リラックスした状態でゲームをしていたり本を読んでいたりする時に、つい寝落ちしてしまった経験のある方もいるでしょう。寝落ちしてしまうと、その時行っている作業などが中断してしまうため困りものですが、それ以外にも弊害があります。
寝落ちしないようにするには、原因を把握したうえでの対策を心がけなければなりません。
この記事では、寝落ちする原因や寝落ちによる弊害、寝落ちしないための方法などを説明します。
寝落ちとはどのような状態?
寝落ちとは、何かを行っている最中にいつの間にか眠りに落ちてしまうことを指します。
「ソファで読書中、気づいたら寝ていた」「電車でスマホを見ていたら、いつの間にか寝てしまった」という経験をしたことがある方は多いと思いますが、これらの行動が寝落ちに該当します。
また、寝落ちは特に若年層間でよく用いられる言葉であり、特にオンラインゲームやSNSなどの最中、不本意に寝てしまう事象を指すケースが多いです。
「単なる寝落ち」だと捉えられやすいですが、睡眠不足や何かしらの病気が関連しており、ご自分の睡眠時間や睡眠の質の見直しが必要なケースもあります。
寝落ちする原因
寝落ちしてしまう原因としては、「眠いのを我慢して夜更けまで通信をしている」「退屈で集中力が続かない」などが考えられます。そのほかに以下のような理由もあるでしょう。
- 睡眠不足
- 睡眠の質の低下
- 血糖値スパイク
- 睡眠時無呼吸症候群
- ナルコレプシー
それぞれの原因について、詳しく説明します。
睡眠不足
日常的に睡眠不足の状態が継続していると、肉体的にも精神的にも疲労が蓄積していきます。
この状態を「睡眠負債が溜まっている」といいます。
睡眠負債が溜まっている状態が続くと覚醒状態を維持することが難しくなり、寝落ちしやすくなります。
睡眠の質の低下
睡眠時間を確保できていれば寝落ちすることはないというわけではありません。睡眠の質が低下すると、長時間寝ていても睡眠不足になってしまうことがあります。
睡眠の質が低下してしまう主な理由は、ストレス・ホルモンバランスの乱れ・自律神経の乱れなどです。
血糖値スパイク
食後に寝落ちする場合は、血糖値スパイクに原因がある可能性も考えられます。血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇・急下降する現象のことです。
人の体は、食事などをとおして糖質を摂取した際、上昇した血糖値を適正な値に戻すためにインスリンが分泌される仕組みになっています。この仕組みのおかげで、血糖値は一定の範囲内に保たれています。
しかし、糖質を過剰摂取した場合はインスリンの分泌が追いつかず、高血糖状態になってしまいます。その後、インスリンが大量に分泌される反動で血糖値が急降下し、低血糖状態になります。その結果、強い眠気があらわれる場合があります。
血糖値スパイクの詳しい原因や予防方法を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠不足や睡眠の質の低下は、病気が原因の場合もあります。例えば、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まることで体が酸欠状態となり、睡眠が中断される病気です。目を覚ました後でもあらためて眠ることはできますが、眠り始めると再び無呼吸の状態になるので、慢性的な睡眠不足の状態に陥ります。
また、睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病などのさまざまな生活習慣病と密接に関連していることも知られています。
寝ている間の無呼吸にはなかなか気付きにくいため、多くの潜在患者がいると考えられている病気です。
ナルコレプシー
明らかに寝てはいけない場面で寝落ちしてしまう場合は、ナルコレプシーの可能性も疑いましょう。
ナルコレプシーとは、日中に異常な眠気が生じる病気のことです。例えば、仕事中や会話中など、通常なら居眠りしないようなシーンでも眠ってしまいます。
また、繰り返し寝落ちしてしまうところもナルコレプシーの特徴の1つです。数十分眠れば眠気は覚めますが、数時間後には再度強い眠気に襲われます。
ナルコレプシーの具体的な原因は明らかになっていませんが、ストレスなどの後天的要因が関係すると考えられています。
