背中の痛みはつらい症状で、長く続くと困るものです。背中が痛いと同じ姿勢を続けることが難しくなり、仕事や趣味に集中しづらくなることもあるでしょう。
また、「背中が痛いのは、もしかして病気?」など、悩みを抱えている方は少なくないかもしれません。
背中が痛くなる原因を探った時、人によっては考えられる原因が一つではなく、いくつかの要素が重なっている可能性もあるため、「自分の痛みがなぜあらわれているのか」という原因を知って適切な対処を行うことが大切です。
この記事では、背中が痛くなる原因から痛みがある時の対策、日常的にできる予防法などを解説します。背中の痛みに悩む方は、ぜひ参考にしてください。
背中が痛い時の原因として考えられること
一口に背中が痛いといっても、以下のようにさまざまな原因が考えられます。
- 無理な動きをして筋肉が疲労している
- 姿勢が悪く猫背や反り腰になっている
- 座っている時や寝ている時に血行不良を起こしている
- 精神的なストレスを受けている
- 何かしらの病気を抱えている
それぞれの原因について、詳しく解説します。
無理な動きをして筋肉が疲労している
過度に運動をした日や、重い荷物を持った時などに、筋肉の疲労から「筋肉痛」として背中に痛みが出ることがあります。
筋肉痛とは、運動をすることで生じる筋肉の痛みのことです。筋肉痛のメカニズムはまだはっきりと解明されていませんが、損傷した筋繊維を修復する際に炎症が起こることで痛みが出るといわれています。
運動不足の方は、ちょっとした動きやパソコン作業などで長時間同じ姿勢をとっただけでも筋肉が疲労する場合もあります。
姿勢が悪く猫背や反り腰になっている
立ち仕事やデスクワークなど、長時間同じ姿勢でいることで筋肉に緊張が続くと、背中が痛くなることがあります。特にパソコン作業中は、前屈みになりやすく背中が丸まりやすいです。
背中が丸まる「猫背」や腰の反りが強くなる「反り腰」、首の反りが少なく真っすぐになる「ストレートネック」といった姿勢不良から、背中に負担がかかっているケースもあります。
背中が丸まって理想的な背骨の状態を保てていない状態が続くと、背中の痛みに繋がる可能性があるため、普段の姿勢を意識して理想的な状態に保つことは重要です。
座っている時や寝ている時に血行不良を起こしている
座っている時や寝ている時に同じ姿勢が続くと、筋肉が緊張して血行不良が生じることがあります。
座って前屈みになる姿勢や「くの字」になって寝る姿勢など、無理な姿勢は血行不良を引き起こす原因となるため注意しなくてはなりません。特にパソコン作業が多い方は、首が前に伸びて顎を突き出すような無理のある姿勢になりやすいです。
同じ姿勢が長時間続くのであれば、定期的にストレッチをするなど、体を意識的に動かすよう努めましょう。
精神的なストレスを受けている
背中の痛みとは関係ないように思えますが、実はストレスも背中の痛みの原因になり得ます。
ストレスを受けるとアドレナリンが分泌されるため、活動モードの「交感神経」が優位な状態が続いて自律神経の乱れに繋がります。すると、筋肉が緊張状態になりやすくなり、結果的に背中の痛みを感じる可能性があるのです。
また、心にストレスを受けていると、布団のなかでも心配事を考えて眠れなくなり、熟睡できないことから疲れが取れず、体に負担がかかる場合もあるでしょう。
背中に違和感がある状態で熟睡できない日々が続くと、睡眠によって心身の回復ができず、姿勢に関係なく背中の痛みが悪化するケースもあります。
何かしらの病気を抱えている
特に背中に痛みが生じるような行動をしていないにも関わらず背中に痛みを感じる場合、何かしらの病気によって痛みが生じている可能性もあります。
背中の痛みに繋がる病気として挙げられるのは、主に以下のとおりです。
- 椎間板ヘルニア
- 骨粗しょう症
- 変形性脊椎症
- 外傷性頚部症候群(むち打ち症)
