お腹いっぱい食べたランチのあとなど、食後に急激な眠気に襲われた経験を持つ方は多いのではないでしょうか。
職場や学校など、大事なシーンで眠気に襲われると集中力も低下してやる気も削がれるので、できる限り食後の眠気は避けたいところです。
また、多少の眠気であれば問題はありませんが、耐えられない程の眠気の場合、病気に繋がる恐れもあるため注意しなくてはなりません。
この記事では、食後に眠くなる理由や考えられる病気、取り入れやすい食後の眠気対策などを紹介します。食後の眠気に悩んでいる方や、対策の方法を知りたい方は参考にしてください。
食後の眠気は「血糖値スパイク」の可能性がある
食後に感じる少しの眠気であれば、誰にでもあることなので特に心配はありません。
しかし、時には「血糖値スパイク」と呼ばれる症状によって眠気がでている可能性もあり、それに該当する場合は注意が必要です。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことで、「血糖値スパイク」とは、食後の短時間での血糖値の急上昇と急降下のことを指します。
血糖値スパイクを放っておくと、血液中のブドウ糖が多量に増える「糖尿病」に繋がる可能性があるため気を付けなくてはなりません。もしくは、気づかずに糖尿病になっている方の、初期症状として眠気がでている場合もあります。
血糖値スパイクは動脈硬化や心臓病などの疾患に繋がる可能性もあるため、放っておくのではなく、病院に行くなどの対策を行いましょう。
藤堂紗織
Alohaさおり自由が丘クリニック 院長
血糖値スパイクの可能性を疑って医療機関を受診する場合は、内科を受診ください。
血糖値スパイクが起こる理由
日々の乱れた食生活が影響して血糖値スパイクが起こることがあります。
特に食べ過ぎや早食いは、血糖値を急激にあげてしまう原因となるため、意識的に食事方法を気を付けることが大切です。
また、白米やパンなど糖質中心の食事ばかりを続けていると、体内に摂り込まれるたびに血糖値が急上昇しますが、血糖値が上がることで膵臓が分泌するインスリンというホルモンが大量に分泌され、今度は血糖値が急降下します。
このような仕組みにより、空腹時、短時間に糖質を多量摂取すると血糖値スパイクが起こるため、朝食を抜いている方で、ランチに糖質が多く含まれるラーメンやパスタなどを食べる傾向がある方も要注意です。
藤堂紗織
Alohaさおり自由が丘クリニック 院長
日常生活において血糖値スパイクを引き起こす1番の原因は食事です。
食後の眠気を防ぐための日々心がけたいこと
血糖値スパイクによってつらい症状が起きているのであれば、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。
そうでない一般的な食後の眠気に困っている場合は、日常生活を見直すことで改善できる可能性があります。
ここでは、日々自分でも取り組める行動を4つ紹介します。
- 食べ過ぎないようにして1日3食を心がける
- 食事を食べる順番を見直す
- 血糖値を上昇させやすい食べ物を控えめにする
- 食後に少し体を動かす
どれも気軽に取り入れられる方法なので、ぜひお試しください。それぞれのポイントについて、詳細な内容を解説します。
食べ過ぎないようにして1日3食を心がける
食べ過ぎによって糖質を多く摂りすぎると、血糖値が急激に上がってしまいます。それを防ぐために、腹八分目を意識して食べ過ぎないように心がけましょう。
同時に、よく噛んでゆっくり食べることも大切です。よく噛むと少量でも満腹感を得ることができ、時間をかけて食べることで血糖値も上がりにくくなります。
また、朝食を抜くなどの欠食をすると、次の食事の際に血糖値が急上昇してしまうため、1日3食きっちり食べることが血糖値の上昇を防ぐことにも繋がります。
加えて、食事はなるべく毎日同じ時間帯で食べるとなお良いでしょう。忙しくて、普段と同じ時間帯に食事を済ませることが難しい場合は、「味噌汁だけ」「バナナだけ」など簡単なものでも構いません。
食事を食べる順番を見直す
食事の内容や時間帯だけでなく、食べる順番も大切なポイントです。
まずは野菜から食べることを心がけると、血糖値の急激な上昇を抑えられます。その理由は、野菜に含まれる水溶性食物繊維が、糖質の消化吸収を遅らせるためです。
ご飯や麺類、パンなどの糖質が高い食材は、野菜やタンパク質を食べたあとに、食事の後半で食べることをおすすめします。
血糖値を上昇させやすい食べ物を控えめにする
ご飯やパンなど、糖質が多く含まれている炭水化物は、血糖値を急激に上昇させやすい食材です。これらの糖質を多く含む食べ物を過度に食べるのは避けて、可能な限り控えめにしましょう。
血糖値を上昇させやすい食べ物は、ご飯やパンをはじめとして以下のようなものがあります。
- 麺類(パスタ・うどんなど)
- 清涼飲料水
- お菓子
- アイス
