日中、眠くないのにあくびが出ることがあり、不思議に思っている方もいるのではないでしょうか。
あくびは生理現象のため、あくびが出ること自体は問題ありません。ただし、眠くない時に出るあくびは「生あくび」と呼ばれ、健康上の問題があるサインの可能性があります。
この記事では、生あくびの概要やあくびとの違い、生あくびと病気の関係性を解説し、あくびが止まらない時の対処法も紹介します。
生あくびとは?
生あくびとは、眠気がないにもかかわらず出るあくびのことです。生あくびは疲労やストレスがかかった時、緊張した時に生じやすくなります。しかし、生あくびとともにほかの症状がある場合、思わぬ体の変化や病気が隠れている可能性もあるため注意しなければなりません。
生あくびが出る時に起きていると考えられるメカニズムを知り、心当たりがあれば対策を講じましょう。
生あくびと通常のあくびの違いや見分け方
生あくびと通常のあくびは、眠気の有無によって見分けることができます。通常のあくびは眠気を感じた時に生じますが、生あくびは基本的に眠気を伴わずに生じます。
加えて、通常のあくびは朝と夜に生じることが多いですが、生あくびは眠気の有無に関係なく、頻繁に生じる傾向があるため、覚えておきましょう。
また、生あくびは病気や熱中症などのサインとして生じる場合もあります。生あくびと同時に以下のような症状があれば、注意が必要です。
- しびれ
- めまい
- 冷や汗
- 頭痛
- 動悸
なお、通常のあくびが出る原因は以下の記事でも解説しています。ぜひこちらもご一読ください。
生あくびが出る原因とは?
あくびはまだ謎が多い生理現象だとされており、全てが解明されているわけではありません。そんな中で、生あくびが出るのは、以下の原因があると考えられています。
- 脳を覚醒させるため
- 脳の温度を調節するため
- 酸素不足を解消させるため
それぞれの原因について、詳しく解説します。
脳を覚醒させるため
生あくびは脳が覚醒する時に出るといわれています。これは、大きく口を開けることで、頸動脈や頸静脈を圧迫して脳の覚醒を促すというメカニズムがあるためです。
睡眠状態から活動ができる覚醒状態にするために、寝起きだけでなく、運転中や重要な会議などの絶対に寝てはいけないタイミングで生あくびが出ることが多いと考えられています。
脳の温度を調節するため
一般的なあくびは体の疲労が関係しており、眠気を生じますが、生あくびの場合は体の疲労が原因ではなく、温度調整を目的として生じるという説があります。
生あくびによって口や鼻から冷たい空気を吸い込むことで、高温になった脳を冷やし、機能障害を防止する働きがあるといわれています。
酸素不足を解消させるため
脳内の酸素が不足している時にも生あくびが出やすいといわれています。
脳の酸素が不足した状態の一例は、何時間も換気をしない部屋にいる、山頂など酸素が薄い場所にいる、何らかの障害によって脳の酸素が不足しているといったケースです。
酸素不足で脳の機能が低下していると、脳は強制的に大量の酸素を取り入れようとして、生あくびが増える傾向にあると考えられます。
生あくびが何度も出るのは健康状態に問題があるサインの可能性も
生あくびが何度も出る時は、以下のような健康上の問題が生じている可能性があるため注意が必要です。
- 自分では気づいていない睡眠不足
- 熱中症の初期症状
- 何らかの病気が隠れている
それぞれを詳しく解説します。
自分では気づいていない睡眠不足
睡眠時間をきちんと確保しているつもりでも、何らかの原因で睡眠の質が低下していると、無意識のうちに睡眠不足になっている可能性があります。
睡眠不足の場合、眠気を感じていなくても、脳を覚醒させるために生あくびが出ることがあります。
睡眠の質が低下すると、翌日すっきり起きられず倦怠感があったり、頭痛をはじめとした体の不調を感じたりする可能性があるため、無自覚な睡眠不足の原因を特定し、睡眠の質を高めることが大切です。
熱中症の初期症状
生あくびは、熱中症の初期症状としてあらわれることがあります。体内の水分が減ることで脳に十分な酸素を送ることができなくなり、生あくびが出やすくなるといわれています。
生あくびと同時に、めまい、立ちくらみ、大量の発汗、頭痛、気分が悪いなどの症状が出た場合は、熱中症の可能性があるため注意が必要です。
特に、夏の暑い日は熱中症になりやすいため、症状が出る前に水分を補給し、適宜涼しい場所で休みましょう。