病気が原因で背中に痛みを感じる場合は、速やかに医療機関を受診して専門医による診断と治療を行いましょう。
ソシアス美緒
麻酔科標榜医 日本アンチエイジング外科美容再生研究会認定医
ケガをした場合、強い痛みがある場合、痛みが長く続いている場合、痛みだけでなく、痺れや皮膚の異常をともなう場合は、医療機関を受診しましょう。
背中の痛みへの対処法
症状が長く続く場合や痛みがつらい時には、医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。それと同時に、自分で実践できるセルフケアの方法も紹介します。
- 冷やす
- 温める
- マッサージをする
- 病院へ行く
それぞれの対処法について、詳細を解説します。
冷やす
背中に痛みがあらわれた直後は、患部を冷やすことをおすすめします。痛みのある部分が熱を帯びている場合、炎症を抑える必要があるためです。
患部を冷やす際には、冷却パック・氷のう・保冷剤・冷やした濡れタオルなどを背中に当てると良いでしょう。うつ伏せ状態になって腰の上に置いて使えば、1人でも簡単に冷やすことができます。
冬場に実践する場合は、腰以外を冷やさないよう暖かい部屋で行いましょう。
温める
背中に痛みが出始めてから少なくとも2週間以上経ち、炎症がおさまって来たら温めてケアしてください。患部を温めて血行を良くすることで、痛みが軽減していく効果が期待できます。
腰だけを手軽に温めたい場合は、使い捨てカイロやホットパックの使用がおすすめです。
また、ぬるめのお湯にゆっくり浸かって全身を温める方法も良いでしょう。体全体が温まれば、筋肉の緊張がほぐれて血行も促進されやすくなります。
マッサージをする
背中を揉んでマッサージすると、血流が良くなるうえにストレスの緩和にも効果的です。
背中は自分でマッサージすることが難しいため、周りの方に手伝ってもらうことをおすすめします。自分でマッサージをする場合は、軽く押したりさすったりする程度でも良いでしょう。
ただし、急な痛みには逆効果になり、痛みが増強することがあります。また、無理に自分の手でマッサージすると、腰をひねる形になってさらに痛みが増す可能性があるため、腰に負担がかからないよう注意しながら行ってください。
病院へ行く
強い痛みが長時間続く、痛みが我慢できないといった場合には、無理せず医療機関を受診しましょう。
受診する科は症状の出方によって異なり、主な相談先としては整形外科・内科・循環器科などが挙げられます。
しかし、背中に痛みが生じている原因は人それぞれで、なかには複数の原因が絡み合っているケースもあるでしょう。
適する科目の医療機関でなくても症状に応じたアドバイスをもらえることがあるため、かかりつけ医がある方は、まずそちらに相談してみても良いかもしれません。
ソシアス美緒
麻酔科標榜医 日本アンチエイジング外科美容再生研究会認定医
医療機関では、痛みや炎症を抑える消炎鎮痛剤の内服薬や外用薬の処方、骨粗しょう症がある場合は注射や内服の治療をします。
痛みが出るような姿勢をなるべく取らないようにし、安静にしましょう。
背中の痛みへの予防法
すでに背中に痛みが出ているのであれば、前述のとおり医療機関を受診して適切な治療を受けることを推奨します。それ以前に、背中に痛みが出ないよう日常生活から予防に取り組むことも大切です。
普段の生活のなかで取り組める背中の痛みの予防法として、以下の方法が挙げられます。
- 無理な姿勢をとらない
- 入浴して筋肉をほぐす
- ストレッチをする
- 寝具を見直す
それぞれの予防法について、詳しく解説します。
無理な姿勢をとらない
長時間の立ち仕事やデスクワークをおこなう際、無理な姿勢が続かないように気を付けましょう。
座りっぱなしの時間が長くなりやすい方は、正しい座り姿勢になるよう心がけてください。正しい座り姿勢とは、椅子に深く座って膝や足首が90度になる姿勢を指します。
