体のだるさを感じる場合もあります。睡眠中にうなされる主な原因は、「悪夢」「精神疾患」「日常のストレスや不安」「自律神経の乱れ」「アルコール」の5つです。
うなされている方は、どの原因によってうなされているのかを知り、生活習慣を改善したり、就寝前の飲酒を控えたりするなど、適切な対処をしましょう。また、ぐっすり寝るために、「使っている寝具を見直す」「寝室の温度を調整する」など、より寝やすい環境を整えることも大切です。
よく眠れていない方は、自分の理想的な睡眠環境を作るように工夫してください。
なお、「睡眠中にうなされる状態」を放置しておくと、ほかの病気を発症する恐れがあります。そして、十分なパフォーマンスができなくなったり、さらにストレスが溜まったりするリスクもあるので注意しましょう。
さまざまな方法を試しても「うなされて安眠できない」という場合は、医療機関で診察や治療を受けることもご検討ください。