何らかの病気が隠れている
先述したように、眠い時に出る通常のあくびであれば問題ありませんが、生あくびが出る場合は何かしらの病気が隠れている可能性があります。
生あくびが出ることで考えられる病気には、以下のものがあります。
- 片頭痛
- 貧血
- 低血圧
- 睡眠時無呼吸症候群
- 低血糖
片頭痛とは、こめかみ周辺から目の辺りにズキズキした痛みを感じる頭痛です。貧血や低血圧で脳の酸素や栄養が不足すると、疲れやすさやめまいといった症状があらわれます。
また、自分では睡眠がとれているつもりでも、実は睡眠の質が低下しているケースでは、睡眠中に呼吸が浅くなったり、止まったりする睡眠時無呼吸症候群も疑われる病気の1つです。
糖尿病で血糖値を下げる薬を服用している方で、あくびが繰り返し出るなら、低血糖の可能性もあります。
いずれのケースにしても、専門家による適切な診断や治療を行うことが大切です。
日中の生あくびが止まらない時は医療機関の受診を検討しよう
生あくびが気になる方は、医療機関を受診しましょう。受診する医療機関は、症状に応じて内科・耳鼻咽喉科・脳外科などが考えられますが、自分で判断できない時は、かかりつけ医への相談をおすすめします。
生あくびは、緊張している時などに出ることもあるため、必ずしも病気の症状やサインというわけではありませんが、重大な病気が隠れているケースもあるため、少しでも体調の異変を感じた場合は、早期に医療機関の受診を検討しましょう。
生あくびが出てしまう時にできること
生あくびが出る場合、以下の対策を試してみてください。
- 深呼吸をする
- ストレッチをする
なお、生あくびと通常のあくびは、眠気の有無で見分けるのが基本ですが、区別がつきづらい場合もあります。その場合は、まずは生あくびの対策を試し、症状が続く場合は医療機関の受診をおすすめします。
深呼吸をする
生あくびが出る時は、脳の酸素不足が原因の可能性があります。大きく息を吸って深呼吸をし、脳へ意識的に酸素を送りましょう。
深呼吸する際は、息を吐ききった状態にしてから、鼻からゆっくりと息を吸い込みます。腹部をしっかりと膨らませるまで深く息を吸い込んだら、吸う時の倍くらいの時間をかけることを意識して息を吐きましょう。
このサイクルを5回程度繰り返します。隙間時間にもできることなので、ぜひ仕事中や外出先でも取り組んでみてください。
ストレッチをする
脳が酸素不足なときは、ストレッチをすることも有効的です。
ストレッチによって筋肉が動き、全身の血行が促進されると、脳への酸素供給が改善されることが期待できます。
通常のあくびが止まらない時の対処法
生あくびではなく、通常のあくびの場合は、以下に紹介する対処法を試すことで改善できる可能性があります。
- 十分な睡眠をとる
- ツボを押す
- 体に力を入れる
- 飲み物を飲む
- ストレスを解消させる
- 15~30分程度の仮眠をとる
日中に通常のあくびが出てしまう時には、ぜひチャレンジしてみましょう。
十分な睡眠をとる
あくびが出るのは睡眠不足が原因であることが多いため、睡眠時間を確保して睡眠の質を高めることが大切です。十分な睡眠をとるためには、運動面・食事面でそれぞれ以下のポイントを心がけましょう。
運動面では、まず日中の運動や活動量を増やし、適度な疲労を感じることが寝付きを良くする重要なポイントです。ただし、就寝前の運動は3時間ほど前までに済ませ、軽い有酸素運動に取り組みましょう。激しい運動だとかえって眠れなくなるため注意してください。
なお、日本睡眠学会によれば、習慣的に運動をしている人の70%以上は睡眠の質が高いことがわかっています。散歩やストレッチ、体操、ジョギングなど習慣的に運動することが重要です。
食事面では、日常的にバランスの良い食事を心がけるとともに、体内時計を正常にするために1日3食を規則正しく食べましょう。起床時にずれた体内時計をリセットさせるためには、朝食も抜かずにきちんと食べる必要があります。
また、就寝直前の夕食や夜食は、消化活動が活発になり睡眠の質が低下する恐れがあります。食事は就寝の2時間前までに済ませることが重要です。
出典:厚生労働省「解説書 良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない 睡眠のこと」
ツボを押す
あくびが出る時には、眠気覚ましに効くとされる以下のツボを押すのも効果的です。