なお、以下の記事ではナルコレプシーの具体的な症状を解説しています。ナルコレプシーに寝落ちの原因があると考えられる場合は、併せてご覧ください。
寝落ちする弊害
寝落ちによる弊害として、主に以下が挙げられます。
- 腰痛や肩こりなどの不調を引き起こす可能性がある
- 自律神経のバランスが乱れやすくなる
- 入浴できなくなる
- 睡眠の質が低下する
それぞれ詳しく説明します。
なお、寝落ちの頻度があまりにも高い場合は、病気の可能性もあります。寝落ちの症状に応じて医療機関の受診も検討しましょう。
腰痛や肩こりなどの不調を引き起こす可能性がある
寝落ちした場所によっては、寝起き時に心身の不調を感じる可能性があります。
例えば、ベッドではなくソファで寝落ちしてしまった場合、体重のかかりやすい肩や腰に大きな負荷がかかり、体を痛めてしまうこともあるでしょう。
また、ソファだとスペースが限られているため、寝返りを打つことができません。その結果、血行不良が生じ、腰痛や肩こりを引き起こす可能性もあります。
自律神経のバランスが乱れやすくなる
寝落ちの習慣が付いてしまうと、自律神経のバランスも乱れやすくなります。自律神経が乱れると、疲れがなかなか抜けない、肩こり、頭痛、動悸、耳鳴りといったさまざまな体の不調に繋がります。
ストレスも溜まりやすく、睡眠の質も低下しやすくなるため、さらなる悪循環に陥ってしまうことも考えられるでしょう。
入浴できなくなる
寝落ちは、寝る体勢をきちんと整える前に眠りに落ちてしまうという状態を指します。
そのため、入浴する前に寝落ちてしまうという状況も考えられます。入浴は疲労を回復させるために重要なため、入浴しないまま寝てしまうと疲れが取れにくくなるでしょう。
また、入浴には、交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態に切り替える効果もありますが、入浴できないとその効果を享受できません。通常、副交感神経が優位に働くことで睡眠が促されるため、入浴できないことで睡眠の質に影響する可能性もあります。
睡眠の質が低下する
寝落ちはいつの間にか眠り始めているため、寝落ちした場所や環境が眠りに適していないことが多く、それが睡眠の質を低下させる要因になります。
例として、「布団に入らず机に突っ伏して眠る」「音楽や音声を流しっぱなしで眠る」などが該当します。
名倉義人
新宿ホームクリニック 理事長・院長
睡眠の時間も大切ですが、睡眠の質も同様に重要です。寝落ちをする際は眠りに適した環境ではないことがほとんどのため、睡眠の質を低下させてしまい、結果的に、自律神経の乱れに繋がります。
寝落ちしないための方法
寝落ちしないためには、まず「キリの良いところで作業をやめて、眠いのを我慢してまで続けないこと」が大切です。さらに、睡眠の質を高めることを意識すると良いでしょう。
睡眠の質を高めるための方法としては、主に以下のようなことが挙げられます。
- ストレッチなどをして軽く体を動かす
- 規則正しい食生活を意識する
- 就寝時間の約90~120分前に入浴する
- 体に合った寝具を使う
- 温かい飲み物で体温を上昇させる
- 就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
- アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
眠る時間をあらかじめ決めておき、上記の行動を心がければ、入眠態勢を整えられます。
それぞれの方法について、以下で詳しく説明します。
ストレッチなどをして軽く体を動かす
人の体は、温度が下がると自然と眠くなるようになっています。普段は手足などの末端部分から熱を放出して温度を下げていますが、血行が悪いと上手く熱が放出されないため、不眠および睡眠の質の低下に繋がりやすいです。
足裏や手先といった末端部分のストレッチを行って血行を良くすると熱を上手く放出できるようになり、質の高い睡眠をとりやすくなるでしょう。
寝る前におすすめのストレッチは、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひこちらもご覧ください。
