人は一晩でコップ一杯分程度の寝汗をかくといわれており、寝汗をかくこと自体は自然な現象です。
しかし、寝汗の量が多いと「体に異常が起きているのでは」と不安になってしまうこともあるでしょう。
この記事では、寝汗をかく主な原因や汗が気になる場合の対策方法について紹介します。
寝汗とは
寝汗とは、寝ている間にかく汗のことをいいます。汗をかくことには体温調節する役割があり、寝汗をかくことは誰にでもある生理現象です。
また、湿度が高くて暑い夜に寝汗をかいたり、発熱した時に寝汗をかいたりすることもありますが特に問題ありません。寝汗には人の体温を下げて、心地良い眠りに導く役割もあります。
寝汗をかく主な原因
寝汗をかくこと自体は異常ではありませんが、寝汗の量が多すぎる場合、自分の体や環境に問題がある可能性があります。原因として考えられるのは、主に下記の4つです。
- 自律神経の乱れ
- 更年期障害
- PMS(月経前症候群)
- 睡眠環境
以下では、それぞれの原因について詳しく紹介します。
寝汗をかく主な原因①自律神経の乱れ
寝汗をかく原因としてまず挙げられるのは、自律神経の乱れです。自律神経とは、人の体調を整えてくれる神経のことです。
自律神経には日中の活動性を上げる「交感神経」、夜間に心身をリラックス状態に導く「副交感神経」の二つがあり、それぞれ内臓の動きや体温調整をすることで、体をコントロールしています。
しかし、自律神経が乱れていると、体温調整をするための役割を持つ「発汗」が通常とは異なるタイミングで発生してしまい、その結果、「暑いわけではないのに大量の寝汗をかく」という事態が発生します。
自律神経は日常の過ごし方によって乱れてしまうので、不健全な生活を送っている方は下記に注意しましょう。
- ストレス
- 運動不足
- 生活習慣の乱れ
- 偏った食生活
村田朗
医療法人財団日睡会 理事長 御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長
自律神経の乱れにより睡眠の質の低下、体内時計の異常などが起き、睡眠障害に加えて、睡眠障害から発生する生活習慣病などを併発する可能性があります。
寝汗をかく主な原因②更年期障害
更年期障害も寝汗をかく原因の一つです。更年期障害とは、更年期にホルモンの分泌量が急激に減少することによって発生する症状を指します。
症状は頭痛やめまい、ほてりやのぼせ、動悸などさまざまですが、このうち「ほてりやのぼせ」の症状がある場合は、その症状が寝汗に繋がる場合があります。
寝汗をかく主な原因③PMS(月経前症候群)
PMS(月経前症候群)とは、生理前に3日~10日の間続く精神的・身体的症状のことです。
主な症状としてはイライラや不安、頭痛や腰痛、むくみやのぼせなどが挙げられ、このうち「のぼせ」の症状が出ている場合、それが原因で寝汗をかいていると考えられます。
なお、PMSは生理開始後に緩和されていく特徴があり、適度な有酸素運動や生活習慣を整えることで改善や予防が期待できます。
村田朗
医療法人財団日睡会 理事長 御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長
女性ホルモンは、自律神経を調整する視床下部と下垂体からの指令で卵巣から分泌されています。
しかし、更年期やPMSになると、ホルモン分泌の乱れから自律神経も崩れて血管の収縮と拡張のコントロールができなくなるため、ほてりやのぼせが起こります。
寝汗をかく主な原因④睡眠環境
体に不調がないのに寝汗が多い場合は、寝室の温度など睡眠環境が影響している可能性があります。
寝汗は体温を下げる役割を持っているため、睡眠時の体温が高い場合その分寝汗も増えてしまいます。
部屋の室温が高い、または寝間着が厚すぎる場合は体温が上昇し、寝汗に繋がるので注意しましょう。
快適な睡眠環境を作る方法は、下記の記事でも詳しく紹介しています。布団に入ってもなかなか寝付けない方や寝心地の悪さを感じる方は、ぜひ参考にしてください。
ひどい寝汗は盗汗(とうかん)の可能性も
多少の寝汗は生理現象なので問題ありませんが、特別暑くないのに着替えが必要になるほど寝汗をかく場合は、東洋医学で盗汗(とうかん)と呼ばれる症状の可能性もあります。