- 中衝
- 晴明
- 労宮
- 風池
「中衝」は、中指の爪の生え際より2~3mm下くらいにあるツボです。親指と人差し指で中指を挟み、ぐっと強く押しましょう。
鼻の骨の上、目頭よりほんの少し内側にあるツボが「晴明」です。皮膚が柔らかく目元に近い部分なので、眼球を傷つけないように気をつけて、つまんで引っ張るように刺激します。
「労宮」は手の中央にあるツボで、こぶしを作った時に中指と薬指が当たる位置にあります。ぐっと押し込むように強く押してみましょう。
後ろ髪の生え際の辺りに、首の骨を挟んで左右2ヶ所にあるツボが「風池」です。両手の親指を使って、頭蓋骨に指を入れるように押し上げてみてください。
いずれのツボを押す際にも無理せず、場合によっては鍼灸師などの専門家にアドバイスを受けながら試しましょう。
なお、眠気覚ましに効くツボについて、より詳しく知りたい方はこちらの記事も併せてご一読ください。
体に力を入れる
あくびが出る時は、体に力を入れたり立ち上がったりするのもおすすめです。すぐにできる行動として、具体的には以下のものがあります。
- 目を見開く
- 歯を食いしばる
- 口を大きく開ける
休憩中など外に出られる場合には立ち上がって歩いたり、外に出て空気を吸いながら体を動かしたりすると良いでしょう。
外出できない環境であれば、肩回しや背中伸ばし、お尻ストレッチなど、デスクでできる簡単なストレッチを試してください。
飲み物を飲む
眠気が我慢できない時には、カフェインを含む飲み物を飲んでみましょう。カフェインには覚醒作用があるため、摂取することで神経が興奮して目が覚める可能性があります。
カフェインを含むのは、例えば以下の飲み物です。
- コーヒー
- 紅茶
- 緑茶
- 栄養ドリンク
カフェインは含まれていませんが、気分がシャキッとする炭酸飲料もおすすめです。
飲み物を飲むために自動販売機まで歩いたり、バッグから飲み物を取り出したりすることで気分転換にもなるでしょう。
ただし、カフェインを過剰に摂取すると健康に支障をきたす可能性があるため、適量を守って取り入れてください。
藤堂紗織
Alohaさおり自由が丘クリニック 院長
1日のカフェイン摂取量は、成人の場合はコーヒーをマグカップで約2~3杯(カフェイン:400mg)までとしましょう。
ストレスを解消させる
緊張やストレスによってあくびが出るケースもあるため、日々受けるストレスを溜めずに、上手く解消させましょう。
ストレスの解消法の一例には、以下のものがあります。
- 甘いものを食べる
- 好きなことをする
- 自由な時間を作る
- ぐっすり寝る
ストレスを解消できる行動は人によって異なるため、自分にとって「ストレスを発散できる」と思う方法を見つけることをおすすめします。
社会を生きていると日々ストレスを受けるものですが、何事も我慢しすぎず、自分にできる方法でストレスを発散しましょう。
15~30分程度の仮眠をとる
寝不足などが理由で、眠くてあくびが出る場合は思い切って仮眠をとるのもおすすめです。その際、あまり長く眠ると夜の睡眠に影響が出るため、仮眠の時間は15~30分程度に留めましょう。
「考え事をしていて、昨日は寝つきが悪かった」「帰宅時間が遅くて、寝る時間も遅くなった」などで、職場や外出先で眠気があっても仮眠がとりづらい場合は、ゆったりした姿勢で目を閉じるだけでも脳を休ませることができます。
「30分も寝て起きられるか不安」と思う方は、目覚まし時計やアラームをかける、もしくは周囲の方に起こしてもらうよう頼んでおくと、寝過ごす心配なく仮眠をとれるでしょう。
まとめ
日中、眠い時に出るものが一般的な「あくび」です。一方、眠くない時に出るあくびは「生あくび」と呼ばれます。
生あくびは何らかの病気のサインとして出ることがありますが、緊張している時などにも生じるため、必ずしも病気が隠れているとは判断できません。
「生あくび以外にしびれや頭痛、動悸などの症状がある」「生あくびが気になる」という場合は、医療機関を受診して専門家の診断を受けましょう。
通常の眠い時に出るあくびが気になるのであれば、深呼吸したりツボを押したりして、眠気への対策を行ってください。
また、あくびは眠気が原因で出ることが多いため、普段から眠気があらわれない生活習慣を心がけることも重要です。記事内で紹介した生活習慣の見直し方を参考にして、日中の眠気やあくびに悩まされない日々を目指しましょう。