姿勢を意識するのと同時に、自分にとって座りやすいと感じる椅子を選ぶことも大切なポイントです。
パソコン作業をする際には、パソコン画面と目の距離は40cm以上開け、手をおいた時に肘の角度が90度ほどになる位置にキーボードを設置しましょう。
また、目線が低くなって猫背にならないように、パソコンスタンドやキーボードスタンドを活用するのもおすすめします。これらのアイテムを活用してパソコン画面の位置が高くなれば、首が前傾して無理な姿勢になることを防ぎやすくなるでしょう。
ソシアス美緒
麻酔科標榜医 日本アンチエイジング外科美容再生研究会認定医
日常生活では、同じ姿勢を長時間とらないようにしましょう。同じ姿勢をとる場合は、途中で休憩や、ストレッチをするように心がけてください。
また、筋肉の衰えによっても痛みが生じるため、日頃から軽い運動を習慣づけることも効果的です。
入浴して筋肉をほぐす
入浴は背中に痛みが出た時の対処法でもありますが、普段からきちんと湯船に浸かって体を温める習慣を付けておくことも大切です。
時間がなくて普段シャワーで済ませている方は、湯船に浸かって血行を促進させることを意識しましょう。
入浴する方法としては、38〜40℃のぬるめのお湯で25分~30分程度がおすすめです。熱すぎる湯温だと心臓に負担がかかるうえに、体が興奮して寝つきの悪さにも繋がるため、避けたほうが良いでしょう。
入浴剤を入れるとよりリラックスしやすくなるため、好きな香りのものを選んでバスタイムを楽しんでください。
ストレッチをする
筋肉の緊張や血行不良を解消するために、長時間同じ姿勢が続く時には定期的にストレッチを行いましょう。
運動用の服に着替えたり外に出たり、大変なことをする必要はありません。デスクワークの最中に椅子に座りながらできるストレッチもたくさんあります。
例えば、手を上げる・肩や首を回す・両足の曲げ伸ばしなど、仕事の合間に簡単に取り組めるストレッチから始めてみてください。
寝具を見直す
場合によっては、「使っているマットレスが硬すぎる」「枕が高すぎる」など、使用中の寝具が影響して背中に痛みが生じている可能性もあります。
その際には、思い切って寝具の買い替えを検討するのも一つの方法です。寝心地を改善させるアイテムを使う方法もありますが、寝具は毎日使うものなので、長い目で見ると自分の体に合う寝具を選んで購入したほうが賢明でしょう。
寝具のなかでも特に、全身が触れるマットレスの選び方にこだわるのがおすすめです。へたりや凹みがある劣化したマットレスを使い続けると、体に負担がかかって背中だけでなく体の不調に繋がる可能性があります。
マットレスの寿命は種類によって異なりますが、例えばポケットコイルマットレスの寿命は8~12年ほどです。これを目安にしながら、それ以前の使用年数であっても使用感が悪くなっているのであれば寝心地の良さを考えて買い替えを検討しても良いかもしれません。
また、新しいマットレスを選ぶ際には、就寝中の血行を促進するために寝返りを打ちやすさを重視しましょう。適度な反発力があると寝返りが打ちやすく体圧を分散しやすくなるため、選ぶ際の参考にしてください。
まとめ
背中に痛みがある時、考えられる原因としては不自然な姿勢や長時間の無理な姿勢などが挙げられます。
場合によっては何かしらの病気が隠れている可能性もあるため、強い痛みが続く場合や痛みが我慢できない場合には、医療機関を受診して医師の診断を受けましょう。
それと合わせて、普段から背中に痛みが生じないよう予防に努めることも重要です。正しい姿勢を意識する、入浴して体を温める、仕事の合間にストレッチするなど、今日から取り組める予防法は数多くあります。
体に合わない寝具を使っていることが原因で背中に痛みが出ている時には寝具の買い替えも含めて検討し、普段から背中に痛みが出ない日常生活を送れるよう心がけていきましょう。