食事のタイミングを意識する
食事のタイミングに気を配ることも、睡眠の質を向上させるために重要です。
例えば寝る直前に食事をすると、食べたものを消化するために胃腸が活発に動いている状態で眠りにつくことになります。胃腸が活発に動いている分、体が熟睡できない状態になり、睡眠の質が低下してしまいます。
食べたものを胃腸が分解し終わるには約3時間が必要なため、寝る時間から逆算して夕食を食べる時間を決めるなど、食事のタイミングにも注意を払いましょう。
名倉義人
新宿ホームクリニック 理事長・院長
1日3食決まった時間に食事をすることをお勧めします。
1日1~2食の場合、基礎代謝が減るうえに、かえって1回の食事量が過多となりやすいため、生活習慣病や肥満症の原因になります。
1日4食以上の場合、一概に悪いわけではないですが、摂取カロリーが過多になってしまう場合が多く、結果的に生活習慣病や肥満症の原因になります。
食事の生活リズムを整えることで、生活習慣病の予防や睡眠の質を高めることに繋がります。
就寝時間の約90~120分前に入浴する
寝る直前の入浴は睡眠の質を高めるうえでは好ましくないため、就寝時間の約90~120分前の入浴を意識しましょう。
お湯の温度は38℃程度で、入浴時間は25~30分程度が理想的です。そうすると副交感神経が優位になり、睡眠の質を高めることに繋がります。
熱いお風呂が好きな方もいますが、熱いお風呂に入ると交感神経が優位になるので、逆に眠りにくくなってしまう可能性があります。
42℃程度の熱めのお湯に浸かる場合は、入浴時間を短くすると良いでしょう。
体に合った寝具を使う
睡眠環境を見直して体に合った寝具を使うことも、眠りの質の向上に繋がります。
今利用しているものよりも自分に合った寝具を選ぶことで、熟睡できるようになるかもしれません。特に寝具の硬さや体圧分散性は睡眠の質に大きく影響するため、それらの点を意識して寝具選びを行いましょう。
以下の記事では、低反発・高反発マットレスについて詳しく解説しています。興味がある方はぜひチェックしてください。
温かい飲み物で体温を上昇させる
温かい飲み物は、体の内側から一時的に体温を上昇させる作用があります。人は体温が下がるタイミングで眠気が自然と生じるため、睡眠前に温かい飲み物を飲むことは、睡眠のリズムを整えるという点で効果的です。
ただし、カフェイン入りのものを飲むと、目が冴えて眠りにくくなってしまいます。睡眠の質を高めるためには、白湯やカモミールティーといったノンカフェインのものを選ぶことが重要です。
就寝前のアルコールやカフェインの摂取を控える
アルコールは、神経に作用したり代謝によって尿意をもたらしたりする可能性があるため、睡眠前にお酒を飲むいわゆる「寝酒」は控えるのが賢明です。
また、カフェインには覚醒作用があります。コーヒー・緑茶・チョコレートとなどのカフェインを含むものの摂取も、就寝の3〜4時間前からは控えるようにしましょう。
アロマを焚いたり心地良い音楽を聴いたりしてリラックスする
リラックスすると副交感神経が優位になるので、眠りにつきやすくなります。リラックスする方法は人それぞれのため、自分に合った方法を試してみてください。
ぬるめのお風呂にゆっくりと浸かったり、アロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたりするなどがおすすめです。
ただし、寝る直前に強い光を長時間見るという行為は、睡眠に悪影響を与える可能性が高いです。そのため、ゲームをしてリラックスするというのは、睡眠の質を高めるという観点からは好ましくありません。
まとめ
何かを行っている最中にいつの間にか眠りに落ちてしまう「寝落ち」は、眠いのを我慢して夜更けまで作業をしていると起こりやすいです。
場合によっては、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの病気が原因となっている可能性も考えられます。病気に原因がある可能性が考えられる場合は、早めに医療機関に相談してください。
また、寝落ちを防ぐためには、就寝時間を決めて入眠体制を整えることが重要です。ストレッチなどで体を動かしたり、自分なりの方法でリラックスしたりして、睡眠の質を高めることを意識しましょう。