盗汗は、ストレスや疲労、不規則な生活などによって生じやすいとされています。病気から引き起こされることもあるため、ひどい寝汗をかく時は医療機関を受診しましょう。
普段からできる寝汗の対策方法4選
寝汗の量が多いと、寝具や寝巻きが湿ってしまい不快に感じる方も多いのではないでしょうか。
その場合、下記のような対策を行うと寝汗を減らせる可能性があるためおすすめです。
- ストレスを溜めないようにする
- 規則正しい生活を送る
- 室温や寝巻きに気を付ける
- 除湿機を使う
以下で具体的な方法を順番に見ていきましょう。
①ストレスを溜めないようにする
ストレスを溜めすぎると、自律神経の乱れに繋がるので注意してください。
先述のとおり、自律神経が乱れると体温調整が上手くいかず寝汗が増える場合があります。自律神経を正常な状態に保つためにも、乱れの原因となるストレスはなるべく溜めないように心がけましょう。
また、ストレスが溜まってきたと感じた時は、自分に合った方法で発散することが大切です。
- 睡眠をしっかりとる
- 適度に運動する
- 誰かと話をする
- 創作作業に取り組み雑念を消す
②規則正しい生活を送る
寝汗の対策には、規則正しい生活を送ることが重要です。生活習慣の乱れは自律神経の乱れにも繋がり、寝汗を発生させる場合があります。
自律神経を整え、快適に眠るためにも、下記の四つを意識しながら規則正しい生活を送るように心がけてください。
- 朝起きた時に日光を浴びる
- 日常に軽めの運動を取り入れる
- 毎日お風呂に浸かってリラックスする
- 質の高い睡眠をとる
このように規則正しい生活を送れば、PMSの予防にも繋がります。普段の生活習慣が乱れている方は、改善に努めるよう意識しましょう。
③室温や寝巻きに気を付ける
寝汗対策をするなら、室温や着用する寝巻きにも気を付けましょう。寝室が暑すぎたり、寝巻きが厚すぎたりしてしまうと、体温が上がって寝汗も増えてしまいます。
寝汗に悩んでいる方は、適度な温度を保つ、寝巻きは季節に合わせて最適な製品を使うなど、睡眠環境を整えてみてください。
なお、寝汗が気になるからといって室温を低くしすぎると、体調不良に繋がる可能性があるので注意しましょう。
また睡眠時の理想的な温度は夏場が25℃〜26℃、冬場は22℃〜23℃とされています。より良い睡眠環境を整えるためにも、寝室は適切な温度を保つように意識してください。
④除湿機を使う
寝汗対策のために睡眠環境を整えるなら、湿度にも注目しましょう。
寝室の適正湿度は通年50%〜60%が理想的だとされています。
湿度が高い環境は、汗がかきやすく睡眠を邪魔してしまう可能性があるため、湿度が高い場合は除湿機を活用し、適切な湿度を保ちましょう。
寝汗がひどい場合は病気の可能性も?
寝汗は病気の症状によって発生する場合もあります。なかなか改善しないという方は注意してください。
寝汗が症状としてあらわれる主な病気は下記のとおりです。
- 感染症
- 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
- 自律神経失調症
- 睡眠時無呼吸症候群
病気の症状によって寝汗が発生している場合、まずは治療が必要です。不安な方は、医療機関に相談してみてください。
村田朗
医療法人財団日睡会 理事長 御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長
咳・痰、だるさを伴う時は肺結核などの感染症を疑いましょう。
また、頻脈、手の震え、イライラを併発する時は甲状腺機能亢進症、全身のさまざまな不定愁訴(ふていしゅうそ)を伴う時は自律神経失調症、いびき、無呼吸、眠気を伴う時は睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう。
まとめ
寝汗の量が多いと不安になってしまいますが、生活習慣を改善したり、寝室の温度や湿度を調整したりすることで減らせる可能性があります。
いつもより明らかに寝汗が多いと感じた際は、この記事を参考に原因を追求したうえで対策を行いましょう。
また、対策しても寝汗が多い場合は、前述した病気が原因となっている可能性も考えられます。心配な場合は、原因を明確にするためにも近くの病院を受診しましょう。