上記のような血糖値を上昇させやすい食べ物を摂り過ぎないように、意識的に控えることをおすすめします。
逆に、血糖値が上がりにくい「低GI食品」とされる肉や魚などのタンパク質、野菜、きのこ、海藻などを多くとるように心がけましょう。
食後に少し体を動かす
食後の眠気を抑えるためには、食後の行動も重要です。食べ終わったあといつまでも座っているのではなく、少し体を動かすと血糖値の急上昇を抑えられます。
食後の運動として簡単に取り入れやすい具体的な方法として、食器洗いを行う方法がおすすめです。職場や出先にいる場合は、ランチ後に少し散歩をしたり、ウォーキングしたりするのも良いでしょう。
ウォーキングのような軽めの有酸素運動やストレッチは血糖値の上昇を抑えるのに効果的なので、ぜひ意識して体を動かすことを習慣化させてください。
食後の眠気がつらい時にすぐできる対策
日中に眠気を感じると、倦怠感や集中力の低下などが生じる可能性があり、仕事や家事、勉強といったさまざまな活動に支障が出てしまいます。食後に限らず眠気がつらいと感じた時には、以下の対策を試しましょう。
- 眠気が覚める行動をとる
- 15分〜30分程度の仮眠をとる
それぞれ解説します。
眠気が覚める行動をとる
眠気がつらい時の対策としては、過ごす環境を変えたり体に刺激を与えたりと、目の覚める行動をとることが効果的です。
- 水で顔を洗う
- 目薬をさす
- ガムを噛む
- カフェインを摂取する
- ストレッチをする
- 眠気覚ましのツボを押す
上記のような行動をとることで神経や脳が刺激され、一時的な覚醒効果を得られる可能性があります。
どの行動も日常生活で簡単に行えるものなので、眠気がつらい時にお試しください。
ただし、これらはあくまでも一時的な対策です。基本的には、食後に眠気が生じないように過ごすことが大切なので、日々睡眠の質を高めたり、食生活を見直したりすることをおすすめします。
15分〜30分程度の仮眠をとる
食後の眠気に限らず、日中に眠気が我慢できない場合は仮眠をとるのも選択肢の一つです。仮眠をとることで脳がリフレッシュして眠気が改善するだけでなく、集中力が高まったり、仕事や勉強などの作業効率がアップしたりする可能性があります。
ただし、仮眠が長時間になると、夜の睡眠に影響を与えるため注意が必要です。一般的に、仮眠は15分~30分程度が望ましいとされているので、仮眠時間が長くなりすぎないように心がけましょう。
また、仮眠をとる時は時間帯も大切です。人間には体内時計が備わっており、日中に眠気を感じる時間帯は14時~16時がピークになるといわれています。そのため、仮眠は14時前にとると効果的です。
一方、14時以降に仮眠をとると夜の睡眠に影響する可能性があるため、避けたほうが良いでしょう。
仮眠に関して詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
食後の眠気で糖尿病を疑うなら速やかに病院へ行こう
ここまで紹介したとおり、日常生活の中で自ら取り組める眠気対策もありますが、あまりにも眠気が強く病気を疑う場合には医療機関を受診するようにしましょう。
長時間強い眠気が続く場合、血糖値スパイクによってインスリンの過剰分泌が起きているのかもしれません。インスリンの分泌量が増えると膵臓の負担になり、糖尿病に繋がる可能性があります。
糖尿病を疑う場合に受診する医療機関は、以下のとおりです。
- 内科(糖尿病内科)
- 外科
- 泌尿器科等
医療機関ではさまざまな検査が行われ、それに応じた食事療法・運動療法・薬物療法などが行われます。
検査や治療の詳しい内容は医療機関ごとに異なるため、受診した先で医師の指示を仰いでください。
藤堂紗織
Alohaさおり自由が丘クリニック 院長
糖尿病に関して、医療機関で行われる検査方法には「随時血糖検査」や「経口ブドウ糖負荷試験」などがあります。治療については「食事療法」と「運動療法」が主な治療法です。薬物治療などもありますが、あくまで補助的な役割を担っています。
まとめ
食後に多少の眠気がある程度であれば、誰にでも起こり得ることなので特に心配しなくても良いでしょう。
しかし、もし「血糖値スパイク」によって眠気がでている場合は、糖尿病をはじめとした病気の可能性もあるため注意が必要です。病気が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
血糖値の上昇を抑えるために日常でできる取り組みとして、食べ過ぎない、食べる順番を意識する、食後に体を動かすなどがあります。食事の内容や方法に気を配るだけでなく、軽めの運動を習慣として取り入れる方法もおすすめです。
どれも気軽に取り入れやすい対策なので、食後の眠気が気になる方はぜひ取り入れてみてください。
また、眠気がつらい時は、仮眠をとったり、目が覚める行動をとったりすることで対処できる可能性があるため、状況に合わせて実践しましょう。